ノーベル物理学賞

ノーベル賞の授賞部門のひとつ

ノーベル物理学賞(ノーベルぶつりがくしょう)は、ノーベル賞の一部門。アルフレッド・ノーベルの遺言によって創設された5部門のうちの一つで、自然科学分野で権威ある賞。物理学の分野において重要な発見を行った人物に授与される[1]

ノーベル物理学賞
受賞対象物理学
会場ストックホルム
 スウェーデン
主催スウェーデン王立科学アカデミー
初回1901年
最新回2023年
最新受賞者ピエール・アゴスティーニ
フェレンツ・クラウス
アンヌ・リュイリエ
公式サイトhttps://www.nobelprize.org/

対象となる分野は大きく分けて、天文学天体物理学原子物理学素粒子物理学の3分野であるが、気象学など地球科学からの受賞もある[2]

ノーベル物理学賞のメダルは、表面にはアルフレッド・ノーベルの横顔(各賞共通)、裏面には宝箱を持ち雲の中から現れた自然の女神のベールを科学の神(科学のゲニウス)が持ち上げる素顔を眺めている姿がデザインされている(化学賞と共通)[3]

歴代受賞者 編集

1900年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1901年   ヴィルヘルム・レントゲン
Wilhelm Conrad Röntgen
  ドイツ帝国 後に彼に因んで命名される[注 1]注目すべき放射線X線の発見
Nature: 53 (1896) 274-276
1902年   ヘンドリック・ローレンツ
Hendrik Antoon Lorentz
  オランダ 放射現象に対する磁性の影響[注 2]の研究
  ピーター・ゼーマン
Pieter Zeeman
  オランダ
1903年   アンリ・ベクレル
Antoine Henri Becquerel
  フランス共和国 自発的放射能の発見
  ピエール・キュリー
Pierre Curie
  フランス共和国 ベクレルによって発見された放射現象に関する共同研究[注 3]
  マリ・キュリー
Marie Curie, née Sklodowska
  フランス共和国
  ポーランド立憲王国出身)
1904年   レイリー卿
(ジョン・ウィリアム・ストラット)

Lord Rayleigh
(John William Strutt)
  イギリス 重要な気体密度に関する研究、およびこの研究により成されたアルゴンの発見
1905年   フィリップ・レーナルト
Philipp Eduard Anton von Lenard
  ドイツ帝国
  ハンガリー王国出身)
陰極線に関する研究
1906年   ジョゼフ・ジョン・トムソン
Joseph John Thomson
  イギリス 気体の電気伝導[注 4]に関する理論および実験的研究
1907年   アルバート・マイケルソン
Albert Abraham Michelson
  アメリカ合衆国 彼が考案した精密光学機器マイケルソン干渉計[注 5]とそれによる分光学および計量学の研究
1908年   ガブリエル・リップマン
Gabriel Lippmann
  フランス共和国 彼が考案した、光干渉に基づき鮮明に色を複製する手法[注 6]
1909年   グリエルモ・マルコーニ
Guglielmo Marconi
  イタリア王国 無線通信の進展への貢献
  フェルディナント・ブラウン
Karl Ferdinand Braun
  ドイツ帝国

1910年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1910年   ヨハネス・ファン・デル・ワールス
Johannes Diderik van der Waals
  オランダ 気体および液体の状態方程式に関する研究[注 7]
1911年   ヴィルヘルム・ヴィーン
Wilhelm Wien
  ドイツ帝国 熱放射を支配する法則に関する発見[注 8]
Ann. Phys.: 58 (1896) 662-669
Philos. Mag. ser5: 43 (1897) 214-220
1912年   ニルス・グスタフ・ダレーン
Nils Gustaf Dalén
  スウェーデン 灯台灯浮標などの照明用ガス貯蔵器に取り付ける自動調節機の発明
1913年   ヘイケ・カメルリング・オネス
Heike Kamerlingh Onnes
  オランダ 低温における物性の研究[注 9]、特にその成果である液体ヘリウムの生成
1914年   マックス・フォン・ラウエ
Max von Laue
  ドイツ帝国 結晶によるX線回折現象の発見
1915年   ヘンリー・ブラッグ
Sir William Henry Bragg
  イギリス X線による結晶構造解析に関する研究[注 10]
Nature: 90 (1912) 219-219 (William Henry Bragg)
Nature: 90 (1912) 410-410 (William Lawrence Bragg)
  ローレンス・ブラッグ
William Lawrence Bragg
  イギリス
1916年 受賞者なし 賞金はノーベル物理学賞の基金に割り当てられた
1917年   チャールズ・バークラ
Charles Glover Barkla
  イギリス 元素特性X線の発見
1918年   マックス・プランク
Max Karl Ernst Ludwig Planck
  ドイツ帝国 エネルギー量子の発見による物理学の進展への貢献
Annalen der Physik: 1 (1900) 719
Annalen der Physik: 4 (1901) 553
1919年   ヨハネス・シュタルク
Johannes Stark
  ドイツ国 カナル線ドップラー効果、および電場中でのスペクトル線の分裂[注 11]の発見

1920年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1920年   シャルル・エドゥアール・ギヨーム
Charles Edouard Guillaume
  スイス インバー合金の発見とそれによる精密測定の開発
1921年   アルベルト・アインシュタイン
Albert Einstein
  スイス 理論物理学に対する貢献、特に光電効果の法則の発見
Ann. Phys. (Berlin): 17 (1905) 132-148
Ann. Phys. (Berlin): 20 (1906) 199-206
Ann. Phys. (Berlin): 22 (1907) 180-190
Phys. Z.: 10 (1909) 185-193
Verh. der Deutschen Physikal. Gesellschaft: 18 (1916) 318-328
Phys. Z.: 18 (1917) 121-128
1922年   ニールス・ボーア
Niels Henrik David Bohr
  デンマーク 原子構造と原子から放射に関する研究についての貢献
Philos. Mag. ser.6: 26 (1913) 1-24
Philos. Mag. ser.6: 26 (1913) 476-502
Philos. Mag. ser.6: 26 (1913) 857-875
1923年   ロバート・ミリカン
Robert Andrews Millikan
  アメリカ合衆国 電気素量[注 12]および光電効果[注 13]に関する研究
Phys. Mag. XIX: 6 (1910), 209
Phys. Rev. 2 (1913), 109-143
1924年   マンネ・シーグバーン
Karl Manne Georg Siegbahn
  スウェーデン X線分光学における研究および発見
1925年   ジェイムス・フランク
James Franck
  ドイツ国 電子原子に対する衝突を支配する法則の発見[注 14]
  グスタフ・ヘルツ
Gustav Ludwig Hertz
  ドイツ国
1926年   ジャン・ペラン
Jean Baptiste Perrin
  フランス共和国 物質の不連続的構造に関する研究、特に沈殿平衡についての発見[注 15]
Ann. de Chim. et de Phys. (VIII): 18 (1909) 5-114
1927年   アーサー・コンプトン
Arthur Holly Compton
  アメリカ合衆国 彼に因んで命名されたコンプトン効果の発見
  チャールズ・トムソン・リーズ・ウィルソン
Charles Thomson Rees Wilson
  イギリス 霧箱(蒸気の凝縮により荷電粒子の飛跡を観察できるようにする方法)の考案
1928年   オーエン・リチャードソン
Owen Willans Richardson
  イギリス 熱電子効果の研究、特に彼に因んで命名されたリチャードソンの法則の発見
Proc. Cambridge Philos. Soc.: 11 (1901) 286-295
Philos. Mag. ser.6: 23 (1912) 263-278
Science: 38 (1913) 57-61
1929年   ルイ・ド・ブロイ
Prince Louis-Victor Pierre Raymond de Broglie
  フランス共和国 電子の波動的特性[注 16]の発見

