アドマイヤジュピタ(欧字名:Admire Jupiter2003年3月1日 - 2023年11月28日)は、日本競走馬種牡馬である[1]。主な勝ち鞍は、2008年天皇賞(春)GI)、阪神大賞典GII)。2007年のアルゼンチン共和国杯GII)。

アドマイヤジュピタ
2008年3月23日 阪神競馬場
現役期間 2005年 - 2008年
欧字表記 Admire Jupiter
品種 サラブレッド[1]
性別
(種牡馬引退後去勢)
毛色 栗毛[1]
生誕 2003年3月1日[1]
死没 2023年11月28日(20歳没)
登録日 2005年4月27日[2]
抹消日 2008年10月22日[2][3]
フレンチデピュティ[1]
ジェイズジュエリー [1]
母の父 リアルシャダイ[1]
生国 日本の旗 日本北海道早来町[1]
生産者 ノーザンファーム[1]
馬主 近藤利一[1]
調教師 友道康夫栗東[1]
厩務員 津田朝明
競走成績
生涯成績 14戦7勝[1]
獲得賞金 3億2657万9000円[1]
勝ち鞍
GI 天皇賞(春) 2008年
GII アルゼンチン共和国杯 2007年
GII 阪神大賞典 2008年
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馬名は冠名の「アドマイヤ」と木星を意味する「Jupiter」が由来。従兄アドマイヤメインがいる。

経歴 編集

2歳 - 4歳(2005年 - 2007年) 編集

2005年11月に競走馬としてデビュー、3戦目で初勝利を挙げる。年明けに出走したオープン特別戦若駒ステークスで2着、続くすみれステークスで3着となった後、自己条件に戻ったゆきやなぎ賞を2馬身差で勝利し、オープンクラスに昇級する。しかし競走翌日に右後脚飛節の骨折が判明、長期の休養に入った。その後は秋の菊花賞を目指すべく患部にボルトを入れて補強する手術が行われたが、強い調教を行うことができず断念[4]。復帰は翌年夏の新潟開催までずれ込んだ。

休養中に500万下条件まで降級していたが、復帰戦では前走から40kg増という馬体重ながら勝利を収める。次走は調整段階で順調さを欠き[4]クビ差の2着と惜敗したが、続く条件戦で2着に5馬身差を付けて4勝目を挙げた。この後は格上挑戦でJpnII競走アルゼンチン共和国杯に出走。条件馬の身ながら当日は2番人気に支持されると、先行策から最後の直線で抜け出し、重賞優勝馬のトウカイトリックらを抑え勝利、重賞初制覇を果たした。

5歳(2008年) 編集

この後は翌年の天皇賞(春)に向けて万全を期して年末の有馬記念を回避、年頭の日経新春杯に向かった。しかしここではデビュー以来最高馬体重となる512kgと身体を絞り切れず、1番人気に推されながら4着と敗れる。続く阪神大賞典ではマイナス10kgと減量、レースでは内埒沿いから抜け出し、前年の優勝馬アイポッパーポップロックの追走を振り切って優勝した。

次走はかねて目標としていた天皇賞(春)に出走となり、当日は前年の菊花賞優勝馬アサクサキングス、一昨年のクラシック二冠馬メイショウサムソンに続く3番人気に支持された。レースではスタートで出遅れて後方からの位置取りとなる。しかし徐々に位置を上げていき、最終コーナーで先行馬群に取り付くと、最後の直線でメイショウサムソンとの激しい競り合いを制して優勝。GI初出走初勝利を飾った。

この勝利は馬主の近藤利一、騎手の岩田康誠、調教師の友道康夫にとっていずれも初の天皇賞制覇、友道にとっては初めてのGI競走勝利ともなった。また、この勝利により国際競走馬格付け委員会より芝長距離区分で118ポンドの評価を獲得、この時点の世界第44位タイ[注 1]、日本国内における上半期第3位タイに位置付けられた。

この後は春のグランプリ宝塚記念を待たず休養に入る[注 2]。この期間中の7月2日、10万ユーロ(約1680万円)の追加登録料を支払ってのフランス凱旋門賞へ登録される。報道では出走が決定したかのように報道されるが、実際には選択肢の1つとして登録しただけで、その後の調教中に挫石[注 3]を発症し、当初の予定通り秋は日本国内で出走する事になる[5]。天皇賞の前哨戦・京都大賞典から復帰した。しかし春の天皇賞から14kg減と馬体が細化しており、レースでも地方競馬から遠征してきたテキサスイーグルに先着したのみの9着と惨敗。その翌週、右前浅屈腱炎を発症していたことが判明し、これを最後に競走馬を引退した。

