'''Arturia'''(アートリア)は、1999年にフランスのグルノーブルで設立した電子機器メーカーである。ソフトウェア・インストゥルメント、ドラムマシンアナログシンセサイザーデジタルシンセサイザーMIDIコントローラーミュージックシーケンサーモバイルアプリケーション等を含む電子楽器、及びオーディオインターフェースの設計・製造を事業としている。

アートリア
種類 非上場会社
事業内容 シンセサイザー、音源ソフトとプラグインのメーカー
設立 1999年
代表者 Frédéric Brun, Gilles Pommereuil
市場情報 グルノーブル
製品 ソフトウェア・シンセサイザー

ハードウェア・シンセサイザー(アナログ、デジタル)

マイディーキーボード

コントローラー

オーディオインターフェイス

従業員数 80人
ホームページ arturia.com

歴史 編集

 
Arturia MatrixBrute (2016年)

アートリアは、1999年にグルノーブルでINPGのエンジニアだったFrédéric BrunとGilles Pommereuilによって、低価格のソフトウェア・シンセサイザーを開発することを目的として設立された。最初の製品は「Storm」という、バーチャル・インストゥルメントによるワークステーションだった。アナログ・シンセサイザーの名機のエミュレーションにより市場での認知度を高めていった。デジタルの欠点を最小限に抑えつつ音作りができるよう、BrunとPommereuilはそうした問題を解消する新たなソフトウェア・アルゴリズムを開発した。

2003年、2人が開発したアルゴリズムを応用し、ロバート・モーグと共同でソフトシンセ「Modular V」を開発した。「Modulart V」はアートリアのTrue Analog Emulation(TAE)技術を採用し、Moog 3CやMoog 55のオシレーターやフィルターなどのモジュールの忠実な再現を企図したものである。これに続き、ARP 2600、Roland Jupiter-8、Minimoog、Sequential Circuits Prophet-5などシンセサイザーの名機のソフトウェア・エミュレーションを開発した。以来、ソフトウェア・シンセサイザーやエフェクトをそれぞれバンドルした「V Collection」、「FX Collection」を開発し、毎年アップデートしている。

2007年、ソフトシンセ数タイトルからの2,000音色を集めた「Analog Factory」を開発し、これを翌年「Analog Experience」として発売した[6]。ソフトウェアとMIDIキーボードを組み合わせたこのハイブリッド・システムは、シンセ音色の演奏とコントロールを主眼に開発されたものである。

 
Arturia MicroFreak (2019年)

2009年、アートリアは「Origin」でハードウェア・シンセサイザー市場に参入し、2012年には1VCO(ボルテージ・コントロールド・オシレーター)、2LFO(ロー・フリケンシー・オシレーター)、マルチモードのSteiner-Parkerフィルターを搭載した「MiniBrute」を発表した。このシンセサイザーは2012年のNAMMショーで発表された[9]。「MiniBrute」は、生産開始前は販売に不安があったものの、低価格と表現力豊かなサウンドが評価され、好調な販売を示すこととなる。翌年、「MiniBrute」の低価格・コンパクト版であるミニ鍵盤を採用し、パッチバンクやシーケンサーを装備した「MicroBrute」を発表し、両機種とも高い評価を博した。

2015年、コンパクトな2インプットのオーディオインターフェースに豊富な接続端子を装備した「AudioFuse」を発表した。これを皮切りに、大型モデルの「AudioFuse Studio」、「AudioFuse 8Pre」や「AudioFuse」のアップデート版などのオーディオ・インターフェース製品を発売した。2021年、より低価格のオーディオ・インターフェース「MiniFuse」シリーズを発表。インプット数やカラー・バリエーションの違いで数種類の製品グループを構成している。

