ジョン・ハワード・カーペンターJohn Howard Carpenter1948年1月16日 - )は、アメリカ合衆国映画監督脚本家映画プロデューサー。また、俳優音楽家としても活動している。

ジョン・カーペンター
John Carpenter
John Carpenter
2010年、撮影
本名 John Howard Carpenter
生年月日 (1948-01-16) 1948年1月16日(76歳)
出生地 ニューヨーク州カーセージ
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
職業 映画監督音楽家
配偶者 エイドリアン・バーボー(1979年 - 1984年)
主な作品
ダーク・スター
ジョン・カーペンターの要塞警察
ハロウィン
ザ・フォッグ
ニューヨーク1997
遊星からの物体X
クリスティーン
スターマン/愛・宇宙はるかに
ゴーストハンターズ
ゼイリブ
マウス・オブ・マッドネス
エスケープ・フロム・L.A.
ヴァンパイア/最期の聖戦
 
受賞
カンヌ国際映画祭
金の馬車賞
2019年
その他の賞
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経歴・人物 編集

ニューヨーク州出身。南カリフォルニア大学映画学科卒。在学中の1969年に短編映画『Captain Voyeur』(キャプテン・ボワヤー)で脚本と監督を務め[1]、1970年に音楽と編集を担当した短編[1]ブロンコ・ビリーの復活英語版』が第43回アカデミー賞短編実写映画賞を受賞している[2][3]

作品と傾向 編集

SF映画を多く監督しているのは、4歳の時に観た映画『遊星よりの物体X』(1951、製作:ハワード・ホークス)が強烈な印象で[3]、映画製作を目指すきっかけになったからと語っている。長編デビュー作の『ダーク・スター』(1974、ダン・オバノンとの共同制作)[3]、『ジョン・カーペンターの要塞警察』(1976)で、制作費が少なくとも良質のエンタテイメントが作れることを実証した。

2年後の1978年には、現在においてシリーズ化されているスプラッターホラー映画ハロウィン』の記念すべき第1作を低予算かつ短期間で作成し、大ヒットさせる事に成功。『ニューヨーク1997』(1981)では、N.Y.マンハッタン島を刑務所にする独自の発想で注目を集め、『遊星からの物体X』(1982)では、映画史の古典の理解とそのオリジナリティ溢れる解釈で、当時の観客の想像をはるかに超えた数々のクリーチャーを創造し、従来の侵略物にはなかったショッキングな演出により、その名を世界中に知らしめた。

尊敬している映画人や作品 編集

アルフレッド・ヒッチコックオーソン・ウェルズを敬愛しており、『ハロウィン』や『ザ・フォッグ』などのホラー作品にイタリア映画ダリオ・アルジェントサスペリアPART2』やセルジオ・マルチーノ影なき淫獣』等のイタリアンホラーやスペインの『エル・ゾンビ I 死霊騎士団の覚醒』などの『エル・ゾンビ』シリーズの影響を受けている。また『ハロウィン』冒頭数分の長回しはウェルズの『黒い罠』のオマージュで知られ、『捜索者』などのジョン・フォード作品や同年代のスティーヴン・スピルバーグ作品の影響も指摘されている。日本の『ゴジラ』を始めとする東宝特撮怪獣映画のファンであり、特にキングギドラが好きな怪獣で、「ジョン・カーペンター研究家」として知られる映画文筆家の鷲巣義明がアメリカに取材でカーペンターを訪ねた際に、鷲巣からキングギドラの人形を貰い喜んだ[4]

日本の黒澤明小津安二郎を敬愛し、スペインルイス・ブニュエルシュルレアリスム映画の影響も濃く受けている[5]

敬愛している映画作家たちの中で、とりわけハワード・ホークス作品からの影響やホークスへの尊敬は広く知られており、特に『ジョン・カーペンターの要塞警察』や『ゴースト・オブ・マーズ』は、ジョン・ウェイン主演の『リオ・ブラボー』のオマージュ作品であり、その他の多くの作品にもホークス作品の影響が強いと知られている。カーペンターファンの青山真治監督や阿部和重中原昌也の対談で、『ゴースト・オブ・マーズ』と黒澤明影武者』に同じ動作のアクションシーンがあるが、後者の描写が凡庸であるのに対して『ゴースト・オブ・マーズ』の描写は素晴らしいという発言を出した[6]

