ターボライナー(Turboliner)とはロー社が1976年アムトラック向けに製造した車両である。車両はディーゼルガスタービンを備えており、ニューヨークペンシルベニア駅(ペン・ステーション)とグランド・セントラル駅につながるトンネル区間においては第3軌条から集電した。

Amtrak RTG Turboliner at Ann Arbor, Michigan in 1975
Amtrak RTL Turboliner at East Rochester, New York in 1983
アムトラックターボライナー。RTG (上図) とRTL(下図)

ロー社のターボライナーはチュルボメカ製のガスタービンエンジンを搭載したフランスのANF社のガスタービンRTG車両(ターボライナー)を基にしている。RTGはTGV車両の試作車であるTGV 001の先駆けである。

燃料価格の高騰によりロー社とANFは合衆国内での運行を中止した。いくつかのガスタービン車両はフランスの非電化区間で2005年まで運行されたが、TGVの新線開通により終了した。

背景 編集

アムトラックは、1971年5月1日に、アメリカ国内ほぼすべての民営都市間旅客鉄道を引き継ぎ、数十年にわたる衰退からの再興を担うことになった。アムトラックは、それまで運行されていたおよそ440本の列車のうち、184本を保持していた[1]。これらを運行するために、アムトラックは300両の機関車(電気機関車およびディーゼル機関車)と1190両の客車を継続保有していたが、そのほとんどは1940年代から1950年代のものだった[2]

アムトラックのターボライナー導入には複数の目的があった。ターボライナーは、ディーゼル機関車やそのライバルの在来型の自動車よりも低コストで運行でき、速度も(線形に左右されるにせよ)それらを上回ると予想された。新車両の導入は前向きな宣伝材料となることも期待されていた。誕生から2年が過ぎたが、アムトラックは「お下がりの古い機材にお色直しをしただけ」というイメージに苦しめられていた。最新のガスタービン列車が、その認識を変える可能性があった[3]

1960年代後半から1970年代初頭にかけて、いくつかの国でガスタービン列車の実験が行われていた。UAC ターボトレインは、1968年以来、米国とカナダでサービスを提供していたが、結果はまちまちだった[4] 。イギリス国鉄は1972年にAPT-Eのテストを開始した。さまざまな理由から、イギリス国鉄ガスタービンエンジンを推進しなかった[5]

RTG ターボライナー 編集

RTG Turboliner
 
RTGターボライナー。ミズーリ州ユニオン駅 (セントルイス)英語版。1974年
 
中西部を運行中のターボライナーで車内検札中の車掌。1974年
運用期間 1973–1994
製造者 ANF(現ボンバルディア・トランスポーテーション・フランス英語版
製造年 1973–1975
製造両数 6編成
編成 5両
列車番号 58–69
定員 296人
運用者 アムトラック
仕様
車体長 86 ft 1 in (26.24 m)
全幅 9 ft 5+12 in (2,883 mm)[6]
最高速度 125 mph (201.2 km/h)
エンジン形式 ターボシャフトエンジン
出力
  • 2,280 hp (1,700.2 kW) (RTG)
  • 3,000 hp (2,237.1 kW) (RTG-II)
軸配置(アメリカ式) B-2
台車 クルーゾ=ロワールフランス語版
軌間 4 ft 8+12 in (1,435 mm)
備考
[7]
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RTGとはロー社のRTL列車を原型とした列車である。シカゴ1970年代から1980年代初頭まで使用された。1973年末、RTGはシカゴに到着した。サクラメント通り37番地のアムトラックのブライトン公園ターボ工場で組み立てが始まった。フォード自動車のクレジット会社によるアムトラックへのリースで6編成のRTGがアムトラックに導入された。残りの4編成は内装が良くなり自動式ドアが装備された。最初の2編成は標準的なものだった。総計6編成が製造された。動力車は編成の両端に設けられた。番号は58~69が割り当てられた。どの編成も2両の動力車、2両の客車とバー/グリル車で構成されていた。編成はシカゴからセントルイスポートヒューロンデトロイトミルウォーキートレド まで運行され、優雅なひと時を送ることが出来た。

