おむつ交換台

おむつを交換するための台

おむつ交換台(おむつこうかんだい、英語: diaper-changing station, changing table )は、乳幼児を上にのせておむつの交換ができるように設計された小さな台。ベビーシートと呼ばれることもある[1]

おむつ交換台の例

子ども部屋用品の一つで、一般に木製である。最上部は、おむつ換えの作業中に乳幼児を寝かせられるようにできており、その下には引き出しまたは空間が備え付けられており、おむつやおしり拭きベビーパウダーなどのおむつ替えで必要となるものが収納できるようになっている。

公衆トイレにおけるおむつ交換台 編集

 
日本の公衆トイレに設けられたおむつ交換台

公衆トイレの多くには、おむつ交換台が設置されている。これらの交換台のほとんどは、プラスチック製で、使わないときは邪魔にならないように折りたたむことができるような壁掛け式になっている。

公衆トイレにおむつ交換台が普及したのは1990年代のことである。普及しだした当初は、女性トイレを主としておむつ交換台が設置されてきたが、「平等な子育てプロジェクト」創設者のエリック・レッツ (Eric Letts)[2]のロビー活動により、アメリカ合衆国カナダでは男性トイレにも交換台が普及していった。おむつ交換台の不足は、子連れを理由に外出を控えることに繋がることを示唆する研究も存在する[3]

アメリカ合衆国では、バラク・オバマが2016年に署名したBABIES法英語版によって、公衆が利用できる連邦政府施設内の男女問わずトイレの全てに、おむつ交換台の設置が義務づけられた[4]。またニューヨーク市でも、公共に開かれた男女問わずトイレの全てにおむつ交換台の設置を義務づける条例が2017年に通過している[5]

日本においては、公共交通機関を対象としたガイドライン『公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン』が2001年にまとめられた。このガイドラインでは、乳幼児連れや身体障害者等の旅客に配慮した多機能トイレを1か所以上設置し、「乳幼児用のおむつ交換台」を標準設置するように求めているが、拘束力・強制力はない[6]。2004年6月には、『少子化社会対策大綱』が少子化社会対策基本法に基づいて閣議決定、発表された[7]。この大綱は、「妊婦、子ども及び子ども連れの人が利用する建築物、公共交通機関及び公共施設等について、(中略)ベビーベッド等の設置されたトイレの整備を男性による利用にも配慮しながら促進する」[8]と、男性による育児を踏まえた内容が盛り込まれた[9]

地方自治体の条例としては、床面積1,000平方メートル以上の百貨店飲食店等のトイレに、乳幼児のおむつ交換ができる設備を設けることを義務づける、東京都や大阪府、兵庫県の条例が存在する[10]

オムツ交換台は乳幼児の排泄物に直接触れてしまう恐れがあり、時にノロウィルスの感染経路となる事がある[11][12][13][14][15][16]

安全 編集

生後6か月を経過した乳幼児は、おむつ交換台の上で寝返りを打てるようになっている[17]。転落防止のために、おむつの交換に必要なものはあらかじめ用意したうえで、あやしつつも素早く交換することが求められる[17]

折りたたみ式おむつ交換台の事故も多く報告されている。2007年9月26日までに17件[1]、2006年から2010年までの間に18件[18]の転落事故がそれぞれ、国民生活センター消費者庁に報告されている。おむつ交換台はその利便性から、親や姉妹兄弟の排泄時に乳幼児を寝かせておくためにも使われるが、これは目的外利用である[1]

また、折りたたみ式おむつ交換台はベルトを備えていることがあるが、あくまでも「横ずれ防止のため」の機構であり、乳幼児の転落を防止する効果は含まれていない[18]。さらに、2000年代初頭以前に設置された古い製品の中には、台が真平らで柵が設けられていないものもある[1]。そのため、メーカーや消費者庁は、おむつ交換台を使う際は目を離さないように注意を呼び掛けている。

