チリの政党

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チリの政党では、チリにおける政党について説明する。

解説 編集

1973年9月のクーデター前までのチリは、「三等分構造」(tres tercios)と呼ばれ、左派(社会党、共産党)・中道(キリスト教民主党)・右派(国民党)がそれぞれ3分の1程度の政治勢力を有していた。しかし、73年9月にピノチェト将軍を中心とするクーデターが発生し、軍政が敷かれたことで既存政党は全て解散させられた。そして1990年の民政移行後は、上下両院の選挙制度に「修正2名制」[1]が導入されたこともあって、コンセルタシオン・デモクラシア(左派・中道)、変革のための同盟(右派・中道右派)という2大政党連合を中核とする穏健な多党制へと変化した。しかし、2015年に修正2名制に代わる新たな選挙制度[2]が可決成立して2017年総選挙から運用が開始された事、新多数派(コンセルタシオンの後身)の分裂、新興の左派政党連合の誕生によって2大政党連合の構図は大きく変化している[3]

アウグスト・ピノチェト政権による軍政から民政移管後は、中道左派コンセルタシオン・デモクラシアが一貫して政権を維持していたが、2010年1月の大統領選挙で中道右派の「変革のための同盟」が推すセバスティアン・ピニェラ候補が当選を果たしたことで、中道左派から中道右派への政権交代が初めて行われた。コンセルタシオンは2013年4月に共産党など左派政党も加えた「新多数派」に改編され[4]、同年12月の大統領選挙でミシェル・バチェレ元大統領が返り咲き当選を果たし、政権与党となった。その後、新多数派は意思決定のあり方をめぐって対立が生じ、左派政党(社会党・共産党・民主主義のための政党など)による「多数派の力」(La Fuerza de la Mayoría)とキリスト教民主党を中心とした「民主的集中」(Convergencia Democrática)に分裂。中道右派は2015年1月に新たな政党連合として「チレ・バモス」(Chile Vamos)を結成した[5]

2017年1月、2011年に行われた学生運動のリーダーが中心となって、新自由主義モデルの克服、左右2大政党ブロックに代わる新たな選択肢、参加型民主主義の推進を掲げる「広域戦線」(Frente Amplio)が結成[6]。同年11月に行われた大統領選挙第1回投票では2割台の得票を得て3位となり、2位の「多数派の力」候補に肉薄、同時に行われた議会選挙でも躍進し、チレ・バモスと多数派の力に次ぐ、第3勢力となった[7]

政党および政党連合の一覧 編集

全国政党 編集

サンチアゴ首都州を含む全ての州に組織を持つ政党。

地方政党 編集

法的に未登録の政党 編集

政党連合 編集

  • 多数派の力(La Fuerza de la Mayoria)新多数派に参加していた左派政党によって結成。
    • チリ社会党(PS)
    • 民主主義のための党(PPD)
    • チリ共産党(PCC)
    • 急進社会民主党(PRSD)
  • 民主集中(Convergencia Democrática)新多数派に参加していたキリスト教民主党を中心と
    • キリスト教民主党(PDC)、
    • 拡大社会運動(MAS)
    • 市民左派(IC)
  • 広域戦線(Frente Amplio)2017年1月に結成された新興左派政党による政党連合
    • 民主革命(RD)
    • 人道党(PH)
    • 自由党(PL)
    • 平等党(IGUALDAD)
    • 環境緑の党(PEV)
    • 力(PODER)
  • チレ・バモス(Chile Vamos)-右派及び中道右派勢力による政党連合

