めぐりあう時間たち

アメリカ・イギリス合作の映画作品 (2002)

めぐりあう時間たち』(めぐりあうじかんたち、: The Hours)は、2002年アメリカ合衆国ドラマ映画。監督はスティーブン・ダルドリー、出演はニコール・キッドマンジュリアン・ムーアメリル・ストリープなど。原作はマイケル・カニンガムの小説『めぐりあう時間たち 三人のダロウェイ夫人英語版』。

めぐりあう時間たち
The Hours
監督 スティーブン・ダルドリー
脚本 デヴィッド・ヘア
原作 マイケル・カニンガム
めぐりあう時間たち 三人のダロウェイ夫人英語版
製作 スコット・ルーディン
製作総指揮 マーク・ハッファム
出演者 ニコール・キッドマン
ジュリアン・ムーア
メリル・ストリープ
音楽 フィリップ・グラス
撮影 シェイマス・マクガーヴェイ
編集 ピーター・ボイル
配給 アメリカ合衆国の旗 パラマウント映画
日本の旗 アスミック・エース
公開 アメリカ合衆国の旗 2002年10月27日
日本の旗 2003年5月17日
上映時間 115分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
イギリスの旗 イギリス
言語 英語
製作費 $25,000,000[1]
興行収入 世界の旗 $108,846,072[1]
日本の旗 10.0億円[2]
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ダロウェイ夫人』をモチーフに、作者であるヴァージニア・ウルフをはじめとする3人の女性を描く作品。第75回アカデミー賞で9部門にノミネートされ、特殊メイクを施しヴァージニア・ウルフを演じたニコール・キッドマンアカデミー主演女優賞を受賞。第53回ベルリン国際映画祭ではジュリアン・ムーアメリル・ストリープを含む3人が銀熊賞 (女優賞)を共同受賞した。

キャッチコピーは「沢山の愛と驚きと時間たち、そして感動。人生はいつもミステリーに満ちている。」

ストーリー 編集

「花は私が買って来るわ、とダロウェイ夫人が言った」(“Mrs. Dalloway said she would buy the flowers herself.”)。この書き出しから始まる小説『ダロウェイ夫人』を1925年に書いた女性作家ヴァージニア・ウルフは、1941年に夫レナードへ感謝と「私たち二人ほど幸せな二人はいない」と云う言葉を残して、川へ入水自殺する。

  • 1923年の英国、リッチモンドでのヴァージニアの1日(入水自殺は別日)
  • 2001年のニューヨーク・マンハッタンでのクラリッサの1日
  • 1951年のロサンゼルスでのローラの1日

時間・場所の違う3人の女性の1日が始まり、回り会って行く。

1923年の英国・ ロンドン郊外のリッチモンド。過去に二度自殺未遂騒ぎを起こしたヴァージニアは、心の病の療養の為に夫レナードとこの田舎町に住み、『ダロウェイ夫人』を書き出す。或る日、彼女の元に姉のヴァネッサとその三人の子供たちがロンドンから訪ねて来る。しかし、ヴァージニアは小説の構想に頭を廻らせ、常に上の空である。そして、「ヒロインを殺す」展開を思いつく。

1951年、ロサンゼルス。ローラ・ブラウンは優しい夫と愛する息子に囲まれ、現在第二子を妊娠中である。しかし、理想的な幸せを手にしたかのように見える彼女は小説『ダロウェイ夫人』を愛読し、ヒロインに心が満たされない自分を重ねていた。或る日夫の誕生日のお祝いを備えていると、親友のキティが訪れ、子宮の腫瘍の為に入院すると言う。「子供を産まなければ一人前の女ではない」と泣くキティに、ローラは思わず口付けをしてしまう。押し隠して来た愛がキティから拒絶されたことを感じたローラは、自殺をする為に息子を置いて一人ホテルへと向かう。

2001年、ニューヨーク・マンハッタン。編集者のクラリッサ・ヴォーンは詩人で小説家である友人のリチャードの受賞の宴の為に、花を買いに行く。クラリッサは彼と過ごした若き日々の思い出を胸に、現在はエイズに侵され、精神的に混乱しているリチャードの世話を続けている。

1951年、ロサンゼルス。ローラは自殺を寸前で思い止まり、数時間後息子を迎えに戻ると、何事もなかったかのように夫の誕生日のお祝いを開く。その夜夫からベッドに誘われ、キティを想って流した涙を隠してそれに応じる。

1923年、英国・ロンドン郊外のリッチモンド。ヴァージニアは『ダロウェイ夫人』の構想に関して「ヒロインを死なせようと思ったが、止めて別の誰かを死なせなければならない」と話す。姉一家がロンドンへ帰る間際、ヴァージニアは姉に口付けをする。彼女も又、許されざる愛を押し隠していたのだ。 姉を送り出したヴァージニアは突然、駅に向かう。慌てて追って来た夫に、リッチモンドの静かで隔離された生活に不満を爆発させる。彼女を愛するが故、療養に適した土地で共に暮らしたいと願って来た夫は、その悲痛な叫びを聞いてロンドンに戻ることを決意する。ヴァージニアは夫に『ダロウェイ夫人』の構想に就いて、「他の人間の命の価値を際立たせる為…(中略)…詩人が死ぬのよ」と明かす。

