FA型エンジン(エフエーがたエンジン)は、SUBARU(旧・富士重工業)の水平対向4気筒ガソリンエンジン系列である。

スバル・FA20(写真はBRZのもの)

自然吸気(NA)版はトヨタ・86/サイオン・FR-Sおよびスバル・BRZに、直噴ターボ(DIT: Direct Injection Turbo)版は2012年にマイナーチェンジしたレガシィに初採用された。

機構

ロングストローク型のFB型エンジンを基にスクエアストローク化し、バルブの駆動方式はカムシャフト配置の自由度を持たせる目的と摩擦低減の観点からローラーロッカーアーム式を採用している。カムシャフト駆動もチェーン式で、補機はベルト1本で駆動するサーペンタイン式を採用する点もFB型と同じである。ただし、軽量化を主目的に開発したFB型とは対照的に高出力・高負荷にも耐えられる設計としている。

通常、高出力・高負荷にも耐えられるような設計とする場合、同寸のままだとピストンシリンダーはやや重くなるが、FA型においてはFB型よりも吸気マニホールドを65 mm、エンジン下部の排気ブランチを19 mmほど高さを抑えることでその問題点を克服し、FB型よりも軽量に仕上がっている。

なお、自然吸気と直噴ターボは型式こそ同じ「FA20」だが、同じなのは内径×行程の数値や縦置きであることとクランクシャフトが共通部品を採用している程度で、シリンダーブロックピストンをはじめとした多くの部品が別物であり、直噴ターボ版の方が高出力に耐えられる設計となっている。

また、前者がトヨタ自動車との共同開発(スバルの水平対向4気筒にトヨタのD-4Sを組み合わせている)であるのに対し、後者はスバルの完全自社開発である。

組み合わせられるトランスミッションも前者と後者で異なり、前者にはアイシンAI(現・アイシン)製の6速マニュアルトランスミッション(MT)もしくはアイシンAW(現・アイシン)製6速オートマチックトランスミッション(AT)が、後者にはスバル自社製のチェーン式無段変速機リニアトロニック[注釈 1]が組み合わされている。

FA20

FB20エンジン(内径×行程が84 mm × 90 mm (3.31 in × 3.54 in)のアンダースクエア、排気量2.0 L (1,995 cm3))と比較して、FA20は内径×行程が86 mm × 86 mm (3.39 in × 3.39 in)のスクエア、排気量が2.0 L (1,998 cm3)となる。

FA20D

 
FA20D 自然吸気エンジン
トヨタ・86

FA20Dは直噴とポート噴射を併用(トヨタのD-4S)し、スバルのAVCS可変バルブタイミングシステムを備える。日本国外で販売されるトヨタ・86およびサイオン・FR-Sでは、トヨタ・U型エンジンと呼ばれるトヨタのエンジンファミリーコードによって識別され[1]、「4U-GSE」という型式名が与えられた。ただし、トヨタ・スポーツ800に搭載された2U型などの本来のU型エンジンとは直接の関連性は無い。スバルは使用するエンジンオイルの推奨粘度を0W-20としている[2]

Wards AutoはFA20Dを「2013ワーズ 10ベストエンジン」に選出した[3]

  • 種類: 水平対向4気筒DOHC 16バルブ D-4SデュアルAVCS
  • 排気量: 1,998 cc
  • 内径×行程: 86.0 mm × 86.0 mm
  • 圧縮比: 12.5:1

出力・トルク

  • 147 kW(200 PS)@ 7,000 rpm、205 N·m(20.9 kgf·m)@ 6,400 - 6,600rpm
  • 152 kW(207 PS)@ 7,000 rpm、212 N·m(21.6 kgf·m)@ 6,400 - 6,800 rpm(後期型・MT車)

搭載車種(車両型式)

FA20F

 
FA20F直噴ターボ (DIT) エンジン
スバル・レヴォーグ

スバル独自の直噴およびツインスクロールターボチャージャー版である[5]。2015年と2016年、Wards Autoの「エンジントップ10」に選ばれた[6][7]

  • 種類: 水平対向4気筒DOHC 16バルブ デュアルAVCS ツインスクロールターボ
  • 排気量: 1,998 cc
  • 内径×行程: 86.0 mm × 86.0 mm
  • 圧縮比: 10.6:1

出力・トルク

  1. 221 kW(300 PS)@ 5,600 rpm、400 N·m(40.8 kgf·m)@ 2,000 - 4,800 rpm
  2. 206 kW(280 PS)@ 5,700 rpm、350 N·m(35.7 kgf·m)@ 2,000 - 5,600 rpm

搭載車種(車両型式)

FA24

  • 排気量: 2,387 cc
  • 内径×行程: 94.0 mm × 86.0 mm

FA24F

 
スバル・FA24F

2017年、大型SUVのアセントに搭載する新開発エンジンとして公開された。直噴ターボ仕様は既存の水平対向6気筒自然吸気エンジン「EZ36」を置き換える、動力性能と燃費性能の両立を図ったものとなっている[8]。2019年に登場した7代目レガシィでは、EZ36に代わってFA24が搭載されている。

