サツキヒナノウスツボ

ゴマノハグサ科の種

サツキヒナノウスツボ(五月雛の臼壺、学名:Scrophularia musashiensis )は、ゴマノハグサ科ゴマノハグサ属多年草[2][3][4]

サツキヒナノウスツボ
栃木県南部 2017年5月中旬
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: シソ目 Lamiales
: ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae
: ゴマノハグサ属 Scrophularia
: サツキヒナノウスツボ
S. musashiensis
学名
Scrophularia musashiensis Bonati[1]
和名
サツキヒナノウスツボ
(五月雛の臼壺)[2]

特徴 編集

地下茎はやや塊状に肥大し、細いがある。はやや軟弱で毛は無く、四角形であるが他の同属の種ほど稜はいちじるしくなく、高さは40-80cmになる。 は薄く、対生して、狭いが翼のある葉柄があり、葉身は卵状長楕円形または卵形で、長さ7-15cm、幅3-8cmになる。葉の先端はとがり、基部は円いかくさび形になり、縁にはとがった鋸歯がある[2][3][4]

花期はふつう4月末-5月。茎の先に貧弱な円錐花序をつけ、葉腋にも1-3個のをつける。葉腋から出る花序は基部の葉より短く、茎先の花序は葉より長い。花柄は細長く腺毛が散生する。は鐘形で、萼裂片は5つに裂け、緑色で裂片は卵形で先は円い。花冠は長さ9-12mmと大きく、壺形で先は唇形になり、上唇はやや紫褐色が濃く2裂し、下唇の色はやや薄く3裂し、下唇の中央裂片は反り返る。雄蕊は4個あって花冠下唇側につき、横に広い楕円形の葯の縁が裂けて花粉を出す。仮雄蕊が1個ある。雌蕊は1個で花柱は花外に伸び出す。果実は、長さ8-12mmの上部がやや細くなる卵状球形の蒴果になり、胞間裂開する。種子は楕円形でごく小さい[2][3][4]

雌蕊先熟 編集

雌蕊先熟で、花が開くと花柱が花の外に伸び、受粉して下垂する。この時、自花の葯から花粉は出ていない。その後雄蕊が伸びて葯の縁が裂け、花粉を出す。これによって同一の花からの受粉が避けられる[4][5]

分布と生育環境 編集

日本固有種[6]。本州の関東地方(栃木県埼玉県東京都)から滋賀県福井県と飛び、離れて分布し、山地のやや日陰の林中に生育する[4]

名前の由来 編集

和名のサツキヒナノウスツボは「五月雛の臼壺」の意で、小さな壺形の花をに見立てたヒナノウスツボに似て、花が5月に咲くことからいう[4]同属に、似た花をつけるゴマノハグサオオヒナノウスツボエゾヒナノウスツボハマヒナノウスツボなどがある。

また、種小名 musashiensis は、「武蔵国(現在の埼玉県、東京都、神奈川県の一部)の」のこと[7]

下位分類 編集

  • イナサツキヒナノウスツボ Scrophularia musashiensis Bonati var. ina-vallicola Hid.Takah.[8] - 葉は卵形。花序が葉腋から出る腋生花序のみをつけ、花序は葉身より短い。上部の葉腋から出るものはしばしば小型の閉鎖花となる。花期はふつう5月中旬-6月。本州の中央アルプスの長野県伊那谷側の標高1100-1800mに分布し、渓谷水辺に生育する[4][6]

ギャラリー 編集

脚注 編集

  1. ^ サツキヒナノウスツボ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.413
  3. ^ a b c 『山溪カラー名鑑 日本の野草』p.171
  4. ^ a b c d e f g 『改訂新版 日本の野生植物 5』p.94
  5. ^ 『写真で見る植物用語』p.110
  6. ^ a b 『日本の固有植物』p.142
  7. ^ 『新牧野日本植物圖鑑』p.1337
  8. ^ イナサツキヒナノウスツボ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献 編集