カワサキ・ゼファー(ZEPHYR)とは、かつて川崎重工業が製造販売していたオートバイであり、排気量別にシリーズ車種として製造されていた。ゼファーの名はギリシャ神話の風神ゼピュロスがルーツで、同社は「西風」「そよ風」のイメージとして採用した。かつてのZシリーズを想起させるZで始まる英単語と、川崎重工業の二輪車製造拠点工場である兵庫県明石市から吹く業界への新風となる様にとの願いを込めて名付けられた経緯もある。また、ZEPHYRの名は主に国内向けのペットネーム(愛称)で、海外向けはZRを冠したモデル名(ZR750、ZR1100)を軸として販売された。日本国内ではZの系譜ではないと言われることがあるが、同社はZEPHYRシリーズを「Z50th Brand History」の中でZの系譜として紹介している。エンジン面では400や550、750のZEPHYRが、かつてのZシリーズの中型機(Z400FX系、Z650系)のエンジンをリメイクして搭載した。1100は、KZ1300の後継機となる同社最高級機(ZG1200VoyagerⅫ)エンジンのクランクケースをベースに、ほぼ新設計したエンジンを搭載した。

概要 編集

1989年レーサーレプリカ全盛期に、カウルなしの懐古的なスタイルを前面に押して登場した。これがフルカウル以外の選択肢を求めるユーザーに受け爆発的な売れ行きを見せ、「ネイキッドブーム」の立役者となる。メーカーによる自主規制の上限値を意識しない出力設定は、過熱しすぎていたカタログスペック競争に一石を投じることとなり、ユーザーのバイク選びのスタイルが変わるターニングポイントとなった。

このゼファーのヒットは、レプリカブームにおける販売不振により撤退も検討されていた川崎重工業の二輪車事業を、同社の大きな収益源に生まれ変わらせる原動力ともなった。

商標としてのZEPHYRは、アメリカ自動車メーカーであるフォード・モーターが自社製品(自動車)用として既に取得・使用 (フォード・ゼファー/マーキュリー・ゼファー)していたが、川崎重工業としてはどうしてもこのモデルにZEPHYRと名付けたいためにフォードとの交渉を行い、名称の使用権を得たという経緯がある。それまでの国内二輪メーカー四社の製造するオートバイでは、燃料タンクのメーカーロゴとサイドカバーの車種名という配置が一般的な表記であったなかで、それとは逆に燃料タンクに車種名「ZEPHYR」とサイドカバーにメーカーロゴ「Kawasaki」を配したデザインも、当時は非常に新鮮であった。

当初は400 ccモデルのみの計画であり、発売と同時に大量のバックオーダーを受けた際にも、「750 ccモデルは出すつもりはない」というリリースがオートバイ専門誌に掲載されたが、日本国外からの要望も強く、1990年に750 ccモデルの開発が開始し[注釈 1]、続いて1100 ccモデルの開発も開始して、1992年に発売された。結果的に、どちらもロングヒット車種となっている。750 ccモデルは、大型自動二輪の教習車としても用いられている。

400 ccクラスでは、他社のネイキッドバイクに対抗するために4バルブ仕様のZEPHYRχ(ゼファーカイ・399 cc・53馬力)が1996年登場したが、2バルブ仕様の初代モデルも2年ほど並行してラインナップされ続けた[1]

2008年9月に自動車排出ガス規制が強化されることが決定したことから、750 ccモデル・1100 ccモデルとも2007年をもって一足速く販売終了となり、Z-1Z-2の初期型モデルを髣髴させるグラフィック・パターンの「ファイナルエディション」が発売された[2][3]

400 ccモデルのゼファーχについては、規制強化後の2008年9月に生産終了が公表され、上位モデルと同様のファイナルカラー仕様が2009年3月に発売された。

車両解説 編集

エンジン
4ストローク DOHC 2バルブ 空冷直列4気筒エンジン
フレーム
鋼管ダブルクレードル
サスペション

モデル一覧 編集

ZEPHYR 編集

ゼファー
 
1989年 国内仕様車
基本情報
排気量クラス 普通自動二輪車
車体型式 ZR400C
エンジン 399 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 55 mm × 42 mm / 9.7:1
最高出力 34 kW (46 PS) / 11,000 rpm
最大トルク 30 N·m (3.1 kgf·m) / 10,500 rpm
乾燥重量 181 kg
車両重量 198 kg
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仕様沿革 (ZR400C) 編集

