サイゼリヤ

日本のイタリアンファミリーレストランチェーン

株式会社サイゼリヤ: SAIZERIYA CO., LTD.[3])は、埼玉県吉川市本社を置き、イタリアンファミリーレストラン「サイゼリヤ」を運営する日本の企業。1970年代の日本のファミリーレストラン草創期にチェーン展開を開始した企業である。

株式会社サイゼリヤ
SAIZERIYA CO., LTD.
本社・吉川工場
本社・吉川工場
種類 株式会社
機関設計 監査等委員会設置会社[1]
市場情報
東証プライム 7581
1999年7月6日上場
本社所在地 日本の旗 日本
342-0008
埼玉県吉川市旭2番地5
北緯35度55分39.5秒 東経139度50分31.6秒 / 北緯35.927639度 東経139.842111度 / 35.927639; 139.842111座標: 北緯35度55分39.5秒 東経139度50分31.6秒 / 北緯35.927639度 東経139.842111度 / 35.927639; 139.842111
設立 1973年昭和48年)5月1日
1968年(昭和43年)4月創業
業種 小売業
法人番号 8030001065552 ウィキデータを編集
事業内容 イタリアン料理店「サイゼリヤ」をチェーン展開するフードサービス業
代表者 代表取締役会長 正垣泰彦
代表取締役社長 松谷秀治
資本金 86億1200万円
(2022年8月31日現在)[2]
発行済株式総数 5227万2342株
(2022年8月31日現在)[2]
売上高 連結: 1442億7500万円
単独: 1011億2600万円
(2022年8月期)[2]
営業利益 連結: 4億2200万円
単独: △21億0100万円
(2022年8月期)[2]
経常利益 連結: 107億7400万円
単独: 87億8600万円
(2022年8月期)[2]
純利益 連結: 56億6000万円
単独: 46億0100万円
(2022年8月期)[2]
純資産 連結: 945億2300万円
単独: 670億0600万円
(2022年8月31日現在)[2]
総資産 連結: 1479億3000万円
単独: 1009億1100万円
(2022年8月31日現在)[2]
従業員数 連結: 3,939人
単独: 2,107人
(2022年8月31日現在)[2]
支店舗数 1,069店舗(日本)
(2022年8月31日現在)[2]
決算期 8月31日
会計監査人 有限責任監査法人トーマツ[2]
主要株主 正垣泰彦 30.79%
株式会社パペット 8.59%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.53%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.58%
サイゼリヤ従業員持株会 3.47%
株式会社日本カストディ銀行(信託E口) 1.31%
STATE STREET BANK WEST CLIENT - TREATY 505234 0.71%
株式会社千葉銀行 0.63%
BBH(LUX) FOR FIDELITY FUNDS PACIFIC FUND 0.60%
正垣恵子 0.42%
(自己保有株式を除く)
(2022年8月31日現在)[2]
主要子会社 #連結子会社参照
関係する人物 堀埜一成(元社長)
外部リンク www.saizeriya.co.jp ウィキデータを編集
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サイゼリヤ 所沢店 - 埼玉県所沢市

正しい表記は「サイゼリ」で、アルファベットでの綴りも「SAIZERIYA」だが、「サイゼリ」と書かれてしまうことがある[注釈 1]

概要 編集

特徴 編集

徹底したコストダウンを通じて低価格メニューを充実させ、近年苦戦が続く外食産業の中でも注目を集める[4][5]

主要な客層は若年層[6]で、「サイゼ」の愛称で親しまれている[7]

全店でのドリンクバー導入に加え、グラタンピザドリアなどのテイクアウト可能な料理を「お持ち帰りメニュー」として提供している。アルコール類では十数種のワインを備えて他のチェーン店との差別化を図っている。

運営会社 編集

株式会社サイゼリヤは2022年8月現在、イタリア料理「サイゼリヤ」を国内1,069店舗のほか、海外では474店舗を運営している[8]2003年(平成15年)6月に中国上海市にて100%子会社の上海薩莉亜餐飲有限公司を設立したのを皮切りに、上海、南京、蘇州、広州、北京といった中国国内のほか、香港、台湾、シンガポールに店舗を展開している。

中国の広州市に全額出資の現地法人「広州サイゼリヤ食品」を設立した。2013年1月稼働の食品工場を運営し、広州市内の38店舗にピザやホワイトソースを供給する。資本金は300万ドル(約2億4,600万円)。サイゼリヤはこれまで中国本土の店舗運営を担う現地法人3社を北京、上海、広州で設立している。

