オーストリアの村つばめ

オーストリアの村つばめ』(オーストリアのむらつばめ、ドイツ語: Dorfschwalben aus Österreich作品164は、ヨーゼフ・シュトラウスが作曲したウィンナ・ワルツ[1]

解説 編集

 
小説『オーストリアの村つばめ』の作者、アウグスト・ジルバーシュタイン英語版

1862年から翌1863年にかけて、オーストリアの小説家アウグスト・ジルバーシュタイン英語版が長編大衆小説『オーストリアの村つばめ』を発表した。この小説は、アルプスの自然とそこに暮らす純情素朴な青年の恋心を綴ったものであり(作者の村に伝わる民話ともいわれる[2])、当時のベストセラーとなっていた。ジルバーシュタインはヨーゼフの長年の友人であり[2]、彼の小説から着想を得て、ヨーゼフは小説と同名のこのワルツ『オーストリアの村つばめ』を作曲した[3]。ジルバーシュタインの小説と同じく、このワルツも村ツバメが訪れる初夏のウィーンの自然を表現した牧歌的なものとなっている。

1864年9月6日、ジルバーシュタインへの献呈という形で、ウィーンフォルクスガルテンドイツ語版において初演された[3]。同日には、小説『オーストリアの村つばめ』のヒロインの心情を描いているのではとも推測されるポルカ・マズルカ『女心』(作品166)も初演されており、この2つの作品はそろってヨーゼフの代表作となった。

1870年7月22日ワルシャワでの事故が原因となってヨーゼフは若くして死去した。それから3か月後の10月18日に追悼式が行われたが、この時、兄であるヨハン・シュトラウス2世の指揮のもとで、初演された時と同じく『女心』とともに演奏されている[3]

なお、ツバメはオーストリアの国鳥であり、このワルツはオーストリアの豊かな自然を象徴する曲ともみなされている。のちに歌詞が付けられ、ウィーン少年合唱団のレパートリーにもなって親しまれている。

Frühling, Frühling, schöne Zeit! schöne Zeit voll Freud!
Auf Feld und Flur zieht der Winter. Es singt die Nature die Frühlinglied――
(春よ、春よ、美しい季節。喜びに満ちた美しい季節。野山では冬が去り、自然は春の歌を歌う……[2]。)

楽曲構成 編集

 
鳥笛

ウィンナ・ワルツ創成期にヨーゼフ・ランナーや父親のヨハン・シュトラウス1世が用いたレントラー風ワルツの形式をとり[3]、ヨーゼフが多大な影響を受けたとされるシューベルト風の旋律を五種用いている[4]。演奏時間はおよそ8分30秒である[4]

変ホ長調の第一と第二主題をもつ序奏的ワルツ、それに続いて変ホ長調、変ロ長調、変ホ長調、変イ長調の旋律のワルツが、クラリネットヴァイオリンで主奏される[4]。しばしば木管によってツバメの鳴き声が模倣され、牧歌的な初夏の風景が展開される。ツバメの鳴き声の表現については、木管ではなく鳥笛が用いられることも多い。

序奏 編集

 

第1ワルツ 編集

 

第2ワルツ 編集

 

第3ワルツ 編集

 

第4ワルツ 編集

 

第5ワルツ 編集

 

後奏 編集

 

ニューイヤーコンサート 編集

余談 編集

出典 編集

  1. ^ 吉崎道夫『クラシック音楽案内』(朝日新聞社、昭和53年)p.186
  2. ^ a b c 増田芳雄ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツのシューベルト」(帝塚山大学『人間環境科学』第12巻、2003年)p.151
  3. ^ a b c d 若宮由美ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート 2015 シュトラウス家の「第三の矢」、末弟エドゥアルトのポルカ! 曲目解説」より、ワルツ〈オーストリアの村つばめ〉。
  4. ^ a b c 『名曲解説全集 第三巻 管弦楽曲(上)』(音楽之友社、昭和34年)p.348
  5. ^ 田中貴金属ジュエリー新作情報「オーストリアを象徴するデザインのペンダント5種を4月10日より発売」(2011年3月31日)

外部リンク 編集

音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
  Dorfschwalben aus Österreich - ヨハン・シュトラウス管弦楽団英語版による演奏。公式YouTube。
  Dorfschwalben aus Österreich - junge Philharmonie Freistadtによる演奏。公式YouTube。