ZEPHYR[5][6]
  • ZR400-C1(1989年)車体色:キャンディアトランティックブルー/キャンディカーディナルレッド
  • ZR400-C2(1990年)車体色:キャンディアトランティックブルー/キャンディカーディナルレッド
  • ZR400-C3(1991年)車体色:キャンディアトランティックブルー/ルミナスビンテージレッド
  • ZR400-C4(1992年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールグリーニッシュブラック
  • ZR400-C5(1993年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールパープリッシュブラックマイカ
  • ZR400-C6(1994年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールパープリッシュブラックマイカ
  • ZR400-C7(1995年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールパープリッシュブラックマイカ/メタリックソニックブルー

ゼファー400のコンセプトは、馬力史上主義では無く、「ゆっくり景色を見ながら走ろう」のコンセプトで、 日常使いのバイクとして生まれた。外観は、過去に人気が高かったZシリーズの各モデルを彷彿とさせる懐かしくも美しい、秀逸なデザインとなっている。強度面と造形の美しさを両立した斬新なフレームワークも大きな特徴である。このデザインは1980年代のレーサーレプリカを見慣れた人の目と心に衝撃を与え、国内のデザイン業界全般にまで波及する「ゼファー現象」まで起きた。デザイン企画段階においては「自分が乗りたいと思うバイク」を念頭に企画が進められた経緯がある。

ZEPHYRχ 編集

ゼファーχ
 
1996年式 / G8型(ファイナルカラー)仕様
基本情報
排気量クラス 普通自動二輪車
車体型式 ZR400C
エンジン ZX400AE型 399 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 55 mm × 42 mm / 10.3:1
最高出力 39 kW (53 PS) / 11,500 rpm
最大トルク 35 N·m (3.6 kgf·m) / 9,000 rpm
乾燥重量 186 kg
車両重量 208 kg
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ZEPHYRχ(ゼファーカイ)は1996年に発売。ゼファーをベースに、エンジンを2バルブ仕様から4バルブ仕様へとマルチバルブ化したことにより、46馬力から53馬力へパワーアップした。また、エンジン本体の仕上げ色は黒塗装に変更、テールカウルのデザインやエンジンのカムカバーがシャープさを増したものに変更されるなど、デザイン面がさらに洗練された。

1997年には、足回りを中心に多数の変更を受けた[7]。また、従来は単色無地だった外装に、初めてストライプラインのグラフィックが採用されている[7][注釈 4]

仕様沿革 (ZR400G) 編集

ZEPHYRχ[5][8]
  • ZR400-G1(1996年)
    • 車体色:ルミナスビンテージレッド/メタリックダークブロンズ/ギャラクシーシルバー
  • ZR400-G2(1997年)
    • 車体色:ルミナスビンテージレッド/エボニー/パールロイヤルブルー×パールアルペンホワイト
  • ZR400-G3(1998年)
    • 車体色:メタリックダークブロンズ/メタリックシャンパンゴールド/エボニー×キャンディパーシモンレッド
  • ZR400-G3A(1998年 - 1999年)
    • 車体色:キャンディアトランティックブルー/メタリックシャンパンゴールド/ルミナスチェスナットブラウン×ルミナスタンジェリンオレンジ
  • ZR400-G4(2000年)
    • 車体色:ルミナスビンテージレッド/メタリックノクターンブルー
  • ZR400-G5(2001年)
    • 車体色:キャンディカーディナルレッド/エボニー
  • ZR400-G6(2002年)
    • 車体色:メタリックチェスナットブラウン/ルミナスウインザーグリーン/エボニー
  • ZR400-G7(2003年)
    • 車体色:パールミスティックブラック/ルミナスウインザーグリーン
  • ZR400-G8(2004年)
    • 車体色:メタリックマジェスティックレッド/メタリックスパークブラック
  • ZR400-G9(2005年)
    • 車体色:メタリックマジェスティックレッド/エボニー
  • ZR400G6F / G6FA(2006年)
    • 車体色:G6Fメタリックオーシャンブルー/G6FAパールソーラーイエロー×エボニー
  • ZR400G7F / G7FA(2007年)
    • 車体色:G7Fメタリックダークグリーン/G7FAキャンディファイアレッド×エボニー
  • ZR400G8F / G8FA(2008年)
    • 車体色:G8Fメタリックミッドナイトサファイアブルー/G8Fエボニー×キャンディプラズマブルー/G8FAキャンディダイヤモンドオレンジ×キャンディダイヤモンドブラウン

