アメリカ海兵隊総司令官

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アメリカ海兵隊総司令官(アメリカかいへいたいそうしれいかん、: Commandant of the Marine Corps 略称:CMC)は、アメリカ海兵隊において軍人が任命される最高位の職位である。

アメリカ海兵隊総司令官
Commandant of the Marine Corps
アメリカ海兵隊紋章
海兵隊総司令官旗
組織アメリカ海兵隊
所属機関アメリカ統合参謀本部
上官アメリカ合衆国国防長官
アメリカ合衆国海軍長官
任命アメリカ合衆国大統領
上院の承認
任期4年
戦争または国家緊急事態の間のみ、1回更新可能
根拠法令合衆国法典第10編第8043条 10 U.S.C. § 8043
創設1775年11月28日
初代サミュエル・ニコラス
略称CMC
職務代行者海兵隊副司令官
ウェブサイトOfficial website

海軍長官(文官)の直属で、海軍作戦部長(海軍軍人最高位)と同格の職であり、1775年11月28日サミュエル・ニコラスがアメリカ海兵隊の前身である大陸海兵隊の総司令官に就任して以来、大陸海兵隊の解散による中断期間があったものの、200年以上その名を変えていない伝統ある職である。

また、この職に大将が充てられるようになったのは、1945年3月21日に議会が承認した海兵隊総司令官は大将が務めることとする法令によって、1945年4月4日、当時の第18代海兵隊総司令官アレクサンダー・A・ヴァンデグリフト中将が大将に昇進してからであり、創設から1890年頃までの海兵隊総司令官は、主に佐官が任命されていた。

現在の海兵隊総司令官はエリック・スミス英語版大将が務めている。ジョー・バイデン政権は2023年7月10日に任期満了となったデイヴィッド・H・バーガー大将(第38代)の後任に副司令官のスミスを据える人事を決定していたが、上院公聴会で野党・共和党の議員が国防総省の中絶に対する考え方を問題視し承認を留保したため、1859年以来164年ぶりに司令官が不在という事態に陥っていた[1]。同年9月21日、アメリカ議会上院が海兵隊司令官にエリック・スミス副司令官を充てる人事を承認し、トップ不在が解消された[2]

海兵隊総司令官の職務 編集

海兵隊総司令官の基本的な職務は、アメリカ海兵隊の最高指揮官かつ最高責任者として組織を統率し、戦備を整える責任を負い、その象徴として崇高なる尊厳を保つことである。ただし、海兵隊総司令官職はアメリカ独立戦争以来、200年以上にわたって名称を変えずに維持され続けてきたため、時代ごとに職務の詳細は違ってきている。

初期の海兵隊総司令官は、直接兵力を率いて前線で作戦の指揮に当たることもあったが、「Marine Barracks」と呼ばれる海兵隊司令部の建物が機能するようになると、そこで総司令官の職務を行い、作戦の指揮を執るようになった。

1947年統合参謀本部が創設されて以降、その構成員として大統領に助言する責任を負う。なお、統合参謀本部の構成員である他の参謀総長や作戦部長と同じく、作戦上の指揮権を有していない。

