クラカケアザラシHistriophoca fasciata)はアザラシ科クラカケアザラシ属に属する海棲ほ乳類。首・腰・脚周りに特徴的な帯状の模様を持つ。

クラカケアザラシ
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
亜目 : イヌ型亜目 Caniformia
下目 : クマ下目 Arctoidea
階級なし : 鰭脚類 Pinniped (階級未定)
: アザラシ科 Phocidae
: クラカケアザラシ属 Histriophoca
: クラカケアザラシ H. fasciata
学名
Histriophoca fasciata
(Zimmermann, 1783
和名
クラカケアザラシ(鞍掛海豹)
英名
Ribbon Seal
クラカケアザラシ生息域
クラカケアザラシ生息域

分布 編集

オホーツク海ベーリング海を中心に生息する。日本ではオホーツク海沿岸・根室海峡を中心に見られるが北海道の太平洋岸でも稀に保護される。全個体数は24万頭で10万頭がベーリング海に14万頭がオホーツク海に生息する。

形態 編集

成獣は170cm・70-130kg。成獣オスには暗褐色から黒色の地に首、前肢、腰を取り巻く白い帯があり、これが馬具の鞍を掛けたように見えるので「クラカケアザラシ(鞍掛海豹)」の名前がついた。なおメスや成熟前のオスではこの帯は不鮮明である。

他のゴマフアザラシ属のアザラシに比べ頭蓋骨の幅が広く吻部が短い。新生児は白色の産毛に包まれて産まれてくる。

成熟と繁殖 編集

性成熟年齢はメスで2-4歳、オスで3-5歳。繁殖については不明な点も多いが、一夫多妻型と推定されている。4月上旬に流氷上で純白の産毛を持った一子を産み3-4週間授乳する。寿命は約20年であるが、31歳のメスが双子を妊娠していたケースの報告もある。

生態 編集

 
アラスカベーリング海のクラカケアザラシ

流氷期には大陸棚外縁付近の流氷野で過ごし流氷の移動とともに移動する。また単独性が強く、たいてい1-2頭で行動しており、ゴマフアザラシのように同じ氷の上に10-20頭が一緒に乗っているような事は無い。氷板の中央で休息すること、睡眠と覚醒の間隔が短いことがわかっており他のアザラシより警戒心が乏しいといわれている。

日本で見られるのは冬季の北海道東部の沿岸で、流氷上で出産と換毛を終えた後はオホーツク海の中心部で回遊生活を行っていると考えられている。

食物 編集

遊泳性魚類、イカ・オキアミなど。

人間との関係 編集

ゴマフアザラシと同様、旧ソ連が狩猟をしていたが、後に捕獲を制限した。現在では20世紀初頭の個体数にまで回復したとされている。日本でもかつて年1000頭ほど捕獲していたが毛皮の商品価値が下落し、捕獲は行われていない。

長期飼育が難しく、世界的にもほとんど飼育展示されていない。日本ではアクアマリンふくしまで2015年から2023年にかけて飼育していた他、おたる水族館でも飼育記録がある。[1][2][3]

脚注 編集

  1. ^ クラカケアザラシ「くらまる」死亡のお知らせ|アクアマリンふくしま』公益財団法人ふくしま海洋科学館(2023年7月25日)。2023年7月25日時点のアーカイブ。
  2. ^ クラカケアザラシのさくらが死亡しました。 | おたる水族館』株式会社小樽水族館公社(2015年2月23日)。2015年4月1日時点のアーカイブ。
  3. ^ クラカケアザラシの「ころすけ」が死亡しました。 | おたる水族館』株式会社小樽水族館公社(2016年3月13日)。2023年7月25日時点のアーカイブ。

参考文献 編集

  • Ronald M. Nowak " Walker's Mammals of the World(Walker's Mammals of the World)" Baltimore Johns Hopkins University Press(1999).ISBN 0801857899
  • 和田一雄・伊藤徹魯 『鰭脚類 アシカ・アザラシの自然史』東京 東京大学出版会 、1999年、284頁。ISBN 4130601733
  • 和田一雄編著 『海のけもの達の物語 オットセイ・トド・アザラシ・ラッコ』東京 成山堂書店、2004年、172頁。ISBN 4425981316
  • 斜里町立知床博物館編 『知床のほ乳類』斜里町 斜里町教育委員会、2000年ISBN 4894530813