かつて存在した政党連合 編集

  • 人民連合(Unidad Popular) - チリ社会党、チリ共産党、急進党、人民統一行動運動、独立人民行動、キリスト教左翼などが参加。
  • 人民戦線(Frente Popular)
  • コンセルタシオン・デモクラシア(民主政党連合、Concertación de Partidos Por la DemocraciaCoalition of Parties for Democracy)-中道左派及び中道勢力による政党連合。2013年に共産党など左派政党も加えた新たな政党連合「新多数派」へ改編された。
  • 我々といっしょにできる(フント・ポデーモス・マス、Juntos Podemos Más) -コンセルタシオンに参加しない左翼政党を中心とした政党連合。
  • 新多数派(Nueva Mayoria)-コンセルタシオン・デモクラシアに参加していた政党に加え、チリ共産党や市民左派など左派政党が参加した政党連合。2013年に結成されたが、2017年の大統領選挙を前に左派政党を中心とする「多数派の力」(La Fuerza de la Mayoria)と中道政党を中心とする「民主的集中」(Convergencia Democrática)に分裂した。
  • チリのための同盟 (Alianza por ChileAlliance for Chile) - 国民革新党(RN)、独立民主連合(UDI)の中道右派政党連合。1988年に行われた軍政継続を問う国民投票を前に結成された「民主主義と進歩の同盟」(Pacto Democracia y Progreso)を母体としている。
  • 変革のための同盟(Coalición por el Cambio)-「チリのための同盟」を前身とする右派及び中道右派勢力による政党連合
注:カッコ内の表記は左側がスペイン語表記、右側が英語表記である。

脚注 編集

  1. ^ 正式には「修正多数代表2名制」(sistema binominal mayoritario corregido)と呼ばれ、有権者は各政党若しくは政党連合が提出した候補者名簿から1名を選んで記名投票する。しかし、大選挙区制と違って得票率に応じて上位2名が当選するのではなく、候補者名簿毎に得票集計がなされ、同一政党(若しくは政党連合)の候補者2名が当選するには、次点となった別の候補者名簿が得た得票率の2倍以上の得票を得なければならず、2倍未満の場合、2位は次点リストの候補者が当選する仕組みとなっている。そのため、第3党以下の政治勢力は議席を得ることが著しく困難な仕組みとなっている。事実、共産党を中心とする「フント・ポデーモス・マス」は1989年以降の国会議員選挙で議席を得ることが出来ない状況が続いていた。しかし2009年12月、大統領選挙と同時に実施された上下両院の議員選挙では、共産党がコンセルタシオンの候補者名簿に参加することで3名の当選者を出すことが出来た。参照:北野浩一「第5章 チリ・バチェレ政権の成立と課題」『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』178頁。“チリ大統領選 決選投票へ 右派過半数及ばず 議会選 共産党36年ぶりの議席”. しんぶん赤旗. (2009年12月9日). https://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-12-15/2009121507_01_1.html 
  2. ^ 下院は定数が120人から30人増の150人となり、一律2人区の60選挙区から定数3~8名の28選挙区へと改められ、ドント式で政党や政党連合に議席配分される方法になった。また「片方の性が6割を超えてはならない」とするクォーター制も導入された。三浦航太「2017年チリ総選挙 --新しい選挙制度と政治勢力はチリの政治を変えるのか?--」『ラテンアメリカ・レポート』第35巻第1号、2018年、1-16頁、doi:10.24765/latinamericareport.35.1_12020年5月20日閲覧 
  3. ^ 前掲書1頁
  4. ^ ““Nueva Mayoría” se denominará pacto presidencial opositor para la primaria del 30 de junio”. biobiochile.cl. (2013年4月29日). http://www.biobiochile.cl/2013/04/29/nueva-mayoria-se-denominara-pacto-presidencial-opositor-para-la-primaria-del-30-de-junio.shtml 2014年9月12日閲覧。 
  5. ^ “UDI, RN, PRI y Evópoli formalizan nueva coalición: "Queremos ser gobierno en 2018"”. emol. (2015年1月29日). https://www.emol.com/noticias/nacional/2015/01/29/701373/udi-rn-pri-y-evopoli-por-nueva-coalicion.html 2020年5月14日閲覧。 
  6. ^ 脚注2の前掲書6頁
  7. ^ 脚注2の前掲書9、12頁

関連事項 編集

参考文献 編集

外部リンク 編集