1930年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1930年   チャンドラセカール・ラマン
Sir Chandrasekhara Venkata Raman
  イギリス領インド帝国 光散乱に関する研究と彼に因んで命名されたラマン効果の発見
Nature: 121 (1928) 501
Indian J. Phys.: 2 (1928) 387
1931年 受賞者なし 賞金はノーベル物理学賞の基金に割り当てられた
1932年   ヴェルナー・ハイゼンベルク
Werner Karl Heisenberg
  ドイツ国 量子力学の創始[注 17]ならびにその応用、特に同素異形の水素[注 18]の発見

Z. Phys.: 33 (1925) 879-893

1933年   エルヴィン・シュレーディンガー
Erwin Schrödinger
  オーストリア 原子論の新しく有効な形式の発見[注 19]

Phys. Rev.: 28 (1926) 1049-1970 (Schrödinger)
Proc. R. Soc. Lond. A: 117 (1928) 610-624 (Dirac)
Proc. R. Soc. Lond. A: 118 (1928) 351-361 (Dirac)
Proc. R. Soc. Lond. A: 133 (1931) 60-72 (Dirac)

  ポール・ディラック
Paul Adrien Maurice Dirac
  イギリス
1934年 受賞者なし 賞金の3分の1はノーベル財団の基金に、残り3分の2はノーベル物理学賞の基金に割り当てられた
1935年   ジェームズ・チャドウィック
James Chadwick
  イギリス 中性子の発見
Nature: 129 (1932) 312
1936年   ヴィクトール・フランツ・ヘス
Victor Franz Hess
  オーストリア 宇宙線の発見

Phys. Z.: 13 (1912) 1084-1091

  カール・デイヴィッド・アンダーソン
Carl David Anderson
  アメリカ合衆国 陽電子の発見
Phys. Rev.: 43 (1933) 491-498
Phys. Rev.: 44 (1933) 406-423
1937年   クリントン・デイヴィソン
Clinton Joseph Davisson
  アメリカ合衆国 結晶による電子線回折現象の発見
  ジョージ・パジェット・トムソン
George Paget Thomson
  イギリス
1938年   エンリコ・フェルミ
Enrico Fermi
  イタリア王国 中性子放射による新放射性元素の存在証明および関連して熱中性子による原子核反応の発見
Z. f. Phys.: 88 (1934) 161
Nuovo Cim.: 11 (1934) 1
1939年   アーネスト・ローレンス
Ernest Orlando Lawrence
  アメリカ合衆国 サイクロトロンの発明・開発およびその成果、特に人工放射性元素

1940年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1940年 受賞者なし 賞金の3分の1はノーベル財団の基金に、残り3分の2はノーベル物理学賞の基金に割り当てられた
1941年
1942年
1943年   オットー・シュテルン
Otto Stern
  アメリカ合衆国 分子線の手法の開発[注 20]への貢献と陽子磁気モーメントの発見
1944年   イジドール・イザーク・ラービ
Isidor Isaac Rabi
  アメリカ合衆国

  オーストリア=ハンガリー帝国出身)

彼が考案した、原子核の磁気的性質[注 21]を測定する共鳴法[注 22]
Phys. Rev.: 55 (1939) 526
1945年   ヴォルフガング・パウリ
Wolfgang Pauli
  アメリカ合衆国

  オーストリア=ハンガリー帝国出身)

パウリ原理とも呼ばれる排他律の発見
Z. f. Phys.: 31 (1925) 765-783
1946年   パーシー・ブリッジマン
Percy Williams Bridgman
  アメリカ合衆国 超高圧装置の発明と、それによる高圧物理学に関する発見
1947年   エドワード・アップルトン
Sir Edward Victor Appleton
  イギリス 上層大気の物理的研究、特にアップルトン層の発見
1948年   パトリック・ブラケット
Patrick Maynard Stuart Blackett
  イギリス ウィルソン霧箱の手法の発展と、それによる原子核物理学および宇宙線の分野における発見
1949年   湯川秀樹
Hideki Yukawa
  日本 核力の理論的研究[注 23]に基づく中間子の存在の予想
Proc. Phys. Math. Soc. Jap.: 17 (1935) 48

1950年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1950年   セシル・パウエル
Cecil Frank Powell
  イギリス 写真による原子核崩壊過程の研究方法の開発およびその方法による諸中間子の発見
1951年   ジョン・コッククロフト
Sir John Douglas Cockcroft
  イギリス 人工的に加速した[注 24]原子核粒子による原子核変換についての先駆的研究
  アーネスト・ウォルトン
Ernest Thomas Sinton Walton
  アイルランド
1952年   フェリックス・ブロッホ
Felix Bloch
  スイス 核磁気の精密な測定における新しい方法[注 25]の開発とそれについての発見
Phys. Rev.: 69 (1946) 127 (Bloch)
Phys. Rev.: 70 (1946) 460-474 (Bloch)
Phys. Rev.: 69 (1946) 37-38 (Purcell)
Phys. Rev.: 73 (1948) 679-712 (Purcell)
  エドワード・ミルズ・パーセル
Edward Mills Purcell
  アメリカ合衆国
1953年   フリッツ・ゼルニケ
Frits (Frederik) Zernike
  オランダ 位相差を用いた手法の実証、特に位相差顕微鏡の発明
Physica: 1 (1934) 689-704
Z. Tech. Phys.: 16 (1935) 454-457
Physica: 9 (1942) 686-698
Physica: 9 (1942) 974-986
1954年   マックス・ボルン
Max Born
  イギリス 量子力学に関する基礎研究、特に波動関数の確率解釈[注 26]
  ヴァルター・ボーテ
Walther Bothe
  西ドイツ コインシデンス法による原子核反応とそれによる発見
1955年   ウィリス・ラム
Willis Eugene Lamb
  アメリカ合衆国 水素スペクトルの微細構造[注 27]に関する発見
  ポリカプ・クッシュ
Polykarp Kusch
  アメリカ合衆国 彼が考案した電子磁気モーメントの正確な決定法[注 28]
1956年   ウィリアム・ショックレー
William Bradford Shockley
  アメリカ合衆国 半導体の研究およびトランジスタ効果の発見
  ジョン・バーディーン
John Bardeen
  アメリカ合衆国
  ウォルター・ブラッテン
Walter Houser Brattain
  アメリカ合衆国
1957年   楊振寧
Chen Ning Yang
  アメリカ合衆国
  中華民国出身)
素粒子物理学における重要な発見に導いた、いわゆるパリティについての洞察的な研究[注 29]

Phys. Rev.: 104 (1956) 254-258 (Yang and Lee)
Phys. Rev.: 106 (1957) 340-345 (Yang and Lee)
Phys. Rev.: 105 (1957) 1413-1415 (検証実験、コバルト60の崩壊を通じて)
Phys. Rev.: 105 (1957) 1415-1417 (検証実験、パイ中間子崩壊を通じて)