70年代におけるエネルギー危機により燃料消費を抑えるために、高出力且つ低燃費の主機関が搭載される等の改造が施された。その結果、燃料消費を抑える為に編成あたりわずか2基中1基のエンジンで運行される事になった。より小型のタービンエンジン アスタゾウ(Astazou)で駆動される発電機が先頭車と最後尾の車両に搭載され客車に380V/50Hzの電力を供給した。これは後期のRTLではアムフリート車と同じくアメリカ標準の480V/60Hzが供給され、対照をなした。

RTGはヨーロッパ式のバッファーとネジ式連結器が使用されていたが、後のRTLではアメリカ式の連結器が用いられた[8]

ブライトン公園の工場は 1981年に閉鎖され、装置は保管のためインディアナ州のビーチグローブへ移転された。[9]

RTL 編集

RTL Turboliner
 
RTLターボライナーがセネカ川 (ニューヨーク)英語版を渡る。ニューヨーク州サバンナ (ニューヨーク)英語版付近。1984年
 
RTLの内部。1988年
運用期間 1976–2003
製造者 ローア社英語版
製造年 1976
改修 2003
製造両数 7 編成
保存両数 3 (in storage - derelict condition)
廃車両数 4
編成 5両
列車番号 2150–2163 (formerly 150–163)
定員 264人
運用者 アムトラック
使用路線 エンパイア回廊
仕様
全長 425フィート (130 m)
全幅 10 ft (3.05 m)
最高速度 125 mph (201 km/h)
重量 308ショートトン (275ロングトン; 279 t)
エンジン形式 ターボシャフト・エンジン
出力 2,280馬力 (1,700 kW)
起動加速度 1マイル毎時毎秒 (1.6 km/(h⋅s))
電気方式 600 V DC 第三軌条方式
into グランド・セントラル駅 or ペンシルベニア駅 (ニューヨーク)
集電方式 集電靴
軸配置(アメリカ式) B-2
軌間 4 ft 8+12 in (1,435 mm)
備考
[10]
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アムトラックは追加で7編成のターボライナーを発注し、1976年から1977年にかけて導入された。これはカリフォルニア州チュラビスタローア社英語版で製造され、RTLターボライナーとして知られている[11][12]。 先のRTGシリーズをベースにしているが、アメリカ式のジャニー式連結器英語版を備え[13]、動力車の運転台英語版の設計も異なっていた[14]。 標準編成は5両で、動力車が両端にあり、食堂車1両と無動力客車2両で構成された[10]。この場合1編成で264名を輸送できた[15]。時々、アムトラックはこれに客車1両を追加して運行した[16]。これはアムトラックが導入した最後のガスタービン列車だった。在来型のディーゼル機関車の方が運行コストが安かったためである[17]

RTLターボライナーはRTGターボライナーよりも幅広で、9 ft 5+12 in (2.88 m)から10 ft (3.05 m)になり、座席にも反映された。 列車の床面の高さは、北東回廊の駅のプラットホームの高さに合わせて高くなっていた。RTGは特例で規則を免除されていたが、RTLは連邦鉄道局バフ強度要件英語版である800,000ポンド (362,873.9 kg)を満たすように設計された[6]

 
RTL-IIの前方台車の第三軌条集電靴。ペンシルベニア駅で撮影。

RTL-II 編集

1995年、アムトラックとニューヨーク州は協力して、200万ドルをかけて1編成のRTLを改造更新した。この改造で、出力1,600馬力 (1,200 kW)のチュルボメカ マキラT1タービンを2台搭載した。内装はリニューアルされ、外装の塗装も変更された。モリソン・クヌーセン英語版は動力車を改造し、アムトラックはビーチグローブ車両基地英語版で客車の内装をオーバーホールした。更新された編成はRTL-IIと呼ばれていた。エンパイア回廊と北東回廊での試運転では、最高速度は125 mph (201 km/h)に達し、燃料消費量は以前より少なくなった[18]

