ウィリアム・K・クルーガー

ウィリアム・K・クルーガーWilliam Kent Krueger1950年11月16日 - )は、アメリカ合衆国作家。代表作はミネソタ州を主な舞台としたコーク・オコナー元保安官が主人公のシリーズ[1]2005年2006年アンソニー賞長編賞を2年連続で受賞した[2]。2013年に上梓した『ありふれた祈り』は、エドガー賞、アンソニー賞、マカヴィティ賞バリー賞など多くのミステリの賞の長編部門を受賞した。

ウィリアム・K・クルーガー
(William Kent Krueger)
誕生 (1950-11-16) 1950年11月16日(73歳)
アメリカ合衆国の旗 ワイオミング州トリントン
職業 作家
言語 英語
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
活動期間 1998年 -
ジャンル ミステリ、犯罪小説
代表作 『凍りつく心臓』(1998年)
『ありふれた祈り』(2013年)
主な受賞歴 バリー賞 新人賞(1999年)
アンソニー賞 長編賞(2005年)
アンソニー賞 長編賞(2006年)
エドガー賞 長編賞(2014年)
デビュー作 『凍りつく心臓』
公式サイト http://www.williamkentkrueger.com
ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

経歴 編集

作家を志すようになったのは小学3年生の頃で、そのころに書いた"The Walking Dictionary" という物語を教師や両親に褒められたことがきっかけだった。樹木の伐採や水路掘り、建築現場での仕事を経てフリーのジャーナリストとなるまで、書くことをやめなかった[3]

スタンフォード大学に入ったが、1970年の春の学生蜂起で大学側と衝突し中退した[3]

その後、何年も短編を書き続け、40歳になってようやく処女作『凍りつく心臓』(原題:Iron Lake )が完成した。同作はアンソニー賞新人賞とバリー賞新人賞、ミネソタ・ブック・アワード、ロフト・マクナイト・フィクション賞を受賞した[3]

現在は、妻ら家族とミネソタ州セントポールに暮らしている[1]

影響を受けた作品等 編集

好きな作品にハーパー・リーの『アラバマ物語』(原題:To Kill A Mockingbird )を挙げており、自身の作品もかなり影響を受けている。アーネスト・ヘミングウェイジョン・スタインベックF・スコット・フィッツジェラルドジェイムズ・T・ファレル英語版などを読んで育った。その中でも特にヘミングウェイに与えられた影響は大きく、ある雑誌のインタビューで「(ヘミングウェイは)文体がきれいで、言葉の選び方も完璧、リズムも正確でパワーがある。無駄なところが何もない。言葉や文体そのものに感動できる、意味は後からついてくる。」と語っている。

自分と同じジャンルの作家では、トニイ・ヒラーマンジェイムズ・リー・バークを最も影響を受けた作家として挙げている[3]

執筆のプロセス 編集

朝5時30分に起き、近くのセント・クレア・ブロイラー (St Clair Broiler) でコーヒーを飲みながらノートに書いていく[4]

ブロイラーに通うようになったのは30代の頃で、当時勤めていたミネソタ大学に仕事に行く前の早朝に執筆活動をしなければならなかったからだが、その習慣は今でも続いており、今では専用のブースができている[3]

ブロイラーは常連であるクルーガーへのお礼に、スタッフが"A nice place to visit. A great place to die." と書かれたTシャツを着て新刊発売のイベントをしたこともある[5]

コーク・オコナー・シリーズの舞台の重要性 編集

クルーガーの作品では常に、生命の大切さやネイティブ・アメリカンの特別保留地について扱っている。主人公コーク・オコナーはアイルランドオジブワの血を引いている。シリーズの舞台をミネソタ北部に決めた時、作中のタマラックのモデルにした地方の人口の大半が先住民の血を引いていることに気付いた。大学時代、文化人類学者になりたくて調査したオジブワの文化が作中に織り込まれている[6]

History was a study in futility. Because people never learned. Century after century, they committed the same atrocities against one another or against the earth, and the only thing that changed was the magnitude of the slaughter... Conscience was a devil that plagued the individual. Collectively, a people squashed it as easily as stepping on a daisy.
ウィリアム・K・クルーガー 『煉獄の丘』