  李政道
Tsung-Dao Lee
  アメリカ合衆国
  中華民国出身)
1958年   パーヴェル・チェレンコフ
Pavel Alekseyevich Cherenkov
  ソビエト連邦 チェレンコフ効果の発見とその解釈
C.R. Acad. Sci. USSR: 2 (1934) 451 (Cherenkov)
C.R. Acad. Sci. USSR: 14 (1937) 107 (Frank and Tamm)
  イリヤ・フランク
Ilya Mikhailovich Frank
  ソビエト連邦
  イーゴリ・タム
Igor Yevgenyevich Tamm
  ソビエト連邦
1959年   エミリオ・セグレ
Emilio Gino Segrè
  アメリカ合衆国 反陽子の発見
Phys. Rev.: 100 (1955) 947-950 (Segrè and Chamberlain)
  オーウェン・チェンバレン
Owen Chamberlain
  アメリカ合衆国

1960年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1960年   ドナルド・グレーザー
Donald Arthur Glaser
  アメリカ合衆国 泡箱の発明
Phys. Rev.: 87 (1952) 665-665
1961年   ロバート・ホフスタッター
Robert Hofstadter
  アメリカ合衆国 原子核内での電子線散乱とそれによる核子の構造の発見[注 30]

Phys. Rev. Lett.: 5 (1960) 263-265 Phys. Rev. Lett.: 6 (1961) 293-296

  ルドルフ・メスバウアー
Rudolf Ludwig Mössbauer
  西ドイツ ガンマ線共鳴吸収についての研究および、それに関連する彼に因んで命名されたメスバウアー効果の発見
1962年   レフ・ランダウ
Lev Davidovich Landau
  ソビエト連邦 彼が確立した凝縮系物理の理論、特に液体ヘリウムについて
1963年   ユージン・ウィグナー
Eugene Paul Wigner
  アメリカ合衆国
  ハンガリー王国出身)
原子核および素粒子に関する理論への貢献、特に対称性の基本原理の発見とその応用
  マリア・ゲッパート=メイヤー
Maria Goeppert-Mayer
  アメリカ合衆国 原子核の殻構造に関する発見[注 31]
Phys. Rev.: 75 (1949) 1766–1766 (Jensen)
Phys. Rev.: 79 (1950) 1019–1019 (Jensen)
  ヨハネス・ハンス・イェンゼン
J. Hans D. Jensen
  西ドイツ
1964年   チャールズ・タウンズ
Charles Hard Townes
  アメリカ合衆国 量子エレクトロニクス分野の基礎研究および、メーザーレーザー原理に基づく振動子・増幅器の構築
  ニコライ・バソフ
Nikolay Gennadiyevich Basov
  ソビエト連邦
  アレクサンドル・プロホロフ
Aleksandr Mikhailovich Prokhorov
  ソビエト連邦
1965年   朝永振一郎
Shin-ichiro Tomonaga
  日本 量子電磁力学の分野における基礎研究と、素粒子物理学についての深い結論[注 32]
Prog. Theor. Phys.: 1 (1946) 27-42 (Tomonaga)
Phys. Rev.: 82 (1951) 664-679 (Schwinger)
Phys. Rev.: 80 (1950) 440-457(Feynman)
Phys. Rev.: 84 (1951) 108-128 (Feynman)
  ジュリアン・シュウィンガー
Julian Schwinger
  アメリカ合衆国
  リチャード・P・ファインマン
Richard P. Feynman
  アメリカ合衆国
1966年   アルフレッド・カストレル
Alfred Kastler
  フランス 原子のラジオ波共鳴を研究するための光学的手法の発見および開発[注 33]
1967年   ハンス・ベーテ
Hans Albrecht Bethe
  アメリカ合衆国 原子核反応理論への貢献、特に星の内部におけるエネルギー生成に関する発見
Phys. Rev.: 55 (1939) 434-456
1968年   ルイス・ウォルター・アルヴァレズ
Luis Walter Alvarez
  アメリカ合衆国 素粒子物理学に対する決定的な貢献、特に彼がもたらした水素泡箱を用いた手法、およびデータ解析の発展により可能となった多数の共鳴状態の発見
1969年   マレー・ゲルマン
Murray Gell-Mann
  アメリカ合衆国 素粒子の分類およびその相互作用に関する貢献と発見[注 34]

Phys. Rev.: 92 (1953) 833-834
Phys. Rev.: 125 (1962) 1067-1084
Phys. Lett.: 8 (1964) 214-215

1970年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1970年   ハンス・アルヴェーン
Hannes Olof Gösta Alfvén
  スウェーデン プラズマ物理学の様々な部分への有意義な応用[注 35]を伴う、電磁流体力学における基礎的研究および発見
  ルイ・ネール
Louis Eugène Félix Néel
  フランス 固体物理学における重要な応用をもたらした反強磁性[注 36]および
フェリ磁性に関する基礎的研究および発見
1971年   ガーボル・デーネシュ
Dennis Gabor
  イギリス
  ハンガリー王国出身)
ホログラフィーの発明および発展
Nature: 161 (1948) 777-779
Proc. Roy. Soc.: A197 (1949) 454
Proc. Phys. Soc.: B64 (1951) 449
1972年   ジョン・バーディーン
John Bardeen
  アメリカ合衆国 一般にBCS理論[注 37]と呼ばれている、彼らが共同で発展させた超伝導についての理論
Phys. Rev.: 108 (1957) 1175-1204 (Bardeen, Cooper, and Schrieffer)
  レオン・クーパー
Leon Neil Cooper
  アメリカ合衆国
  ジョン・ロバート・シュリーファー
John Robert Schrieffer
  アメリカ合衆国
1973年   江崎玲於奈
Leo Esaki
  日本 半導体内および超伝導体内の各々におけるトンネル効果の実験的発見
Phys. Rev. Lett.: 5 (1960) 147-148 (Giaever)
Phys. Rev. Lett.: 5 (1960) 464-466 (Giaever)
  アイヴァー・ジェーバー
Ivar Giaever
  アメリカ合衆国
  ノルウェー出身)
  ブライアン・ジョゼフソン
Brian David Josephson
  イギリス トンネル接合を通過する超電流の性質、特にジョセフソン効果としてよく知られる普遍的現象の理論的予測
Phys. Lett.: 1 (1962) 251-253
Adv. Phys.: 14 (1965) 419
1974年 マーティン・ライル
Sir Martin Ryle
  イギリス 電波天文学における先駆的研究(観測および発明、特に開口合成技術に関して)
アントニー・ヒューイッシュ
Antony Hewish
  イギリス 電波天文学における先駆的研究(パルサーの発見に果たした決定的な役割[注 38]
1975年   オーゲ・ニールス・ボーア
Aage Niels Bohr
  デンマーク 核子集団運動独立粒子運動との関係の発見、
およびこの関係に基づく原子核構造に関する理論の開発[注 39]
  ベン・ロイ・モッテルソン
Ben Roy Mottelson
  デンマーク
  アメリカ合衆国出身)
  レオ・ジェームス・レインウォーター
Leo James Rainwater
  アメリカ合衆国
1976年   バートン・リヒター
Burton Richter
  アメリカ合衆国 新種の重い素粒子の発見についての先駆的研究
Phys. Rev. Lett.: 33 (1974) 1404-1406 (S. C. C. Ting)
Phys. Rev. Lett.: 33 (1974) 1406-1408 (B. Richter)
Phys. Rev. Lett.: 33 (1974) 1408-1410 (フラスカティ国立研究所(LNF)による追実験)
Phys. Rev. Lett.: 25 (1970) 1523-1526 (J/ψの予兆)[注 40]
  サミュエル・ティン(丁肇中)
Samuel Chao Chung Ting
  アメリカ合衆国
1977年   フィリップ・アンダーソン
Philip Warren Anderson
  アメリカ合衆国 磁性体と無秩序系の電子構造の基礎理論的研究[注 41]
Phys. Rev.: 109 (1958) 1492-1505 (Anderson)
Proc. Roy. Soc.: A62 (1949) 416 (Mott)
Rev. Mod. Phys. 40 (1968) 677-683 (Mott)
Phys. Rev. Lett.: 35 (1975) 1293-1296 (Mott)
  ネヴィル・モット
Sir Nevill Francis Mott
  イギリス
  ジョン・ヴァン・ヴレック
John Hasbrouck Van Vleck
  アメリカ合衆国
1978年   ピョートル・カピッツァ
Pyotr Leonidovich Kapitsa
  ソビエト連邦 低温物理学における基礎的発明および諸発見[注 42]
  アーノ・ペンジアス
Arno Allan Penzias
  アメリカ合衆国
  ドイツ国出身)
宇宙マイクロ波背景放射の発見[注 43]
Astrophys.J.: 142 (1965) 419
ロバート・W・ウィルソン
Robert Woodrow Wilson
  アメリカ合衆国
1979年   シェルドン・グラショー
Sheldon Lee Glashow
  アメリカ合衆国 素粒子間に働く弱い相互作用と電磁相互作用を統一した相互作用についての理論への貢献、特に弱中性カレントの予想[注 44]

