ダイムラー偵察車は、第二次世界大戦中、イギリス軍が使用した快速軽量の偵察車であり、連絡任務にも用いられた。部隊ではディンゴオーストラリアの野犬の名)としても知られた。

ダイムラー偵察車
性能諸元
全長 3.2m
全幅 1.7m
全高 1.5m
重量 3t
懸架方式 装輪式四輪駆動
速度 88.5km/h
行動距離 320km
主砲 ボーイズ対戦車ライフル
装甲 30mm
エンジン 2.5リッター6気筒デイムラーガソリン
55馬力
乗員 2名
6,626両生産
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経歴 編集

 
ドイツ兵に調査されるイギリス製のダイムラー。1942年8月にディエップの戦いカナダ軍部隊が放棄したもの

1938年イギリス陸軍省偵察車の仕様書を提出した。3種類の設計がアルヴィスBSAモーリスから出され、BSAの設計が選定された。実際の生産はBSAグループの車両生産部門であるデイムラーで行われた。この車両は、公式にダイムラー偵察車と命名されたが、競作となったアルヴィスの試作型の名前から、ディンゴという名称がより広く知られた。

ダイムラーは、戦時中のイギリスで作られた最優秀の装甲戦闘車両の1つであり、乗員2名の小型装甲車である。そのサイズと前面30mmの装甲から、良好な防御力を持ち、エンジンは車両の後部に配置されている。ダイムラーのトランスミッションはよくできていて、プリセレクターギアボックスと流体継手を備え、前後方に5段変速ができる。原型車両は四輪操舵だったが、不慣れな操縦手には操縦が難しかったため、この機構はマークII以降削除された。

ダイムラーはまた、不整地を横断するために車体床下を平板なプレートにしたが、これは、地雷に極度に弱かった。予備車輪はないが、気圧式ではなくゴム式のランフラットタイヤ(ソリッドタイヤに近い)を用いることから予備の必要はない。堅いタイヤであるにもかかわらず、独立懸架装置は本車に非常に快適な走行能力を与えた。また、操縦手の隣には旋回式座席があり、必要な時には乗員がNo.19無線装置またはブレン軽機関銃を操作することができる。また、本車は、理想的な静かなエンジンを搭載し、シルエットも低い。

ダイムラーは最初、ナチス・ドイツのフランス侵攻におけるイギリス海外派遣軍イギリス第1装甲師団および第4ノースアンバーランド・フュージリアーズ)で使われた。これは大成功し、1952年デイムラー製のフェレット装甲車の出現まで運用された。1970年代中ごろになってもまだ、キプロスポルトガルスリランカでは本車が使用された。

派生型 編集

量産を通じ、5種類の派生型が生産された。大部分はマイナーな改変である。1939年-1945年までの間に、6,626両が生産された。

マークI
オリジナルの形式。四輪駆動ステアリングと滑動式の天井を備える。
マークIA
屋根が折り畳み式となった。
マークIB
エンジン冷却ファンが逆に配置された。
マークII
前輪駆動型。
マークIII
水冷式のエンジンを装備。天井がない。

密接に関連した車両として、リンクス偵察車カナダオンタリオ州フォードによって生産された。3,255両が生産された。

マークI
マークII
強化車体。天井がない。

もう1つのダイムラー偵察車のクローンは、イタリアランチア社によって開発された、リンチェ装甲車(アウトブリンダ・リンチェ)である。1943年-1944年にかけて129両が生産されたこれらの車両は、ドイツ国防軍イタリア社会共和国部隊(RSI)で使用された。

出典と外部リンク 編集

  • Forty, George (1996). World War Two Armoured Fighting Vehicles and Self-Propelled Artillery. Osprey Publishing. ISBN 1-85532-582-9 
  • The Dingo on exhibit at the Tank Museum
  • Ford Lynx Scout Car at mapleleafup.org
  • Dutch Cavalry Museum has a Daimler Dingo in its exposition.
  • Daimler Scout Car 'Dingo' wwiivehicles.com
  • Comprehensive research project regarding Daimler Dingo's & Armoured cars