シェルブールの雨傘

フランス、西ドイツの映画作品

シェルブールの雨傘』(シェルブールのあまがさ、Les Parapluies de Cherbourg 英題:The Umbrellas of Cherbourg)は、ジャック・ドゥミが脚本・監督した1964年のフランス・西ドイツ合作の恋愛映画ミシェル・ルグランが音楽を担当したミュージカル映画である。この映画の会話は、何気ない会話も含めて完全にレチタティーヴォとして歌われている。第17回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した[1]

シェルブールの雨傘
Les Parapluies de Cherbourg
監督 ジャック・ドゥミ
脚本 ジャック・ドゥミ
製作 マグ・ボダール
出演者 カトリーヌ・ドヌーヴ
ニーノ・カステルヌオーヴォ
音楽 ミシェル・ルグラン
撮影 ジャン・ラビエ
編集 アン=マリー・コトレ
モニーク・テッセール
製作会社 Parc Film
Madeleine Films
Beta Film
配給 フランスの旗 Ciné Tamaris
日本の旗 東和
公開 フランスの旗 1964年2月19日
日本の旗 1964年10月4日
上映時間 91分
製作国 フランスの旗 フランス
西ドイツの旗 西ドイツ
言語 フランス語
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概要 編集

全編音楽のみで他の台詞が一切ないミュージカルであり、映画としては画期的な形式であった。ルグランによる音楽が大評判となり、特に主題曲は世界中で大ヒットした。のちに舞台化もされ、世界各国で上演されている。 ドヌーヴの出世作となった作品だが、出演者は歌の素人のため、すべて歌手による吹き替えである。

過去に何度かリマスターが行われている。2009年には製作45周年を記念し、日本において今作品初のデジタルリマスター版が世界に先駆けて公開された[2]。2013年にはデジタル修復完全版が作られ、第66回カンヌ国際映画祭カンヌ・クラシックスで上映された。

ストーリー 編集

  • 第一部 旅立ち 1957年11月-
    アルジェリア戦争ただ中のフランス。港町シェルブールに住む20歳の自動車整備工ギイと17歳のジュヌヴィエーヴは結婚を誓い合った恋人同士。ギイは病身の伯母エリーズと、ジュヌヴィエーヴはシェルブール雨傘店を営む母エムリ夫人と暮らしている。エムリ夫人は2人が若過ぎる事を理由に結婚に反対するが、2人は将来生まれて来る子供の名前(女の子だったらフランソワーズ)を考えたり、自分たちのガソリンスタンドを持つ夢を語り合ったりと、幸福な恋愛を謳歌していた。
    そんなある日、エムリ夫人に莫大な額の納税通知書が届く。切羽詰まっていたエムリ夫人は、娘に説得され、大切なネックレスを売る決心をして、娘を連れて宝石店へ行った。店主との交渉はうまく進まなかったが、たまたま居合わせた宝石商ローラン・カサールが、その場でネックレスを購入してくれた。
    やがてギイに召集令状が届き、アルジェリア戦争において2年間の兵役をつとめることになった。尽きる事無く別れを惜しむギイとジュヌヴィエーヴ。その夜、2人は結ばれた。ギイは幼馴染みのマドレーヌに伯母の世話を頼み、ジュヌヴィエーヴと永遠の愛を誓い合って、シェルブール駅で別れを告げ入営する。
  • 第二部 不在 1958年1月-
    ある日、エムリ夫人は町でカサールと出会い、食事に招待する。妊娠していることを知ったジュヌヴィエーヴは、ギイからほとんど手紙が来ないことを不安に感じていた。ジュヌヴィエーヴが気分が悪いと休んだ後、エムリ夫人に引き止められたカサールは、ジュヌヴィエーヴに結婚を申し込むつもりだったことを打ち明ける。ジュヌヴィエーヴに出会い、カサールは失っていた人生の目標を見つけることができたのだった。決めるのは本人なので、押しつけないように頼み、カサールはまた旅に出る。
    手紙で妊娠を知ったギイからは、2月に「男の子だったら名前はフランソワ」と喜びの返事が届く。だが、ギイを待ち続けていたジュヌヴィエーヴは、次第にカサールに心を開き、子どもを一緒に育てようという求婚を受け入れる。結婚からしばらくして、エムリ夫人も店を処分し、娘が住むパリへと移住する。
  • 第三部 帰還 1959年3月-
    足を負傷し除隊となって帰郷したギイはシェルブール雨傘店を訪れるが、店は所有者が変わっていた。ジュヌヴィエーヴの結婚と移住を聞かされたギイは自暴自棄となり、復職した整備工場も些細なトラブルで退職して酒と娼婦に溺れる。朝帰りした彼を待っていたのは伯母エリーズの死の報せだった。ギイは出て行こうとするマドレーヌに「僕の力になってほしい。行かないでくれ。」と頼み、マドレーヌはとりあえず出て行くのをやめる。ギイは、マドレーヌに「仕事をしない今のあなたは大嫌い」と言われて一念発起し、伯母の遺産でガソリンスタンドを始めることに決めた。立ち直ったギイに、マドレーヌも心を開き、結婚する。
  • エピローグ 1963年12月-
    ある雪の夜、妻マドレーヌと息子フランソワがクリスマスの買い物に出ていった後、一台の車がギイのガソリンスタンドに給油に訪れる。運転席にはジュヌヴィエーヴが、助手席には3,4才くらいの女の子が乗っている。入営の日、シェルブール駅で別れて以来の再会だった。事務所で短く言葉を交わす2人。金持ちそうな毛皮のコートに身を包むジュヌヴィエーヴ。娘の名はフランソワーズだと告げ、「会ってみる?」とギイに聞くが、彼は無言で首を振り、互いの幸せを確認し合うと「給油が終わったようだ」と言う。ジュヌヴィエーヴの車が去って行くのと入れ替わりにマドレーヌとフランソワが帰ってくる。すると、ギイは気持ちを切り替え、2人の帰りを大はしゃぎで迎える。ガラス窓のカーテンが家族3人で幸せに楽しく過ごす様子を映し出す。

