キ5は、第二次世界大戦前の日本陸軍の戦闘機である。製造会社は川崎航空機。陸軍初の低翼単葉式の戦闘機だったが、エンジンの不調と運動性の悪さから不採用となった。

概要 編集

昭和8年に陸軍は九二式戦闘機の後継機の試作を川崎に指示し、川崎ではリヒャルト・フォークト技師の指導のもとで土井武夫技師が設計をおこなったのがキ5である。試作1号機は昭和9年(1934年)1月に完成し、その後それぞれに構造が異なる試作機3機が製作された。

キ5は、日本陸軍機初の片持ち翼式の低翼機だった。当時の低翼機の評価として、前下方の視界不良と主脚柱が長くなってしまうことが欠点とされていた。これに対応するため本機では内翼に下反角、外翼に上反角をつけたいわゆる逆ガル式の主翼とした。また、主脚は陸軍の戦闘機としては初めてズボン・スパッツ付固定脚となった。このため、これまでの戦闘機とはかなり異質の外観を持つ機体となった。

エンジンはBMW VIを川崎が独自に改良して開発した国産の、液冷V型12気筒のハ9-I で、戦闘機のものとしては、最大850 hpを出す、当時最高出力の新型エンジンだった。

納入された機体は早速陸軍によるテストを受けたが、逆ガル式主翼を採用したため特に低速時の横安定性が不良だった(「玉乗りをしているような操縦性だった。」というテストパイロットの言もあった)。また、装備したハ9-I エンジンは振動がひどく、冷却系統の不良により高空性能が不足していた。このため当初380 km/hを予定していた最高速度は360 km/hしか出ず、上昇性能は九二式戦闘機と大して変わらなくなってしまった。

前者については内翼の下反角を変更するなどして対応(試作4号機では、ほとんど水平になった)したが、抜本的な解決にはならず運動性は不良なままだった。また、エンジン冷却機の位置を変更したり主脚スパッツを取りやめたりといった改修も行われたが、性能の向上は見られなかった。

結局、速力よりも運動性を重視する陸軍の方針にはそぐわない機体となり、昭和9年9月の審査後不採用が決定した。しかし、本機での経験は後のキ28キ60キ61YS-11開発に生かされていくことになった。

スペック 編集

  • 全長: 7.78m
  • 全幅: 10.60 m
  • 全高: 2.60 m
  • 主翼面積: 18.0m2
  • 自重: 1500 kg
  • 全備重量: 1870 kg
  • エンジン: 川崎 ハ9-I 液冷V型12気筒エンジン×1
  • 出力: 公称 800 hp
  • 最大速度: 360 km/h
  • 航続距離: 1,000 km
  • 実用上昇限度: 9400 m
  • 武装: 7.7mm機関銃×2
  • 乗員: 1 名

関連項目 編集