Nucl. Phys.: 22 (1961) 579-588 (Glashow)
"Elementary Particle Theory" (1968) 367-377 (Salam)
Phys. Rev. Lett.: 19 (1967) 1264-1266 (Weinberg)
Phys. Lett. B: 46 (1973) 121-124, 138-140 (弱中性カレントの検出)
Proc. 19th Int. Conf. HEP (Tokyo, 1978), 882-903 (弱混合角の値が一致)

  アブドゥッサラーム
Abdus Salam
  パキスタン
  スティーヴン・ワインバーグ
Steven Weinberg
  アメリカ合衆国

1980年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1980年   ジェイムズ・クローニン
James Cronin
  アメリカ合衆国 中性K中間子崩壊における基礎的な対称性の破れの発見
Phys. Rev. Lett.: 13 (1964) 138-140 (Cronin, and Fitch)
  ヴァル・フィッチ
Val Logsdon Fitch
  アメリカ合衆国
1981年   ニコラス・ブルームバーゲン
Nicolaas Bloembergen
  アメリカ合衆国
  オランダ出身)
レーザー分光学への貢献
Phys. Rev.: 104 (1956) 324-327 (Bloembergen)
Phys. Rev.: 127 (1962) 1918-1939 (Bloembergen)
  アーサー・ショーロー
Arthur Leonard Schawlow
  アメリカ合衆国
  カイ・シーグバーン
Kai Manne Börje Siegbahn
  スウェーデン 高分解能光電子分光法の開発
1982年 ケネス・ウィルソン
Kenneth G. Wilson
  アメリカ合衆国 相転移に関連した臨界現象に関する理論[注 45]
Phys. Rev. B: 4 (1971) 3174-3183
Phys. Rev. B: 4 (1971) 3184-3205
Phys. Rev. Lett.: 28 (1972) 240-243
Phys. Rev. Lett.: 28 (1972) 548-551
Phys. Rep.: 12 (1974) 75-199
Rev. Mod. Phys.: 47 (1975) 773-840
1983年   スブラマニアン・チャンドラセカール
Subrahmanyan Chandrasekhar
  アメリカ合衆国
  インド出身)
星の構造および進化にとって重要な物理的過程に関する理論的研究[注 46]
Philos. Mag.: 11 (1931) 592
Astrophys. J.: 74 (1931) 81
Astrophys. J.: 96 (1942) 161
  ウィリアム・ファウラー
William Alfred Fowler
  アメリカ合衆国 宇宙における化学元素の生成にとって重要な原子核反応に関する理論的および実験的研究
Rev. Mod. Phys.: 29 (1957) 547-650
1984年   カルロ・ルビア
Carlo Rubbia
  イタリア 弱い相互作用を媒介する場であるW粒子およびZ粒子の発見を導いた巨大プロジェクトへの決定的貢献

CERN/ISR-PO: 70-5(1970) (van der Meer)
CERN/ISR-PO: 72-31(1972) (van der Meer)
CERN/SPSC: 78-06(1978) (Rubbia)
IEEE Trans. Nucl. Sci.: 26 (1979) 3455-3461 (Rubbia, van der Meer)
Phys. Lett. B: 122 (1983) 103-116 (Rubbia, van der Meer)
Phys. Lett. B: 126 (1983) 398-410 (Rubbia)

  シモン・ファンデルメール
Simon van der Meer
  オランダ
1985年   クラウス・フォン・クリッツィング
Klaus von Klitzing
  西ドイツ 量子ホール効果の発見[注 47]
Phys. Rev. Lett.: 45 (1980) 494-497
Metrologia: 21 (1985) 11-19
1986年 エルンスト・ルスカ
Ernst Ruska
  西ドイツ 電子を用いた光学に関する基礎研究、特に最初の電子顕微鏡の設計
  ゲルト・ビーニッヒ
Gerd Binnig
  西ドイツ 走査型トンネル電子顕微鏡の設計
Phys. Rev. Lett.: 49 (1982) 57-61 (Binnig, and Rohrer)
  ハインリッヒ・ローラー
Heinrich Rohrer
  スイス
1987年   ヨハネス・ベドノルツ
J. Georg Bednorz
  西ドイツ セラミックス超伝導[注 48]を発見したことによる重要なブレイクスルー
Zeitschrift für Physik B 64 (1986) 189-193 (Bednorz, and Muller)
  カール・アレクサンダー・ミュラー
Karl Alexander Müller
  スイス
1988年   レオン・レーダーマン
Leon M. Lederman
  アメリカ合衆国 ニュートリノビーム法、およびミューニュートリノの発見によるレプトンの二重構造の実証
Phys. Rev. Lett.: 9 (1962) 36–44 (Lederman, Schwartz, and Steinberger)
メルヴィン・シュワーツ
Melvin Schwartz
  アメリカ合衆国
  ジャック・シュタインバーガー
Jack Steinberger
  アメリカ合衆国
  ドイツ国出身)
1989年   ノーマン・ラムゼー
Norman F. Ramsey
  アメリカ合衆国 分離振動場法[注 49]の開発、およびその水素メーザー原子時計への応用
Phys. Rev.: 76 (1949) 996
Phys. Rev.: 78 (1950) 695-699
Phys. Rev.: 78 (1950) 699–703
Phys. Rev.: 126 (1962) 603–615
J. Res. Nat. Bur. Stand.: 88 (1983) 301-320
Rev. Mod. Phys.: 62 (1990) 541–552
ハンス・デーメルト
Hans G. Dehmelt
  アメリカ合衆国
  ドイツ国出身)
イオントラップ法の開発
Phys. Rev. Lett.: 41 (1978) 233-236
Phys. Rev. A: 22 (1980) 1137-1140
Phys. Rev. Lett.: 55 (1985) 67-70
Phys. Rev. Lett.: 56 (1986) 2797-2799
Phys. Rev. Lett.: 59 (1987) 26-29 (Dehmelt)
ヴォルフガング・パウル
Wolfgang Paul
  西ドイツ