FA24Fは2018年に2019年式スバル・アセントに最初に導入された。FA20と比べてストロークは同一ながらボアが拡大され、これによって排気量が2.4L(2,387cc)に増えた[9]。重量を保ちつつ昇温時間を短くするため、ヘッドとブロックは全てアルミニウム製となっている[9]直噴およびターボチャージャーが、水平対向6気筒かつ自然吸気のスバル・EZ型エンジンと同等の出力を得るために使用されている。指定されるガソリンの油種はレギュラーガソリンである[10]。2019年のシカゴオートショーで、スバルは同年秋から発売される2020年モデルのレガシィを発表し、オプションのエンジンとしてFA24を搭載するとした[11]。2020年式スバル・アウトバックも上級オプションとしてFA24が用意されている[12]

出力・トルク

  • 193.9 kW @ 5,600 rpm、357.6 N·m @ 2,000 - 4,800 rpm

搭載車種(車両型式)

FA24D

 
スバル・FA24D

FA20Dと同様に、FA24Dは直噴とポート噴射英語版を組み合わせるトヨタのD-4S燃料噴射システムを使用する。内径×行程(94 mm × 86 mm)ならびに排気量はFA24Fと同一だが、圧縮比が12.5:1に高められている[13][14]。ボトムマウントされたターボが組み込まれているFA24Fを86やBRZのようなコンパクトスポーツカーに搭載するのは、価格と全体の重心の上昇を招くと判断されたため、先代と同様自然吸気が選択された。FA20Dでは燃費重視のチューニングにより3,000 - 5,000 rpmの間で大幅にトルクが低下していたが、トルクカーブを見直すことでFA20Dに比べてより低い回転数でピークトルクが得られるようになり、トルクの低下も無くなった[15]。また、エンジンにオイルクーラーが追加された[16]

生産拠点

  • 株式会社SUBARU 群馬製作所大泉工場

受賞

前述の通り、2012年、米国の自動車専門メディア「ワーズ オートワールド誌」が選ぶ「2013ワーズ 10ベストエンジン」にBRZが搭載するFA20型エンジンが選出された。この選考にはBRZのコストパフォーマンスも考慮された[17]

脚注

注釈

  1. ^ 従来型を基に、ケース、トルクコンバータ、チェーン等を高出力・高トルクに対応させている。

出典

  1. ^ Mark Vaughn. “Subaru shows production version of the BRZ”. Autoweek.com. 2013年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月11日閲覧。
  2. ^ 車両仕様 SUBARU
  3. ^ Witzenburg, Gary (2013年2月4日). “High-Revving Subaru Boxer Engine Is Crowd Pleaser”. Wards Auto. 2018年2月28日閲覧。
  4. ^ SUBARU:車種紹介 > BRZ > スペック > 諸元表”. 2012年2月4日閲覧。
  5. ^ "Subaru Legacy and Outback in Japan to Receive Minor Facelift; Fitted with New Generation 2.5 litre NA and 2.0 liter Direct Injection Turbo Boxer Engines" (Press release). Fuji Heavy Industries, Ltd. 8 May 2012. 2018年2月28日閲覧
  6. ^ Witzenburg, Gary (2015年7月9日). “Subaru's Lightweight Boxer Punches Above Weight”. Wards Auto. http://wardsauto.com/technology/subaru-s-lightweight-boxer-punches-above-weight 2018年2月28日閲覧。 
  7. ^ Murphy, Tom (2016年1月7日). “2016 Winner: Subaru 2.0L Turbocharged DOHC H-4”. Wards Auto. http://wardsauto.com/10-best-engines/2016-winner-subaru-20l-turbocharged-dohc-h-4 2018年2月28日閲覧。 
  8. ^ “スバルの新エンジン:FA24型登場 大型SUV・アセントに搭載!”. Motor-Fan TECH. (三栄). (2017年11月30日). https://motor-fan.jp/tech/10001880 2020年9月20日閲覧。 
  9. ^ a b Gilboy, James (2018年2月16日). “Meet Subaru's new FA24 engine”. The Drive. 2018年2月27日閲覧。
  10. ^ "Subaru debuts all-new Ascent 3-row SUV" (Press release). Subaru. 29 November 2017. 2018年3月1日閲覧
  11. ^ "World Premier of all-new 2020 Subaru Legacy sedan" (Press release). Subaru. 8 February 2019. 2019年4月4日閲覧
  12. ^ "World Premier of All-New 2020 Subaru Outback" (Press release). Subaru Corporation. 17 April 2019. 2019年4月17日閲覧
  13. ^ a b "World Premier of All-New Subaru BRZ" (Press release). Subaru Global Media. 18 November 2020. 2021年4月5日閲覧
  14. ^ a b c d e ~トヨタともっといいクルマづくりを追求し、「誰もが愉しめる究極のFRピュアスポーツカー」へ進化~』(プレスリリース)Subaru Global Media、2021年4月5日https://www.media.subaru-global.com/ja/news/30832021年4月5日閲覧 
  15. ^ Perkins, Chris (2020年11月18日). “Why the 2022 Subaru BRZ Still Isn't Turbocharged”. Road & Track. https://www.roadandtrack.com/news/a34713222/why-2022-subaru-brz-isnt-turbo-fa24-tech/ 2021年4月5日閲覧。 
  16. ^ Ohto, Yasuhiro (2021年). “Japan Premiere 2021: Subaru BRZ”. Subaru Corporation. 2021年4月5日閲覧。
  17. ^ スバル BRZ のエンジンが米10ベストエンジン賞を受賞、Response. 2012年12月14日

関連項目