Bruteファミリーの一部として、シーケンサーを搭載したアナログ・ドラムマシン「DrumBrute」を2016年に発売した。17種類のドラム・エンジン(音源)を内蔵した「DrumBrute」はその独特の音色が大きな特徴である。その2年後にあたる2018年には、「DrumBrute」のコンパクト版と内蔵音源の見直しを図った「DrumBrute Impact」を発売した。

2018年1月には、ユーロラック・モジュラーと接続可能なパッチベイを装備したセミモジュラー・タイプのアナログシンセ「MiniBrute 2」を発表した。同時に、一般的な鍵盤の代わりにパッドとリアルタイム・レコーディングが可能なシーケンサーを搭載した強化版の「MiniBrute 2S」を発表した。

2019年、デジタル・オシレーターとアナログ・フィルター、静電容量式タッチ・キーボードを搭載したユニークなルックスのシンセサイザー「MicroFreak」を発売した。デジタル・オシレーターにはMutable Instruments社が開発した物理モデル音源や、Noise Engineering社が開発した周波数変調音源など、複数のアルゴリズムを内蔵している。2022年には「MicroFreak」をポリフォニック化し、ミニ鍵盤を搭載した機能強化版の「MiniFreak」を発売した。

2020年、6ボイスのポリフォニック・アナログシンセサイザーのフラッグシップ機である「PolyBrute」を発売。対をなすモノフォニック機「MatrixBrute」を彷彿とさせるパネルレイアウトを採用し、Bruteシリーズのアナログ・シンセサイザーと同様のアナログ・アーキテクチャを搭載している。これに加え、キーボードの上部分にタッチストリップ(リボンコントローラー)や、多軸式タッチパッドの「Morpheé」コントローラーを装備し、音色のコントロール性を高めている。

2016年には、MIDIコントロール・キーボードの入門機「KeyStep」を発売した。32鍵のキーボードを装備し、内蔵シーケンサーと多彩な接続端子が好評を博した。これを契機に2020年のNAMMで発表された「KeyStep Pro」や「BeatStep Pro」、「KeyStep 37」を擁するMIDIコントローラー製品群に成長した。

製品 編集

同社の製品ラインにはソフトウェア・シンセサイザー、ソフトウェア・バンドル、ハードウェア・シンセサイザー、MIDIキーボード、ミュージックシーケンサー、モバイルアプリ、オーディオ機器、コントローラーがある。

ソフトウェア・シンセ 編集

2018年12月、初のオリジナル・ソフトウェア・シンセサイザー「Pigments」を発売。エンベロープやフィルター、LFOや波形のリアルタイムなビジュアル表示という点では、VSTプラグインの人気タイトルのSerumやVitalとの共通点もある。

シンセサイザー、オルガン、ピアノなどを再現したアートリアのソフトウェア・シンセサイザーは、単品での購入に加え、全タイトルをバンドルした「V Collection」としても購入が可能。また、これらのタイトルのプリセット音色を集め、限定的ながらも音色編集も可能な「Analog Lab」は、MIDIキーボード・コントローラーの「KeyLab MkII」、「KeyLab Essential」シリーズにバンドルされている。

2022年には「V Collection 9」をはじめ、新たなオリジナル・ラインナップとして「Augmented STRINGS」、「Augmented VOICES」を発売した。この2タイトルは、従来からよく知られたサウンドを新たなアプローチで音作りができるというバーチャル・インストゥルメントである。オリジナル・エフェクトとしては、「Rev INTENSITY」、「Delay ETERNITY」、「Bus FORCE」、「Efx FRAGMENTS」、「Dist COLDFIRE」があり、これらは「FX Collection」にも収録されている。

