サキシマスオウノキ(先島蘇芳木、学名: Heritiera littoralis)は、アオイ科[注 1]サキシマスオウノキ属常緑高木。日本では特によく板根を発達させる木として有名である。

サキシマスオウノキ
サキシマスオウノキ
西表島仲間川上流・2007年8月、樹齢約400年[1]1982年に発見された。)
保全状況評価[2]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ群 Malvidae / rosid II
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Sterculioideae
: サキシマスオウノキ属 Heritiera
: サキシマスオウノキ
H. littoralis
学名
Heritiera littoralis Dryand. (1789)[3]
和名
サキシマスオウノキ(先島蘇芳木)
英名
looking-glass tree
silver leaved mangrove

名称 編集

和名の「サキシマスオウノキ」(先島蘇芳木) の「スオウ」は、染料として利用されるスオウ(蘇芳木、マメ科の落葉小高木)に由来する。また、「サキシマ」は先島諸島宮古列島八重山列島の総称)のことである。

別名、サキシマスオウ、サキシマスオウギ、ハマグルミ、スオウギともよばれる[3]中国名は銀葉樹[3]

諸言語における呼称 編集

アジア地域のマレーシアにおいて

アフリカのケニアタンザニアにおいて

分布・生育地 編集

熱帯アジア台湾ポリネシア、熱帯アフリカに分布[6]マングローブ林のある湿地内陸側に多く生育し、まれに海岸に生える[6]

日本での生育地は、奄美大島沖縄島石垣島西表島が知られる。このうち石垣島(沖縄県石垣市)の桴海於茂登岳山麓の「ンタナーラのサキシマスオウノキ群落」[7]、及び、西表島(沖縄県八重山郡竹富町古見の「古見のサキシマスオウノキ群落」[8]は国の天然記念物に指定されている[6]。また、西表島の仲間川上流には樹齢400年と推定されるサキシマスオウノキの巨木があり、森の巨人たち百選に選定されている[1]

形態・生態 編集

常緑性高木で5 - 25メートル (m) になる[6]。地中より突き出した板根とよばれる板状の根が特徴[6]。板根は四方に広がり、独特の樹形をつくり、老木では板根の高さが3 mに達するものもある[6]。葉は長さ10 - 20センチメートル (cm) で、長楕円状卵形から楕円状卵形。先端はとがっている場合も丸まる場合もあるが、基部は円脚(丸っこい形)をしている。葉質は硬く、表は緑色でつやがあって無毛、裏面は銀色や多少色づく円形の鱗状の毛が密生する。

日本における開花期は5 - 7月[6]。円錐花序は7 - 15 cmになり、多数の花をつける。茶褐色の果実は海水に浮き、海流で運ばれる[6]

利用 編集

 
サキシマスオウノキの舵(沖縄県竹富島喜宝院蒐集館蔵)

沖縄県では、かつてこの板根を切り出してそのままサバニ)のとして使用した[1]。樹皮のタンニン染料[4]用として利用される。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 新しい植物分類体系であるAPG体系ではアオイ科であるが、古い分類である新エングラー体系クロンキスト体系ではアオギリ科とされた[3]

出典 編集

  1. ^ a b c 沖縄の名木百選 仲間川のサキシマスオウノキ”. おきなわ 緑と花のひろば. 沖縄県環境部環境再生課. 2018年3月21日閲覧。
  2. ^ Duke, N., Kathiresan, K., Salmo III, S.G., Fernando, E.S., Peras, J.R., Sukardjo, S. & Miyagi, T. (2010). Heritiera littoralis. The IUCN Red List of Threatened Species 2010: e.T178852A7627492. doi:10.2305/IUCN.UK.2010-2.RLTS.T178852A7627492.en. Downloaded on 13 April 2020.
  3. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Heritiera littoralis Dryand. サキシマスオウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月24日閲覧。
  4. ^ a b c 熱帯植物研究会 編 編『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、304頁。ISBN 4-924395-03-X 
  5. ^ a b Dharani, Najma (2011). Field Guide to Common Trees & Shrubs of East Africa. Struik Nature. https://books.google.co.jp/books?id=owhbDwAAQBAJ&pg=PT844&dq=mkokoshi&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjD_Lu2lOXoAhWEdXAKHR9yDnsQ6AEIOzAC#v=onepage&q=mkokoshi&f=false 
  6. ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 217.
  7. ^ ンタナーラのサキシマスオウノキ群落 - 文化遺産オンライン文化庁
  8. ^ 古見のサキシマスオウノキ群落 - 文化遺産オンライン文化庁

参考文献 編集

  • 初島住彦『琉球植物誌(追加・訂正版)』,(1975),沖縄生物教育研究会

関連項目 編集