ジップの法則(ジップのほうそく、Zipf's law)あるいはジフの法則とは、出現頻度が k 番目に大きい要素が、1位のものの頻度と比較して 1/k に比例するという経験則である。Zipf は「ジフ」と読まれることもある。また、この法則が機能する世界を「ジフ構造」と記する論者もいる。

ジップの法則
確率密度関数
Plot of the Zipf PMF for N = 10
N = 10の両対数スケールのZipf確率密度関数。横軸は順位k。この関数はkの整数値のみについて定義されていることに注意。点間の接続線は連続であることを意味してはいない。)
累積分布関数
Plot of the Zipf CDF for N=10
N = 10のZipf累積分布関数。横軸は順位k。(この関数はkの整数値のみについて定義されていることに注意。点間の接続線は連続であることを意味してはいない。)
母数 (実数)
(整数)
確率密度関数 ここでHN,sN番目の一般化調和数
累積分布関数
期待値
最頻値
分散
エントロピー
モーメント母関数
特性関数
テンプレートを表示
ウィキペディア(30ヶ国語版)における単語の出現頻度

包括的な理論的説明はまだ成功していないものの、様々な現象に適用できることが知られている。この法則に従う確率分布(離散分布)をジップ分布という。ジップ分布はゼータ分布英語版の特殊な形である。

この法則はアメリカの言語学者ジョージ・キングズリー・ジップに帰せられている。ジップ以前に似た観察をしていた先行研究としてFelix Auerbach英語版Jean-Baptiste Estoupフランス語版などの研究があり、ジップ自身もそのことを1942年の論文で紹介した[1]

法則が成立する現象の例 編集

次のような様々な現象(自然現象、社会現象など)に成り立つ場合があることが確認されている:

論理的な定義 編集

一般のジップの法則は

 

(ただし N は全要素の数、k は順位)と書き表される。

ここで元来のジップの法則では s = 1 である。このとき N を無限大にすると分母は収束しない(無限大に発散する、「調和級数」を参照)ため、元来のジップの法則では N を有限としなければならない(現実にもそう考えられる場合が多い)。

ただし s が1より少しでも大きい実数ならば、N を無限大にしても分母は収束し(ゼータ関数 ζ(s) に等しい)、k の値を無限にとりうる分布関数とすることができる。

関連する概念 編集

ジップの法則は冪乗則 (Power law) の一種である。また、ジップ分布は変数変換によりパレート分布(連続分布)と同じ形になることが示されている。パレート分布の離散型である。パレートの法則はパレート分布の特別な場合に当たり、また80-20の法則とも関係がある。順位規模の法則とも呼ばれる。

脚注 編集

  1. ^ Zipf, George Kingsley (1942). “The Unity of Nature, Least-Action, and Natural Social Science”. Sociometry 5 (1): 48–62. doi:10.2307/2784953. ISSN 0038-0431. https://www.jstor.org/stable/2784953. 

関連項目 編集