「日本を真に豊かな国にするお手伝いをする」を企業理念とし「スパゲッティラーメンと同じ価格で提供」することを念頭に、ポピュラープライスと呼ばれる価格相応かつ期待外れに終わらない価格帯とメニュー構成で「安くて美味しいもの」を提供することをポリシーとしている。このポリシーは進出した中国でも受け継がれ「中国の人たちにイタリアンを安くておいしく食べてもらいたい」という設立主旨を徹底して訴え、合弁事業ではなく独立資本(100%出資)として認可された、国外資本では数少ない受け入れ例となっている。中国ではスパゲッティが9(約144円)で提供されている。

生産・流通システムの構築を目指し、福島県白河市に100万坪のサイゼリヤ農場を持つ。またカミッサリー(食品加工・流通工場)を福島県・埼玉県神奈川県(店舗も併設)・兵庫県に持つ。このほか日本国外の拠点として、オーストラリアメルボルン郊外に40万坪の工場(サイゼリヤ オーストラリア Saizeriya Australia Pty. Ltd.)を設立し、2002年より生産を行っている。

歴史 編集

会長である創業者の正垣泰彦が、東京理科大学在学中にアルバイトをしていた渋谷食堂のコックに「おまえ、食べ物屋の素質がある。独立してやってみたらいい」と諭され創業を決意、父親に「レストランをやらせたい人がいるんだけど、いい所はない?」と相談し、自分が創業するのを伏せて、千葉県市川市八幡(本八幡)にあるフルーツパーラーを居抜きで購入してもらう。このフルーツパーラーの名前が「サイゼリヤ」だった。そして、1967年に洋食店に変えて「サイゼリヤ」を創業する。

しかし、その7か月後に酔っ払いのけんかがもとで火事で店が全焼し休業となる。休業期間中に渡欧して各国で飲食店を色々見て歩き、これからはイタリア料理の人気が出ると判断し、洋食店からイタリア料理専門店に転換して店を再開したが、客足はぱったりと途絶えてしまった。その原因は価格にあると考え、メニューを全て7割引で販売するという行動に打って出る。この判断が見事的中し「サイゼリヤ」は行列が出来るほどの大繁盛となった。「この方針ならば売れる」と確信し、サイゼリヤを低価格路線に乗せて現在の地位を確立していく[9]

1973年(昭和48年)5月、株式会社マリアーヌ商会を市川市八幡に設立。それまで営業していた「レストランサイゼリヤ」のチェーン展開を開始し、千葉県を中心に出店を続けた。1987年(昭和62年)、商号を株式会社マリアーノに、1992年(平成4年)には株式会社サイゼリヤに変更した。

2013年11月には国内1000店舗出店を達成(ファミリーレストラン業界ではガスト以来となる)。出店形式はビルイン型・ロードサイド・ピロティ型のほか、商業ビル・駅ビルテナント出店など、好立地なら物件を問わず、特に首都圏への出店を積極的に続けている。また、他社の競合店などが撤退した跡地に居抜き出店する際は看板などもそのまま利用するため、店舗の設計やロゴマークが描かれたポールサイン(看板)の形状は多彩である。

2005年(平成17年)8月24日からファーストフード店の「イート・ラン」を運営していたが、2010年に全ての店舗が閉店した。このほか、ファストカジュアル店の「スパQ&TacoQ」「サイゼリヤEXPRESS」の運営も行っていたが、こちらも2020年現在では現存しない。一方で2016年から新たにファーストフード店の「Spaghetti Mariano(スパゲッティ マリアーノ)」の運営を開始している。

2006年(平成18年)10月に発表されたサイゼリヤの既存店売上高が8年ぶりにプラスを計上した。2006年8月期の既存店売上高は前期と比べて3%増(客数が2.1%増、客単価も0.8%増)となった。既存店の業績低迷について従来は新規出店による売上げの増加でカバーしてきたが、メニューの品質向上やサービス向上などの成果が各店の固定客と売上増加に繋がったとされる[10]

サイゼリヤ1号店教育記念館 編集

 
サイゼリヤ1号店教育記念館にある閉店当時の看板

市川市八幡のサイゼリヤ1号店は2000年2月に閉店したが、千葉県中小企業家同友会市川浦安支部の協力もあり、現在はサイゼリヤ1号店教育記念館として保存されている。事前に同友会に連絡すれば記念館の見学ができる(土日に関しては連絡なしでも見学できる場合あり。営利目的での使用は不可)[11][12]

