アレクサンドリアのヘシュキオス

アレクサンドリアのヘシュキオス古希: Ἡσύχιος ὁ Ἀλεξανδρεύς, Hēsychios ho Alexandreus, : Hesychius of Alexandria)は、5世紀または6世紀頃のギリシア文法学者辞典編纂者である。おそらく過去の辞典編纂者の著作を吸収することにより[1]ギリシア語の珍しい語彙を含む最も豊かな辞典を編纂した[2]

Π字の冒頭部分(Marc. Gr. 622)。
ヘシュキオスの辞典(スイス版、16世紀)。

著書 編集

『あらゆる単語のアルファベット順のコレクション』(Συναγωγὴ Πασῶν Λέξεων κατὰ Στοιχεῖον, Synagōgē Pasōn Lexeōn kata Stoicheion)というタイトルの著書には、50,000を超えるエントリ、珍しい単語、語形、成句の豊富なリスト、それらの意味の説明、および多くの場合、それらの単語を使用した著者あるいは単語が使われていた地域への参照が含まれている。それゆえ、この書は古代ギリシア語の方言の研究や、古典文学の復元全般、とりわけ珍しい単語を多用した詩人アイスキュロステオクリトスの著作の復元において大いに価値がある。

ヘシュキオスの多くの形容辞や成句の説明は、古代人の宗教や社会生活に関する多くの重要な事実もまた明らかにしてくれる。

序文の中で、ヘシュキオスは彼の語彙はディオゲニアヌス英語版アレクサンドリアのパンフィロス英語版による以前の研究から抽出されたもの)に基づいているが、サモトラケのアリスタルコスアピオン英語版ヘリオドロス英語版アメリアス英語版などの同様の著作も用いていると述べている。

ヘシュキオスはおそらくキリスト教徒ではなく、ナジアンゾスのグレゴリオスと他のキリスト教徒の作家(glossae sacrae)の著作からの単語の説明は後から書き入れられたものである。

語彙目録はヴェネツィアサン・マルコ図書館に保存されている15世紀の原型が非常に損なわれた1つの写本で存続している(Marc. Gr. 622, 15世紀)。最も優れた版はモーリッツ・シュミットドイツ語版(1858年–1868年)によるものだが、1514年にヴェネツィアでマルコス・ムスロスアルドゥス・マヌティウスの印刷所で最初に印刷して以来(1520年と1521年に控えめな改訂を加えて再版)、この原稿の完全な比較版は刊行されていない。

現代版はコペンハーゲンデンマーク王立美術院の後援の下で刊行され、クルト・ラッテ英語版によって開始され(第1巻は1953年に刊行、第2巻は死後の1966年に刊行)、ピーター・アラン・ハンセン英語版とイアン・C・カニンガム(Ian C. Cunningham)によって完成した(第3巻は2005年に、第4巻は2009年に刊行)。

脚注 編集

  1. ^ E. Dickey, Ancient Greek Scholarship (2007) p. 88.
  2. ^ ジョナサン・グリーン 著、三川基好 訳『辞書の世界史』朝日出版社、1999年、60頁。ISBN 978-4022573841 

参考文献 編集

外部リンク 編集