トムソン散乱(トムソンさんらん、: Thomson scattering)とは、ニュートン力学的に考察する事の出来る束縛を受けていない自由荷電粒子による、古典的電磁波散乱で、弾性散乱の一種である。イギリス物理学者であるJ. J. トムソンが、1個の電子に対して一定の方向からが当たる時、どの方向にどれだけ光が散乱されるかを算定した事に因んで名付けられた[1]

トムソンの公式 編集

質量 m電荷 q自由粒子によるトムソン散乱で、入射電磁波に偏光のない場合に、入射方向に対して角度 θ の方向への散乱の微分断面積

 

で与えられ、この式はトムソンの公式と呼ばれている。

トムソン断面積 編集

トムソン断面積
Thomson cross section
記号 σe
0.66524587158(91)×10−28 m2 [2]
相対標準不確かさ 1.4×10−9
テンプレートを表示

自由電子によるトムソン散乱の散乱断面積は、トムソン断面積(トムソンだんめんせき、: Thomson cross section)と呼ばれる物理定数の1つで、その値は

 

である(2014CODATA推奨値[2])。

トムソン断面積はトムソンの公式を積分する事により得られて

 

となる。ここで c真空中の光速e電気素量ε0真空の誘電率me は電子の質量である。

また、微細構造定数 αリュードベリ定数 R 及びボーア半径 a0古典電子半径 re をそれぞれ

 

定義すると、トムソン断面積 σe

 

と簡略化して表記する事が可能となる。ここで hプランク定数ħディラック定数である。

脚注 編集

参考文献 編集

  • 砂川重信理論電磁気学』(第3版)紀伊国屋書店、東京、1999年9月(原著1982年)。ASIN 4314008547ISBN 978-4314008549NCID BA43015728OCLC 675159672全国書誌番号:99125994 
  • J.D.Jackson 著、西田稔 訳『電磁気学』 下巻(第3版)、吉岡書店、京都〈物理学叢書〉、2003年2月。ASIN 4842703083ISBN 978-4842703084NCID BA57742913OCLC 834796412全国書誌番号:20373001 
  • 『物理小事典』(第4版)三省堂、東京、2008年(原著1994年4月)。ASIN 4385240167ISBN 978-4385240169NCID BN10774805OCLC 675375379全国書誌番号:94041161 

関連項目 編集

外部リンク 編集