2001年、ニューヨーク・マンハッタン。受賞の宴の準備を終えたクラリッサがリチャードを訪ねると、リチャードは彼らが未だ十代だった頃の最も輝かしい日々の思い出を語り出す。そして、「君の為に生きて来た。でももう行かせてくれないか」「私達ほど幸せな二人はいない」と言い、クラリッサの目の前で窓から飛び降り自殺をする。 作品の受賞の宴は中止になり、リチャードの死の知らせを受けた母親ローラがトロントから駆け付ける。彼女はリチャードの小説の中で「怪物」と呼ばれ「殺されて」いた。ローラは、ホテルで自殺を図った1951年のあの日、「二人目が生まれたら出て行こう」と決心し、その後子供二人と夫を置いて失踪したとクラリッサに話す。小説の中で自分が「殺され」ていることに衝撃を受けながらも、「後悔してどんな意味があるのでしょう、ああするしかなかった。出来ることをした。誰も私を許さないでしょうね。私は死ぬより生きることを選んだ」と述懐。

1941年ヴァージニアは夫レナードへ感謝の書き記し、川へ入水する。

キャスト 編集

役名 俳優 日本語吹替
1923年
ヴァージニア・ウルフ ニコール・キッドマン 平淑恵
レナード・ウルフ英語版 スティーヴン・ディレイン
ヴァネッサ・ベル ミランダ・リチャードソン
クエンティン・ベル英語版 ジョージ・ロフタス
1951年
ローラ・ブラウン ジュリアン・ムーア 田中敦子
ダン・ブラウン ジョン・C・ライリー 巻島康一
キティ・バーロウ トニ・コレット
2001年
クラリッサ・ヴォーン メリル・ストリープ 鈴木弘子
リチャード・ブラウン エド・ハリス 村田則男
サリー・レスター アリソン・ジャネイ
ジュリア・ヴォーン クレア・デインズ 浅井晴美
ルイス・ウォーターズ ジェフ・ダニエルズ
バーバラ アイリーン・アトキンス

スタッフ 編集

作品の評価 編集

映画批評家によるレビュー 編集

Rotten Tomatoesによれば、195件の評論のうち高評価は79%にあたる155件で、平均点は10点満点中7.5点、批評家の一致した見解は「この映画は観ていて気分が落ち込むかもしれないが、人の心に訴えかける大きな力を持っている。この作品では素晴らしい演技を見ることができる。」となっている[3]Metacriticによれば、40件の評論のうち、高評価は35件、賛否混在は4件、低評価は1件で、平均点は100点満点中80点となっている[4]

受賞歴 編集

主要キャストの中で特に、ヴァージニア・ウルフを演じたニコール・キッドマンの演技が絶賛され、アカデミー主演女優賞を受賞するなどさまざまな賞を受賞している。

部門 対象 結果
アカデミー賞 作品賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
監督賞 スティーヴン・ダルドリー ノミネート
主演女優賞 ニコール・キッドマン 受賞
助演男優賞 エド・ハリス ノミネート
助演女優賞 ジュリアン・ムーア ノミネート
脚色賞 デヴィッド・ヘアー ノミネート
編集賞 ピーター・ボイル ノミネート
作曲賞 フィリップ・グラス ノミネート
衣装デザイン賞 アン・ロス ノミネート
英国アカデミー賞 作品賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
英国作品賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
監督賞 スティーヴン・ダルドリー ノミネート
主演女優賞 ニコール・キッドマン 受賞
メリル・ストリープ ノミネート
助演男優賞 エド・ハリス ノミネート
助演女優賞 ジュリアン・ムーア ノミネート
脚色賞 デヴィッド・ヘアー ノミネート
編集賞 ピーター・ボイル ノミネート
作曲賞 フィリップ・グラス 受賞
メイクアップ&ヘアスタイリング賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
ゴールデングローブ賞 作品賞(ドラマ部門) 『めぐりあう時間たち』 受賞
監督賞 スティーヴン・ダルドリー ノミネート
主演女優賞 ニコール・キッドマン 受賞
メリル・ストリープ ノミネート
助演男優賞 エド・ハリス ノミネート
脚本賞 デヴィッド・ヘアー ノミネート
作曲賞 フィリップ・グラス ノミネート
ベルリン国際映画祭 金熊賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
銀熊賞 ニコール・キッドマン 受賞
ジュリアン・ムーア 受賞
メリル・ストリープ 受賞
全米映画俳優組合賞 キャスト賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
主演女優賞 ニコール・キッドマン ノミネート
助演男優賞 エド・ハリス ノミネート
助演女優賞 ジュリアン・ムーア ノミネート
全米監督組合賞 監督賞 スティーヴン・ダルドリー ノミネート
全米美術監督組合賞 美術賞(コンテンポラリー) 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
全米脚本家組合賞 脚色賞 デヴィッド・ヘアー 受賞
放送映画批評家協会賞 作品賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
主演女優賞 ニコール・キッドマン ノミネート
キャスト賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート
作曲賞 フィリップ・グラス ノミネート
セザール賞 外国作品賞 『めぐりあう時間たち』 ノミネート

原作・関連書籍 編集

  • 『めぐりあう時間たち 三人のダロウェイ夫人』
マイケル・カニンガム著、高橋和久訳、集英社、2003年、ISBN 9784087733792
  • 『めぐりあう時間たち 完全字幕シリーズ』
DHC、2003年、ISBN 9784887243323
  • 『ダロウェイ夫人 シリーズもっと知りたい名作の世界』 
窪田憲子編著、ミネルヴァ書房、2006年、ISBN 9784623047307
第4章で本作を論じている。

出典 編集

  1. ^ a b The Hours” (英語). Box Office Mojo. 2012年1月23日閲覧。
  2. ^ 2003年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
  3. ^ "The Hours". Rotten Tomatoes (英語). 2022年10月26日閲覧
  4. ^ "The Hours" (英語). Metacritic. 2022年10月26日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集