沿革 編集

 
定番メニューの一つであるミラノ風ドリア
  • 1968年昭和43年)4月 - 正垣泰彦が「サイゼリヤ」の店舗を譲り受け、個人営業を開始。
  • 1973年(昭和48年)5月 - 個人営業から法人化。株式会社マリアーヌ商会を設立。
  • 1977年(昭和52年)12月 - 多店舗化を開始。
  • 1981年(昭和56年)4月 - 初のショッピングセンター内店舗(ららぐるめ店、ららぽーと内)を出店。
  • 1983年(昭和58年)5月 - 千葉県市川市市川一丁目13番32号に本社を移転。
  • 1987年(昭和62年)3月 - 初の駅ビル内店舗(シャポー本八幡店)を出店。
  • 1987年(昭和62年)4月 - 商号を株式会社マリアーノに変更。
  • 1987年(昭和62年)10月 - オーダーエントリーシステムを導入。
  • 1989年平成元年)9月 - 初の郊外型ロードサイド型店舗(柏水戸街道店)を出店。
  • 1991年(平成3年)10月 - 千葉県船橋市浜町二丁目1番1号(ららぽーと三井ビル)に本社を移転。
  • 1992年(平成4年)6月 - 50号店を出店(新札幌駅ビル店)。
  • 1992年(平成4年)9月 - 商号を株式会社サイゼリヤに変更。
  • 1994年(平成6年)7月 - 100号店を出店(江の島店)。
  • 1997年(平成9年)10月 - 埼玉県吉川市旭2番地5に吉川工場を建設。本社を同地に移転。
  • 1998年(平成10年)4月23日 - 株式を店頭登録市場(現・ジャスダック)に店頭公開[13]
  • 1999年(平成11年)7月 - 東京証券取引所2部に上場
  • 2000年(平成12年)8月 - 東京証券取引所1部に指定替え。
  • 2001年(平成13年)10月 - 500号店を出店(峡南店)。
  • 2003年(平成15年)12月 - 中国1号店を上海にオープン(同社における初の日本国外進出)。
  • 2005年(平成17年)8月 - 新業態のファストフード店(ハンバーガー)「イート・ラン」を出店(1号店・十条店)。
  • 2005年(平成17年)11月 - 新業態のファストカジュアル店「スパQ&TacoQ」を出店(1号店・ビバモール埼玉大井店)。
  • 2007年(平成19年)4月 - 新業態のファストカジュアル店(低価格スパゲッティ)「サイゼリヤEXPRESS」を出店(1号店・ぐりーんうぉーく多摩店)。
  • 2007年(平成19年)12月 - 中国・広州市に出店。
  • 2009年(平成21年)2月 - デリバティブ取引の損失により会社設立以来初の税引き後赤字に転落する見通しとなったため、社長の正垣が退任を発表。
  • 2010年(平成22年)3月 - 九州1号店のトリアス店(福岡県糟屋郡久山町)を出店、九州地区の店舗展開を開始。
  • 2012年(平成24年)6月 - 北海道2号店の札幌駅北口店をオープンし、道内の多店舗展開を開始。
  • 2012年(平成24年)6月 - 1000号店を出店(フォレオ大阪ドームシティ店)。
  • 2013年(平成25年)11月 - 国内1000店舗を達成(イトーヨーカドー鎌ヶ谷店)。
  • 2016年(平成28年)7月 - 新業態のファストフード店(パスタ)「Spaghetti Mariano(スパゲッティ マリアーノ)」を出店(1号店・日本橋茅場町店)。
  • 2019年令和元年)6月 - 9月までに全店全席で禁煙化予定をしていたが、前倒しして6月に全席禁煙化[14][15]
  • 2020年(令和2年)7月1日 - グランドメニューを改定、端数が出ない価格に変更するとともに、キャッシュレス決済を導入[16][17][18]
  • 2022年(令和4年)12月23日 - 四国1号店となるイオンモール綾川店(香川県綾歌郡綾川町)を出店[19][20]

店舗 編集

 
店舗と駐輪場(千葉鵜の森店)
 
店舗と駐車場(千葉鵜の森店)

2012年に店舗で利用する粉チーズ(ペコリーノ)が変更された。2017年に新たな種類の粉チーズ(グランモラビア)が追加された。[要出典]サイゼリヤ社が製造する「唐辛子フレーク」を用意している店舗もある。

