アルコPAは、車軸配置A1A-A1Aの旅客用電気式ディーゼル機関車である。車体はアメリカン・ロコモティブ(アルコ)、電装品はゼネラル・エレクトリック(GE)が担当し、1946年から1953年にかけてシリーズ合計で297両がニューヨーク州スケネクタディにて製造された。

アルコPA
デラウェア・アンド・ハドソン鉄道のPA-1
基本情報
製造所 アメリカン・ロコモティブ (アルコ)
ゼネラル・エレクトリック
製造年 1946年 - 1953年
製造数 297両
主要諸元
軸配置 A1A-A1A
長さ 20.02 m
機関車重量 138.8 t
動力伝達方式 電気式
機関 ALCO244型 1基(V型16気筒4行程・175.051cc・1000rpm)
発電機 直流発電機
主電動機 直流電動機
最高速度 188 km/h
出力 2,000 - 2,250馬力
(1,490 - 1,680 kW)
引張力 226.86 kN
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外見は同時期に製造されたアルコFAとほぼ同様のキャブ・ユニットと呼ばれる箱形車体であり、片運転台のAユニット(PA)と運転台のないBユニット(PB)がある。デザインはGEのレイ・パテン(Ray Patten)による。

解説 編集

正式なバリエーションは2つあり、出力2,000馬力(1,500kW)のPA-1/PB-1、同2,250馬力(1680kW)のPA-2/PB-2に分けられる。メーカーによる正式名称ではない俗称として、PA-2/PB-2のエンジンを2,400馬力(1,800kW)のものに換装したものをPA-3/PB-3と呼ぶことがある。PA-3/PB-3は、内的にはターボチャージャーを水冷化するなど原動機周辺に手を加え、外観では、運転室側窓に「アイ・ブロー」と呼ばれた飾り帯がないことと、ラジエターシャッター後部に舷窓があることが特徴である。

後期に製造されたPA-2は水冷ターボチャージャーを装備しているが、とくに独立した形式とはなっていない。代わりに、従来形式をメンテナンスする時等に、同様の装備になるように改造をしている。

本シリーズのバリエーションは以下の通りである。

形式 設計記号 搭載エンジン 出力(馬力) 両数 製造期間
PA-1 DL-304 244 2000 32 1946年6月 - 1948年12月
PB-1 DL-305 244 2000 18 1946年6月 - 1948年12月
PA-1 DL-304A 244 2000 58 1946年11月 - 1949年8月
PB-1 DL-305A 244 2000 19 1946年11月 - 1949年8月
PA-1 DL-304B 244 2000 77 1948年3月 - 1949年12月
PB-1 DL-305B 244 2000 4 1949年1月 - 1949年8月
PA-2 DL-304C 244 2250 54 1950年3月 - 1952年9月
PB-1 DL-305C 244 2250 5 1950年3月 - 1952年4月
PA-1 DL-304D 244 2250 27 1953年5月 - 1953年12月
PB-1 DL-305D 244 C 3 1953年5月

FAシリーズをPAシリーズとともに特徴づけるのは、長く直線的な前頭部に長方形のフィルターを備え、その中にヘッドライトを収めたスタイルである。スリット形状のグリル、運転席側窓から流線型に下部へとカーブした飾り帯も特徴的である。

PAシリーズも含め、デザインとしてはフェアバンクス・モースエリービルトの強い影響下にある。エリービルトはアルコのパートナーでもあるGEが製造したもので、前述のとおり、FAのデザインはそのGEのデザイナーであるレイ・パテンによる。そのため多くの人が、エリービルトのデザインから直線を強調し、より力強い外観にしたものがFAシリーズのデザインとなったと信じている。

本シリーズが搭載している244型ディーゼルエンジンは信頼性に欠け、FAとPAでGM-EMDが席巻しているディーゼル機関車市場に割り込むことができなかった。GEとの協業が終了したのも、エンジンの信頼性の低さが原因であった。アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道(ATSF)に納めた3両(ロードナンバー51L、51A、51B)は1954年8月にEMD 567系エンジンに換装され、出力は1,750馬力(1305kW)となった[要出典]