民俗学者ウィリアム・ホイップル・ウォーレンやフランシス・デンズモアの著書を読んだ後、ジェラルド・ヴィゼナーやバジル・ジョンソン、ルイーズ・アードリックジム・ノースラップなど、ネイティブ・アメリカンの血を引く人々の小説などを読み、実際にオジブワ族と会って、彼らの文化に魅了された[6]

作中の舞台の描写は登場人物の感情を反映している。「(舞台となるその)場所」が登場人物の内なる行動や感情をそうさせるのだとクルーガーは信じており、それを「すべてのシーンのドラマを高める潜在性を持つダイナミックなもの」と述べている[7]

著書 編集

コーク・オコナー・シリーズ 編集

# 邦題 原題 刊行年
 
刊行年月
 
訳者 出版社  
1 凍りつく心臓 Iron Lake 1998年 2001年9月 野口百合子 講談社文庫
2 狼の震える夜 Boundary Waters 1999年 2003年1月
3 煉獄の丘 Purgatory Ridge 2001年 2007年1月
4 二度死んだ少女 Blood Hollow 2004年 2009年2月
5 闇の記憶 Mercy Falls 2005年 2011年6月
6 希望の記憶 Copper River 2006年 2011年11月
7 血の咆哮 Thunder Bay 2007年 2014年4月
8 Red Knife 2008年
9 Heaven's Keep 2009年
10 Vermilion Drift 2010年
11 Northwest Angle 2011年
12 Trickster's Point 2012年
13 Tamarack County 2013年
14 Windigo Island 2014年
15 Manitou Canyon 2016年
16 Sulpher Springs 2017年
17 Desolation Mountain 2018年
18 Lightning Strike 2021年

ノンシリーズ 編集

# 邦題 原題 刊行年
 
刊行年月
 
訳者 出版社  
1 月下の狙撃者 The Devil's Bed 2003年 2005年7月 野口百合子 文春文庫
2 ありふれた祈り Ordinary Grace 2013年 2014年12月 宇佐川晶子 早川書房

(のちハヤカワ・ミステリ文庫)

3 このやさしき大地 This Tender Land 2019年 2022年10月 宇佐川晶子 早川書房

受賞・ノミネート歴 編集

  • 1988年:ブッシュ・アーティスト・フェローシップ受賞
  • 1998年:『凍りつく心臓』でロフト・マクナイト・フィクション賞受賞
  • 1999年:『凍りつく心臓』でミネソタ・ブック・アワード受賞、アンソニー賞新人賞受賞、バリー賞新人賞受賞、ディリス賞ノミネート
  • 1999年:Friends of American Writers Prize 受賞
  • 2000年:『狼の震える夜』でディリス賞ノミネート
  • 2002年:『煉獄の丘』でミネソタ・ブック・アワード受賞、ディリス賞ノミネート、バリー賞長編賞ノミネート
  • 2003年:リーダーズ・チョイス・アワード受賞
  • 2005年:『二度死んだ少女』でアンソニー賞長編賞受賞
  • 2006年:『闇の記憶』でアンソニー賞長編賞受賞、バリー賞長編賞ノミネート
  • 2007年:『希望の記憶』でミネソタ・ブック・アワード受賞
  • 2007年:『血の咆哮』でミネソタ北東部ブック・アワード受賞
  • 2008年:『血の咆哮』でディリス賞受賞、ミネソタ・ブック・アワード受賞、アンソニー賞長編賞ノミネート
  • 2009年:"Red Knife" でバリー賞長編賞ノミネート、アンソニー賞長編賞ノミネート
  • 2014年:『ありふれた祈り』 でエドガー賞 長編賞受賞、アンソニー賞 長編賞受賞、マカヴィティ賞 長編賞受賞、バリー賞 長編賞受賞

出典 編集

  1. ^ a b William Kent Krueger Official website”. 2008年5月20日閲覧。
  2. ^ "The Anthony Awards" - description and lists of winners”. 2008年5月21日閲覧。
  3. ^ a b c d e Interview in Shots Magazine with William Kent Krueger”. 2008年5月20日閲覧。
  4. ^ Interview in Kaliber .38 magazine with William Kent Krueger”. 2008年5月20日閲覧。
  5. ^ Article in City Pages about William Kent Krueger”. 2008年5月20日閲覧。
  6. ^ a b Simon and Schuster Interview with William Kent Krueger”. 2008年5月20日閲覧。
  7. ^ Book Reporter interview with William Kent Krueger”. 2008年5月20日閲覧。

外部リンク 編集