サブトラクティブ・シンセシス 編集

  • MS-20 V:Korg MS-20を再現
  • ARP2600 V3:ARP 2600を再現
  • CS-80 V4:Yamaha CS-80を再現
  • Mini V3:Moog Minimoogを再現
  • Modular V3:Moogモジュラーを再現
  • SEM V2:Oberheim SEMを再現
  • Jup-8 V4:Roland Jupiter 8を再現
  • Matrix-12 V2:Oberheim Matrix 12を再現
  • Synthi V:EMS VCS 3を再現
  • Jun-6:Roland Juno-60を再現
  • OP-Xa V:Oberheim OB-Xを再現
  • Prophet V:Sequential Prophet-5を再現
  • MS-20 V: Korg MS-20を再現
  • ARP2600 V3: Arp2600を再現
  • CS-80 V4: Yamaha CS80を再現
  • Mini V3: Minimoogを再現
  • Modular V3: Moog modular synthesizerを再現
  • SEM V2: Oberheim SEMを再現
  • Jup-8 V4: Roland Jupiter 8を再現
  • Matrix-12 V2: Oberheim Matrix 12を再現
  • Synthi V: EMS VCS 3を再現
  • Jun-6 V: Roland Juno-60を再現
  • OP-Xa V: Oberheim OB-Xを再現
  • Prophet V: Prophet-5を再現

デジタル・シンセ 編集

  • DX7 V:Yamaha DX7を再現
  • SQ80 V:多数の波形を内蔵したクロスウェーブ・シンセ
  • CZ V:Casio CZ-101、CZ-1000を基にしたフェイズ・ディストーション・シンセ
  • DX7 V: Yamaha DX7を再現
  • SQ80 V
  • CZ V: Casio CZ-101 and CZ-1000を再現

キーボード・エミュレーション 編集

  • VOX Continental V2:VOX Continental Organを再現
  • Farfisa V:Farfisa Organを再現
  • Wurli V2:Wurlitzerエレクトリック・ピアノを再現
  • Solina V2:ARP String Ensembleを再現
  • Stage-73 V2:Rhodesエレクトリック・ピアノを再現
  • Clavinet V:Hohner Clavinetを再現
  • B-3 V2:トーンホイール方式オルガンを再現
  • Piano V3:物理モデルによりピアノ音色を再現
  • VOX Continental V2
  • Farfisa V
  • Wurli V2
  • Solina V2
  • Stage-73 V2
  • Clavinet V
  • B-3 V2
  • Piano V3

サンプラー 編集

  • Emulator II V:E-mu Emulator IIを再現
  • Synclavier V:New England Digital Synclavierを再現
  • CMI V:Fairlight CMIを再現
  • Mellotron V:Mellotronを再現

その他のプラグイン 編集

  • Analog Lab V
  • Pigments:ウェーブテーブル、バーチャル・アナログ、サンプル、ハーモニック・エンジンを搭載したオリジナルVSTi
  • Buchla Easel V:Buchla Music Easelを再現
  • Vocoder V:ボコーダーのエミュレーション
  • Prophet-5 V:Sequential Circuits Prophet VSを基にしたベクター・シンセシス・プラグイン
  • Pigments
  • Buchla Easel V
  • Vocoder V
  • Prophet-5V
  • KORG MS-20 V
  • Augmented Strings
  • Augmented Voices
  • Augmented Grand Piano

ソフトウェア・エフェクト 編集

 
アートリア AudioFuse (2015) オーディオインターフェース

フィルター 編集

  • Mini-Filter:Moogラダー・フィルターのエミュレーションにシーケンスとモジュレーション機能を追加
  • M12-Filter:CEM 3372をベースにしたOberheim Matrix-12フィルターのエミュレーションにシーケンスとモジュレーション機能を追加
  • SEM-Filter:Oberheim SEMフィルターのエミュレーションにシーケンスとモジュレーション機能を追加
  • EQ SITRAL-295:Simens Sitralイコライザーのエミュレーション
  • Mini-Filter
  • M12-Filter
  • SEM-Filter
  • EQ SITRAL-295

