カトブレパス英語catoblepas, ラテン語catōblepas, ギリシア語κατῶβλεψ[1])は、ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(大プリニウス)の『博物誌』に記された、西エチオピアに住むとされた架空の動物。ギリシア語の κάτω は英語で downwards を, βλέπ-εινto look を意味し[1]、牛のような姿で動きが鈍く、いつも頭を下に向けていることが名前の由来となる。[2]カトブレパスはギリシア語で「うつむく者」を意味する[3]

カトブレパス。ヤン・ヨンストン『博物誌』、第1巻『四足獣誌』より、金属版画、1614年、アムステルダム

大プリニウスの『博物誌』(8-32)によれば、西エチオピアに存在するという、当時ナイル川の源流であると信じられていたニグリスという泉の傍に住む動物である。非常に重い頭部を持ち、そのためいつも頭を地面に垂らしている。「カトブレパスの眼を見た人間は即死する」と締めくくられており、次節(8-33)において同様の邪視能力を持つ生物としてバジリスクを紹介している。外見については、重い頭部の他には「大きさはそこそこで、手足の動きは緩慢」とだけ書かれている。[4]

18世紀-19世紀フランス博物学ジョルジュ・キュヴィエは、アフリカに生息するヌーの姿と、バジリスクやゴルゴーンの伝説が組み合わさってカトブレパスが生まれたのではないかと推測している。19世紀のフランスの小説家ギュスターヴ・フローベールの作品『聖アントワーヌの誘惑』には、垂れたの頭、水牛の体、空ののように細い首を持つ動物としてカトブレパスが登場している。[3]

カトブレパスの邪視は、現代のファンタジー作品では石化能力として描かれることもある[5]

脚注 編集

  1. ^ a b "catoblepas". The Oxford English Dictionary (English). Vol. 2 (2 ed.). Oxford University Press. 1989. p. 990.
  2. ^ 電撃PlayStation Vol.151 幻獣事典』メディアワークス、2000年8月11・25日、18,19頁。 
  3. ^ a b ホルヘ・ルイス・ボルヘス 著、柳瀬尚紀 訳『幻獣辞典晶文社、1978年、48-49頁。 
  4. ^ ガイウス・プリニウス・セクンドゥス 著、中野定雄ほか 訳『プリニウスの博物誌雄山閣出版、1986年、360頁。 
  5. ^ 安田均グループSNE『モンスター・コレクション 改訂版』 中、富士見書房富士見ドラゴンブック〉、1996年、303頁。 

外部リンク 編集