RTL-III 編集

1998年、アムトラックとニューヨーク州は、エンパイア回廊のサービスを改善するため、総額1億8500万ドル高速鉄道改善プログラムを開始した。

このプログラムの要は7編成すべてのRTLターボライナーのRTL-III仕様への改造だった。ニューヨーク州は事業者としてSuper Steel Schenectady社を選定し、最初の2編成は1999年に運行開始する予定だった。しかし、作業は遅延が続き、実際の運行開始は2003年4月にまでずれ込んだ。残りの5編成の当初の運行開始予定は2002年だったが、結局1編成しか完工せず、商用運行はなされなかった[19] [20]

2001年には新しいディーゼル車のGE P42DCとの番号重複を防ぐために、7編成すべての番号が振り直されるとともに、新しいアセラ・エクスプレスと共通のカラーリングen:livery)で再塗装された[21]。改造されたRTL-IIIは2001年2月15日の夜間のテスト走行では125 mph (201 km/h)の最高速度を達成した[22]

譲渡 編集

2008年4月、アムトラックはロー・ターボライナーの編成の売却を公示した。[23]

"ロー・ターボライナー売却” アムトラックは入手し得る7編成のターボライナー(直接駆動式ガスタービン)と予備部品を売却中である。どの編成も両端に動力車があり、中間の3両が客車でその中の1両は食堂車である。3編成はオーバーホールされデラウェア州に保管されている。4編成はオーバーホール中でニューヨークに保管されている。譲渡先を受付中である。: B. A. Hastings, Officer

その他の情報 編集

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ Kelly, John (2001年6月5日). “Amtrak's beginnings”. Classic Trains. 2016年9月13日閲覧。
  2. ^ Simon & Warner 2011, p. 108
  3. ^ Sanders 2006, p. 227
  4. ^ Pinkepank & Marre 1979, pp. 83–84
  5. ^ Duffy 2003, p. 403
  6. ^ a b Pier & Foster 1975, p. 4
  7. ^ Pinkepank & Marre 1979, p. 83
  8. ^ http://www.railroad.net/forums/viewtopic.php?p=273133#273133
  9. ^ RAILROAD.NET :: View topic - Turboliner information wanted!
  10. ^ a b Amtrak (1977年4月). “Join Amtrak for a journey into the future”. 2021年5月4日閲覧。
  11. ^ Solomon 2004, p. 148
  12. ^ USDOT 1994, p. 2-25
  13. ^ NTSB 1976, p. 8
  14. ^ NTSB 1981, pp. 9–10
  15. ^ Johnston 2003, p. 24
  16. ^ NTSB 1981, p. 3
  17. ^ Pinkepank & Marre 1979, p. 84
  18. ^ Vantuono, William C. (1995年3月1日). “A turbo in your future?”. en:Railway Age ( 要購読契約). 2015年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月27日閲覧。
  19. ^ Maldonaldo, Carmen (2005年2月9日). “Turboliner Modernization Project SSSI Payment Verification and Close-out Costs Report 2004-S-10”. Office of the New York State Comptroller. 2016年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月8日閲覧。
  20. ^ Martin, Ben (July 1999). “Super Steel Schenectady”. RailNews (428). オリジナルのMarch 4, 2016時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160304041323/http://www.trainlife.com/magazines/pages/185/13510/july-1999-page-56 2021年5月8日閲覧。. 
  21. ^ Simon & Warner 2011, p. 98
  22. ^ New York State (2001年2月21日). “Governor Announces Successful 125 MPH Run Of NY's High Speed Train”. 2006年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月8日閲覧。
  23. ^ http://www.progressiverailroading.com/classifieds/

参考文献 編集

外部リンク 編集