競走馬引退後 編集

2009年シーズンからは社台スタリオンステーションで種牡馬として供用され、初年度の種付け料は50万円で94頭に種付けを行ったが、生まれたのは19頭と受胎率が振るわず、2010年以降のシンジケート継続を断念、わずか1シーズンで種牡馬を引退することとなった[6]。その後はノーザンホースパークに移動し乗用馬となり、功労馬として余生を送っている[6]。なお、種牡馬引退時に去勢され、せん馬となった。

ノーザンホースパークに入厩した当初は、乗馬に向けた馴致に苦労したが、次第におとなしくなった[6]。重賞優勝馬は、気性に問題があり、主にパークのスタッフ専用の練習馬となる。しかしアドマイヤジュピタは、隣に人がいれば悪さすることがないため、乗馬上級者に限定して外部からの訪問者でも騎乗することができた[6]

2008年の第26回北海道新緑馬術大会では、馬術大会デビュー。ドレッサージュ競技において米田みさととコンビを結成し優勝した[7]。2018年の馬術大会では、馬場馬術競技で2位になる活躍をしている[6]

その後は功労馬として繋養されていたが、2023年11月28日、老衰のため死亡した[8]

競走成績 編集

以下の内容は、JBISサーチ[9]およびnetkeiba.com[10]に基づく。

競走日 競馬場 競走名 距離(馬場)


オッズ
(人気)
着順 タイム
(上り3F)
着差 騎手 斤量
[kg]
1着馬(2着馬) 馬体重
[kg]
2005.11.13 京都 2歳新馬 ダ1400m(稍) 15 3 4 004.60(2人) 08着 R1:27.6(36.7) -2.0 0武豊 55 セイウンワキタツ 482
0000.12.04 阪神 2歳未勝利 芝1600m(良) 16 3 6 009.70(5人) 03着 R1:37.9(37.2) -0.2 0岩田康誠 55 ロータス 474
0000.12.25 阪神 2歳未勝利 芝2000m(良) 16 3 5 006.60(3人) 01着 R2:03.3(36.0) -0.7 0岩田康誠 55 (タガノボーディング) 474
2006.01.21 京都 若駒S OP 芝2000m(良) 6 4 4 008.10(3人) 02着 R2:03.3(34.3) -0.3 0四位洋文 56 フサイチジャンク 474
0000.02.26 阪神 すみれS OP 芝2200m(不) 9 8 9 001.80(1人) 03着 R2:19.1(35.0) -0.1 0安藤勝己 56 ナイアガラ 470
0000.03.11 阪神 ゆきやなぎ賞 500万下 芝2200m(良) 11 8 11 002.00(1人) 01着 R2:16.0(35.7) -0.3 0岩田康誠 56 (ディープウイング) 470
2007.07.29 新潟 3歳上500万下 芝1800m(良) 17 2 3 006.40(2人) 01着 R1:46.8(34.0) -0.2 0吉田隼人 57 (フルヴィクトリー) 510
0000.09.17 阪神 美作特別 1000万下 芝2000m(良) 15 4 7 002.20(1人) 02着 R2:00.8(35.0) -0.0 0岩田康誠 57 ビーオブザバン 496
0000.10.13 京都 鳴滝特別 1000万下 芝2200m(良) 9 1 1 001.20(1人) 01着 R2:15.0(33.6) -0.8 0岩田康誠 57 (マイネルアンセム) 496
0000.11.04 東京 AR共和国杯 JpnII 芝2500m(良) 18 5 9 005.10(2人) 01着 R2:30.9(35.1) -0.1 0村田一誠 54 トウカイトリック 496
2008.01.20 京都 日経新春杯 GII 芝2400m(良) 16 1 1 002.60(1人) 04着 R2:27.8(37.5) -0.4 0岩田康誠 57 アドマイヤモナーク 512
0000.03.23 阪神 阪神大賞典 GII 芝3000m(良) 13 1 1 007.50(4人) 01着 R3:08.7(34.7) -0.4 0岩田康誠 58 アイポッパー 502
0000.05.04 京都 0天皇賞(春) GI 芝3200m(良) 14 8 14 005.80(3人) 01着 R3:15.1(34.7) -0.0 0岩田康誠 58 メイショウサムソン 494
0000.10.12 京都 京都大賞典 GII 芝2400m(良) 10 6 6 003.60(2人) 09着 R2:28.0(35.1) -1.1 0岩田康誠 59 トーホウアラン 480

