オープンソースの定義

オープンソース・イニシアティブにより策定され、文書としてまとめられた定義

オープンソースの定義(オープンソースのていぎ、: The Open Source Definition、略称:OSD)とは、オープンソース・イニシアティブ(OSI)により策定され、文書としてまとめられた「オープンソース」の定義である[1]。この定義はDebianフリーソフトウェアガイドラインを基にしている。

内容 編集

「オープンソースの定義」はオープンソースを名乗るソフトウェアが満たすべき条件として以下の要件を挙げている[2]

  1. 自由な再頒布
  2. ソースコード(「ソースコード公開」も含む自由な利用)
  3. 派生物(Derived Works. 派生物の自由な利用)
  4. 原著作者のソースコードとの区別 (Integrity) - これはTeXなどパッチのみの配布を要求するソフトウェアをOSDに合致させるための妥協の産物である。
  5. 特定人物・集団に対する差別の禁止 - たとえば「特定国家への輸出を禁ずるソフトウェア」はOSDに合致しない。
  6. 使用分野 (Fields of Endeavor) に対する差別の禁止 - 例えば「兵器への利用を禁ずるソフトウェア」はOSDに合致しない。
  7. ライセンスの権利配分(Distribution of License. ライセンスが再頒布者に認める権利は差別なく与えなければならない。)
  8. ライセンスは特定製品に限定してはならない
  9. ライセンスは他のソフトウェアを制限してはならない - 著作物として別個のものと明確に定義できる各ソフトウェアはそれぞれ別のライセンスであってもよい(例えば一方がオープンソースライセンスであっても他方はプロプライエタリであってもよい)。GPLもこの条件に合致している("集積物の別の部分と見なされるパッチ"を参照)。
  10. ライセンスは技術中立 (Technology-Neutral) でなければならない - ライセンスに特定技術に依存するような条項があってはならない。例えばクリックラップ英語版などのソフトウェア利用許諾契約は、GUIのクリック操作という、契約に対する明確な同意の意思表示を強要する。仮に「クリックラップ」条項が含まれたオープンソースソフトウェアをCUI環境でしか動作しないソフトウェアに組み込んだ場合に問題が発生する。

定義への準拠 編集

オープンソース・イニシアティブはオープンソースの定義に準拠したソフトウェアをオープンソース・ソフトウェア、定義に準拠したライセンスをオープンソースライセンスとして承認している。

オープンソースの定義はソフトウェアの在り方を定義しており、その定義を準拠したソフトウェアオープンソース・ソフトウェアである。

オープンソース・イニシアティブコンピュータプログラムのライセンスがこの定義に合致しているかをライセンス認証プロセス[3]にてチェックし[4][5]オープンソースライセンスとして承認している。

関連する宣言 編集

Debianフリーソフトウェアガイドライン 編集

Debianは同団体のソフトウェアパッケージに含まれるソフトウェアが準拠すべきガイドラインとして「Debianフリーソフトウェアガイドライン」を掲げている。

オープンソースの定義は、Debianプロジェクトでブルース・ペレンズにより作成されたDebianフリーソフトウェアガイドラインを基にしている。

FSF フリーソフトウェアの定義 編集

フリーソフトウェア財団(FSF)はフリーソフトウェアを定義するものとして、「フリーソフトウェアの定義」を掲げている。

フリーソフトウェア運動とオープンソース運動の根本的思想の違いにもかかわらず、フリーソフトウェア財団による「フリーソフトウェアの定義」とオープンソース・イニシアティブによる「オープンソースの定義」は、2、3の細かい例外を除いて、基本的には同一のソフトウェアソフトウェアライセンスを対象としている。フリーソフトウェア財団は思想的違いを強調すると同時に、次のようなコメントを述べて、ソフトウェアライセンスを図解している。

The term “open source” software is used by some people to mean more or less the same category as free software. It is not exactly the same class of software: they accept some licenses that we consider too restrictive, and there are free software licenses they have not accepted. However, the differences in extension of the category are small: nearly all free software is open source, and nearly all open source software is free. — Free Software Foundation、http://www.gnu.org/philosophy/categories.html

参考訳:

「オープンソース」ソフトウェアというのは多かれ少なかれフリーソフトウェアと同一の範疇にあることを意図する目的で、いくつかの人々により採用されている用語である。しかし実際にはこれは同一種のソフトウェアではない。例えば、彼らは制限が極めて強い(訳注:フリーではない)と我々が考えているいくつかのソフトウェアライセンス[注釈 1]を受け入れており、同時に彼らが受け入れていないフリーソフトウェアライセンス[注釈 2]が存在する。しかしながら、カテゴリを拡大すればその違いは小さいものといえる。すなわち、ほとんど全てのフリーソフトウェアはオープンソースであり、ほとんど全てのオープンソースソフトウェアはフリーである。 — フリーソフトウェア財団、http://www.gnu.org/philosophy/categories.html

Microsoft Open Specification Promise 編集

マイクロソフトは仕様に準拠する範囲において、実装に対して特許を主張しない旨を約束した文書として「Microsoft Open Specification Promise」を掲げている。

マイクロソフトプロプライエタリソフトウェアの互換製品を開発をする際、この約束によりオープンソースの定義と競合することなくソフトウェア開発をすることができる。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 2018年現在FSFが承認していないオープンソースライセンスとしてArtistic License Version 1.0がある。
  2. ^ 2018年現在OSIが承認していないフリーソフトウェアライセンスとしてCC0WTFPLがある。

出典 編集

  1. ^ The Open Source Definition”. OSI. www.opensource.org (2007年3月22日). 2011年10月23日閲覧。
  2. ^ The Open Source Definition (Annotated)”. OSI. www.opensource.org. 2011年10月23日閲覧。
  3. ^ The Licence Review Process”. OSI. www.opensource.org. 2011年10月23日閲覧。
  4. ^ Open Source Licenses”. OSI. www.opensource.org. 2011年10月23日閲覧。
  5. ^ Open Source Definition”. www.osCommerce.com. 2011年10月23日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集