イヌツゲ

モチノキ科の植物の一種

イヌツゲ(犬柘植[4]、犬黄楊、学名: Ilex crenata var. crenata)は モチノキ科常緑小高木。山地に生え、よく植栽にもされる。

イヌツゲ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: モチノキ目 Aquifoliales
: モチノキ科 Aquifoliaceae
: モチノキ属 Ilex
: イヌツゲ I. crenata
学名
標準: Ilex crenata Thunb. var. crenata (1784)[1]

広義: Ilex crenata Thunb. (1784)[2]

シノニム
和名
イヌツゲ(犬黄楊)
英名
Japanese Holly
Box-leaved Holly

分布と生育環境 編集

日本では北海道の一部、本州四国九州に分布し、日本国外では韓国済州島から知られる[5]。山地に自生する[5]

特徴 編集

常緑広葉樹低木から時に高木になり[5]、高さはふつう2 - 3メートル (m) であるが、15 mに達する場合もある[5]。枝は灰褐色で、ほぼ滑らかで大きな裂け目やや割れ目はない[4]。新しい樹皮は皮目が目立つ[4]。よく分岐し[5]、一年枝ははじめ緑色で短毛がある[4]

葉は互生[4]、1.5 - 3センチメートル (cm) の小さな楕円形で、厚みがある革質でのっぺりとしたつやがある[5]葉縁には丸い鋸歯がある。

花期は6 - 7月頃で、雌雄異株である[5]。葉腋に白い小さなを咲かせる[5]果実は秋に黒く熟し、径6 - 7ミリメートル (mm) ほどある[5]

冬芽は小さな円錐形で芽鱗に包まれて先端が尖り、枝先や葉の付け根につく[4]。葉痕は半円形で維管束痕が1個つき、両肩に托葉痕がある[4]

他に、押し葉標本にして乾燥させると葉が黒くなる、という野外での同定には役に立たない特徴もある。
名前に「ツゲ」が付くが、ツゲ(ツゲ科)とはが異なり、全くの別植物である。ツゲは葉を対生するが、イヌツゲは互生である点で識別できる。

変異など 編集

変異が多く、品種として名付けられているものにコバノイヌツゲ f. microphylla 、オオバイヌツゲ f. latifolia があり、それぞれ名前通りの特徴である。マメツゲについては後述する。
園芸品種としてキンメツゲがある。

よりはっきりとしたものとしては以下のようなものがある。

  • ハイイヌツゲ var. paludosa (Nakai) Hara :本州から北海道の寒地の湿地に生え、茎の基部が這う
  • ツクシイヌツゲ subsp. fukasawana (Makino) Murata:葉がやや大きくて薄く、やや細長く、枝に稜がある。四国と九州南部、伊豆諸島と中国に分布。

同属には他にもあるが、多くはより葉が大きく、赤い実のなるもので、似たものは少ない。やや似ているのは九州南部から琉球列島と台湾に分布するムッチャガラ I. mutchagara Makino である。より枝が細く葉も長く、全体にすんなりした姿をしている。

マメイヌツゲ(マメツゲ) 編集

変種のマメイヌツゲマメツゲともいう。学名I. crenata f bullata)は、葉の表側がふくらんで反り返るもので、園芸用に栽培される。丸く刈り込まれたものがよく見かけられる。

利用 編集

刈り込みに強く、よく生け垣庭木、植え込みに使われる[5]。材は細工物などに使われる[5]モチノキ同様に樹皮から鳥もちがとれ、モチノキから得たものがシロモチやホンモチと呼ぶのに対し、イヌツゲから得たものをアオモチという[6]

また、イカカゴ漁において利用され、カゴにイヌツゲの枝葉を結びつけて海に入れることで、イカ(コウイカ)が枝葉に卵を産みつけにくる。そのため、福岡県新宮町相島などでのコウイカ漁においてよく利用されており、イヌツゲのことを通称「イカシバ」と呼んでいる。

脚注 編集

参考文献 編集

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、40 - 41頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、130頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑・木本編I』保育社〈保育社の原色図鑑 49〉、1971年11月。 

外部リンク 編集