センボンサイギョウガサ

センボンサイギョウガサ (Panaeolus cinctulus、異名Panaeolus subbalteatus)は、ヒカゲタケ属の菌類。世界中に広い分布を持つ。一箇所に多数生えることがあり、そこからこの名前がついた。幻覚作用のあるシロシビンが含まれる。形態的にコレラタケに類似しているため、しばしば間違えられる。

センボンサイギョウガサ
センボンサイギョウガサ。群生する。
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
: ハラタケ綱 Agaricomycetes
: ハラタケ目 Agaricales
: オキナタケ科 Bolbitiaceae
: ヒカゲタケ属 Panaeolus
: センボンサイギョウガサ Panaeolus cinctulus
学名
Panaeolus cinctulus
和名
センボンサイギョウガサ
英名
weed Panaeolus
girdled Panaeolus
banded mottlegill
red caps
センボンサイギョウガサの分布:作成2010年
センボンサイギョウガサ
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菌類学的特性
子実層にひだあり

傘はつり鐘形

もしくは凸形

子実層は固着形

もしくは上生形
柄には何も無い
胞子紋は
生態は腐生植物
食用: 向精神性
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20世紀の初頭、ヨーロッパでは雑草ヒカゲタケ (weed Panaeolus) とよばれた。商業用きのこの菌床から生えることが多かったからである。酔うため、このキノコは取り除かなければならない雑草のような存在であった。栽培は容易である。[1]

特徴 編集

傘は1.5~6cm。饅頭型か、あるいは平たい形である。表面は舐めらかで吸水性を持ち、湿っているときは赤茶色であり、乾いているときは淡い土褐色となり、成熟すると傘の端に沿って暗い帯がみられる帯黒となる[2]。傘は茶色で平べったい。

肉は赤茶色からクリーム色に近い色をしており、肉厚は薄い。

襞は狭く、付属したものに着生しており、茶色っぽく、まだらであり、胞子が熟成すると黒く変わり、襞の端は白くなり僅かに縁取られる。胞子は黒く滑らかで細かい。12×8ナノメートル程度の大きさで楕円形。

柄は2cmから10cm。太さは3~9mmで先細りになっている。白っぽい赤茶色。白ふんで覆われたようになっており、時々灰色の胞子の粉がついている。くぼみ、どんな膜にも覆われておらず、小さく白い小繊維に覆われており、頂点にや柄の下側に筋がついている。軸の元は汚れており菌糸は時折汚れた青になる。ストロー状になっている。

新鮮なものはでんぷん質で、乾燥すると岩塩風の味になる。

分布・生息地 編集

センボンサイギョウガサは好糞性であり、糞や、芝生、干草、堆肥、厩、木片などでよく育つ[1]

日本では本州と北海道であり、6月から10月にかけて発生し、地方によっては堆肥にほぼ通年みられる[3]。日本では春から秋に群生し、肥えた土であれば公園の遊歩道などでも見られ、何千本も群生することがある[2]。また山道沿いの草地など[3]エノキタケを栽培した後の、ぬかやもみ殻を混ぜたおがくずに発生しやすく、エノキタケの栽培地で誤食が多い[3]。アメリカでは、豪雨の後の、春先、秋先に群生する[1]。雨が降れば通年見ることができる。

アメリカ(北カルフォルニアやワシントン、特にオレゴン州[1])、カナダ、南米、ヨーロッパアジアロシアオセアニアなど世界の広くに発生する[4]。日本では7月の宮城県[2]、5月の滋賀県[5]、沖縄[6]

栽培 編集

 
胞子紋

高額な装置を用いずとも、栽培は初心者にも簡単である[1]。胞子を採取するには、柄から傘をとり、清潔な紙にヒダを向けて置き、上からガラス瓶を置き20分ほどで黒い胞子を産生するか、あるいはヒダをスワブ綿棒でぬぐい、ぬぐった綿の端を培養試験管に入れる[1]。この胞子を減菌された培養地に移す[1]。あるいは、20時間が経過していない傘から培養地を作ることもできる[1]。すでに本キノコが繁殖した堆肥化したワラを、ワラを並べた裏庭に置くことで屋外栽培も可能で、雨が降れば豊富に成長する[1]。湿度90度以上、温度27度から30度の暗所で培養され、その後は光を得て適切に成長し、収穫時には湿度85%から92%、温度24度から27度である[1]

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このキノコはいわゆる毒キノコである。幻覚を起こすシロシビンが多量に含まれている。毒はワライタケより強いと言われている。いわゆるマジックマッシュルームである。このため日本では法によって不法な所持・使用が禁止されている[2]

アメリカでは、シロシビンが規制物質法で規制されているため、含有するキノコは規制物質の「容器」だと考えられ、所持・使用はほとんどの州で禁止されている。

滋賀県で採取された本種のシロシビン含有成分の量は、重量当たり、0.64-0.7%であった[5]。なおベオシスチンの方が多く、N-Nジメチルトリプタミン(DMT)も検出された[5]

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j John Allen (1994). “A Short Note on the Home Cultivation of Panaeolus subbalteatus”. Psychedelic Illuminations (5): 32-33. https://www.erowid.org/plants/mushrooms/mushrooms_cultivation24.shtml. 
  2. ^ a b c d e f 長沢栄史『日本の毒きのこ』(増補改訂版)学習研究社、2009年、131,269頁。ISBN 978-4-05-404263-6 
  3. ^ a b c 小山昇平『日本の毒キノコ150種』ほおずき書籍、1992年、80頁。ISBN 4-89341-168-3 
  4. ^ Gastón Guzmán , John W. Allen , Jochen Gartz (1998). “A worldwide geographical distribution of the neurotropic fungi, an analysis and discussion” (pdf). Annali del Museo civico di Rovereto (14): 189–280. http://www.museocivico.rovereto.tn.it/UploadDocs/104_art09-Guzman%20&%20C.pdf.  (on Fondazione Museo Civico di Rovereto)
  5. ^ a b c 草野源次郎「キノコの毒成分」『遺伝』第39巻第9号、1985年9月、p32-36、NAID 40000130647 
  6. ^ 玉那覇康二「沖縄県で発生している自然毒中毒事例」『マイコトキシン』第63巻第1号、2013年1月31日、55-65頁、doi:10.2520/myco.63.55NAID 10031161946 

外部リンク 編集