トゥザヴィクトリー

日本の競走馬

トゥザヴィクトリー(欧字名:To The Victory1996年2月22日 - 2023年5月14日)は、日本競走馬繁殖牝馬[1]

トゥザヴィクトリー
第59回桜花賞パドック(1999年4月11日)
欧字表記 To The Victory[1]
品種 サラブレッド[1]
性別 [1]
毛色 鹿毛[1]
生誕 1996年2月22日[1]
死没 2023年5月14日(27歳没)
登録日 1998年11月5日
抹消日 2002年4月4日
サンデーサイレンス[1]
フェアリードール[1]
母の父 Nureyev[1]
生国 日本の旗 日本北海道早来町[1]
生産者 ノーザンファーム[1]
馬主 金子真人[1]
調教師 池江泰郎栗東[1]
厩務員 市川明彦[2]
競走成績
タイトル JRA賞最優秀4歳以上牝馬(2001年)[1]
生涯成績 21戦6勝(日本国外2戦0勝)[1]
獲得賞金 6億1664万6900円[1]
勝ち鞍
GI エリザベス女王杯 2001年
GII 阪神牝馬特別 2000年
GIII クイーンステークス 2000年
GIII 府中牝馬ステークス 2000年
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2001年エリザベス女王杯GI)優勝馬である。その他の勝ち鞍に、2000年阪神牝馬特別GII)、クイーンステークスGIII)、府中牝馬ステークスGIII)。

競走馬時代 編集

3 - 4歳時(1998年-1999年) 編集

1998年にデビューし、新馬戦を快勝。翌1999年1月の福寿草特別ではスリリングサンデーの2着に敗れる。ちなみにこの競走の3着は、その年の東京優駿(日本ダービー)を2着、菊花賞を優勝したナリタトップロードである。他にもこの競走にはのちの重賞馬であるミッキーダンスが出走していた。

続くつばき賞を勝ち、報知杯4歳牝馬特別を目指すが体調不良で回避。翌週のアネモネステークスに出走するが3着に敗れ、桜花賞への優先出走権を逃す。結局桜花賞には抽選で出走したが、プリモディーネらに差され3着に敗れる。1番人気に推された優駿牝馬(オークス)では先行するも、ゴール直前でウメノファイバーの末脚に屈し2着に敗れる。休み明けのローズステークスは1番人気に推されながら、期待を裏切り4着。秋華賞でも1番人気に推されたが13着と惨敗し、休養を余儀なくされた。

5歳時(2000年) 編集

復帰3戦目のクイーンステークスで重賞を初制覇すると、次の府中牝馬ステークスも勝ち、エリザベス女王杯へ出走。2番人気に支持されるもファレノプシスの4着に敗れる。1か月後の阪神牝馬特別で勝って重賞3勝目を挙げた。

5 - 6歳時(2001年-2002年) 編集

悲願のGI制覇に向け、陣営はダートに路線変更を決め、2001年のフェブラリーステークスに出走。初のダート挑戦ながらノボトゥルーの3着と好走した。

その後、ドバイ遠征を計画し、ドバイワールドカップドバイデューティーフリーゴドルフィンマイルに登録。ドバイワールドカップはウイングアローレギュラーメンバーが選出され、トゥザヴィクトリーはドバイデューティーフリーに選出された。しかし、ウイングアローが体調不良により辞退したため、トゥザヴィクトリーが出走意思を表明しドバイワールドカップに選出された。 ドバイワールドカップでは世界の強豪を相手に奮闘し、牝馬としてはドバイワールドカップ史上最高着順となる2着で入線し、史上初めてドバイワールドカップで賞金を獲得した牝馬となった。なお、2023年現在もドバイワールドカップにおける牝馬の最高着順記録となっている[注 1]