1990年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
1990年   ジェローム・アイザック・フリードマン
Jerome I. Friedman
  アメリカ合衆国 素粒子物理学におけるクォーク模型の展開に決定的な重要性[注 50]を持った、陽子および束縛中性子標的による電子深非弾性散乱に関する先駆的研究
Phys. Rev. Lett.: 23 (1969) 930-934
Phys. Rev. Lett.: 23 (1969) 935-939
  ヘンリー・ケンドール
Henry W. Kendall
  アメリカ合衆国
  リチャード・E・テイラー
Richard E. Taylor
  カナダ
1991年   ピエール=ジル・ドゥジェンヌ
Pierre-Gilles de Gennes
  フランス 単純なの秩序現象を研究するために開発された手法が、より複雑な物質、特に液晶高分子[注 51]の研究にも一般化できることの発見
Phys. Lett. A: 38 (1972) 339-340
Macromolecules: 8 (1975) 80
J. Physique: 39 (1978) 77
Rev. Mod. Phys.: 57 (1985) 827-863
Adv. Colloid Interface Sci.: 27 (1987) 189
Mater. Res. Soc. Bull.: 16 (1991) 20
1992年   ジョルジュ・シャルパク
Georges Charpak
  フランス
  ポーランド出身)
粒子検知器、特に多線式比例計数管の発明および発展[注 52]
Nucl. Instrum. Methods: 62 (1968) 262-268
Nucl. Instrum. Methods: 80 (1970) 13-34
1993年   ラッセル・ハルス
Russell A. Hulse
  アメリカ合衆国 重力研究の新しい可能性を開いた新型連星パルサーの発見[注 53]

Astrophys. J. Lett.: 195 (1975) L51-L53
Astrophys. J. Lett.: 206 (1976) L53-L58
Astrophys. J.: 253 (1982) 908-920
Philos. Trans. R. Soc. London Ser. A: 341 (1992) 117-134
Phys. Rev. D: 45(1992) 1840-1868

  ジョゼフ・テイラー
Joseph Hooton Taylor, Jr.
  アメリカ合衆国
1994年   バートラム・ブロックハウス
Bertram N. Brockhouse
  カナダ 凝縮体の研究に用いる中性子散乱技術の開発についての先駆的貢献(中性子分光法の開発)
Phys. Rev.: 111 (1958) 747-754
Rev. Mod. Phys.: 30(1958)236-249(erratum RMP 30(1958)1177)
Phys. Rev. Lett.: 2 (1959) 256-258
Phys. Rev.: 119(1960)980-999
  クリフォード・シャル
Clifford G. Shull
  アメリカ合衆国 凝縮体の研究に用いる中性子散乱技術の開発についての先駆的貢献(中性子回折技術の開発)
Phys. Rev.: 76 (1949) 1256-1257
Phys. Rev.: 81 (1951) 527-535
Phys. Rev.: 83 (1951) 333-345
Rev. Mod. Phys.: 25(1953)100-107
Phys. Rev.: 97 (1955) 304-310
1995年   マーチン・パール
Martin L. Perl
  アメリカ合衆国 レプトン物理学の先駆的実験(タウ粒子の発見)
Phys. Rev. Lett.: 35 (1975) 1489-1492
Phys. Lett. B: 63 (1976) 466-470
  フレデリック・ライネス
Frederick Reines
  アメリカ合衆国 レプトン物理学の先駆的実験(ニュートリノの検出)
Science: 124 (1956) 103-104
1996年   デビッド・リー
David M. Lee
  アメリカ合衆国 ヘリウム3超流動の発見[注 54]
Phys. Rev. Lett.: 28 (1972) 885-888 (Osheroff, Richardson, and Lee)
Phys. Rev. Lett.: 29 (1972) 920-923 (Osheroff, Richardson, and Lee)
Phys. Rev. A: 8 (1973) 1633–1637 (Osheroff, Richardson, and Lee)
  ダグラス・D・オシェロフ
Douglas D. Osheroff
  アメリカ合衆国
  ロバート・リチャードソン
Robert C. Richardson
  アメリカ合衆国
1997年   スティーブン・チュー
Steven Chu
  アメリカ合衆国 レーザー光を用いて原子を冷却および捕捉する手法の開発[注 55]
Phys. Rev. Lett.: 55 (1985) 48-51 (Chu)
Phys. Rev. Lett.: 57 (1986) 314-317 (Chu)
Phys. Rev. Lett.: 61 (1988) 169-172 (Phillips)
Phys. Rev. Lett.: 57 (1986) 1688-1691 (Cohen-Tannoudji)
Phys. Rev. Lett.: 59 (1987) 1659-1662 (Cohen-Tannoudji)
Phys. Rev. Lett.: 61 (1988) 826-829 (Cohen-Tannoudji)
J. Opt. Soc. Am. B.: 6 (1989) 2023-2045 (Cohen-Tannoudji)
  クロード・コーエン=タヌージ
Claude Cohen-Tannoudji
  フランス
  アルジェリア出身)
  ウィリアム・ダニエル・フィリップス
William D. Phillips
  アメリカ合衆国
1998年   ロバート・B・ラフリン
Robert B. Laughlin
  アメリカ合衆国 分数電荷の励起状態を持つ新たな量子流体の形態[注 56]の発見
Phys. Rev. Lett.: 48 (1982) 1559-1562 (Tsui and Störmer)
Phys. Rev. Lett.: 50 (1983) 1395-1398 (Laughlin)
  ホルスト・ルートヴィヒ・シュテルマー
Horst L. Störmer
  ドイツ
  ダニエル・ツイ(崔琦)
Daniel C. Tsui
  アメリカ合衆国
  中華民国出身)
1999年   ヘーラルト・トホーフト
Gerardus 't Hooft
  オランダ 物理学における電弱相互作用の量子構造の解明[注 57]
Nucl. Phys.: B7 (1968) 637-650 (Veltman)
Nucl. Phys.: B33 (1971) 173-199 ('t Hooft)
Nucl. Phys.: B35 (1971) 167-188 ('t Hooft)
Nucl. Phys.: B44 (1972) 189-213 ('t Hooft and Veltman)
Nucl. Phys.: B50 (1972) 318-353 ('t Hooft and Veltman)
  マルティヌス・フェルトマン
Martinus J. G. Veltman
  オランダ