PA-2・PB-2で採用された新型の251型エンジンは大きく進化しており信頼性も向上したが、時既に遅く、アルコが失ったシェアを奪い返すまでには至らなかった。251型エンジンが広く使用されるようになったころ、GEは自社で開発したU25Bでディーゼル機関車市場に乗り込んでいた。GEは機関車メーカーとしてアルコに取って代わり、アルコは1969年に市場から撤退することになった。

特記事項のある車両 編集

PAシリーズの第一号は、アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道(ATSF)の51号として納められた。この車両は、同時にアルコの製造番号75,000番の機関車でもあった。

PA-1はアメリカン・フリーダム・トレインを牽引した。この車両はアルコの所有で、ロードナンバーはアメリカ建国の年である1776とした。側面にはアメリカの国鳥であるのエンブレムが付けられている。製造は前述のATSF51号より11ヶ月遅いが、製造番号は74,696である。これはPAシリーズの第一号にキリのよい番号を付与した結果である。

新製時の所有者 編集

鉄道運行会社 PA1 PB1 PA2 PB2 備考
ALCO-GE デモ車 1 1 ニューヨーク・セントラル鉄道(NYC)へ
ALCO-GE デモ車 2 CNグリーンと金色塗装にてカナディアン・ナショナル鉄道(CN)で、のちにミズーリ・カンザス・テキサス鉄道(MKT)にPA-2となった。
アメリカン・フリーダム・トレイン 1 1947年版。のち、ガルフ・モバイル・アンド・オハイオ鉄道(GM&O)へ
アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道(ATSF) 28 16 1946年に、最初にリーハイ・バレー鉄道(LV)にて試運転されたA及びBユニットを含む
デンバー・アンド・リオグランデ・ウェスタン鉄道 4 2
エリー鉄道(ERIE) 12 2
ガルフ・モバイル・アンド・オハイオ鉄道(GM&O) 2
リーハイ・バレー鉄道(LV) 14
ミズーリ・カンザス・テキサス鉄道(MKT) 4 8
ミズーリ・パシフィック鉄道(MP) 8 29
ニューヨーク・ニューヘイブン・アンド・ハートフォード鉄道(NH) 27
ニューヨーク・シカゴ・アンド・セント・ルイス鉄道 (ニッケル・プレート鉄道、NKP) 11
ニューヨーク・セントラル鉄道(NYC) 8 4 6
ペンシルバニア鉄道(PRR) 10 5
セント・ルイス・サザンウェスタン鉄道 (SSW、コットンベルト) 2 のちサザン・パシフィック鉄道(SP)へ
サザン・パシフィック鉄道(SP) 24 6 27 7
サザン鉄道(SOU) 5
ユニオン・パシフィック鉄道(UP) 8 6
ウォーバッシュ鉄道(WAB) 4
パウリスタ鉄道 (初代)ポルトガル語版
ブラジル
3 1,600 mm軌間
合計 169 39 81 8

輸出された車両 編集

PA-2の中には、1.600mm軌間(5フィート3インチ)であるブラジルサンパウロ州のパウリスタ鉄道に納められたものがある。特徴として、カウキャッチャーを備えている。

保存車両 編集

6両のPAが保存されている。16号から19号の4両は、デラウェア・アンド・ハドソン鉄道(DH)にて運行されていたものである。1974年から1975年にかけ、この4両はモリソン・クヌーセンによりリビルドされ、2,400馬力の251型エンジンに換装された。このリビルドにより、モリソン・ヌードセンによりPA-4と命名された。のちにメキシコの鉄道運行会社に譲渡された。

16・18号はアメリカ国内にある。16号はメキシコにおいて脱線により大きな損傷を受けたが、外観はきれいに修復され、スミソニアン博物館で保存されるためにATSFのウォーボンネットカラーに塗装された。18号は、ドイル・マコーマックの所有となり(彼の父が乗務員であった)、ニッケル・プレート鉄道(NKP)190号としてレストア中である。18号には、BCレールモントリオール・ロコモティブ・ワークス(MLW)のM420形から取り外したMLW251型エンジンが搭載されている。

17・19号はメキシコのプエブラ博物館にある。17号は、SPの旧塗装であるデイライトカラーに塗られている。

残る2両は、前項のブラジルに輸出された3両中の2両である。

参考文献 編集

外部リンク 編集

関連項目 編集