ジェニファー・プリツカー
ジェニファー・ナタリア・プリツカー（Jennifer Natalya Pritzker、1950年8月13日 - ）は、アメリカ合衆国の元軍人・投資家・慈善家である。富豪一族として知られるプリツカー家の一員である。
ジェニファー・プリツカー | |
|---|---|
| Jennifer Pritzker | |
 ジェニファー・プリツカー（2016年） | |
| 生誕 |
James Nicholas Pritzker 1950年8月13日（73歳）  アメリカ合衆国 イリノイ州シカゴ |
| 教育 | ロヨラ大学 |
| 職業 | 投資家、慈善家 |
| 著名な実績 |
世界初のトランスジェンダーのビリオネア タワニ財団とプリツカー軍事博物館・図書館の創設者 |
| 純資産 | 19億ドル（2021年3月3日）[1] |
| 政党 | 共和党[2] |
| 配偶者 |
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| 子供 | 3人 |
| 親 | ロバート・プリツカー（父） |
| 受賞 |
 名誉大佐（イリノイ州） |
| 兵役経験 | |
| 所属組織 |  アメリカ |
| 部門 |
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| 軍歴 |
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| 最終階級 |  中佐 |
| 受賞 |
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アメリカ陸軍を経てイリノイ州州軍を2001年に中佐で退役し、後にイリノイ州から名誉大佐に任命された。相続した多額の財産を使って、予備役に対する市民の理解と支援を拡充するための活動を行っており、1995年にタワニ財団、1996年にタワニ・エンタープライズ、2003年にプリツカー軍事博物館・図書館を設立した。
ジェームズ・ニコラス・プリツカー(James Nicholas Pritzker)という男性として生まれたが[3]、2013年、トランスジェンダーであることを公表し、元の名前とイニシャルが同じになる現在の名前に法的に改名した。プリツカーは、世界初のトランスジェンダーのビリオネアである。
若年期 編集
1950年8月13日にイリノイ州シカゴで生まれた。父はロバート・プリツカー、母はオードリー・ギルバートである[4]。エイブラム・ニコラス・プリツカーの孫に当たり[4]、同母妹にリンダ（1953年生）とカレン（1958年生）がいる[5]。両親は1979年に離婚し、父は1980年にイレーネ・ドライバーグと再婚した。ロバートとイレーネとの間の異母兄弟にマシューとリーゼルがいる[6]。
軍役 編集
プリツカーは、生涯で最も印象的な体験は、1973年10月にイスラエルで第四次中東戦争を直に目撃したことだったと語っている[3]。
1974年2月8日にアメリカ陸軍に入隊し、ノースカロライナ州フォートブラッグの第82空挺師団第17騎兵連隊第1中隊に配属され、軍曹まで昇進した[3]。アメリカ陸軍では航空機修理部品係、ライフル銃兵、班長を務めた。
1977年2月に兵役を完了した[3]後、ロヨラ大学に入学した。大学では歴史学を専攻し、陸軍の予備役将校訓練課程に参加した[3]。1979年5月に大学を卒業した。
大学卒業と同時に士官として陸軍に復帰し[3]、ケンタッキー州フォート・キャンベルの第101空挺師団第503歩兵連隊第1大隊に配属され、ライフル小隊やTOW小隊の小隊長を務め、その後、司令部や対機甲学校に勤務した[3]。1984年から1985年まで、ドイツ・ケリー・バラックスの第7軍団に参謀将校として勤務した[3]後、1985年に退役した[7]。その後、陸軍予備役兼イリノイ州兵として16年間在籍した[8]後、2001年に退役した。最終階級は中佐だった[9]。退役後、イリノイ州の名誉大佐となった[7]。
軍役以外の活動 編集
プリツカーは、多くの企業に投資し、慈善活動を行っている。1996年、個人資産の管理と慈善活動を行う組織であるタワニ・エンタープライズを設立した[3][10][11]。1995年にタワニ財団、2003年にプリツカー軍事博物館・図書館を設立し、予備役に対する市民の理解と支援を広げるための活動を行っている[7][8]。
プリツカーは、一族の財産から推定17億ドルを相続した[1]。
慈善活動 編集
プリツカーは1995年にタワニ財団(Tawani Foundation)を設立した[12]。この組織は、予備役兵の重要性に対する認識と理解を深めること、アメリカ合衆国やその軍事の歴史に関する史跡を保存すること、生活の質を高めるための健康と福祉に関するプロジェクトを促進すること、過去・現在・未来における軍人の貢献を顕彰することを目的としている[12][13]。
2003年、タワニ財団は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のシンクタンクであるパームセンターに、トランスジェンダーの軍・警察・消防における勤務の実現可能性についての研究のために135万ドルを寄付した[8]。2013年、全米初の海軍予備士官訓練課程を開設したノリッチ大学に2,500万ドルを寄付した[14]。2016年、カナダ・ビクトリア大学に200万ドルの寄付を行って、世界初のトランスジェンダー研究の講座を創設し、アーロン・デヴァーがその初代講師となった[15]。
