ヌファリジン(Nupharidine)とは、キノリジジン骨格を持った有機化合物の1種である。キノリジジンは塩基性を示し、また、ヌファリジンは天然に産することから、アルカロイドの1種であるとも言える。

構造 編集

ヌファリジンは分子式C15H23NO2であり [1] [2] [3] 、分子量は約249である [1] 。 キノリジジン骨格を持っており、この骨格が含む唯一の窒素はN-オキシド化されている。ちなみに、ヌファリジン分子中にはフラン環も存在しており、分子中のもう1つの酸素原子はここに位置している。なお、ヌファリジンは分子中にキラル中心を複数持っており、その溶液は光学活性を持つ [1]

性質 編集

ヌファリジンは、常温・常圧では無色の固体である。N-オキシド化された部分が極性を持っているなどの理由で、極性溶媒である水やメタノールやエタノールには溶解しやすい [1] 。 この他、クロロホルムにも溶けやすく、また、アセトンやベンゼンにも多少ならば溶解する [1] 。 ところで、一般にアルカロイドは、ヒトが口にすると苦味を感ずる。ヌファリジンの水溶液をヒトが口にした場合も、その濃度が充分であれば、苦味を感ずることが知られている [1] 。 ヌファリジンは上記の通り、簡単に水に溶解するため、充分な量のヌファリジンの固体をヒトが口にした場合も、間もなく水溶液となって苦味を感ずることが判る。この他の性質として、ヌファリジンを加熱すると、220 ℃から221 ℃で分解する [1] 。 また、これはアルカロイド一般に起こる反応ながら、ヌファリジンの場合もドラーゲンドルフ試薬に反応する。

所在 編集

アルカロイドとは、植物が産生し、塩基性を示す、天然に存在する有機化合物の総称である。つまり、アルカロイドであるヌファリジンもまた天然に存在しており、スイレン科コウホネ根茎に含有されていることが知られている [1] 。 ちなみに、コウホネの根茎を加工したものは川骨と呼ばれ、生薬の1つとして用いられている。

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h 化学大辞典編集委員会 『化学大辞典 (縮刷版) 6』 p.839 共立出版 1963年12月15日発行 ISBN 4-320-04020-1
  2. ^ Nupharidine
  3. ^ CHEBI:36285 - nupharidine

主な参考文献 編集

  • 化学大辞典編集委員会 『化学大辞典 (縮刷版) 6』 共立出版 1963年12月15日発行 ISBN 4-320-04020-1