けいらんは、北東北郷土料理を包んだが入った汁物で、名称は餅の外見が鶏卵に似ていることに由来する[1]

下北地方で食されるけいらん

秋の収穫祝い[2]結婚式[3]、日常の夜食[4]、来客向け[5]、法事の際の精進料理など、さまざまな場面で供されている。

歴史 編集

北東北に伝わった経緯について、北前船上方)と一緒に伝来した精進料理が根付いたもので、分布は旧南部藩領にあたる青森の下北地方県南地方[6]・岩手県県北・秋田県北の一部である。気候の関係で水稲の栽培が難しい当地では祝い品として重宝され、現代では青森県のうち、南部藩の統治下だった南部地方[6]に広く伝承されている。なお、近年は作り手が減少しており、2008年むつ市の小学生を対象とした調査では、けいらんを食べたことのある児童の割合は半数以下だったという[3]

時代が移るにつれ、けいらんは本体のみによるまんじゅう菓子、古い形態である汁物と2通りに分かれている。

調理方法 編集

17世紀に書かれた『料理物語』の後段の部にはうどんなどとともにけいらんの項目があり、以下のような調理法が記されている[7]

  1. もち米うるち米を粉に挽き、6:4の比率で混ぜる。
  2. 充分にふるってから水を加え、こねる。
  3. こねた生地で黒砂糖をつつみ、金柑ぐらいの大きさに丸くまとめる。
  4. 茹でて、うどんつゆに入れて食べる。

現代における基本的な作り方は、上記の料理物語と大きな違いはない。一例として、昭和初期における下北郡東通村での製法を記す[2]

  1. もち米を洗って乾かし、で搗いて粉にする。
  2. 少量の熱湯とさらに水を加え、耳たぶくらいの固さにこねて、生地を作る。
  3. こし餡を丸めて生地で包み、卵型の形に成形する。
  4. 大量の熱湯に入れ、形を崩さないようにへらでかき混ぜながら茹で上げる。茹でずに蒸す製法もある。
  5. 茹で上がった餅が浮いてきたら取り上げて椀に2つ並べて盛りつけ、すまし汁をかける。適宜、シイタケなどを添える。

地域によって多少の差があり、遠野市ではすまし汁ではなくゆで汁をそのままかける[4]。さらに遠野ではもち米に1割ほど片栗粉を混ぜたり、餡が溶け出さないように通常より固めに練るケースも見られる[4]。また、鹿角市ではクルミや刻んだネギを載せる[5]

参考文献 編集

  • 古沢典夫・編『日本の食生活全集 (2)青森の食事』農山漁村文化協会、1984年
  • 古沢典夫・編『日本の食生活全集 (3)岩手の食事』農山漁村文化協会、1984年
  • 日本の食生活全集秋田編集委員会 『日本の食生活全集 (5)秋田の食事』農山漁村文化協会、1986年
  • 松本仲子『江戸時代の料理本にみるたまご料理について』「日本家政学会誌」、43巻9号、P.903-913、1992年

脚注 編集

  1. ^ けいらん(むつ市・旧川内町)”. 青森県商工会連合会. 2016年2月2日閲覧。
  2. ^ a b 『日本の食生活全集 (2)青森の食事』、P.182
  3. ^ a b 東奥日報、2008年12月25日 朝刊、P.17
  4. ^ a b c 『日本の食生活全集 (3)岩手の食事』、P.97
  5. ^ a b 『日本の食生活全集 (5)秋田の食事』、P.191
  6. ^ a b 残しておきたい郷土料理”. 2016年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月2日閲覧。
  7. ^ 松本、1992年、P.911

外部リンク 編集