帰国後初戦となるエリザベス女王杯では、長期休み明けもあり歳下の牝馬二冠馬テイエムオーシャンらに人気を許すものの、それまでの先行策から一転、道中は脚をためてゴール寸前で差し切り、混戦を制して遂に悲願のGIタイトルを奪取した。レース後、鞍上の武豊は「ヴィクトリーに勝たせるにはこれしかないという乗り方をした」と語っている。なお、この時に更新したエリザベス女王杯のレコードタイムは2023年現在も破られておらず、JRA-GⅠのレコードとしては最古のものになっている[注 2]。次走ジャパンカップでは四位洋文を鞍上に迎えたが、道中で引っかかってしまい14着と大敗した。しかし、続く有馬記念では逃げてマンハッタンカフェの3着に粘り、テイエムオペラオーに先着した唯一の牝馬となった。そして、ドバイでの善戦やエリザベス女王杯での勝利が評価され、この年のJRA賞で最優秀4歳以上牝馬に選ばれ、ようやく5歳にしてJRA賞初受賞となった。

2002年初戦となったフェブラリーステークスは4着、2年連続の出走となったドバイワールドカップでは11着に惨敗。同レースを最後に現役を引退し、繁殖生活に入った。

競走成績 編集

年月日 競馬場 競走名 人気
オッズ
着順 距離(馬場) タイム
(上り3F)
騎手 勝ち馬/(2着馬)
1998.12.13 阪神 3歳新馬 1人 1.4 01着 芝1600m(良) 1:39.1 (36.4) 幸英明 (スピードマニア)
1999.01.10 京都 福寿草特別 500万下 2人 2.8 02着 芝2000m(良) 2:02.2 (35.4) 武豊 スリリングサンデー
0000.01.30 京都 つばき賞 500万下 1人 1.2 01着 芝2000m(良) 2:02.0 (35.8) 武豊 (タヤスタモツ)
0000.03.20 阪神 アネモネS OP 1人 1.4 03着 芝1400m(重) 1:25.6 (39.0) 武豊 ハギノスプレンダー
0000.04.11 阪神 桜花賞 GI 5人 9.4 03着 芝1600m(良) 1:35.9 (36.9) 幸英明 プリモディーネ
0000.05.30 東京 優駿牝馬 GI 1人 3.6 02着 芝2400m(良) 2:26.9 (35.1) 武豊 ウメノファイバー
0000.09.26 阪神 ローズS GII 1人 1.4 04着 芝2000m(良) 2:01.0 (35.9) 武豊 ヒシピナクル
0000.10.24 京都 秋華賞 GI 1人 3.3 13着 芝2000m(良) 2:01.0 (37.9) 武豊 ブゼンキャンドル
2000.06.11 東京 エプソムカップ GIII 3人 7.0 05着 芝1800m(不) 1:50.1 (37.5) 蛯名正義 アメリカンボス
0000.07.09 阪神 マーメイドS GIII 1人 2.8 02着 芝2000m(良) 1:59.1 (36.0) 幸英明 フサイチエアデール
0000.08.13 札幌 クイーンS GIII 1人 1.8 01着 芝1800m(良) 1:46.8 (35.5) 藤田伸二 エイダイクイン
0000.10.15 東京 府中牝馬S GIII 1人 2.7 01着 芝1800m(良) 1:48.3 (33.5) 四位洋文 (ハイフレンドコード)
0000.11.12 京都 エリザベス女王杯 GI 2人 3.1 04着 芝2200m(良) 2:13.4 (34.5) 四位洋文 ファレノプシス
0000.12.17 阪神 阪神牝馬特別 GII 3人 4.3 01着 芝1600m(良) 1:33.8 (35.1) 四位洋文 (タイキダイヤ)
2001.02.18 東京 フェブラリーS GI 4人 6.1 03着 ダ1600m(良) 1:35.8 (36.6) 武豊 ノボトゥルー
0000.03.24 ナドアルシバ ドバイワールドカップ G1 02着 ダ2000m(-) 2:00.4(-) 武豊 Captain Steve
0000.11.11 京都 エリザベス女王杯 GI 4人 5.9 01着 芝2200m(良) 2:11.2 (33.9) 武豊 ローズバド
0000.11.25 東京 ジャパンカップ GI 11人 34.1 14着 芝2400m(良) 2:30.5 (42.4) 四位洋文 ジャングルポケット
0000.12.23 中山 有馬記念 GI 6人 17.7 03着 芝2500m(良) 2:33.3 (34.8) 武豊 マンハッタンカフェ
2002.02.17 東京 フェブラリーS GI 3人 5.4 04着 ダ1600m(良) 1:35.5 (36.6) 武豊 アグネスデジタル
0000.03.23 ナドアルシバ ドバイワールドカップ G1 11着 ダ2000m(-) 2:01.2(-) O.ペリエ Street Cry