2000年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
2000年   ジョレス・アルフョーロフ
Zhores I. Alferov
  ロシア 情報通信技術における基礎研究(高速エレクトロニクスおよび光エレクトロニクスに利用される半導体ヘテロ構造の開発[注 58]
  ハーバート・クレーマー
Herbert Kroemer
  ドイツ
  ジャック・キルビー
Jack S. Kilby
  アメリカ合衆国 情報通信技術における基礎研究(集積回路の発明)
2001年   エリック・コーネル
Eric A. Cornell
  アメリカ合衆国 アルカリ金属原子[注 59]の希薄気体でのボース=アインシュタイン凝縮の実現、および凝縮体の性質に関する基礎的研究
Science 269 (1995) 198–201 (Cornell and Wieman)
Phys. Rev. Lett.: 77 (1996) 420-423 (Cornell and Wieman)
Phys. Rev. Lett.: 75 (1995) 3969-3973 (Ketterle)
  ヴォルフガング・ケターレ
Wolfgang Ketterle
  ドイツ
  カール・ワイマン
Carl E. Wieman
  アメリカ合衆国
2002年   レイモンド・デイビス
Raymond Davis Jr.
  アメリカ合衆国 天体物理学への先駆的貢献、特に宇宙ニュートリノの検出[注 60]
Phys. Rev. Lett.: 12 (1964) 303-305 (Davis)
Phys. Rev. Lett.: 20 (1968) 1205-1209 (Davis)
Phys. Rev. Lett.: 58 (1987) 1490-1493 (Koshiba)
Phys. Rev. D: 38(1988) 448-458 (Koshiba)
Phys. Rev. Lett.: 77(1996) 1683-1686 (Koshiba)
Phys. Rev. Lett.: 81 (1998) 1562-1567 (Koshiba)
  小柴昌俊
Masatoshi Koshiba
  日本
  リカルド・ジャコーニ
Riccardo Giacconi
  アメリカ合衆国 宇宙X線源[注 61]の発見を導いた天体物理学への先駆的貢献
Phys. Rev. Lett.: 9 (1962) 439-443
Phys. Rev. Lett.: 11 (1963) 530-535
2003年   アレクセイ・アブリコソフ
Alexei A. Abrikosov
  アメリカ合衆国
  ロシア
超伝導超流動の理論に関する先駆的貢献[注 62]
Sov. Phys. JETP: 5 (1957) 1174-1182 (Abrikosov)
Zh. Eksp. Teor. Fiz. 32 (1957) 1442-1452 (Abrikosov)
Zh. Eksp. Teor. Fiz.: 20 (1950) 1064-1082 (Ginzburg)
Phys. Rev.: 140 (1965) A1869-A1888 (Leggett)
Phys. Rev.: 147 (1966) 119-130 (Leggett)
Phys. Rev. Lett.: 29 (1972) 1227-1230 (Leggett)
Phys. Rev. Lett.: 31 (1973) 352-355 (Leggett)
Rev. Mod. Phys.: 47 (1975) 331-414 (Leggett)
Phys. Rev. Lett. 46 (1981) 211-214 (Leggett)
  ヴィタリー・ギンツブルク
Vitaly L. Ginzburg
  ロシア
  アンソニー・レゲット
Anthony J. Leggett
  イギリス
  アメリカ合衆国
2004年   デイビッド・グロス
David J. Gross
  アメリカ合衆国 強い相互作用における漸近的自由性の理論的発見
Phys. Rev. Lett.: 30 (1973) 1343–1346 (Gross and Wilczek)
Phys. Rev. D: 8 (1973) 3633-3652 (Gross and Wilczek)
Phys. Rev. D: 9 (1974) 980-993 (Gross and Wilczek)
Phys. Rev. Lett.: 30 (1973) 1346-1349 (Politzer)
Phys. Rep.: 14 (1974) 129-180 (Politzer)
H. デビッド・ポリツァー
H. David Politzer
  アメリカ合衆国
  フランク・ウィルチェック
Frank Wilczek
  アメリカ合衆国
2005年   ロイ・グラウバー
Roy J. Glauber
  アメリカ合衆国 光学コヒーレンス[注 63]の量子論への貢献[注 64]
Phys. Rev. Lett.: 10 (1963) 84-86
Phys. Rev.: 130 (1963) 2529-2539
Phys. Rev.: 131 (1963) 2766-2788
  ジョン・ホール
John L. Hall
  アメリカ合衆国 光周波数コム技術[注 65]を含む、レーザーに基づく精密分光法の開発への貢献
Science: 288 (2000) 635-639 (Hall)
Rev. Sci. Instrum.: 72 (2001) 3749-3771 (Hall)
Phys. Rev. Lett.: 87 (2001) 270801 [4-pages] (Hall)
Phys. Rev. Lett.: 82 (1999) 3568-3571 (Hansch)
Phys. Rev. Lett.: 84 (2000) 5102-5105 (Hall and Hansch)
Phys. Rev. Lett.: 84 (2000) 5496-5499 (Hansch)
Phys. Rev. Lett.: 85 (2000) 2264-2267 (Hansch)
  テオドール・ヘンシュ
Theodor W. Hänsch
  ドイツ
2006年   ジョン・C・マザー
John C. Mather
  アメリカ合衆国 宇宙マイクロ波背景放射黒体放射の形をとることおよびその非等方性の発見[注 66]
Astrophys. J.: 420 (1994) 439-444
Astrophys. J.: 464 (1996) L1-L4
  ジョージ・スムート
George F. Smoot
  アメリカ合衆国
2007年   アルベール・フェール
Albert Fert
  フランス 巨大磁気抵抗の発見[注 67]
Phys. Rev. Lett.: 61 (1988) 2472-2475 (Fert)
Phys. Rev. B: 39 (1989) 4828-4830 (Grünberg)
  ペーター・グリューンベルク
Peter Grünberg
  ドイツ
2008年   南部陽一郎
Yoichiro Nambu
  アメリカ合衆国
  日本出身)
素粒子物理学および原子核物理学における自発的対称性の破れの機構の発見
Phys. Rev.: 117 (1960) 648
Phys. Rev.: 122 (1961) 345-358
Phys. Rev.: 124 (1961) 246-254
  小林誠
Makoto Kobayashi
  日本 自然界においてクォークが少なくとも3世代以上存在することを予言する、対称性の破れ[注 68]の起源の発見[注 69]
Progress of Theoretical Physics Vol. 49 No. 2 (1973) pp. 652-657
  益川敏英
Toshihide Maskawa
  日本
2009年   チャールズ・カオ(高錕)
Charles K. Kao
  イギリス
  アメリカ合衆国
  中華民国出身、1948年香港移住)
光通信を目的としたファイバー伝達に関する画期的業績[注 70]

Proc. IEE: 113 (1966) 1151-1158
J. Phys. E: Sci. Instrum.: 1 (1968) 1063-1068
J. Phys. E: Sci. Instrum.: 2 (1969) 331-335
J. Phys. E: Sci. Instrum.: 2 (1969) 579-583

  ウィラード・ボイル
Willard Boyle
  アメリカ合衆国
  カナダ
撮像半導体回路であるCCDセンサーの発明
Bell System Tech. J.: 49 (1970) 587-593
  ジョージ・E・スミス
George E. Smith
  アメリカ合衆国

2010年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
2010年   アンドレ・ガイム
Andre Geim
  オランダ
  ロシア出身)
二次元物質グラフェンに関する革新的実験[注 71]
  コンスタンチン・ノボセロフ
Konstantin Novoselov
  ロシア
  イギリス
2011年   ソール・パールマッター
Saul Perlmutter
  アメリカ合衆国 遠方の超新星の観測を通した宇宙加速膨張の発見
Astrophys. J.: 517 (1999) 565-586 (Perlmutter)
Astrophys. J.: 507 (1998) 46-63 (Schmidt)
Astron. J.: 116 (1998) 1009-1038 (Riess)
  ブライアン・P・シュミット
Brian Schmidt
  オーストラリア
  アメリカ合衆国
  アダム・リース
Adam Riess
  アメリカ合衆国
2012年   セルジュ・アロシュ
Serge Haroche
  フランス
  モロッコ出身)
個別の量子系に対する計測および制御[注 72]を可能にする画期的な実験的手法に関する業績[5][6][7][8]
  デービッド・ワインランド
David J. Wineland
  アメリカ合衆国
2013年   フランソワ・アングレール
François Englert
  ベルギー 欧州原子核研究機構 (CERN) によって存在が確認された素粒子ヒッグス粒子)に基づく、質量の起源を説明するメカニズムの理論的発見[9]