ZEPHYR550 編集

 
輸出仕様のZEPHYR550

ゼファー(400 cc)の派生モデルには輸出専用車のゼファー550がある。1990年の初期型(B1型)から1999年の最終型(B9型)まで製造された。

エンジン型式 KZ550DE

輸出先各国の規制に合わせてエンジン仕様が変更され、同一のモデルであってもそれぞれ出力が異なる。 アメリカ仕様やカナダ仕様では50 PSのフルパワーとなっており、最高出力により保険金額が異なる制度を取っていたドイツ仕様や排ガス規制の厳しいカリフォルニア州仕様では40 PSに満たない出力であるなど、スペックには大きな差がある。

なお、400 ccモデルとは違い、550 ccモデルでは4バルブ仕様の「χ」としての更新はなかった。

国内仕様のゼファー(ZR400C)との相違点は、排気量以外にスピードメーターがフルスケール(140 mph、230 km/hの併記)になり走行距離はマイル表示、マフラーも輸出用の刻印の入った専用のものになる。また、リアフェンダーの両サイドにリフレクターが装着されているのもゼファー(ZR400C)との相違点である。

発売当初から逆輸入車(北米仕様)が日本国内でも販売されていたが、登録台数は非常に少ない。

仕様沿革 (ZR550B) 編集

ZEPHYR550[9][10][11]
ZR550-B1(1990年)
ZR550-B2(1991年)
ZR550-B3(1992年)
ZR550-B4(1993年)
ZR550-B5(1994年)
ZR550-B6(1995年)
ZR550-B7
ZR550-B8
ZR550-B9

ZEPHYR750 / 750RS 編集

ゼファー750
 
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
車体型式 ZR750C
エンジン ZR750EE型 738 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 66 mm × 54 mm / 9.5:1
最高出力 50 kW (68 PS) / 9,500 rpm
最大トルク 54 N·m (5.5 kgf·m) / 7,500 rpm
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ゼファー750は、ゼファーシリーズの特徴となったノンカウル、パイプ鋼管フレーム、丸目一灯ヘッドライト、空冷直列4気筒エンジン、2本リヤサスなどを踏襲し、左右2本出しのメガフォンマフラーを装備するモデルである(400 ccのゼファーは右側1本出しの集合マフラー)。「ナナハン」であるこのゼファー750は、丸みを帯びた燃料タンクテールカウル、特にエンジンの丸型カムカバーの造型が、かつてのZ-2を連想させるが、エンジンはz1 /z2系統では無く、z650がルーツである。フレームワークは400や後の1100のような斬新なデザインではなく、1970年代によくみられた一般的なダブルクレードル形状となっている。本来は中型機であるz650系統をベースとしたことから、空冷4気筒の750モデルとしては比較的コンパクト。足付き性がよく、小柄な人が多い日本人を中心に需要が高かった。

2004年モデルのC10型では、エンジンの塗装色がそれまでの銀色から黒色に変更。エンブレムに関しては、それまでのタンク側の「ZEPHYR」とサイドカバー側の「750」から、タンク側「Kawasaki」サイドカバー側「ZEPHYR750」に変更された。また、マフラーもメガフォン形状のサイレンサー部分がそれまでより延長されている。

2007年1月19日には「ファイナルエディション」が発売された[注釈 5][2]。グラフィックには、1973年式Z2初期型をイメージさせる茶色とオレンジ色の通称「ファイヤーボール」「火の玉」パターンを施され、艶消し黒仕上げのホイールを採用。素材を改良されたシートや、艶有り黒塗装で仕上げられたフレーム、サイドカバーの「750 DOUBLE OVER HEAD CAMSHAFT」エンブレムなど、特別仕様となっている。

 
ファイナルエディション

派生モデルであるゼファー750RSが1996年から2003年まで併売された。ホイールは標準仕様のキャストホイールからチューブタイヤを使用するスポークホイールに変更。エンブレムも標準仕様とは違い、タンク側は「Kawasaki」およびサイドカバー側は「ZEPHYR750」とされた。初期のゼファー750では単色カラーのラインナップだったのに対し、ゼファーRSではファイヤーボール風のグラフィックが初期モデルから採用されていた。

