ウィチタ級補給・給油艦 (ウィチタきゅうほきゅうきゅうゆかん、英語: Wichita-class replenishment oilers)は、アメリカ海軍補給・給油艦(AOR)の艦級。

ウィチタ級補給・給油艦
AOR-3 カンザスシティ
AOR-3 カンザスシティ
基本情報
種別 補給・給油艦 (AOR)
命名基準 アメリカ合衆国の都市
運用者  アメリカ海軍
建造期間 1966年 - 1976年
就役期間 1969年 - 1996年
前級
次級 サプライ級 (AOE)
要目
軽荷排水量 13,000 t
満載排水量 41,350 t
全長 200.9 m
最大幅 29.3 m
吃水 10.1 m
ボイラー 3缶 (43.3 kgf/cm2, 454℃)
主機 蒸気タービン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 32,000 shp
電力 8,000 kW
最大速力 20ノット (37 km/h)
航続距離 6,500海里 (20kt巡航時)
兵装

※AOR-1は非武装

搭載機 CH-46E輸送ヘリコプター×2基
レーダー
電子戦
対抗手段
  • AN/SLQ-32(V)3 電波探知妨害装置 (AOR-4~6のみ)
  • Mk.137 6連装デコイ発射機×4基
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    概要 編集

    本級は、攻撃空母戦闘群にとってのサクラメント級高速戦闘支援艦(AOE)に相当する、対潜空母戦闘群に対する総合的な補給任務を担う艦種として整備された。このため、AOEと同様に各種の補給物資を取り揃えた「ワン・ストップ補給」能力を備えつつ、弾薬の搭載量を削減し、また速力などで妥協してコスト低減を図った設計となっている[1]

    ただし実際には、AOEがあまりに高価であり追加建造が滞ったこと、また特にベトナム戦争では空母が本来の機動運用よりも特定海域の哨戒任務に従事することが多かったこともあって、本級もAOEと同様に攻撃空母の支援に当たることも多かった[1]。本級のこのような運用は成功を収めたと評価され、AOEの追加建造が棚上げされる一因となった[2]

    設計 編集

    洋上移送
    補給ステーションとしては、液体貨物用のものは左舷に4ヶ所、右舷に3ヶ所、またドライカーゴ用のものは両舷に2ヶ所ずつされている。なお、これらの補給ステーションにはラムテンショナーが設置されている[3]。これは油圧と圧縮空気を利用した空気ばね式の張力緩衝装置であり、給油時のスパン・ワイヤーやドライ・カーゴ移送時のハイラインは、これを介してウィンチに巻かれることで、常に安定した状態になるよう張力を調整することができる[4]
    物資格納
    標準的な搭載内容は下記のとおりであった[3]
    • 貨油:175,000バレル
    • 弾薬:600トン
    • 糧食:575トン

    同型艦 編集

    冷戦終結による艦隊規模縮小によって本級は全て退役し、1990年代に除籍された。

    # 艦名 造船所 起工 進水 就役 退役 その後 外部リンク
    AOR-1 ウィチタ
    USS Wichita
    ジェネラル・ダイナミクス
    フォアリバー造船所
    1966年
    6月16日
    1968年
    3月16日
    1969年
    6月7日
    1993年
    3月12日
    国防予備船隊にて保管
    2013年2月4日、スクラップとして売却
    [1]
    AOR-2 ミルウォーキー
    USS Milwaukee
    1966年
    11月29日
    1969年
    1月1日
    1969年
    11月1日
    1994年
    1月27日
    2001年2月24日、連邦海事局に移管
    2009年1月14日、スクラップとして売却
    [2]
    AOR-3 カンザスシティ
    USS Kansas City
    1968年
    4月20日
    1969年
    6月28日
    1970年
    10月7日
    1994年
    10月7日
    国防予備船隊にて保管
    2013年6月11日、スクラップとして売却
    [3]
    AOR-4 サバンナ
    USS Savannah
    1969年
    1月22日
    1970年
    4月23日
    1970年
    12月5日
    1995年
    7月28日
    連邦海事局に移管
    2009年1月27日、スクラップとして売却
    [4]
    AOR-5 ワバッシュ
    USS Wabash
    1970年
    1月21日
    1971年
    2月6日
    1971年
    11月20日
    1994年
    9月30日
    国防予備船隊にて保管
    2012年10月1日、スクラップとして売却
    [5]
    AOR-6 カラマズー
    USS Kalamazoo
    1970年
    10月1日
    1972年
    11月1日
    1973年
    8月11日
    1996年
    8月16日
    2008年7月16日、スクラップとして売却 [6]
    AOR-7 ロアノーク
    USS Roanoke
    ナショナルスチール英語版 1974年
    1月19日
    1974年
    12月7日
    1976年
    10月30日
    1995年
    10月6日
    国防予備船隊にて保管
    2012年10月1日、スクラップとして売却
    [7]

    脚注 編集

    注釈 編集

    1. ^ 1960年代中盤、大戦中に建造されたT3 タンカー英語版のうち8隻に対し船体を延長する(jumboized)改装が行なわれ、AORとして運用されるようになった[1]

    出典 編集

    1. ^ a b c Wildenberg 1996, pp. 238–247.
    2. ^ Moore 1975, p. 484.
    3. ^ a b Prezelin 1990, p. 836.
    4. ^ 森 1991, pp. 318–329.

    参考文献 編集

    • Polmar, Norman (2005). The Naval Institute guide to the ships and aircraft of the U.S. fleet (18th ed.). Naval Institute Press. ISBN 978-1591146858 
    • Prezelin, Bernard (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. ISBN 978-0870212505 
    • Moore, John E. (1975). Jane's Fighting Ships 1974-1975. Watts. ASIN B000NHY68W 
    • Wildenberg, Thomas (1996). Gray Steel and Black Oil: Fast Tankers and Replenishment at Sea in the U.S. Navy, 1912-1992. Naval Institute Press. ISBN 978-1557509345. https://www.ibiblio.org/hyperwar/USN/GSBO/index.html 
    • 森, 恒英「13. 補給艦」『続 艦船メカニズム図鑑』グランプリ出版、1991年。ISBN 978-4876871131 

    関連項目 編集

    同時期の諸外国海軍の補給艦

    外部リンク 編集