血統表 編集

アドマイヤジュピタ血統(*印は海外産の日本輸入馬) (血統表の出典)[§ 1]
父系 デピュティミニスター系
[§ 2]

*フレンチデピュティ
French Deputy
1992 栗毛
父の父
Deputy Minister
1979 黒鹿毛
Vice Regent Northern Dancer
Victria Regina
Mint Copy Bunty's Flight
Shakney
父の母
Mitterand
1981 鹿毛
Hold Your Peace Speak John
Blue Moon
Laredo Lass Bold Ruler
Fortunate Isle

ジェイズジュエリー
1995 黒鹿毛
*リアルシャダイ
Real Shadai
1979 黒鹿毛
Robert Hail to Reason
Bramalea
Desert Vixen In Reality
Desert Trial
母の母
*アサーション
Assertion
1987 鹿毛
Assert Be My Guest
Irish Bird
Yes Please Mount Hagen
Thankfull
母系(F-No.) (FN:13-a) [§ 3]
5代内の近親交配 Northern Dancer 4×5 [§ 4]
出典
  1. ^ [11]
  2. ^ [11]
  3. ^ [12]
  4. ^ [11]

父フレンチデピュティは芝・ダートを問わない万能種牡馬であるが、得意とする距離は中距離であるとされ、長距離馬であるアドマイヤジュピタのスタミナは、長距離に強いリアルシャダイやアサート等を持つ母系由来であるという見解がある[13]。母ジェイズジュエリーは競走馬時代に2勝。俳優陣内孝則の所有馬だった。

主な近親 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ その後50位圏外まで下降している。
  2. ^ 宝塚記念のファン投票では、3万8316票を獲得し第6位に選出されている。
  3. ^ ざせき。固い物を踏みつけ蹄や脚部を傷める怪我。

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m アドマイヤジュピタ”. JBISサーチ. 2021年2月16日閲覧。
  2. ^ a b 競走馬情報:アドマイヤジュピタ - @Keiba”. @Keiba - 競馬サービスプロバイダ. 2022年3月11日閲覧。
  3. ^ “アドマイヤジュピタ、今日競走馬登録抹消”. ラジオNIKKEI. http://keiba.radionikkei.jp/keiba/entry-157686.html 2022年4月29日閲覧。 
  4. ^ a b 優駿』(日本中央競馬会)2008年7月号 50頁。
  5. ^ 『優駿』(日本中央競馬会)2008年11月号[要ページ番号]
  6. ^ a b c d e 週刊Gallop』「風のたより」2019年4月22日号 185頁。
  7. ^ ノーザンホースパークで北海道新緑馬術大会 | 馬産地ニュース”. 競走馬のふるさと案内所. 2021年2月16日閲覧。
  8. ^ 08年春の天皇賞馬アドマイヤジュピタ死す、20歳 老衰のため 友道厩舎のG1初制覇 - Sponichi Annex 2023年11月28日
  9. ^ アドマイヤジュピタ 競走成績”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2023年12月1日閲覧。
  10. ^ アドマイヤジュピタの競走成績”. netkeiba. Net Dreamers Co., Ltd.. 2023年12月1日閲覧。
  11. ^ a b c アドマイヤジュピタの血統表 | 競走馬データ”. netkeiba.com. 2022年3月11日閲覧。
  12. ^ 血統情報:5代血統表|アドマイヤジュピタ”. JBISサーチ. 2022年3月11日閲覧。
  13. ^ 『優駿』(日本中央競馬会)2008年7月号 91頁。

参考文献 編集

  • 優駿』中央競馬ピーアール・センター、2008年7月。 
  • 週刊Gallop』 第27巻第19号通巻1389号、サンケイスポーツ特別版、2019年4月22日、「風のたより」185頁頁。 

外部リンク 編集