シェイク・ユア・マネーメイカー

シェイク・ユア・マネーメイカー (Shake Your Moneymaker)」ないし「シェイク・ユア・マネー・メイカー (Shake Your Money Maker)」は、エルモア・ジェームス1961年に吹き込み、ブルーススタンダード曲となった楽曲[2]。先行した様々な曲を踏まえて作られたこの曲は、ブルースや多分野のアーティストたちによって様々に解釈され、録音されてきた。「シェイク・ユア・マネーメイカー」は、ロックの殿堂が選んだ「ロックンロールを形成した500曲 (500 Songs that Shaped Rock and Roll)」にも選ばれている[3]

シェイク・ユア・マネーメイカー
エルモア・ジェームスシングル
A面 "Look on Yonder Wall"
リリース
規格 7インチシングル
録音
ジャンル ブルース
時間
レーベル Fire (Cat. no. 504)
作詞・作曲 エルモア・ジェームス
プロデュース ボビー・ロビンソン (Bobby Robinson)
エルモア・ジェームス シングル 年表
"Done Somebody Wrong"/ "Fine Little Mama"
(1960年)
"Shake Your Moneymaker"
(1961年)
"Stranger Blues"/ "Anna Lee"
(1962年)
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先行した楽曲 編集

1958年、シカゴのブルース歌手でハーモニカ奏者のシェイキー・ジェイク・ハリス (Shakey Jake Harris) が、マジック・サムのギター、ウィリー・ディクソンのベースを含むバンドとともに、「ロール・ユア・マネーメイカー (Roll Your Moneymaker)」という曲を吹き込んだ (Artistic 1502)。この曲は、12小節形式のブルースで、ブレイクが数カ所入り、「ロール・ユア・マネーメイカー」というコーラス(繰り返し歌われる部分)が入っていた。エルモア・ジェームスの伝記のひとつによると、「シカゴのブルース界に伝えられた話では、ドラマーで歌も歌ったジェイムズ・バニスター (James Bannister)がこの「ロール・ユア・マネーメイカー」という曲の作者だといわれているが、彼自身はこの曲を吹き込むことはなかった(彼は、ジェームスとレコーディングもしているJ・T・ブラウン (J. T. Brown))や同時期にシカゴで活躍したマジック・サムと共演経験があった)[4]。また、ジェームス盤の「シェイク・ユア・マネーメイカー」のリズム・ギターの演奏は、ミシシッピ・ジョン・ハート1928年に吹き込んだ「Got the Blues Can't Be Satisfied」 (OKeh 8724) からヒントを得たものだとする指摘もある[4]

一部には、「シェイク・ユア・マネーメイカー」は、チャーリー・パットン1929年に吹き込んだ「Shake It and Break It」(Paramount 12869) や、ブッカ・ホワイト1937年に吹き込んだ「シェイク・エム・オン・ダウン(Vocalion 03711) のバリエーションだとする見方もある[2]。いずれにせよ、この曲は長くエルモア・ジェームスの「オリジナル」と見なされてきている[5]

エルモア・ジェームスの録音 編集

「シェイク・ユア・マネーメイカー」は、テンポが早い、12小節のブルース形式の曲で、スライドギターが特徴となっている。ジェームスはこの曲を、1961年の夏に、ルイジアナ州ニューオーリンズコズィモ・マタッサのスタジオ(コズィモ・レコーディング・スタジオ)で、「キャンドルライト (candlelight)」と称される労働組合員以外のミュージシャンを使ったセッションによって、吹き込みを行なった[4]。ドラマーでブルースハープ奏者のサム・マイヤーズ (Sam Myers) によれば、ジェームスは労働組合と問題を引き起こしており、録音セッションは夜になってから、光を落として、近所の住民の注意を引かないように行なわれたという[4]。この録音のためにジェームスが集めたメンバーは、ジョニー・"ビッグ・ムース"・ウォーカー (Johnny "Big Moose" Walker)(ピアノ)、サミー・リー・ブリー (Sammy Lee Bully) (ベース)、キング・モーズ・テイラー (King Mose Taylor)(ドラムス)といった面々だった。吹き込みは、1回目は失敗したものの、2回目のテイクがシングル盤のマスターとして使用された。このセッションでは、計6曲の録音が行なわれ[1]、この曲と「Look on Yonder Wall」がシングル盤としてリリースされた[6]。(残りについては、いずれも後年に編集盤LP、CDなどでリリースとなっている[1]。)

この曲はジェームスにとって最も広く知られた曲のひとつとなり、ダンス曲としても人気が出た。活動家で作家のジェームズ・メレディスは、エルモア・ジェームスがミシシッピ州の「Mr. P's という粗末なジューク・ジョイントjuke joint:安酒場)で」この曲を演奏し、「群衆を熱狂させる」様子を実見したことを書き記している[7]。また、「30分かそれ以上、休むことなくバンドがこの曲を演奏することもよくあり、演奏が終わると集まっていた群衆が、もっとやってくれと懇願することもしばしばだった」という[4]

他のバージョン 編集

 
ポール・バターフィールド(1979年)

ポール・バターフィールドは、1965年のアルバム『The Paul Butterfield Blues Band』にこの曲を収録している。この盤の演奏は、ドアーズのギタリストだったロビー・クリーガーに、彼らの楽曲「ブレイク・オン・スルー」のリフのアイデアを与えた[8]

1968年には、フリートウッド・マックのデビュー・アルバム『フリートウッド・マック』でこの曲が取り上げられている。

ジョージ・サラグッドは、1988年のアルバム『Born to Be Bad』に、この曲を収録した。

1999年には、ブラック・クロウズが、ジミー・ペイジと共演したライブ演奏を録音し、2000年に『Live at the Greek』としてリリースした。なお、彼らの1990年リリースのデビュー・アルバムのタイトルは『シェイク・ユア・マネー・メイカー (Shake Your Money Maker)』であったが、そちらではこの曲は取り上げていない。

2010年6月、エリック・クラプトンジェフ・ベックは、クラプトンが主催したクロスローズ・ギター・フェスティバル (Crossroads Guitar Festival) で、この曲を共演した。

この曲はまた、2010年フォガットのアルバム『Last Train Home』にも収録されている。さらに、ロッド・スチュワート2013年のアルバム『タイム〜時の旅人〜』にも、ボーナス・トラックとして収録されている。

出典・脚注 編集

  1. ^ a b c The Blues Discography 1943-1970 The Classic Years, Les Fancourt & Bob McGrath (Eyeball Productions)
  2. ^ a b Herzhaft, Gerard (1992). "Shake Your Moneymaker". Encyclopedia of the Blues. University of Arkansas Press. p. 470. ISBN 1-55728-252-8
  3. ^ 500 Songs That Shaped Rock and Roll”. Exhibit Highlights. Rock and Roll Hall of Fame (1995年). 1995年時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年3月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e Franz, Steve (2003). The Amazing Secret History of Elmore James. Walsworth Publishing. pp. 115–17. ISBN 0-9718038-1-1 
  5. ^ Morris, Chris; Haig, Diana (1992). Elmore James — King of the Slide Guitar (Media notes). Elmore James. Capricorn Records. p. 13. 9 42006–2。
  6. ^ Elmore James - Shake Your Moneymaker / Look On Yonder Wall | Releases | Discogs 2023年7月31日閲覧
  7. ^ Gioia, Ted (2008). Delta Blues. W. W. Norton. p. 314. ISBN 978-0-393-33750-1 
  8. ^ The Story of "Break on Through" by The Doors