ネチコナゾールINN:neticonazole)は、外用薬として体表部の真菌症の治療に用いられる場合の有る、イミダゾール系抗真菌薬の1つである。

構造・生理活性 編集

 
ネチコナゾールの構造。

ネチコナゾールは分子式C17H22N2OSで表される化合物であり、したがって、その分子量は約297である。構造中にイミダゾール環を有している上に、その医薬品としての用途のために、アゾール系抗真菌薬の細分類である、イミダゾール系抗真菌薬に分類される薬物の1つである[1][2]。その作用点は、真菌の細胞膜の安定性に関わるエルゴステロールの生合成過程の途中に関わる酵素の1つである、ラノステロール-14α-脱メチル化酵素英語版である[3][注釈 1]

なお、ネチコナゾールの構造中には3置換のC=C二重結合が1箇所存在し、抗菌薬として用いられるのは、ここがE体の物である。ただし、ネチコナゾールの構造を見れば明らかなように、ここはイミダゾール環とベンゼン環と直結しており、共役系の広がった場所である。また、これも分子構造から明らかなように、イミダゾール環の塩基性が強い箇所、シトクロムの鉄に配位し易い方の窒素原子、すなわち、非共有電子対が芳香族性の獲得のために使用されていない側の窒素原子が、分子全体で見ると、外側に飛び出した構造をしている。

用途 編集

ネチコナゾールは製剤化の際に、塩酸との塩の形にして利用される[2]。なお、ネチコナゾール塩酸塩の式量は、約339である。ネチコナゾールを含有した外用剤は、皮膚に真菌が感染して、皮膚を侵している際の治療に用いられる場合がある[4][5]。剤形としては、塩酸塩の形にして[1]、クリーム剤[5]、軟膏剤、外用液剤が開発された[1]

ただし、ネチコナゾールが医薬品として承認された地域は、日本だけであって、日本でしか使われていない。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ネチコナゾールは外用で皮膚局所に使用されるだけなので、あまり関係無いものの、参考までに、ラノステロールC-14脱メチル酵素は、P45014DMとも略される、いわゆる、CYPの1つであり、動物の体内に吸収された場合には、薬物代謝酵素群として重要な地位を占めている各種のCYPを阻害する。何もP45014DMやCYP3A4だけを阻害するわけでない点は、誤解するべきでない。これは、アゾール系抗真菌薬が体内に吸収された場合には、アゾール環の窒素が、CYPの活性中心の鉄に配位結合するためである。このため併用薬が有る場合、薬物相互作用で問題が起き得る。ただし、ネチコナゾールは経口投与も静脈注射もせずに、単に外用薬として用いるだけでなので、これらは基本的に、さして関係の無い話である。

出典 編集

  1. ^ a b c 上野 芳夫・大村 智 監修、田中 晴雄・土屋 友房 編集 『微生物薬品化学(改訂第4版)』 p.237 南江堂 2003年4月15日発行 ISBN 4-524-40179-2
  2. ^ a b ネチコナゾール塩酸塩(D01620)” (html). KEGG. 2021年8月18日閲覧。
  3. ^ 上野 芳夫・大村 智 監修、田中 晴雄・土屋 友房 編集 『微生物薬品化学(改訂第4版)』 p.236 南江堂 2003年4月15日発行 ISBN 4-524-40179-2
  4. ^ Nimura K, Niwano Y, Ishiduka S, Fukumoto R (August 2001). “Comparison of in vitro antifungal activities of topical antimycotics launched in 1990s in Japan”. Int. J. Antimicrob. Agents 18 (2): 173-178. doi:10.1016/S0924-8579(01)00365-X. PMID 11516941. 
  5. ^ a b Tsuboi R, Matsumoto T, Ogawa H (May 1996). “Hyperkeratotic chronic tinea pedis treated with neticonazole cream. Neticonazole Study Group”. Int. J. Dermatol. 35 (5): 371-373. doi:10.1111/j.1365-4362.1996.tb03644.x. PMID 8734665.