出店地域 編集

三大都市圏を中心に展開している。2023年(令和5年)5月末現在、未出店の都道府県は徳島県愛媛県高知県長崎県大分県宮崎県鹿児島県及び沖縄県[21]

出店の遅れていた九州山口地方も2010年(平成22年)の福岡県出店を皮切りに、山口県には2013年(平成25年)11月に、佐賀県には2017年(平成29年)12月に、熊本県にも2018年(平成30年)11月にそれぞれ初出店している。北海道については1992年(平成4年)に新札幌駅ビル内に初出店して以来、全く出店していないため1店舗しかなかったが、2012年(平成24年)6月7日に約20年ぶりとなる2号店として札幌駅北口店をオープンし、本格的な店舗展開を開始した(2022年7月現在、道央地方と旭川市のみの出店)。四国地方については2022年(令和4年)12月23日に四国初となる店舗を香川県内に初出店した[19][20]東北地方については2023年(令和5年)5月31日に最後の未出店地域だった青森県にも初出店を果たした[1]。同店の出店により、サイゼリヤは本州の全ての都府県に出店することとなった。

店舗展開については一定の領域に集中して開店する「地域ドミナント」方式を基本とする。これは特定の鉄道路線幹線道路に沿って順次新店舗を開店する「路線ドミナント」とは異なり、一定の面積における外食企業としての優位性確立を企図したものである。一例として2016年11月現在、山手線では池袋駅の東から日暮里駅の西までの間には全く店舗が存在しなかった(その後2021年3月に巣鴨店が新規開店した)。

店舗内装 編集

店舗内装の側面にはルネサンス期の絵画が飾られるほか、天井などにイタリア・ルネサンスを連想される絵が描かれている。低価格メニューを主力にしているが、内装・調度品などを工夫し、利用客が食事を楽しめる空間を提供している。

内装に用いられるルネサンス絵画は以下のもの。

支払方法 編集

以前は、店舗の運転資金を確保する観点からクレジットカード電子マネージェフグルメカードなどといったキャッシュレス決済の導入が遅れており、大半の店では基本的に現金以外の支払い方法は不可能であった[16]。 現在では、多くの店舗でクレジットカード交通系電子マネーの使用が可能となっている。

  • 大阪南港ATC店では電子マネーiD、PiTaPaが使用可能。
  • イオン系のSCにテナントとして入居している店舗ではWAON・JR系IC乗車券(及び相互利用可能なIC乗車券)等が使用可能。イオンモール甲府昭和イオンタウン吉川美南、武蔵小金井、アトレ秋葉原2、ビッグボックス高田馬場など、上述の電子マネーに加えてクレジットカードも使える店舗もある。イトーヨーカドー船橋店の場合は電子マネーは使えないがクレジットカードは使える。

2019年7月から東京都内の6店舗で、現金払いでのお釣りを2%増額したAmazonギフト券で受け取れるサービスを実施している。飲食代金の合計金額が消費税込み200円以上でお釣り金額が9,800円以下、個別会計時は対象外などの条件があるほか、Amazonギフト券を第三者に転売することは禁じられている[22]

2020年6月、新型コロナウイルス感染症流行による接触感染防止、会計時間短縮などの観点から、同年7月1日より釣り銭の出にくい価格設定(例:299円→300円 、169円→150円など)に変更[17]、併せてキャッシュレス決済を順次導入することを発表[16][18]。同年8月からはキャッシュレス決済の導入店を広げることを発表した[16]

株主優待として100株以上保有株主に「お食事券」が提供され、1,000円分の金券として利用できた(釣り銭は出ない)。2013年からオリーブオイルやワインなどのイタリア食材の提供に変更されている[要出典]

連結子会社 編集

  • SAIZERIYA AUSTRALIA PTY.LTD. - 食材製造。
  • 上海薩莉亜餐飲有限公司 - 上海市内での店舗展開。
  • 広州薩莉亜餐飲有限公司
  • 台灣薩莉亞餐飲股份有限公司(中華民国
  • 北京薩莉亜餐飲管理有限公司
  • HONG KONG SAIZERIYA CO.LIMITED(香港)
  • SINGAPORE SAIZERIYA PTE.LTD.(シンガポール)
過去の関連会社
  • 株式会社アダツアーズ・ジャパン - 旅行業、食品輸入販売。元非連結子会社。2017年にグループから独立[23]

