サトイモ科(サトイモか、Araceae)は、オモダカ目を構成する科の一つである。温暖で湿潤な環境を好み、湿地や沼地に生育するものも多い。花軸に密集した小さな花(肉穂花序)と、それを囲むように発達した(仏炎苞)が特徴。

サトイモ科
アンスリウム(Anthurium andraeanum
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae[1]
学名
Araceae Juss.[2]
タイプ属
Arum L.[2]
シノニム

Lemnaceae Martinov [2]

  • 本文参照

サトイモコンニャクなど、食品として重要なものも多いが、美しい葉や花を観賞するために栽培される種も多い。

新エングラー体系及びクロンキスト体系ではサトイモ目に分類されていた[3]

特徴 編集

サトイモ科の植物は、に大きな特徴がある。花そのものは小さく、花びらがあっても目立たず、花びらがない場合もある。雄花と雌花に分かれているものもあり、いずれにしても、個々の花は小さく、目立たない。花は肉質の太い柄の上に一面に並んでつき、肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる。花は穂全体に着くものが多いが、穂の先端に花のない部分(付属体)があって、さまざまな形になるものもある。

穂の根元からは苞が出る。サトイモ科の植物では、多くの場合、苞が単純な葉の形ではなく、花の穂を包むような形になって、特別な色を持ち、目立つものが多い。言わば、花びらの役割を担っている。このような苞を仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ぶ。仏炎苞の袋状の部分を筒部、筒部の上部で長い舌のように伸びる部分を舷部と呼ぶ。

このような構造を取る理由としては、花に寄ってくる昆虫を内部に閉じ込めることで、滞在時間を長くして受粉の確率を高めていると考えられる。

なお、東南アジア産のコンニャクの一種、ショクダイオオコンニャクAmorphophallus titanium)は、花序の先端までが3mにも達し、花序としては世界で一番背が高いと言われる。

サトイモ科の植物は、単子葉植物としては例外的に、葉の幅が広く、切れ込みがあったり、複葉になったりと、複雑な形のものがあり、葉脈も網状になったものが多い。どちらかと言えば、湿ったところに生育するものが多く、湿地性や半水性のものもある。日本では、地下に芋状の地下茎を持つものがよく見られるが、亜熱帯-熱帯では大型のつる植物になり、根を伸ばして樹木の幹に張りつき、よじ登るものがある。

なお、ウキクサ亜科ボタンウキクサは浮遊性の水草である。

利用 編集

サトイモ科の植物には、サトイモ(里芋=タロイモ)をはじめ、主食として用いられるものがある。特に東南アジアから太平洋にかけて、芋食文化が広がり、日本はその最北端に当たる。また、コンニャクも加工して食品となる。

また、熱帯地方のものには、葉の色や形の面白いものがあり、ポトスカラジューム(ハイモ)など様々な種が観葉植物として利用される。また水生・半水生のアヌビアスクリプトコリネブセファランドラなどもアクアリウムにおいて観賞の対象とされる。

日本では、ミズバショウザゼンソウは北日本の季節の花として有名で、ミズバショウは「夏の思い出」などの歌にも出てくる。テンナンショウ類にも観賞価値の高いものがあり、その一部に野生では絶滅に瀕しているものがある。

一方、テンナンショウ属を始め、クワズイモザゼンソウなど多くのサトイモ科の植物はシュウ酸カルシウムなどのシュウ酸塩を根茎などに含んでおり、観葉植物も含めて有毒植物である。[4][5]

分類 編集

ショウブ属Acorus)は葉が細長く平行脈で典型的な仏炎苞もないので、クロンキスト体系ではショウブ科(Acoraceae)、APG IIでは更にショウブ目(Acorales)として分ける。ウキクサ亜科はかつてウキクサ科として分離されていた。

8亜科が属する[6]

Gymnostachydoideae ギムノスタキス亜科 編集

1種のみ。オーストラリア東部。

Orontioideae ミズバショウ亜科 編集

3属6種。東アジアと北米。

Lemnoideae ウキクサ亜科 編集

ウキクサ亜科には5属37種が属する。

Pothoideae アンスリウム亜科 編集

4属900種。

Monsteroideae ホウライショウ亜科 編集

12属360種。

Lasioideae 編集

 
Cyrtospermaの一種であるCyrtosperma johnstonii

10属58種。

Zamioculcadoideae 編集

3属21種。アフリカ。

Aroideae サトイモ亜科 編集

70属2300種。

系統 編集

次のような系統樹が得られている[6]

ギムノスタキス亜科

ミズバショウ亜科

ウキクサ亜科

ホウライショウ亜科

アンスリウム亜科

Lasioideae

Zamioculcadoideae

サトイモ亜科


脚注 編集

  1. ^ 以上は『維管束植物分類表 = Syllabus of the Vascular Plants of Japan』(初版)北隆館、2013年4月、47頁。ISBN 978-4-8326-0975-4 
  2. ^ a b c Araceae
  3. ^ 『維管束植物分類表 = Syllabus of the Vascular Plants of Japan』(初版)北隆館、2013年4月、140頁。ISBN 978-4-8326-0975-4 
  4. ^ 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:クワズイモ”. 厚生労働省. 2022年11月7日閲覧。
  5. ^ 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ヒメザゼンソウ”. 厚生労働省. 2022年11月7日閲覧。
  6. ^ a b Araceae

外部リンク 編集