ダイナミクス 編集

  • Comp VCA-65:DBX 165AをエミュレートしたVCAスタイルのコンプレッサー
  • Comp FET-76:Universal Audio 1176LNのエミュレーション
  • Comp TUBE-STA:真空管方式コンプレッサーのエミュレーション
  • Bus FORCE:イコライザー、コンプレッサー、ディストーションを組み合わせたアートリア独自のバスエフェクト
  • Comp VCA-65
  • Comp FET-76
  • Comp TUBE-STA
  • Bus force

タイムベース・エフェクト 編集

  • Chorus JUN-6:Roland JUNO-60に内蔵されていたコーラス回路のエミュレーション
  • Chorus DIMENSION-D:Roland Dimension-Dのエミュレーション
  • Phaser BI-TRON:Mu-tron Bi-Phaseを再現
  • Flanger BL-20:Bel BF-20 Flangerを再現
  • Chorus JUN-6
  • Chorus DIMENSION-D
  • Phaser BI-TRON
  • Flanger BL-20

リバーブおよびディレイ 編集

  • Delay TAPE-201:Roland RE-201テープエコーのエミュレーション
  • Delay MEMORY-BRIGADE:BBD方式のディレイElectro-Harmonix Deluxe Memory Manのエミュレーション
  • Delay ETERNITY:アートリア独自のデジタル・ディレイ
  • Rev PLATE-140:EMT 140プレート・リバーブのエミュレーション
  • Rev INTENSITY:アートリア独自のデジタル・リバーブ
  • Rev SPRING-636:Grampianリバーブ・ユニット・タイプ636スプリング・リバーブのエミュレーション
  • Efx FRAGMENTS:アートリア独自のグラニュラー・エフェクト
  • Delay TAPE-201
  • Delay MEMORY-BRIGADE
  • Delay ETERNITY
  • Rev PLATE-140
  • Rev INTENSITY
  • Rev SPRING-636
  • Efx Fragments

プリアンプ 編集

  • 1973-Pre:AMS Neveプリアンプ+パラメトリック・イコライザーのペアを再現
  • TridA-Pre:Trident Aシリーズ・コンソールのプリアンプをイコライザーを再現
  • V76-Pre:Telefunkenイコライザーとプリアンプを再現
  • Tape MELLO-FI:Mellotron Vからテープスタイルのプリアンプとサチュレーション・モジュールを抽出したもの
  • 1973-Pre
  • TridA-Pre
  • V76-Pre
  • Tape Mello-Fi

オーディオ・インターフェース 編集

  • MiniFuseMinifuse 1
  • MiniFuseMinifuse 2
  • AudioFuse
  • AudioFuse Studio
  • AudioFuse 8PRE

MIDIコントローラー 編集

 
アートリア BeatStep Pro (2015) と BeatStep (2014) MIDIコントローラー
  • KeyStep
  • KeyStep 37
  • KeyStep Pro
  • BeatStep(生産完了)
  • BeatStep Pro
  • Arturia Minilab3.jpg
  • MiniLab MK III
     
  • MicroLab
  • KeyLab Essential 49
  • KeyLab Essential 61
  • KeyLab Essential 88
  • KeyLab 49 MK II
  • KeyLab 61 MK II
  • KeyLab 88 (生産完了)
  • KeyLab 88 MK II

ハードウェア・シンセサイザー 編集

 
アートリア MiniBrute シンセサイザー(2012)

アートリアはソフトウェア・シンセで有名だが、人気の高いBruteシリーズをはじめとするハードウェア・シンセサイザーも製造している。

  • MicroFreak
  • MicroBrute
  • MiniFreak
  • MiniBrute
  • MiniBrute 2
  • MiniBrute 2S
  •  
    アートリア MiniFreak (2023)
    MatrixBrute
  • Origin
  • PolyBrute

ハードウェア・ドラムマシン 編集

  • DrumBrute
  • DrumBrute Impact

ハイブリッド・ドラムマシン(Windows/Mac OS/iOS+コントローラー) 編集

  • Spark
  • SparkLE

iOSアプリ 編集

  • iMini
  • iSem
  • iProphet
  • iSpark

リンク 編集