また、1999年式・2001年式・2002年モデルでは、ゼファー750・ゼファー750RSともに共通の「タイガーパターン」風のグラフィックを採用している。1999年式モデルでは1974年式Z2Aと同様の配色によるグラフィックとなっており、2002年式モデル・2003年モデルでは1975年式Z2A後期型と同様の配色となっている。

仕様沿革 (ZR750C/D) 編集

 
輸出仕様のZEPHYR750RS(D1)
ZEPHYR750[5]
ZR750-C1(1991年)車体色:キャンディアトランティックブルー
ZR750-C2(1992年)車体色:キャンディアトランティックブルー/ルミナスビンテージレッド
ZR750-C3(1993年)車体色:キャンディアトランティックブルー/ルミナスビンテージレッド
ZR750-C4(1994年)車体色:キャンディアトランティックブルー/ルミナスビンテージレッド
ZR750-C5(1995年 - 1998年)車体色:キャンディアトランティックブルー/ルミナスビンテージレッド
ZR750-C6(1999年 - 2000年)車体色:エボニー/ルミナスウインザーグリーン
ZR750-C7(2001年)車体色:キャンディアマランスレッドマイカ/メタリックノクターンブルー
ZR750-C8(2002年)車体色:パールミスティックブラック/メタリックチェスナットブラウン/エボニー
ZR750-C9(2003年)車体色:パールミスティックブラック/メタリックチェスナットブラウン
ZR750-C10(2004年)車体色:メタリックマジェスティックレッド/メタリックスパークブラック
ZR750-C11(2005年)車体色:メタリックマジェスティックレッド/エボニー
ZR750-C6F / C6FA(2006年)車体色:C6Fメタリックオーシャンブルー/C6FAパールソーラーイエロー×エボニー
ZR750-C6S / C6SA(2007年)車体色:C6Sメタリックダークグリーン/C6SAキャンディダイヤモンドオレンジ×キャンディダイヤモンドブラウン
ZEPHYR750RS[5]
ZR750-D1(1996年 - 1997年)車体色:エボニー×メタリックグレーストーン
ZR750-D3(1998年)車体色:ルミナスチェスナットブラウン×ルミナスタンジェリンオレンジ/ギャラクシーシルバー×パールジェントリーグレー
ZR750-D4(1999年 - 2000年)車体色:ルミナスウインザーグリーン
ZR750-D5(2001年)車体色:メタリックノクターンブルー
ZR750-D6(2002年 - 2003年[12])車体色:メタリックチェスナットブラウン

ZEPHYR1100 / 1100RS 編集

ゼファー1100
 
1993年 輸出仕様車
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
車体型式 BC-ZRT10A
エンジン ZRT10AE型 1,062 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 73.5 mm × 62.6 mm / 8.7:1
最高出力 63 kW (86 PS) / 7,500 rpm
最大トルク 83 N·m (8.5 kgf·m) / 7,000 rpm
乾燥重量 245 kg
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ゼファー1100は、ゼファーシリーズの成功からシリーズのフラッグシップとして企画・製作された。シリーズの特徴となったノンカウル、パイプ鋼管フレーム、丸目一灯ヘッドライト、空冷直列4気筒エンジン、2本リヤサスなどを踏襲し、左右2本出しのメガフォンマフラーを装備するモデルである(400 ccのゼファーは右側1本出しの集合マフラー)。ゼファー750と比較すると、タンク形状やフレーム構造等の点からゼファー(400 cc)に近い外観となっている。これはデザイン担当者が400と1100が同一で750は別だったことに起因する。

エンジンは、KZ1300の後継機となる同社最高級機(ZG1200VoyagerⅫ)エンジンのクランクケースをベースにほぼ新設計した。開発当時、Z-1系の流れをくむZ1000Pのエンジンはあったが、旧態な組み立てクランクを理由に採用は見送られた。これにより1100エンジンは、Z-1系で採用されなかった一体型のクランク(Z-1系は組み立てクランク)を装備したのに加え、Z-1系の利点であるギア式の一次駆動をも併せて装備した、同社唯一の空冷4気筒となった(他のZEPHYRの一次駆動はチェーン式)。これに新設計のツインプラグのヘッドと新設計のシリンダーブロックを組み合わせたことで、高耐久かつ、近代的な設計の空冷4気筒となった。これを一因として、かつてカワサキ車でレース活動していたモリワキエンジニアリングが1100エンジンの屈強さを評価し、1999年に「ZEPHYR1100モリワキモンスターレーサー」としてレースデビューさせた経緯がある。