Phys. Rev. Lett.: 13 (1964) 321 (Englert)
Phys. Rev. Lett.: 13 (1964) 508 (Higgs)
Phys. Rev.: 145 (1966) 1156 (Higgs)

  ピーター・ヒッグス
Peter Higgs
  イギリス
2014年   赤﨑勇
Isamu Akasaki
  日本 高輝度で省電力の白色光源を実現可能にした青色発光ダイオードの発明[10]
  天野浩
Hiroshi Amano
  日本
  中村修二
Shuji Nakamura
  アメリカ合衆国
  日本出身)
2015年   梶田隆章
Takaaki Kajita
  日本 素粒子「ニュートリノ」が質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見[11]

Nucl. Phys. B-Proc. Supp.: 77 (1999) 43 (McDonald)
Nucl. Phys. B-Proc. Supp.: 77 (1999) 123 (Kajita)

  アーサー・B・マクドナルド
Arthur B. McDonald
  カナダ
2016年   デイヴィッド・J・サウレス
David J. Thouless
  イギリス
  アメリカ合衆国
物質のトポロジカル相とトポロジカル相転移の理論的発見[12][13]
  ダンカン・ホールデン
Duncan Haldane
  イギリス
  スロベニア
  ジョン・M・コステリッツ
Michael Kosterlitz
  イギリス
  アメリカ合衆国
2017年   レイナー・ワイス
Rainer Weiss
  アメリカ合衆国
  ドイツ出身)
LIGO検出器および重力波の観測への決定的な貢献
  バリー・バリッシュ
Barry Barish
  アメリカ合衆国
  キップ・ソーン
Kip Thorne
  アメリカ合衆国
2018年   アーサー・アシュキン
Arthur Ashkin
  アメリカ合衆国 光ピンセットの開発と生体システムへの応用
  ジェラール・ムル
Gérard Mourou
  フランス 超高出力・超短パルスレーザーの生成方法の開発
  ドナ・ストリックランド
Donna Strickland
  カナダ
2019年   ジェームズ・ピーブルス
Jim Peebles
  アメリカ合衆国
  カナダ出身)
物理宇宙論における理論的発見
  ミシェル・マイヨール
Michel Mayor
  スイス 太陽型恒星を周回する太陽系外惑星の発見
  ディディエ・ケロー
Didier Queloz
  スイス

2020年代 編集

年度 受賞者名 国籍 受賞理由[4]・原著ないし関連論文
2020年   ロジャー・ペンローズ
Roger Penrose
  イギリス ブラックホールの形成が一般相対性理論の強力な裏付けであることの発見
  ラインハルト・ゲンツェル
Reinhard Genzel
  ドイツ 我々の銀河系の中心にある超大質量コンパクト天体[注 73]の発見
  アンドレア・ゲズ
Andrea M. Ghez
  アメリカ合衆国
2021年   真鍋淑郎
Syukuro Manabe
  アメリカ合衆国
  日本出身)
地球気候の物理的モデリング、気候変動の定量化、地球温暖化の確実な予測
クラウス・ハッセルマン
Klaus Hasselmann
  ドイツ
  ジョルジョ・パリージ
Giorgio Parisi
  イタリア 原子から惑星のスケールまでの物理システムの無秩序と変動の相互作用の発見

Phys. Rev. Lett.: 43 (1979) 1754-1756
J. Phys. A: Math. Gen.: 13 (1980) L115-L121
Sci. Sin.: 24 (1981) 483-496
J. Phys. A: Math. Gen.: 17 (1984) 3521-3531
Phys. Rev. Lett.: 52 (1984) 1156-1159

2022年   アラン・アスペ
Alain Aspect
  フランス 量子もつれ状態の光子を用いた実験によるベルの不等式の破れの実証と、量子情報科学における先駆的研究
  ジョン・クラウザー
John F. Clauser
  アメリカ合衆国
  アントン・ツァイリンガー
Anton Zeilinger
  オーストリア
2023年   ピエール・アゴスティーニ
Pierre Agostini
  アメリカ合衆国
  フランス出身)
物質中の電子ダイナミクスの測定を可能にするアト秒パルス光を生成する実験手法の開発
  フェレンツ・クラウス
Ferenc Krausz
  オーストリア
  ハンガリー出身)
  アンヌ・リュイリエ
Anne L'Huillier
  スウェーデン
  フランス出身)