なお、内部に海兵隊総司令官より現役の先任者がいたとしても、海兵隊総司令官がアメリカ海兵隊の最高指揮官であり、最高責任者である。

歴代海兵隊総司令官 編集

画像 氏名 任命時階級 任命 退任 備考
01   サミュエル・ニコラス 大尉[3] 1775年11月28日 1783年8月27日 大陸海兵隊時代の総司令官
02   ウィリアム・W・バローズ 少佐[4] 1798年7月12日 1804年3月6日 海兵軍楽隊の創設者
03   フランクリン・ウォートン 中佐 1804年3月7日 1818年9月1日
職務代理   アーチボルド・ヘンダーソン 中佐 1818年9月16日 1819年3月2日
04   アンソニー・ゲール 中佐 1819年3月3日 1820年10月16日 総司令官在職中に懲戒免職となった唯一の総司令官
05   アーチボルド・ヘンダーソン 大佐 1820年10月17日 1859年1月6日 記録上、在任期間が最も長い総司令官
06   ジョン・ハリス 大佐 1859年1月7日 1864年3月12日
07   ジェイコブ・ゼイリン 准将 1864年6月10日 1876年10月31日
08   チャールズ・G・マッコーリー 大佐 1876年11月1日 1891年1月29日 現在のアメリカ海兵隊のモットー「常に忠誠を」を定めた総司令官
09   チャールズ・ヘイウッド 少将 1891年1月30日 1903年10月2日
10   ジョージ・F・エリオット 少将 1903年10月3日 1910年11月30日
11   ウィリアム・P・ビドル 少将 1911年2月3日 1914年2月24日
12   ジョージ・バーネット 少将 1914年2月25日 1920年6月30日
13   ジョン・A・レジューン 少将 1920年7月1日 1929年3月4日
14   ウェンデル・C・ネビル 少将 1929年3月5日 1930年7月8日 名誉勲章受章者
15   ベン・H・フラー 少将 1930年7月9日 1934年2月28日
16   ジョン・H・ラッセル・Jr 少将 1934年3月1日 1936年11月30日
17   トーマス・ホルコム 中将 1936年12月1日 1943年12月31日
18   アレクサンダー・A・ヴァンデグリフト 中将[5] 1944年1月1日 1947年12月31日 名誉勲章受章者
19   クリフトン・B・ケイツ 大将 1948年1月1日 1951年12月31日
20   ラミュエル・C・シェパード・Jr 大将 1952年1月1日 1955年12月31日
21   ランドルフ・M・ペイト 大将 1956年1月1日 1959年12月31日
22   デイヴィッド・M・シャウプ 大将 1960年1月1日 1963年12月31日 名誉勲章受章者
23   ウァレス・M・グリーン・Jr 大将 1964年1月1日 1967年12月31日
24   レナード・F・チャップマン 大将 1968年1月1日 1971年12月31日
25   ロバート・E・クッシュマン・Jr 大将 1972年1月1日 1975年6月30日
26   ルイス・H・ウィルソン・Jr 大将 1975年7月1日 1979年6月30日 名誉勲章受章者
27   ロバート・H・バロウ 大将 1979年7月1日 1983年6月30日
28   ポール・X・ケリー 大将 1983年7月1日 1987年6月30日
29   アルフレッド・M・グレイ 大将 1987年7月1日 1991年6月30日
30   カール・E・マンディ 大将 1991年7月1日 1995年6月30日
31   チャールズ・C・クルラク 大将 1995年7月1日 1999年6月30日
32   ジェームズ・L・ジョーンズ 大将 1999年7月1日 2003年1月12日 第22代国家安全保障問題担当大統領補佐官
33   マイケル・W・ヘギー 大将 2003年1月13日 2006年11月13日
34   ジェームズ・T・コンウェイ 大将 2006年11月14日 2010年10月22日 2011年6月17日旭日大綬章受章
35   ジェームズ・F・エイモス 大将 2010年10月22日 2014年10月17日 創設以来、初の航空機搭乗員出身者[6]の総司令官
36   ジョセフ・ダンフォード・Jr 大将 2014年10月17日 2015年9月24日 第19代統合参謀本部議長
37   ロバート・B・ネラー 大将 2015年9月24日 2019年7月11日
38   デイヴィッド・H・バーガー 大将 2019年7月11日 2023年7月10日
-   エリック・スミス英語版 大将 2023年7月10日 2023年9月22日 副司令官職のまま総司令官職務代行
39 2023年9月22日 在任中


Timeline 編集

David BergerRobert NellerJoseph F. Dunford, Jr.James F. AmosJames T. ConwayMichael HageeJames L. JonesCharles C. KrulakCarl Epting Mundy, Jr.Alfred M. Gray, Jr.Paul X. KelleyRobert H. BarrowLouis H. Wilson Jr.Robert E. Cushman, Jr.Leonard F. Chapman, Jr.Wallace M. GreeneDavid M. ShoupRandolph M. PateLemuel C. Shepherd Jr.Clifton B. CatesAlexander VandegriftThomas HolcombJohn H. Russell, Jr.Ben Hebard FullerWendell Cushing NevilleJohn A. LejeuneGeorge BarnettWilliam P. BiddleGeorge F. ElliottCharles HeywoodCharles Grymes McCawleyJacob ZeilinJohn Harris (USMC)Anthony GaleArchibald HendersonFranklin WhartonWilliam Ward Burrows ISamuel Nicholas

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ “米海兵隊トップの後任が不在 共和党議員反対し上院未承認”. 共同通信社. (2023年7月11日). https://nordot.app/1051253738596762170 2023年7月11日閲覧。 
  2. ^ “米議会、陸軍と海兵隊トップを承認 不在解消”. 日本経済新聞. (2023年9月22日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB225AN0S3A920C2000000/ 2023年11月4日閲覧。 
  3. ^ 1776年6月25日、大陸会議の承認によって少佐に昇進した。
  4. ^ 1800年5月1日中佐に昇進した。
  5. ^ 1945年3月21日に連邦議会が承認した海兵隊総司令官は大将が務めることとする法令によって、1945年4月4日、大将に昇進した。
  6. ^ 歩兵至上主義の伝統があるアメリカ海兵隊では、航空機搭乗員は見下される傾向にある。

関連項目 編集

直接関係のある機関

直接関係のある役職

アメリカ軍の他の軍種の最高職位

外部リンク 編集