ダルラマン宮殿ペルシア語: قصر دار الامان‎、パシュトー語: دار الامان ماڼۍ‎、: Darul Aman Palace)は、アフガニスタンの首都カーブル近郊にある、西洋様式の宮殿建築である。

ダルラマン宮殿
ダルラマン宮殿北面(2008年10月撮影)
地図
概要
用途 宮殿
自治体 カーブル
アフガニスタンの旗 アフガニスタン
テンプレートを表示

1920年代初頭、近代化政策を進めたアフガニスタン国王アマーヌッラー・ハーンによって、将来の国会議事堂として建築された建物である。アマーヌッラー・ハーン失脚後に建物は一時放置され、その後は国防省の庁舎として使われるなど変遷を経た。1990年代初頭のアフガニスタン紛争に巻き込まれてからは長らく廃墟と化していたが、2016年から2020年にかけて復元作業が行われた。

名称 編集

ダルラマンとは「 Aman(安全)の居所(家)」という意味であるが、「アマーヌッラー (Amanullah) の居所」という意味をかけているという[1]。ペルシャ語・パシュトー語の発音により近い形でカナ転記すれば「ダールッラーマーン」である。この語はアラビア語 دار الأمن (ダール・ル=アマーン Dar al-Aman)に由来する(概念についてはDivisions of the world in Islam参照)。

歴史 編集

ダルラマン宮殿は、1920年代の初め、アフガニスタン(バーラクザイ朝)の国王アマーヌッラー・ハーン(1892年 - 1960年、在位:1919年 - 1929年)による近代化政策の一環として建設された。この宮殿は、王が建設しようとした新首都ダルラマン英語版の一部であり、新首都は狭軌鉄道カーブル=ダルラマン・トラム)によってカーブルと接続されていた[2]

宮殿は堂々とした新古典主義建築である。カーブル中心部からは南西へ16km離れており、カーブル西部の平坦で乾燥した谷を望む丘の上に位置する。将来、議会を開催する建物として企図されたものであったが、アマーヌッラー・ハーンが宗教的保守派によって権力の座から追われ(1929年に国外亡命を余儀なくされた)改革が頓挫すると、長らく使われずに放置されていた。

ダルラマン宮殿は、1969年に火災で全焼した。1970年代から1980年代にかけて、この建物は修復されて国防省の庁舎として使用された。1978年の共産党クーデター (Saur Revolutionでは、建物に放火された。ソ連によるアフガニスタン侵攻が終了した1990年代初頭、カーブル奪取を図ったムジャーヒディーン諸派閥の戦闘(アフガニスタン紛争 (1989年-2001年) 参照)によって、この建物は再び被害を受けた。ムジャーヒディーンによる激しい砲撃を受けた建物は全焼し、廃墟となった。

2005年、宮殿を改修し、アフガニスタンの将来の議会議事堂として使う計画が発表された[3]。この計画の資金は、外国人やアフガニスタン人富裕層といった民間の寄付によって賄われるとされていたが、改修工事が着手されることはなかった(2010年7月時点で、宮殿を改築する徴候は見られていなかった)。伝えられるところによれば、2012年4月15日ターリバーンが行ったとされる一連の攻撃において、攻撃目標のひとつとされた[4]。なお、アフガニスタン国民議会の新しい議事堂は、宮殿の向かい側に、インド政府の手によって2015年12月に竣工した[5]

2016年初頭、1919年のアフガニスタン独立100周年を記念する目的で、宮殿を復元するプロジェクトが始動した[6][7][8]。2017年春までに、屋内の150室から約600トンの破片が撤去されると共に、内壁の石膏コンクリートが除去された[9]。プロジェクトには女性を含む80人以上のエンジニア建築家が参加し、主要な再建工事のほとんどは2019年7月までに完了した[10]。その後も工事は続けられ、2020年の建国記念日までに全て完了した[7]

2020年、アフガニスタンにおける2019年コロナウイルス感染症のパンデミック英語版を受け、患者を一時的に隔離・治療する200床のセンターとして宮殿を使用することとなり、同年4月18日に開所式が行われた[11][12]

ギャラリー 編集

付近 編集

脚注 編集

  1. ^ Clements, Frank (2003) Conflict in Afghanistan, a Historical Encyclopaedia. ABC-CLIO, Santa Barbara, ISBN 1-85109-402-4, page 29, 67.
  2. ^ Kabul to Darulaman railway”. Sndrewgrantham.co.uk. 2016年2月24日閲覧。
  3. ^ Darul Aman Palace”. 2009年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月1日閲覧。
  4. ^ “Taliban strike across Afghanistan in 'spring offensive'”. BBC News. (2012年4月16日). http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-17719956 
  5. ^ “Modi inaugurates Afghan parliament building”. The Hindu. (2015年12月25日). http://www.thehindu.com/news/international/modi-inaugurates-afghan-parliament-building/article8028735.ece?css=print 2016年2月24日閲覧。 
  6. ^ Feature: Afghan former king's reconstructed palace beautifies Kabul landscape”. Xinhua (2019年8月10日). 2021年1月26日閲覧。
  7. ^ a b Restored national treasure a bright spot for Afghans as they celebrate independence day holiday (Stars and Stripes, 21 August 2020). https://www.stripes.com/theaters/middle_east/restored-national-treasure-a-bright-spot-for-afghans-as-they-celebrate-independence-day-holiday-1.642045
  8. ^ Renovation of Darul Aman Palace To Resume In Spring -”. 2022年2月6日閲覧。
  9. ^ Saving an Afghan Symbol, With Afghans Only”. The New York Times (2017年4月5日). 2017年4月6日閲覧。
  10. ^ “Afghan palace emerges from ruins as centenary nears”. Arab News. (2019年8月16日). https://www.arabnews.com/node/1540736/offbeat 2021年1月26日閲覧。 
  11. ^ COVID-19 Cases Reach 933 in Afghanistan” (英語). TOLOnews. 2020年5月16日閲覧。
  12. ^ Afghanistan turns iconic palace into isolation facility”. www.aa.com.tr. 2020年5月16日閲覧。

外部リンク 編集

座標: 北緯34度27分54.78秒 東経69度7分9.47秒 / 北緯34.4652167度 東経69.1192972度 / 34.4652167; 69.1192972