ティレル・024 (Tyrrell 024 ) は、ティレル1996年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カー。チーム4年目の片山右京と、2年目のミカ・サロがドライブした。

ティレル・024
カテゴリー F1
コンストラクター ティレル
デザイナー ハーベイ・ポスルスウェイト
先代 ティレル・023
後継 ティレル・025
主要諸元
シャシー カーボンファイバー ハニカム コンポジット
サスペンション(前) プッシュロッド
サスペンション(後) プッシュロッド
エンジン ヤマハ OX11A 72度 V10
トランスミッション ティレル製 6速 縦置き セミAT
燃料 エルフ
タイヤ グッドイヤー
主要成績
チーム ティレル・ヤマハ
ドライバー 18. 片山右京
19. ミカ・サロ
コンストラクターズタイトル 0
ドライバーズタイトル 0
初戦 1996年オーストラリアグランプリ
出走優勝ポールFラップ
16000
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概要 編集

開発 編集

前作を受け継がず、完全に新設計された。ヤマハの新しいV10エンジンは非常に小型軽量で、そのサイズが024の大きな利点となる事が期待された。それを活かしてリヤカウルはライバルマシンに比してすっきりと絞り込まれた。ティレルのテクニカルディレクター、ハーベイ・ポスルスウェイトは「風洞実験での長い検証を経て、サイドポンツーンが全チームの中でも最も後退し、前後のウイングをよく効かせてしっかりと路面に押し付けようというコンセプトで細部に改良を施した。潤滑システムとギアシフトのスピードアップも改良されている。」と2月のエストリルテストでコメントしている[1]。前年023に問題をもたらしたハイドロリック・サスペンションは取り外され、前後共に3本スプリングダンパー方式が採用された。

シェイクダウンテストでは小柄な片山右京のポジショニングの問題が発生、ポストレスウェイトいわく「サイドプロテクション規定でコクピットサイズが大きくなった。右京は初めて024に乗った時、顔がすっぽり隠れて見えなくなってしまった。まるでボトルの中に入ってしまった豆だった。」というほどオーバーサイズだったため、実戦までにステアリング位置など修正が必要となった[1]

1996年シーズン 編集

024は前年型の023に比べると大きく進歩したものの、ヤマハ・OX11Aエンジンが信頼性に欠け、右京はヨーロッパGPでの失格を挟んで8戦連続リタイアとなる。チームは翌シーズンからフォードエンジンの搭載を決定することとなる。

OX11Aはヤマハにとっての意欲作であり、超軽量・コンパクトなエンジンであった。ショートボア、ロングストロークで重量は105kgであったが、初年度は軽量、小型化に拘り過ぎたため剛性不足など初期トラブルが多く、目立った結果を残すことはできなかった。ヤマハは翌年アロウズと組むこととなる。

第11戦ドイツGPが行われたホッケンハイムリンクでは、超高速サーキットでドラッグを少しでも減らそうという狙いから、幅の狭いフロントタイヤを後輪にも装着する「全輪フロントタイヤ」という奇策を試みた。しかし、グッドイヤータイヤ側から「フロントタイヤは駆動用に設計されていない」とクレームを付けられ、フリー走行後にFIAから禁止された。

サロはシーズンを通して3度ポイントを獲得したが、片山右京はノーポイントに終わり、翌シーズンはミナルディに移籍した。チームはサロの得た5ポイントによってコンストラクターズランキング8位でシーズンを終えた。また024のマシン自体がサロの体型に合わせたものであり、シーズン終了まで小柄な右京には大きすぎるポジションとなってしまった。

スペック 編集

シャーシ 編集

  • 型名 024
  • ホイルベース 2,940mm
  • 前トレッド 1,700 mm
  • 後トレッド 1,610 mm
  • サスペンション プッシュロッド、ロッカー式スプリング&ダンパー、サードスプリング
  • ブレーキ AP
  • ホイール フォンドメタル
  • タイヤ グッドイヤー

エンジン 編集

 
ヤマハ・OX11A
  • 型名 ヤマハOX11A
  • 気筒数・角度 V型10気筒・72度
  • 排気量 2,996 cc
  • スパークプラグ NGK
  • インジェクション ザイテック
  • 燃料・潤滑油 エルフ

F1における全成績 編集

(key) (太字ポールポジション

チーム エンジン タイヤ ドライバー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 ポイント 順位
1996年 ティレル ヤマハ V10 G  
AUS
 
BRA
 
ARG
 
EUR
 
SMR
 
MON
 
ESP
 
CAN
 
FRA
 
GBR
 
GER
 
HUN
 
BEL
 
ITA
 
POR
 
JPN
5 8位
片山右京 11 9 Ret DSQ Ret Ret Ret Ret Ret Ret Ret 7 8 10 12 Ret
ミカ・サロ 6 5 Ret DSQ Ret 5 DSQ Ret 10 7 9 Ret 7 Ret 11 Ret

参照 編集

  1. ^ a b 全チーム「テスト総括」開幕までの熱き戦いを追う TYRRELL 024 YAMAHA F1グランプリ特集 Vol.82 36頁 ソニーマガジンズ 1996年4月16日発行
  • レーシングオン・アーカイブス vol.04. 三栄書房. (2011). pp. 118-121. ISBN 978-4-7796-1239-8 
  • Henry, Alan (ed) (1996). AUTOCOURSE 1996-97. Hazleton Publishing. pp. 86-88. ISBN 1-874557-91-8