繁殖牝馬時代 編集

2002年春よりノーザンファームで繁殖入りした。

2006年7月11日、ノーザンホースパークで行われたセレクトセールで、2006年生まれの産駒が6億円(お台8000万円〜)という日本最高額かつ牝馬世界最高額で取引され話題となった(競走馬登録はされず未出走のまま繁殖入りし、ディナシーという繁殖名をつけられた)。

2007年2月8日、2番仔となるアゲヒバリが船橋競馬場で行われた3歳未出走未受賞(ダート1500メートル、9頭立て)でデビュー。石崎駿騎乗で単勝1.1倍の圧倒的1番人気に推され、3馬身差で勝利した。その後は4月のナイスビット特別で2勝目を挙げ、東京プリンセス賞で4着、そして関東オークスでは両親ともに騎乗経験のある武豊が騎乗したが11着で、2008年3月6日の草萌特別で1着となったのを最後に3月21日付で地方競馬の競走馬登録を抹消され繁殖入りが発表された。繁殖入り後はメドウラーク(2011年産。七夕賞阪神ジャンプステークス[3][4]、ダノンディスタンス(2014年産。京都新聞杯3着)[5]リオンリオン(2016年産。青葉賞セントライト記念[6]といった重賞優勝馬・入着馬を産んでいる[7]

2010年3月14日、4番仔となるトゥザグローリーが阪神競馬6日目第5競走の3歳新馬でデビュー。圧倒的1番人気に推され、産駒初の中央競馬での勝利を飾った。本馬は春のクラシック戦線で東京優駿まで駒を進め(7着)、2010年12月11日中日新聞杯で産駒による重賞初勝利を飾った。その後も京都記念日経賞日経新春杯鳴尾記念といった重賞を制し、また有馬記念では2年連続3着の成績を残している。

2017年9月16日付で用途変更となり繁殖を引退した[8]。その後はリードホースとなり、引き続きノーザンファームで繋養されていた[9]が、2023年5月14日老衰のため死亡した[10][11]。27歳没。

繁殖成績 編集

生年 馬名 毛色 厩舎 馬主 戦績・用途
2003年 トゥザヴィクトリーの2003 芦毛 *クロフネ - - (死亡)
2004年 アゲヒバリ 船橋・川島正行 吉田俊介 9戦4勝
(繁殖)
2005年 (不受胎) フォーティナイナー
2006年 ディナシー 鹿毛 キングカメハメハ - 山本英俊 不出走
(繁殖)
2007年 トゥザグローリー 栗東・池江泰郎
→栗東・池江泰寿
(有)キャロットファーム 33戦8勝
中日新聞杯京都記念日経賞日経新春杯鳴尾記念
(種牡馬)
2008年 プルスウルトラ 鹿毛 *シンボリクリスエス 栗東・池江泰寿 金子真人ホールディングス(株) 3戦1勝

(乗馬)