メディア出演 編集

2007年(平成19年)3月24日に放送された『惑星ジャパ〜ン!』(日本テレビ[注釈 2])の1コーナーで、「サイゼリヤはどこまで本場イタリアンか?」と題したコーナーが放送された。これは5人のイタリア人が実際に海浜幕張住友ビル店を訪れ、「果たしてどのメニューがもっとも本場の味に近いのか?」を検証したもの。結果、もっとも本場の味に近いとしてイタリア人達が答えたメニューは、1位:プロシュート・2位:リブステーキ・3位:フォッカチオだった。このほか、ミラノ風ドリア・粗挽きグリルソーセージ・モッツァレラトマトも評価が高かった。ちなみに、本場の味にもっとも近くないメニューとされたものは、ハヤシ&ターメリックライスであった。

2008年(平成20年)7月18日に放送された『ランキンの楽園』(毎日放送)では、ほぼ全メニューを食べてランキングを行った。これらの放送で採り上げられたランキングは、サイゼリヤ公式サイト内の「サイゼリヤのおいしい使い方」で同社からの御礼コメントとともに紹介されている。

2008年9月14日放送の『がっちりマンデー!!』(TBS)には当時の社長である正垣泰彦が出演した。

不祥事 編集

メラミン検出問題 編集

2008年(平成20年)10月19日、サイゼリヤは自主検査により、中国のメーカーに生産委託していた冷凍ピザ生地の一部から微量(一日摂取許容量の60分の1、健康への影響なし)のメラミンを検出したため、厚生労働省に報告したと発表した[24][25]。同年9月下旬に自主検査を始めたものの、他社でメラミン混入が相次いだこともあり、同年10月3日より使用するピザ生地を切り替え、同月16日に混入が発覚した[26]

同月21日、「対象のピザを食べた可能性のある客すべてに代金を返還する」と発表(返還期限は同月28日まで)したほか、東日本の542店舗でピザの販売を中止した。返還はレシートを持参しない場合も申し出があれば原則として返金に応じるとしたが、最終的な返還総額は予想の8千万円を大きく下回る1千万円程度であった[27]。また、代金返還の過程で一部の客が飲食したことを偽り金を騙し取るという事件も発生した[28]。なお、返還期限を過ぎた後も、レシートを持参した場合は返金に応じるとしている[29]

同年11月5日、中止していたピザの販売を一部店舗で再開した[30]が、生地は国産のものに切り替えている[31]

デリバティブ巨額損失事件 編集

2008年(平成20年)、BNPパリバ銀行と行った豪ドルの通貨スワップ取引で140億円の評価損を抱えた。11月21日にこの事実を発表[32]、この取引がオーストラリア産食材の輸入に関する為替リスクを回避する目的だったものと釈明した。2009年(平成21年)2月10日にはこれを理由として創業者の正垣泰彦が社長退任を発表した。

結果、2009年(平成21年)8月期の通期連結決算は、売上高が前年同期比4.0%増、営業利益が同22.2%増にもかかわらず、経常損益は69億円の赤字、最終損益は48億円の赤字を記録した[33]

非正規従業員の自殺 編集

サイゼリヤの関東地方の店舗で、正社員をめざして働いていた定時社員の20代女性が自殺したのは、上司の男性副店長(当時、既婚者)から望まぬ性交渉を強いられるなどのセクハラに加え、罵倒や無視といったパワハラ、自宅に上がり込まれるストーカー行為等を繰り返し受けたことが原因として、2015年7月21日に遺族が同社と副店長、会長・社長を含む同社役員6人を相手取り、合計約9,800万円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こした[34][35][36][37][38][39]

副店長は女性との性的関係を認めたため、権力関係を利用したセクハラであったかどうかが争点となった[40]。遺族は女性のパソコンに残された日記の内容を根拠としてセクハラがあったと主張し[38][39]、会社のセクハラ対策も不十分だったと指摘した[40]

裁判所からの和解案提示を受け、サイゼリヤ側は「訴訟の提起と報道により受けた社会的・経済的信用低下の回復のため訴訟を継続してきたが、当社の要望がほぼ採用された和解条項となった」として和解に応じる姿勢を示し[41]、同社の弔慰金制度で定められた正社員と準社員の弔慰金の差額を支払うことで合意[41]2018年3月15日に会社と遺族の間で和解が成立した[41][40]。和解内容にはそのほか、会社としてセクハラ防止に一層取り組むこと[41]、和解により役員への訴訟と労災不支給認定への不服申立は取り下げることなどが盛り込まれた[41]。また元副店長も別途弔慰金を支払うこととなった[40]

