アゾジカルボン酸ジエチル

アゾジカルボン酸ジエチル(アゾジカルボンさんジエチル、diethyl azodicarboxylate)は有機化合物である。しばしばDEADと略記される。アゾ基と2つのエステル基を持つ。赤橙色の液体であり、様々な場面で反応試薬として用いられるが、極めて有害である。

アゾジカルボン酸ジエチル
識別情報
CAS登録番号 1972-28-7
ChemSpider 4510444
日化辞番号 J7.834D
特性
化学式 C6H10N2O4
モル質量 174.15 g mol−1
示性式 N2(COOCH2CH3)2
密度 1.106 g/cm3
沸点

106 °C at 13 mm Hg

危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
引火点 85 °C
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

合成 編集

広く用いられており市販もされているが、研究室で合成することも可能である。ヒドラジンクロロギ酸エチルアルキル化し、続いて塩素と反応させることで得られる[1]

 
 

2段階目の反応では、赤煙硝酸を用いることもできる[2]

応用 編集

アゾ基に電子求引性のエトキシカルボニル基が2つ結合した構造であるため、電子受容体として優れている。この性質を生かし、光延反応クリックケミストリーで重要な反応試薬として用いられている。ディールス・アルダー反応の基質にも用いられ、ビシクロ [2.1.0] ペンタンの前駆体合成への利用例が報告されている[3]

ただし現在は、安全性が高いアゾジカルボン酸ジイソプロピル英語版(DIAD)が用いられることが多い。DIADは、イソプロピル基に由来する立体障害が大きいこと、副生成物としてヒドラジドを生成しにくいことなどの利点がある。

安全性 編集

毒性を持っており、衝撃に弱く、熱的にも不安定である。このため以前は純粋なものが市販されていたが、最近では40%トルエン溶液などとして供給されることが多い。

出典 編集

  1. ^ Rabjohn, N. (1948). "Diethyl azodicarboxylate". Organic Syntheses (英語). 28: 58.; Collective Volume, vol. 3, p. 375
  2. ^ Kauer, J. C. "Diethyl azodicarboxylate". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 4, p. 411
  3. ^ Gassman, P. G.; Mansfield, K. T. (1969). "Bicyclo(2.1.0)pentane". Organic Syntheses (英語). 49: 1.; Collective Volume, vol. 5, p. 96

外部リンク 編集