2009年 トゥザハピネス 鹿毛 - (有)キャロットファーム 不出走
(繁殖)
2010年 トゥザレジェンド 栗毛 キングカメハメハ 栗東・池江泰寿 19戦5勝
(繁殖)
2011年 トゥザワールド 鹿毛 12戦4勝
弥生賞
(種牡馬[12]
2012年 トーセンビクトリー 鹿毛 栗東・角居勝彦
→栗東・中竹和也
島川隆哉 30戦6勝
中山牝馬ステークス
(繁殖)
2013年 (流産)
2014年 トゥザクラウン 鹿毛 栗東・池江泰寿 (有)キャロットファーム 20戦5勝
(乗馬)
2015年 トゥザフロンティア 鹿毛 ロードカナロア 20戦3勝
(乗馬)
2016年 (流産) キングカメハメハ
2017年 (不受胎) ロードカナロア
2018年 (不受胎) ロードカナロア

血統表 編集

トゥザヴィクトリー血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 サンデーサイレンス系ヘイロー系

* サンデーサイレンス
1986 青鹿毛
父の父
Halo
1969 黒鹿毛
Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
父の母
Wishing Well
1975 鹿毛
Understanding Promised Land
Pretty Ways
Mountain Flower Montparnasse
Edelweiss

* フェアリードール
1991 栗毛
Nureyev
1977 鹿毛
Northern Dancer Nearctic
Natalma
Special Forli
Thong
母の母
Dream Deal
1986 栗毛
Sharpen Up *エタン
Rocchetta
Likely Exchange Terrible Tiger
Likely Swap
母系(F-No.) フェアリードール系(FN:9-f) [§ 2]
5代内の近親交配 Almahmoud 4×5、Native Dancer 5・5(母内) [§ 3]
出典
  1. ^ [13]
  2. ^ [14][13]
  3. ^ [13]
兄弟・近親
全妹にクイーン賞勝ち馬のビーポジティブがいる。
全弟に重賞3勝のサイレントディールがいる。
姪に共に重賞2勝のデニムアンドルビーフェアリーポルカがいる。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 2021年現在、同競走で5着以内の成績を残した牝馬は同馬(2001年・2着)とフォーエバーアンブライドルド(2018年・5着)の2頭のみである。
  2. ^ 次いで古いのは有馬記念(2004年・ゼンノロブロイ

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p トゥザヴィクトリー”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2024年2月19日閲覧。
  2. ^ 【馬人クローズアップ】市川明彦厩務員”. ウマニティ. サンケイスポーツ (2020年9月4日). 2024年2月21日閲覧。
  3. ^ メドウラーク”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2019年9月14日閲覧。
  4. ^ 【阪神ジャンプS】メドウラークが逃げ切りV 平地・障害の両方で重賞制覇/JRAレース結果”. netkeiba. Net Dreamers Co., Ltd. (2019年9月14日). 2019年9月14日閲覧。
  5. ^ Danon Distance(JPN)”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2019年9月14日閲覧。
  6. ^ リオンリオン”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2019年9月14日閲覧。
  7. ^ アゲヒバリ 繁殖牝馬情報:牝系情報”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2019年9月14日閲覧。
  8. ^ トゥザヴィクトリー(JPN)”. 血統書サービス. 公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル. 2024年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月21日閲覧。
  9. ^ ノーザンホースパーク / Northern Horse Park”. www.facebook.com. 2022年3月13日閲覧。
  10. ^ トゥザヴィクトリー | 馬・牧場・施設検索 | 競走馬のふるさと案内所”. uma-furusato.com. 2024年2月21日閲覧。
  11. ^ 2001年のエリザベス女王杯馬トゥザヴィクトリーが昨年5月14日に死んでいた 27歳”. 馬トク. 報知新聞社 (2024年2月22日). 2024年2月22日閲覧。
  12. ^ トゥザワールド号・ディアデラマドレ号が競走馬登録抹消日本中央競馬会、2015年10月21日閲覧
  13. ^ a b c 血統情報: 5代血統表|トゥザヴィクトリー”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2017年3月13日閲覧。
  14. ^ 平出貴昭 (2014年9月17日). “『覚えておきたい日本の牝系100』収録の全牝系一覧”. 競馬“血統”人生/平出貴昭. 2017年3月13日閲覧。

外部リンク 編集