べき乗法(べきじょうほう)とはある行列の固有値のうち、絶対値最大のものを求める手法の総称であり、いくつかのバリエーションがある。累乗法とも呼ばれる。

典型的には、与えられた行列に対して、適当な初期ベクトルから始めて、逐次

を計算することで、の絶対値最大の固有値に属する固有ベクトルの方向に漸近していくことを利用し、

により絶対値最大の固有値を得る。ただしベクトル列が定ベクトルに収束していくわけではないことに注意する。

また、べき乗法に類似した、絶対値最小の固有値を求める方法として逆べき乗法がある。

収束の証明 編集

簡単のため、 行列 の固有値 がすべて互いに異なり

 

であるとする。ここで、 に属する の固有ベクトルを とすると、 

 

をみたす。また、 は互いに1次独立なので、初期ベクトル はこれらの1次結合により

 

と表すことができる。ここで、 とすれば、 は以下のように表される。

 

仮定より なので、 のとき は絶対値最大の固有値 に属する固有ベクトル と同じ方向 に近づいていく。


絶対値最大の固有値 を求めるときは、

 

より、

 

となることを利用する。

行列 の固有値が重複を持ち更に対角化可能でない場合も、ジョルダン標準形を考えれば同様の考え方で証明できる。

欠点 編集

最大固有値と、その次に大きい固有値の差が小さすぎる場合、収束が極めて遅くなる。

参考文献 編集

  • 森正武『数値解析』共立出版、2002年2月。ISBN 4-320-01701-3 

関連項目 編集