イギリス国鉄7形(BR Standard Class 7)は、イギリス国鉄が製造したテンダー式旅客用蒸気機関車。初号機の名から「ブリタニアクラス」とも呼ばれる。軸配置はパシフィック(4-6-2あるいは2C1)。

イギリス国鉄7形
70013「オリバー・クロムウェル」
70013「オリバー・クロムウェル」
基本情報
運用者 イギリス国鉄
設計者 ロバート・リドルス英語: Robert Riddlesダービー・ワークス英語: Derby Works
製造所 イギリス国鉄 クルー・ワークス英語: Crewe Works
製造年 1951年-1954年
製造数 55
運用開始 1951年1月
運用終了 1968年8月
愛称 Brits
主要諸元
軸配置 2C1 / 4-6-2(ホワイト記法
軌間 1,435 mm標準軌
全長 20,960 mm
全幅 2,660 mm
全高 3,980 mm
機関車重量 95.51 t(94.00 英トン
炭水車重量 49.94 t(BR1)
53.34 t(BR1A)
55.37 t(BR1D)
先輪 914 mm
動輪径 1,880 mm
従輪径 1,003 mm
軸重 20.83 t(20.50 英トン)
シリンダ数 2,外側
シリンダ
(直径×行程)
508 mm × 711 mm
弁装置 ワルシャート式弁装置
ボイラー BR1
ボイラー圧力 17.6 kg/cm2 / 1.72 MPa(250 psi
火格子面積 3.90 m2
全伝熱面積 210.3 m2
過熱伝熱面積 66.7 m2
火室蒸発伝熱面積 20 m2
燃料 石炭
燃料搭載量 7.1 t(BR1・BR1A)
9.1 t(BR1D)
水タンク容量 19,300 L(BR1)
23,000 L(BR1A)
21,600 L(BR1D)
引張力 143.0 kN[注釈 1]
備考 粘着重量:62.49 t
粘着係数:4.23
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概要 編集

イギリス国鉄が1948年に大手私鉄4社を統合する形で発足した際、私鉄時代に製造された雑多な旧型機を国鉄型標準機関車に置き換えることとなり[2]、その第1弾として本形式が製造されることとなった。

4大私鉄時代の高性能旅客機関車が3シリンダーや4シリンダーを採用していたのに対し、本機は保守の容易さと費用の削減を狙ってあえて2シリンダーとした[3]。また、初期投資が上がってまでもその後のランニングコスト低減と稼働率向上を考慮し、全軸ローラーベアリングを採用した[3]。さらにイギリスの蒸気機関車としては珍しく、配管や部品を外部に露出させている[4]

1951年1月から1954年9月にかけて55両がクルー工場で製造された。

なお、本機を3シリンダーにしたのが標準型の8形「デューク・オブ・グロスター」である[5]。また、イギリス国鉄最後の新製蒸気機関車となった9F形のボイラーは、本機のものと同じボイラーを採用している。 他の国鉄型標準機関車と同様に旧大手私鉄4社から批判されないよう設計されていたが、それでも欠陥がいくつも現れたという批評が存在する。ピストンやロッドが走行中に破損する事故が起きるなど細部の設計の甘さを露呈しており、死点で停止してしまうと他の機関車に助けてもらう必要があった。[6]

イギリス国鉄自体の動力近代化のあおりを受け、1968年8月の70013号機「イギリス国鉄 7形蒸気機関車70013号機 オリバー・クロムウェル英語: BR Standard Class 7 70013 Oliver Cromwell」を最後に全車廃車となった。

保存 編集

廃車後、トップナンバーの70000号機英語版「ブリタニア」および70013号機英語版「オリバー・クロムウェル」の2両が保存され、どちらも動態保存となっている。

7形保存機一覧
画像 番号 愛称 所在地 備考
  70000 ブリタニア ロイヤル・スコット号保存会 本形式のトップナンバーで、国鉄型機関車全体でも製造第1号ということで当初鉄道博物館の展示候補となっていたが、内部機関の調子が思わしくなく、さらに量産先行機であり仕様が異なっていたためリストから除外された。その後解体を免れ、ブリタニア級保存会のもとでセヴァーン渓谷鉄道英語版ニーン渓谷鉄道英語版などを転々としながら動態保存された。2000年の検査期限以降はピート・ウォーターマン英語版に譲渡され、長らくクルー工場で保管されていたが、2011年にロコモティブ・サービス社英語版に売却された後に動態復帰を果たした。
  70013 オリバー・クロムウェル ヨーク鉄道博物館
グレート・セントラル鉄道保存会英語版常駐)
形式最終廃車機で、1966年に国鉄蒸気機関車における最終重検施行機となった。上記の70000号機の代替として鉄道博物館の保存機となり、1968年8月11日の国鉄蒸気機関車さよなら運転「15ギニアスペシャル英語版」の牽引機を務めた。その後ノーフォークブレッシンガムSL庭園英語版で展示されたのち、レスターシャーのグレートセントラル鉄道保存会に移され2008年に動態復元された。2008年と2013年にはそれぞれ無煙化40年・45年記念の15ギニアスペシャル復活運転を牽引した実績がある。2018年いっぱいでボイラーの検査期限切れを迎えたため運用離脱し、現在本線復帰に向けて整備中である。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ボイラー圧力85%時[1]

出典 編集

参考資料 編集

  • 久保田博『蒸気機関車のすべて』グランプリ出版、1999年。ISBN 978-4-87687-201-5 
  • 齋藤晃『蒸気機関車200年史』NTT出版、2007年。ISBN 978-4-7571-4151-3 
  • Peter Herring (2000), Classic British Steam Locomotives, Abbeydale Press, ISBN 978-1861470577 

外部リンク 編集