主なメーカー 編集

  • 日本
    • コンビウィズ[19]
    • TOTO - 「ベビーシート」の名前で売り出している品番YKA25は、2010年の第4回キッズデザイン賞を受賞した[20]
    • LIXIL(INAX)
    • 水上金属(オモイオ)
    • ジャクエツ

参考文献 編集

  • 吉田ゆり『子育て期の母親の自己効力感を支える都市環境整備の研究』風間書房、2015年6月30日。ISBN 978-4-7599-2084-0 

出典 編集

  1. ^ a b c d 折りたたみ式オムツ交換台からの転落に注意!!” (PDF). 国民生活センター (2007年10月5日). 2018年4月4日閲覧。
  2. ^ Fair Parenting - About”. 2014年7月26日閲覧。
  3. ^ 吉田ゆり 2015, p. 25.
  4. ^ Caroline Bologna (2016年10月11日). “「男性トイレでおむつを交換したい」パパたちの声が届き、アメリカで法案が可決される”. ハフポスト日本版. https://www.huffingtonpost.jp/2016/10/11/mens-restrooms-now-require-baby-changing-stations_n_12436262.html 2018年3月31日閲覧。 
  5. ^ Eleanor Goldberg (2017年12月11日). “New York City Just Recognized That It’s Not Only Women Who Have To Change Diapers”. Oath. 2018年3月31日閲覧。
  6. ^ 「駅のトイレに乳幼児おむつ交換台を:国土交通省が旅客施設整備でガイドライン」『厚生福祉』第4951号、時事通信社、2001年8月22日、2-3頁。 
  7. ^ 吉田ゆり 2015, p. 79.
  8. ^ 少子化社会対策大綱 別紙”. 内閣府 (2004年6月). 2018年4月2日閲覧。
  9. ^ 吉田ゆり 2015, p. 84.
  10. ^ 『安心して子育てができる環境整備のあり方に関する調査研究 報告書』(PDF)国土交通省 総合政策局、2010年3月、2-14, 2-15, 2-16頁。 
  11. ^ Eric Michaels. “Cleaning a Changing Table in Public Restrooms”. Kaivec. 2018年5月12日閲覧。
  12. ^ 【海外発!Breaking News】知っておきたいノロウイルス感染危険スポット 赤ちゃんが使うアレに工夫と改善を!”. TechinsightJapan (2017年12月27日). 2018年5月12日閲覧。
  13. ^ Outbreak: Diaper Changing Station Norovirus”. The International Outbreak Museum. 2018年5月13日閲覧。
  14. ^ Repp, Kimberly K.; Hostetler, Trevor P.; Keene, William E. (2013-07-15). “A Norovirus Outbreak Related to Contaminated Surfaces” (PDF). The Journal of Infectious Diseases 208 (2): 295–298. doi:10.1093/infdis/jit148. https://academic.oup.com/jid/article-pdf/208/2/295/18069167/jit148.pdf 2018年5月13日閲覧。. 
  15. ^ Durchfallerkrankungen durch Noroviren”. Landkreis Leer. 2018年5月13日閲覧。
  16. ^ manuel prvention maladies infectieuses” (PDF). Fédération fribourgeoise des crèches et garderies (2008年4月). 2018年5月13日閲覧。 p.19
  17. ^ a b 千羽喜代子、鈴木みゆき、関口はつ江、相馬和子、吉村真理子、山岸俊子、加藤照子、清水惠子 著、千羽喜代子 編『乳児の保育:0・1・2歳児の生活と保育内容』(新訂第3版)萌文書林、112頁。ISBN 978-4-89347-007-2 
  18. ^ a b おむつ交換台からの転落による事故の防止について” (PDF). 消費者庁 (2010年12月21日). 2013年2月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月4日閲覧。
  19. ^ トイレ設備 製品一覧”. コンビウィズ. 2018年3月31日閲覧。ページ内にトイレ用のおむつ交換台の製品情報がある。
  20. ^ 「第4回キッズデザイン賞」185点が決定!” (PDF). キッズデザイン協議会 (2010年7月9日). 2018年4月4日閲覧。