2016年、性同一性障害に関する問題への貢献を賛えて、トロント大学マーク・S・ボナム性的多様性研究センターはプリツカーにボナムセンター賞を授与した[16]。
政治参加 編集
プリツカーは生涯に渡って共和党支持者であり[17]、ジョン・マケイン、ミット・ロムニーなどの共和党候補者や全米ライフル協会などの共和党寄りの団体に対し多額の寄付をしてきた[18][19]。しかし、ドナルド・トランプ大統領がトランスジェンダーのアメリカ軍への入隊禁止などの反LGBTQ政策を掲げたことを理由に共和党支持を見直すことを表明し、2019年には「（トランプ）大統領が2020年の選挙に6桁・7桁（ドル）の献金を私に求めてきましたが、『なぜ（トランスジェンダーである）自分の破滅の原因に対して貢献しなければならないのか』と思いました」と述べた[20][21]。
2020年8月、プリツカーは民主党の大統領候補であるジョー・バイデンの陣営に2千ドルを献金した[22]。2020年10月、プリツカーはリンカーン・プロジェクトに10万ドルを寄付した。これは共和党のストラテジストたちが主導するプロジェクトであるが、その中にはトランプの再選を阻止するためにバイデンを支持している者もいた[23]。
2020年の第3四半期、プリツカーはリバタリアン党へ2万5千ドル以上の寄付を行い、同党のチェアマンズ・サークルの一員として認められた[24]。
私生活 編集
プリツカーは生涯に3人の女性と結婚している。最初の相手はアイェレット・プリツカー(Ayelet Pritzker)で、娘1人（Tal Hava Pritzker）をもうけた。2人目はリサ・I・ゴーレン(Lisa I. Goren)で、息子2人（アンドリューとウィリアム）をもうけた[3][7][25]。いずれの結婚生活も離婚により終了している[26][1]。
2013年8月16日、プリツカーはプリツカー軍事博物館・図書館を通して、自身がトランスジェンダーであり、世界初のトランスジェンダーのビリオネアとなったことを公表した[27]。
2013年8月16日をもって、J・N・プリツカーは法的に改名を行い、ジェニファー・ナタリア・プリツカーとなりました。この変更は、彼女の真の同一性についての信念を反映したものです。この信念は、これまでは彼女が自分だけで持っていましたが、これからは公に共有されることになります。プリツカーは、ビジネスや個人の事業において、自分自身を女性として認識しています[28]。
2020年10月31日、プリツカーはエリン・E・ソラーロ(Erin E. Solaro)と結婚した[29]。
脚注 編集
- ^ a b c “Forbes profile: Jennifer Pritzker”. Forbes. 2021年3月3日閲覧。
- ^ Pritzker, Jennifer (2020年10月29日). “Jennifer Pritzker: Politically homeless in our two-party system”. Pittsburgh Post-Gazette 2021年7月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j Mrozek, Steven J. (2000). “James Nicholas Pritzker”. 82nd Airborne Division. Nashville, TN, USA: Turner Publishing. pp. 168f. ISBN 1563113643 2016年1月20日閲覧。
- ^ a b Worthy, Ford S. (1988). “The Pritzkers Unveiling a Private Family” (online). CNN Money (April 25).
- ^ Wall Street Journal: "Caught a Good Break" November 26, 2013
- ^ CNN Money: "THE PRITZKERS UNVEILING A PRIVATE FAMILY Can you believe it? These billionaires actually like each other. But as Pritzkers proliferate, a worry arises: Can they maintain their striking success – and keep everyone happy?" By Ford S. Worthy April 25, 1988
- ^ a b c d Pritzker, Jennifer (2016年). “Board of Directors: Colonel (Hon.) (IL) Jennifer N. Pritzker, ILARNG (Retired), Founder & Chair”. Chicago, IL, USA: pritzkermilitary.org. 2016年1月20日閲覧。 “[Extensive list of self-published biographical information.]”