他の空冷4気筒リッターマシンと比べ、インターネット上のコメントを中心に車体重量を指摘されることが多いが、空冷4気筒リッターマシンとしてはごく一般的な重量である。これは他の空冷4気筒リッターマシンと時代背景が違うことが主因。ZEPHYR1100販売当時、レーサーレプリカ時代の名残りから一部の人がカタログスペック上でジャンル違いのマシンとZEPHYR1100を頻繁に比較、車重を主な根拠として批評を繰り返したのが端。日本人の二輪購買層の多くがこれらネット情報に感化された。半面、空冷多気筒リッターマシンを乗り継いだ人の多くは、それまでの空冷リッターマシンと比較し、ZEPHYR1100の車体の完成度とハンドリングの軽快さを高く評価した。また、日本人の大型二輪購買中心層の平均的体格と高齢化による体力低下も、ZEPHYR1100の重量を指摘する風潮の一因となっている。

2004年モデルのA9型では、エンジンの塗装色がそれまでの銀色から黒色に変更。エンブレムに関しては、それまでのタンク側の「ZEPHYR」とサイドカバー側の「1100」から、タンク側「Kawasaki」サイドカバー側「ZEPHYR1100」に変更された。

2007年1月19日には「ファイナルエディション」が発売された[注釈 5][3]。タンクやサイドカバー、リアカウルなどカラー部品には、色の境目の塗装段差を無くした3層ハンドペイントのファイヤーボール・パターン塗装を施すなど特別仕様車とした。カラー部分の外観は一見、2002年のA7型のファイヤーボール・パターンと似ているが、シール併用グラフィックのA7とは色彩面でも微妙に違う色構成となっている。2006年発売のA6FAパールソーラーイエロー×エボニー(通称イエローボール・パターン)もシール併用グラフィックであり、同ハンドペイントはファイナルエディションのみの特別仕様となってる。また、2004年のA9型以降では途絶えていたリム切削仕上げのホイールを採用。シートは表皮素材をより高級志向とし、艶有り黒塗装で仕上げられたフレームやサイドカバーの「1100 DOUBLE OVER HEAD CAMSHAFT」エンブレムを採用するなど、特別仕様となっている。

 
ZR1100-A6SA ファイナルエディション(2007年)
 
ZR1100-A6FA パールソーラーイエロー×エボニー(2006年)

ゼファー750RS同様に派生モデルであるゼファー1100RSが1996年から2003年まで併売された。ホイールは標準仕様のキャストホイールからチューブタイヤを使用するスポークホイールに変更。エンブレムも標準仕様とは違い、タンク側は「Kawasaki」およびサイドカバー側は「ZEPHYR1100」とされた。シリーズのイメージカラーのひとつであるファイヤーボール風のグラフィックは、750 ccモデルには採用されていたがゼファー1100RSでは用いられる事はなかった。一方、B2型のパールコスミックグレーは1100RSのみに採用された専用色といえる。なお、1999年式から2003年式のモデルではゼファー1100と共通のグラフィックが採用されていた。