登場人物 編集

音楽 編集

日本での作品化 編集

日本での舞台化 編集

日本で初めて舞台化されたのは1983年。映画監督のジャック・ドゥミ氏と作曲家のミシェル・ルグラン氏が全面協力した[3]

主なキャスト
  1983年[4] 1983-1984年[4] 1985年[5] 1989年[6] 1993年[7] 1996年[8] 1997年[9] 2000年 2003年 2009年 2014年 2023年[10]
ギイ・フーシェ 羽賀健二 新田純一 羽賀健二 荒川亮 松岡英明 坂本昌行 井上芳雄 京本大我
ジュヌヴィエーヴ・エムリ 毬谷友子/江川真理子 武田久美子 五代真弓 仙道敦子 小川範子 藤谷美紀 白羽ゆり 野々すみ花 朝月希和

主題曲 編集

スタンダード・ナンバーとして多くの歌手により歌われている。映画中ではダニエル・リカーリが歌い、同1964年にナナ・ムスクーリもフランス語と日本語で歌っている。日本での主な作品化を記す。

フランス語の原詞
別れを嘆き悲しみ、引き留めようとする内容。小野リサなど
英語の訳詞
I Will Wait for Youと題がつき、恋人の帰りをいつまでも待つ内容になっている。白鳥英美子など
日本語の訳詞
さまざまな訳があるが、英語の詞に沿った内容のものが多い。ナナ・ムスクーリ木之内みどり麻丘めぐみ岩崎宏美河合奈保子美川憲一など

関連項目 編集

出典 編集

  1. ^ 窪川英水 訳『シェルブールの雨傘:仏和対訳シナリオ』ジャック・ドゥミー 脚本・台詞、白水社、1994年、4-5頁。 
  2. ^ 恩田泰子「仏の名作映画 日本で復元」『読売新聞』、2009年1月26日、東京朝刊、12面。
  3. ^ 「「シェルブールの雨傘」舞台化」『朝日新聞』、1863年6月3日、夕刊、13面。
  4. ^ a b 1983年 – 博品館劇場”. 2023年1月21日閲覧。
  5. ^ いわき演劇鑑賞会の歩み”. 2023年1月21日閲覧。
  6. ^ 1989年 – 博品館劇場”. 2023年1月21日閲覧。
  7. ^ 1993年 – 博品館劇場”. 2023年1月21日閲覧。
  8. ^ 1996年 – 博品館劇場”. 2023年1月21日閲覧。
  9. ^ 1997年 – 博品館劇場”. 2023年1月21日閲覧。
  10. ^ “SIXTONSE京本大我が全編音楽のミュージカル「シェルブールの雨傘」主演!10年ぶり日本公演「音楽で紡ぐ」”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2023年7月31日). https://hochi.news/articles/20230730-OHT1T51232.html?page=1 2023年7月31日閲覧。 

外部リンク 編集