音楽家として 編集

映画監督としては珍しく、自作の音楽も数多く担当し、『ハロウィン』の「HALLOWEEN THEME」や『ニューヨーク1997』のメインタイトルはホラー・SF映画音楽の名作として親しまれている。また、『ゴースト・ハンターズ』では他の監督仲間と共にバンドを結成し、自らボーカルをとってエンディングに流れる主題歌も担当している。この曲は当時プロモーションビデオまで作られ、それは同作のスペシャル盤DVDで確認する事ができる。

2015年2月にはミュージシャンとしての1stソロアルバム『Lost Themes』をリリースした[7]

主な作品 編集

邦題
原題
監督 脚本 製作 音楽 備考
1974 ダーク・スター
Dark Star
       
1976 ジョン・カーペンターの要塞警察
Assault on Precinct 13
        兼編集
1978 アイズ
Eyes of Laura Mars
       
ハロウィン
Halloween
       
1980 ザ・フォッグ
The Fog
       
1981 ニューヨーク1997
Escape from New York
       
ハロウィンII
Halloween II
        兼追加撮影監督
1982 遊星からの物体X
The Thing
       
ハロウィンIII
Halloween III: Season of the Witch
       
1983 クリスティーン
Christine
       
1984 フィラデルフィア・エクスペリメント
The Philadelphia Experiment
        製作総指揮
スターマン/愛・宇宙はるかに
Starman
       
1986 ブラックライダー
Black Moon Rising
        製作総指揮
ゴースト・ハンターズ
Big Trouble in Little China
       
1987 パラダイム
Prince of Darkness
       
1988 ゼイリブ
They Live
       
1992 透明人間
Memoirs of an Invisible Man
       
1994 マウス・オブ・マッドネス
In the Mouth of Madness
       
1995 光る眼
Village of the Damned
       
1996 エスケープ・フロム・L.A.
Escape from L.A.
       
1998 ヴァンパイア/最期の聖戦
Vampires
       
2001 ゴースト・オブ・マーズ
Ghosts of Mars
       
2002 ヴァンパイア/黒の十字架
Vampires: Los Muertos
        製作総指揮
2005 ザ・フォッグ
The Fog
       
2010 ザ・ウォード/監禁病棟
The Ward
       
2018 ハロウィン
Halloween
        製作総指揮

脚注 編集

  1. ^ a b 福田麗 (2011年10月27日). “鬼才ジョン・カーペンター、幻の学生時代の作品が発見!『ハロウィン』の原点となるキャリア最初期の短編!”. シネマトゥデイ (株式会社シネマトゥデイ). https://www.cinematoday.jp/news/N0036529 2024年4月3日閲覧。 
  2. ^ 谷川建司 (2022年1月5日). “元ヘラルド宣伝Pに聞く!『ゼイリブ』『NY1997』ジョン・カーペンターが“クリエイター支持率ダントツ”のワケ”. BANGER!!! バンガー (ムービープラス). https://www.banger.jp/movie/70265/ 2024年3月28日閲覧。 
  3. ^ a b c “ホラー映画の帝王!ジョン・カーペンター監督作品おすすめ10選!”. CINEMORE シネモア (太陽企画). (2022年1月1日). https://cinemore.jp/jp/news-feature/2300/article_p1.html 2024年3月28日閲覧。 
  4. ^ JVDにより2011年10月14日に日本で発売されたブルーレイ『ハロウィン(JVBD-001 POS/49 88159294197)』の鷲巣義明・山崎圭司による音声解説、カーペンターやデブラ・ヒルの音声解説
  5. ^ 鷲巣義明 編『ホラーの逆襲 : ジョン・カーペンターと絶対恐怖監督たち』フィルムアート社、1998年12月。ISBN 4-8459-9889-0 
  6. ^ 『青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン!』(2004年、リトルモア)
  7. ^ ジョン・カーペンター監督がデビューソロアルバムをリリース - アメーバニュース・2014年11月13日

関連文献 編集

  • Senses of Cinema: Great Directors Critical Database(英語)
  • ジョン・カーペンター述、ジル・ブーランジェ編『恐怖の詩学ジョン・カーペンター : 人間は悪魔にも聖人にもなるんだ : 映画作家が自身を語る』井上正昭訳、2004年、フィルムアート社
  • 山崎圭司樋口泰人編『ジョン・カーペンター読本』2018年、boid
  • ジョン・ウォルシュ『ニューヨーク1997 ジョン・カーペンター映画術』富永晶子訳、2021年、DU BOOKS

外部リンク 編集