仕様沿革 (ZR1100A/B) 編集

ZEPHYR1100[5][13]
ZR1100-A1(1992年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールグリーニッシュブラック
ZR1100-A2(1993年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールパープリッシュブラックマイカ
ZR1100-A3(1994年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールパープリッシュブラックマイカ
ZR1100-A4(1995年 - 1998年)車体色:ルミナスビンテージレッド/パールパープリッシュブラックマイカ/ギャラクシーシルバー
ZR1100-A5(1999年 - 2001年)車体色:パールパープリッシュブラックマイカ/メタリックノクターンブルー
ZR1100-A7(2002年)車体色:パールミスティックブラック/メタリックチェスナットブラウン/ルミナスチェスナットブラウン×ルミナスタンジェリンオレンジ
ZR1100-A8(2003年)車体色:パールミスティックブラック/メタリックチェスナットブラウン
ZR1100-A9(2004年)車体色:メタリックマジェスティックレッド/メタリックスパークブラック
ZR1100-A10(2005年)車体色:メタリックマジェスティックレッド/エボニー
ZR1100-A6F / A6FA(2006年)車体色:A6Fメタリックオーシャンブルー/A6FAパールソーラーイエロー×エボニー
ZR1100-A6S / A6SA(2007年)車体色:A6Sメタリックダークグリーン/A6SAキャンディダイヤモンドオレンジ×キャンディダイヤモンドブラウン
ZEPHYR1100RS[5][14]
ZR1100-B1(1996年)車体色:エボニー
ZR1100-B2(1997年 - 1998年)車体色:パールコスミックグレー
ZR1100-B3(1999年 - 2001年)車体色:メタリックノクターンブルー
ZR1100-B5(2002年 - 2003年[15])車体色:メタリックチェスナットブラウン

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 日本国外輸出用モデルのZ750P/GT750(1982年 - 1991年)を製造しており、ベースとなる空冷4気筒エンジンが既にあったことから開発期間は比較的短期間で収まった。
  2. ^ 初代のZ400FXおよび後継のZ400GPのエンジンは、ボア52.0 mm × ストローク47.0 mmの「KZ400EE」型であり、その後継となるGPz400のエンジンから、ゼファーと同じボア55.0 mm × ストローク42.0 mmの「ZX400AE」型となる。なお、ゼファーχは4バルブ化されているものの、エンジン形式としてはゼファーと同一の「ZR400AE」型。
  3. ^ ボイジャーXII水冷直列4気筒DOHC4バルブ1,196 ccエンジンを空冷化し、ピストンストロークは共通のままシリンダーボアを縮小し、1気筒あたり2本のスパークプラグを使用するツインプラグ方式に変更されている。
  4. ^ ZR400-G2型「パールロイヤルブルー×パールアルペンホワイト」のみ。なお、燃料タンクおよびテールカウルの上面にラインが施されたグラフィックパターンは同形式の同色が唯一の採用例となる。
  5. ^ a b 発売日は2007年だが2006年モデルの追加カラー扱い。

出典 編集

  1. ^ Kawasaki CP home pages - ZEPHYR(1998年1月30日時点のアーカイブ
  2. ^ a b カワサキインフォメーション・2006年モデル 新発売のお知らせ ZEPHYR750追加カラー - データなし(2011年5月29日時点のアーカイブ)
  3. ^ a b カワサキインフォメーション・2006年モデル 新発売のお知らせ ZEPHYR1100追加カラー - データなし(2011年5月29日時点のアーカイブ)
  4. ^ Kawasaki CP home pages - ZEPHYR(1996年11月8日時点のアーカイブ)
  5. ^ a b c d e f カワサキモータースジャパン パーツカタログ検索システム
  6. ^ カワサキ ゼファーのスペック - バイクのことならバイクブロス
  7. ^ a b Kawasaki CP home pages - 「ジャパンスタンダード進化論」ZEPHYRχ(カイ)(1997年7月9日時点のアーカイブ)
  8. ^ カワサキ ゼファーXのスペック - バイクのことならバイクブロス
  9. ^ Data for KAWASAKI ZEPHYR 550 (ZR550B2-B5) in the Louis bike database - Louis - Motorcycle & Leisure
  10. ^ Data for KAWASAKI ZEPHYR 550 (ZR550B6-B9) in the Louis bike database - Louis - Motorcycle & Leisure
  11. ^ Kawasaki Zephyr 550 (1991-1998) Motorbike Review MCN
  12. ^ カワサキインフォメーション・2003年モデル 新発売のお知らせ ZEPHYR750- データなし(2010年8月8日時点のアーカイブ)
  13. ^ カワサキ ゼファー1100のスペック - バイクのことならバイクブロス
  14. ^ カワサキ ゼファー1100RSのスペック - バイクのことならバイクブロス
  15. ^ カワサキインフォメーション・2003年モデル 新発売のお知らせ ZEPHYR1100- データなし(2010年8月8日時点のアーカイブ)

参考文献 編集

  • 『カワサキバイクマガジン』2005年7月号、ぶんか社、32-33頁。

外部リンク 編集