店長の他店舗窃盗事件 編集

2021年2月26日新型コロナウイルス感染拡大の影響(緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置)により時短営業となり、給料が減額したサイゼリヤ昭島昭和店(東京都昭島市)の店長が、隣接する八王子市のサイゼリヤ八王子楢原店に侵入して金庫から現金約35万円を盗み、窃盗建造物侵入容疑で逮捕されるという事件が発生した[42][43][44]

店長は同年1月に応援で八王子楢原店に勤務した際に店舗と金庫室の鍵を盗み、約1週間後の1月23日未明に同店に侵入し現金を盗んだという[42][43][44]。現場付近に設置されていた防犯カメラの映像により容疑者が浮上した[42]

店長はパチンコ好きで多額の借金があり[43]警視庁の調べに対し「時短営業で給料が6万円ほど減り、ギャンブルなど浪費癖が激しく給料だけでは足りなかった。ローンの返済期限が1月末だったので盗んだ」などと容疑を認めている[42][43]

カエル混入問題 編集

2023年11月2日、産経新聞はサイゼリヤが運営している自社工場にて製造したサラダにカエルが混入している事案が計3件あったと報じた[45]。翌3日、同社はこの事実を認め、神奈川県内の工場で製造し、東京都と神奈川県の3店舗で提供したサラダにカエルが混入していたとして、公式サイトにて謝罪した[46][47][48]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ネットメディアなどでも起こっている。参考:デリバティブ契約を解除、社長は減俸 サイゼリア J-CASTニュース、2008年12月11日付、2009年5月29日閲覧。
  2. ^ 放映時間は、同局のサタデーバリューフィーバー枠。

出典 編集

  1. ^ 会社概要 - 株式会社サイゼリヤ
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 株式会社サイゼリヤ『第50期(2021年9月1日 - 2022年8月31日)有価証券報告書』(レポート)2022年11月29日。 
  3. ^ 株式会社サイゼリヤ 定款 第1章第1条
  4. ^ サイゼリヤ: 低価格路線の強み、創業来36期連続で売上高最高…08年8月期 - フジサンケイ ビジネスアイ2008年10月8日付
  5. ^ “ファミレス苦戦でもサイゼリヤ一人勝ち 圧倒的コスト競争力の秘密”. SankeiBiz (産経デジタル). (2012年8月11日). オリジナルの2012年8月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120813175109/http://www.sankeibiz.jp/business/news/120811/bsg1208111316006-n1.htm 2019年4月22日閲覧。 
  6. ^ 中村正人上海のサイゼリヤに見る、ファミレスが「ハレ」の場だったあの日[リンク切れ] - 日経ビジネスオンライン 2008年8月5日付
  7. ^ “なぜか中国産…サイゼリヤのピザからメラミン”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2008年10月21日). オリジナルの2008年10月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20081022071937/www.sponichi.co.jp/society/news/2008/10/21/01.html 2019年4月22日閲覧。 
  8. ^ 会社概要|企業情報|サイゼリヤ”. www.saizeriya.co.jp. 2023年8月4日閲覧。
  9. ^ よもやの不祥事で断行した「顧客の信頼」回復策 -サイゼリヤ(プレジデント、2011年5月30日号)2013年8月9日閲覧
  10. ^ 「サイゼリヤ、1000店へ足場固め‐既存店、前期8年ぶり増収」(2006年10月25日、日本流通新聞朝刊)
  11. ^ 1967年開業「サイゼリヤ1号店」のいま 閉店後はファンが支え「教育記念館」に”. J-CASTニュース (2019年5月30日). 2019年7月6日閲覧。
  12. ^ サイゼリヤ1号店で20年モノのサイゼリヤワインを飲む”. ねとらぼ. ITmedia (2019年6月29日作成). 2019年7月6日閲覧。
  13. ^ “外食産業年表(平成10年1~12月)”. Quarterly外食産業研究 69号 第17巻(平成10年度)第4号 (外食産業総合調査研究センター) (1998年5月).pp85
  14. ^ “サイゼリヤの「全面禁煙化」始動 7月から約300店舗で”. ITmedia ビジネスオンライン (アイティメディア). (2018年6月20日). https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1806/20/news119.html 2019年4月22日閲覧。 
  15. ^ 全席禁煙のとりくみについて|サイゼリヤ”. 株式会社サイゼリヤおよび関係会社. 2019年11月1日閲覧。
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関連項目 編集

外部リンク 編集