ナヨクサフジ

ヨーロッパや西アジアに自生するマメ科植物

ナヨクサフジ学名Vicia villosa)は、ヨーロッパ西アジアに自生する植物である。飼料作物として栽培されるマメ科植物である。

ナヨクサフジ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : マメ亜科 Faboideae
: ソラマメ属 Vicia
: ナヨクサフジ V. villosa
学名
Vicia villosa
Roth
シノニム

Vicia ambigua Guss.
Vicia dasycarpa Ten.
Vicia elegantissima Rouy
Vicia microphylla d'Urv.
Vicia pseudocracca Bertol.
Vicia varia Host

英名
Hairy vetch

別名・亜種 編集

英語では、hairy vetch, fodder vetch、winter vetchという呼び名があり、日本ではヘアリーベッチなどの呼び名も使われる[1][2]

  • Vicia villosa ssp. ambigua (Guss.) Kerguelen (= ssp. elegantissima, ssp. pseudocracca)
  • Vicia villosa ssp. eriocarpa (Hausskn.) P.W.Ball
  • Vicia villosa ssp. microphylla (d'Urv.) P.W.Ball
  • Vicia villosa ssp. varia (Host) Corb. (= ssp. dasycarpa)(ヘアリーベッチ
  • Vicia villosa ssp. villosaビロードクサフジ

植生 編集

茎の長さが 1.5 - 2mに達するつる性の一年生植物で、開花は5~8月である。クサフジによく似ているが、クサフジのような滑らかな茎ではなく軟毛が生えている[2]

侵略性

絶滅危惧種を含む在来種と競合、駆逐する[2]。一部地域などで河川敷やその周囲で大繁殖している光景を目にすることも多くある。

用途・特徴 編集

特徴
  • 他のマメ科植物と同様に、空気中の窒素固定として200lb/acreの土壌の富栄養化を行う[2] [3]
  • 植物が放出する化学物質が他植物の育成を阻害・除去するアレロパシー効果を持つとされるが[1]、明確な結果が確認できなかったとする報告もある[4]
用途
  • 飼料
  • 緑肥:高い効果が報告されている面もあるが、一方で上記アレロパシーの報告もあることからホウレンソウなどアレロパシーの作用を受けやすい作物への緑肥使用は避けたほうが良いとも言われている[要出典]
  • 土壌改善:50㎝ほどの深さまで直根性の根を張るので硬盤粉砕の効果が期待できる。マメ科特有の根粒菌との共生による窒素固定。菌根菌との共生によるリン酸固定も期待できる。
  • コンパニオンプランツ(リビングマルチ):トマトなどの相性のよい植物と一緒に植えることで、雑草を除去したり成長を促進させる[5]
  • 冬の間の被覆作物(カバークロップ)[6]
  • 不耕起栽培[7]
  • 蜜源植物[8]
中毒

ヘアリーベッチを飼料として与えていたに3種類の中毒症状が報告されている。

  1. ベッチの種子を摂取したとき,急性の神経症状を示し死亡する。原因は、ある種のベッチ種子に含まれる青酸配糖体によるものとされる。
  2. 生草を食べた牛の頭部,頚部,体幹の皮下浮腫,口腔粘膜のヘルペス状の発疹,膿状の鼻汁,ラ音,咳嗽などの症状がみられた。
  3. 生草を食べた牛および馬に発熱,皮膚炎,結膜炎,下痢などの臨床症状を呈し、病理学的には全身性の肉芽腫性病変がみられる。

このうち、(3)の中毒症状が大半を占めているが、ヘアリーベッチを飼料として与えている家畜数に比べ報告件数は少なく原因の解明にも至っていないため、別の要因の可能性も指摘されている[9]

出典 編集

  1. ^ a b 鄭紹輝, 田中利依, 有馬進「ヘアリーベッチのアレロパシーによる雑草抑制効果」『Coastal bioenvironment』第7巻、佐賀大学海浜台地生物環境研究センター、2006年、9-14頁、ISSN 13487175NAID 110004735066 
  2. ^ a b c d 外来クサフジ類 Vicia villosa環境省
  3. ^ Philpott, Tom (2013年9月9日). “One Weird Trick to Fix Farms Forever”. Mother Jones. http://www.motherjones.com/environment/2013/09/cover-crops-no-till-david-brandt-farms 2014年3月14日閲覧。 
  4. ^ 田辺裕司, 藤井義晴, 中島江理, 平舘俊太郎, 谷田重遠「ヘアリーベッチの多面的利用に関する調査」『岡山県総合畜産センター研究報告』第16号、岡山県総合畜産センター、2006年3月、11-16頁、ISSN 0915-4728NAID 220000102688 
  5. ^ Organic Gardening Magazine アーカイブ 2008年4月12日 - ウェイバックマシン
  6. ^ カバークロップ導入の手引き(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター)
  7. ^ 大脇淳一, 佐田利行, 山中勝浩「ヘアリーベッチを利用した不耕起生草マルチ水稲移植栽培について第4報」『九州農業研究』第67号、九州農業試験研究機関協議会、2005年5月、11-11頁、ISSN 0451-1581NAID 220000101366 
  8. ^ ヘアリーベッチの蜂蜜使いロールケーキ製造 明石(神戸新聞NEXT HYOGO ODEKAKE+ 2018年6月21日)
  9. ^ ヘアリーベッチ(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)

関連項目 編集