- ^ a b c Kapos, Shia (2013). “James Pritzker Opens New Chapter in His Life” (online, print). Crain's Chicago Business (August 23).
- ^ Harris, Melissa; McCoppin, Robert; Goldsborough, Bob (2013). “The World of Jennifer Pritzker” (online, print). Chicago Tribune (September 22) 2016年1月20日閲覧. "Subtitle: An heir to the Hyatt Hotels fortune who changed his identity from male to female has a far-reaching impact on Illinois real estate, business and philanthropy."
- ^ “About Tawani Enterprises, Inc.”. tawanienterprises.com. 2016年1月20日閲覧。
- ^ ilsos.gov [Ill. Secretary of State] (2016年1月20日). “Corp/LLC Certificate of Good Standing: Search, Name = Tawani Enterprises or File number = 58832855”. ilsos.gov. 2016年1月20日閲覧。 “Incorporation Date (Domestic), 04/23/1996.”
- ^ a b Williams, Bailey (2014). “Evanston Billionaire, Philanthropist Named One of the Most Influential LGBT Voices” (online, print). The Daily Northwestern (April 16) 2016年1月20日閲覧. "In 1995, Pritzker founded the Tawani Foundation, which works to preserve military history and historical sites. The foundation's mission is to emphasize the importance of the 'citizen soldier' ..."
- ^ “Board of Directors”. Tawani Foundation. 2016年1月20日閲覧。
- ^ Kapos, Shia (2013). “James Pritzker Donates $25 Million to Norwich U.” (online, print). Crain's Chicago Business (April 29) 2016年1月19日閲覧。.
- ^ Caplan, Rose (2016年1月21日). “Jennifer Pritzker's Foundation Gives $2 Million for Transgender Studies at Canadian University”. Tablet Magazine. 2020年6月20日閲覧。
- ^ “Archived copy”. 2016年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月26日閲覧。
- ^ Janssen, Kim. “J.B. Pritzker can't count on support of billionaire cousin”. chicagotribune.com. 2022年3月9日閲覧。
- ^ “Trans Billionaire Reporting for Duty”. www.advocate.com (2013年11月12日). 2022年3月9日閲覧。
- ^ “What's it like to be a transgender Republican?”. The Daily Dot (2015年4月29日). 2022年3月9日閲覧。
- ^ Reginato, James (June 13, 2019). “"One 'Aw, Shit' Wipes Out a Thousand Attaboys": Why Billionaire GOP Donor Jennifer Pritzker Is Abandoning Trump After Coming Out as Trans”. Vanity Fair (Condé Nast) 2020年6月20日閲覧。.
- ^ “Chicago Tonight | Jennifer Pritzker: GOP's Policies 'Marginalize Me' | Season 2019”. PBS. 2022年3月9日閲覧。
- ^ Tindera, Michela. “Billionaire Jennifer Pritzker, A Former Trump Donor, Makes Her First Contribution To Joe Biden”. forbes.com. 2022年3月9日閲覧。
- ^ Tindera, Michela. “Billionaire Jennifer Pritzker, A Former Trump Donor, Donates $100,000 To The Lincoln Project” (英語). Forbes. 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Q3 DONOR APPRECIATION”. LP News 50 (3): p. 3
- ^ Chicago Tribune: "Herbert L. Goren, 82, Former plastics company executive" By Susan Kuczka September 17, 2004
- ^ Eby, Margaret (2014年11月11日). “How Colonel Jennifer Pritzker Pushes for Transgender Rights in Military”. The Forward. 2017年12月6日閲覧。
- ^ Solomon, Brian (2013). “Jennifer Pritzker Becomes First Transgender Billionaire” (online). Forbes (September 16) 2016年1月20日閲覧。.
- ^ Fisher, Alexandria (September 16, 2013). “Jennifer Pritzker Becomes First Transgender Billionaire” (online). Forbes 2017年12月6日閲覧。.
- ^ Press Release (2020年11月2日). “Jennifer N. Pritzker, Erin E. Solaro wed”. Windy City Times. 2020年11月2日閲覧。
