タチガシワ(立柏、学名:Vincetoxicum magnificum)はキョウチクトウ科(旧分類ではガガイモ科カモメヅル属多年草

タチガシワ
福島県福島市 2013年5月 
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asteridae
: リンドウ目 Gentianales
: キョウチクトウ科 Apocynaceae
: カモメヅル属 Vincetoxicum
: タチガシワ V. magnificum
学名
Vincetoxicum magnificum (Nakai) Kitag.
シノニム

Cynanchum magnificum Nakai

和名
タチガシワ(立柏)

特徴 編集

地下にはやや太い多数のひげがある。は直立し、分枝せず、高さは30-60センチメートルになり、細毛がある。は長さ2-4センチメートルの葉柄をもって茎の先に集まって数対対生し、葉身は広卵形から菱状広楕円形で縁は全縁、花後葉は大きくなり、長さ10-17センチメートル、幅7-13センチメートルになり、先端は急にとがり、基部は円形から広いくさび形になる。葉脈上にわずかに細毛が生える。

花期は5-6月。茎の先端に淡黄紫色のが集まってやや密につける。小花柄は長さ1-2センチメートル、は緑色で深く5裂し、裂片は長さ2ミリメートルで披針形になる。花冠は深く5裂し、無毛で、裂片の長さは3.5ミリメートルになり、先は鈍形になる。副花冠は小さく、裂片は半円形になる。

花が終わると長さ7-15センチメートルの、旧ガガイモ科特有の果実(袋果)をつける。ふつう、袋果は2個つき、互いに斜上する。秋に袋果が割れ、白い絹糸状の冠毛をつけた種子がはじける。

分布と生育環境 編集

日本固有種。本州および四国に分布し、温帯落葉樹林下の木陰に生育する。

和名の由来 編集

同属のツルガシワ(蔓柏)に似るが、茎がつる状にならず直立することから、タチガシワ(立柏)という。

学名は無効 編集

Vincetoxicum magnificum という学名は無効である[1]。そもそもこの学名は中井猛之進が1937年にイケマ属英語版の新種として発表した Cynanchum magnificum が基となっている[2]。中井は〈過去に松村任三ツクシガシワ[注 1]と混同していた関東産の植物〉がタチガシワであり、これに Cynanchum magnificum という学名を与えたという旨を日本語で述べている[4]。しかし国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)第39条第1項の規定では1935年1月1日から2011年12月31日の間に新種(あるいは新変種や新亜種)として発表された学名は 1.ラテン語による形態記述もしくは 2. ラテン語による形態記述の掲載されている文献への言及を伴っていなければならないとされており[5]、こうした規定に則れば Cynanchum magnificum という学名は無効ということになる。そして Cynanchum magnificum を基[注 2]北川政夫が1959年に発表した Vincetoxicum magnificum[6] も基礎異名が無効である以上、同様に無効ということとなる。

ギャラリー 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 松村の『帝国植物名鑑』上で学名 Cynanchum macrophyllum (Siebold & Zucc.) Matsum.、和名「タチガシハ」 とされているもの[3]が該当。ツクシガシワは九州産で、現在はカモメヅル属の Vincetoxicum macrophyllum Siebold & Zucc. とされている。
  2. ^ 基礎異名英語版 (バシオニム)。

出典 編集

  1. ^ POWO (2024). Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:96372-1 2024年4月26日閲覧。
  2. ^ 中井 (1937:69).
  3. ^ 松村, 任三 (1912). 帝國植物名鑑 下巻 顯花部 後編. 丸善. p. 510. https://www.biodiversitylibrary.org/page/12323181 
  4. ^ 中井 (1937:68–69).
  5. ^ Article 39. 2024年4月25日閲覧。
  6. ^ 北川, 政夫 (1959). “東亜植物断想録 (12)”. 植物研究雑誌 34 (12): 364. doi:10.51033/jjapbot.34_12_4456. 

参考文献 編集