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ X線の別名として「レントゲン線」(Röntgen ray) というものがある。
  2. ^ ゼーマン効果として知られている。
  3. ^ 実際にはラジウムの研究に対して授与された。
  4. ^ 即ち陰極線である。
  5. ^ マイケルソン・モーリーの実験にも用いられた。
  6. ^ カラー写真を世界で初めて実現し、これに対しノーベル賞が授与されている。
  7. ^ ファンデルワールスの状態方程式が彼に帰せられる。
  8. ^ ヴィーンの変位則ヴィーンの放射法則が彼に帰せられる。
  9. ^ 特に水銀において超伝導を発見している。
  10. ^ ブラッグの法則が彼らに帰せられる。
  11. ^ この現象はシュタルク効果として知られている。
  12. ^ ミリカンの油滴実験にて電気素量を決定した。
  13. ^ これによりプランク定数を決定した。
  14. ^ 原子のエネルギー準位が離散的であることを示したフランク=ヘルツの実験による授与である。
  15. ^ 3種の異なる手法で求めたアヴォガドロ数が一致することを示し、分子が実在であることを確立した。
  16. ^ これは物質波またはド・ブロイ波として知られている。
  17. ^ ハイゼンベルクの運動方程式は彼に帰せられる。
  18. ^ オルト水素・パラ水素として知られている。
  19. ^ シュレーディンガー方程式ディラック方程式は彼らに帰せられる。
  20. ^ これによりシュテルン=ゲルラッハの実験が行われた。
  21. ^ 実際には磁気モーメントである。
  22. ^ この方法はNMRに応用される。
  23. ^ 湯川ポテンシャルは彼に帰せられる。
  24. ^ これに用いた回路がコッククロフト・ウォルトン回路として知られている。
  25. ^ 核磁気共鳴として知られている。
  26. ^ ボルンの確率解釈と呼ばれている。
  27. ^ ラムシフトと呼ばれている。
  28. ^ 原子線を用いた核磁気共鳴分光の詳細な解析から、電子の磁気モーメントがボーア磁子よりも0.1%程度大きいことを実験的に発見した。この事実はラムシフトと同様、ディラック方程式を超える理論が必要であることの明白な証拠となった。
  29. ^ 基本相互作用ローレンツ対称性から相互作用のCPT対称性が帰結される。理論物理学者は3つの基本相互作用(電磁)について、C,P,Tの各対称性が個別に成立すると考えていた。しかし、リーとヤンは膨大な文献検証の結果として、弱い相互作用においてはP対称性が破れている可能性を指摘、同時に、中性子中間子の弱い相互作用による崩壊を通じてこの可能性を直接検証可能な実験を提案した。
  30. ^ タリウム賦活ヨウ化ナトリウムが優れたシンチレーターとして機能することを発見、ガンマ線荷電粒子のエネルギーの精密測定を可能にした。これを高エネルギー電子散乱に応用、原子核核子の電荷や磁気モーメントの分布測定を通じて原子核の内部構造を明らかにした。
  31. ^ 殻模型と呼ばれている。
  32. ^ 朝永・シュウィンガー方程式ファインマンダイアグラムは彼らに帰せられる。
  33. ^ 光ポンピング法を開発した。
  34. ^ NNG則、ユニタリー群SU(3)を用いたハドロン八道説英語版クォーク模型、カレント代数弱い相互作用のV-A型ラグランジアン、走る結合定数とくりこみ群のゲルマン・ロウ方程式、粒子反粒子振動など。
  35. ^ アルヴェーン波が彼に帰せられる。
  36. ^ ネール温度が彼に帰せられる。
  37. ^ 受賞者3人の頭文字である。特にクーパーにはクーパー対が帰せられる。
  38. ^ ヒューイッシュは1950年代に、長波長帯で観測される電波シンチレーション(視線方向のプラズマ密度の時間的に不規則な揺らぎにより引き起こされる電波強度の揺らぎ)を観測する技術を開発している。1960年代初めはこれを用いて惑星間プラズマを研究しその副産物として電波クエーサーを発見していた。明るい電波源の時間的に速く変動する成分を0.1秒以下の時間スケールで記録できるようにした装置設計が、電波源全部がシンチレーションからなるように見える、奇妙な電波源の発見を導いた。
  39. ^ 集団運動模型を提唱した。
  40. ^ 1970年、レーダーマンが別目的でティンと同様の実験を行っていた。装置設計として質量分解能を犠牲にしていたので、ミュー粒子対生成の散乱断面積についてJ/ψ不変質量である3GeV付近に「奇妙な肩」を観測したものの「共鳴状態を示す強い証拠はない」と結論せざるを得ず、結果としてJ/ψの発見を逃している。
  41. ^ アンダーソン局在モット絶縁体ヴァン・ヴレック常磁性などがそれぞれ彼らに帰せられる。
  42. ^ ヘリウム4超流動を発見した。
  43. ^ この放射は約3ケルビンに相当するため、検出するには相当の低温技術が必要となる。
  44. ^ 受賞者発表のあった1979年10月時点で、ウィークボソンの直接検出には至っていない(直接検出は1983年)。スウェーデン王立科学アカデミーは2つの実験事実、つまり(1)疑う余地のない弱中性カレントが泡箱写真として記録・検出されたことと、(2)様々な実験から得られた弱混合角の値が不確かさの範囲内で一致したこと、をもって3人への授与を決めた。
  45. ^ ウィルソンのくりこみ群として知られている。
  46. ^ チャンドラセカール限界が彼に帰せられる。
  47. ^ フォン・クリッツィング定数が彼に帰せられる。
  48. ^ LBCOとして知られる高温超伝導体である。
  49. ^ ラムゼー共鳴法として知られている。
  50. ^ 実験結果はクォーク・パートンモデルと非常によく一致し、解析から核子電荷を持つより基本的な構成子からなる複合粒子であること、基本構成子は核子内で自由粒子のように振る舞っていること、電荷を持たない成分も運動量移行を担うことが明らかになった。
  51. ^ ノーベル賞受賞講演の論文タイトルが"Soft Matter"であったことから、これらの研究分野がソフトマターと呼ばれるようになった。
  52. ^ 荷電粒子に対する優れた位置敏感型検出器である多線式比例計数管を開発、これと電算機とを組み合わせることにより素粒子反応の検出から解析までを極めて迅速にかつ一挙に行えるシステムを構築した。
  53. ^ PSR B1913+16を発見、パルス周期が周期変動する様子から連星系に関する5個の軌道要素を決定し3個の一般相対論的効果(特に公転周期減少)を検出した。 一般相対論が正しい理論だと仮定すると重力波の放出によって連星系からエネルギーが持ち去られて軌道長半径が徐々に小さくなるが、公転周期減少の理論値と観測値とが観測誤差の範囲内で一致することを示し、間接的ながら重力波の初検出に成功した。太陽系で検証済みの一般相対論が、はるかに強い重力場の中性子星近傍にも正しく適用可能であることを示すとともに、観測事実を説明できない幾つかの重力理論を合理的に排除することにも貢献した。
  54. ^ ポメランチュク冷却装置の圧力異常からヘリウム3の相転移を実験的に観測、超流動ヘリウム3について理論的に予言されていた数々の磁気的性質をNMRにより確認して超流動状態が実現していることを明らかにした。
  55. ^ チューはNa原子にドップラー冷却を適用して光糖蜜を作成し、原子集団をドップラー冷却限界温度の240μKにまで冷却できることを証明。フィリップスは磁気光学トラップ中のNa原子がドップラー冷却限界温度を大幅に下回る40μKにまで冷却されていることを発見。コーエンタヌージは偏光勾配冷却という新たなメカニズムによってこれを解明、またVSCPTを開発してHe原子を2μKにまで冷却した。
  56. ^ 分数量子ホール効果として知られる。
  57. ^ ヤン=ミルズ理論が、ゲージ対称性を保存する場合も自発的に破る場合も繰り込み可能であることを数学的に証明した。
  58. ^ クレーマーはヘテロ接合を採用した半導体の優位性を初めて指摘し、アルフョーロフはヘテロ接合に基づく半導体レーザーの作成に成功した。
  59. ^ コーネルとワイマンはルビジウムを、ケターレはナトリウムを用いた。
  60. ^ デービスは太陽ニュートリノの観測により太陽ニュートリノ問題を提起し、小柴は超新星SN 1987Aから飛来したニュートリノの観測により恒星重力崩壊の機構を明らかにした。
  61. ^ さそり座X-1を指す。
  62. ^ ギンツブルグ-ランダウ理論がギンツブルグ(および1962年受賞のランダウ)に帰せられる。アブリコソフはこれを出発点に第二種超伝導体の挙動を理論的に説明した。レゲットはヘリウム3の超流動に理論的説明を与えている。
  63. ^ コヒーレント状態にある光の一例としてレーザーが挙げられる。
  64. ^ 量子光学においてこの業績が広く用いられている。
  65. ^ を規定する原子時計の周波数帯と光の周波数帯とを測定精度を損なわずに直接リンクすることを可能にし、レーザーの周波数測定精度を飛躍的に向上させた。
  66. ^ CMBが2.73Kの黒体放射スペクトルと完全に一致することは宇宙がかつて超高温の熱平衡状態にあった証拠としてビッグバンを、10万分の1K程度の非等方性は量子ゆらぎが宇宙スケールにまで拡大された証拠として宇宙のインフレーションを支持する強い観測的証拠である。
  67. ^ スピントロニクスの端緒を開いた発見である。この業績がハードディスクの容量増加に大きく貢献している。
  68. ^ ここではCP対称性の破れを指している。
  69. ^ 小林・益川理論が彼らに帰せられる。
  70. ^ 1960年代中ごろまでガラス製光ファイバーの伝送損失は数千dB/kmもあった。Kaoは1966年から1969年にかけて低損失ガラス棒材の透過損失率の精密測定を系統的に実施し、鉄などの遷移金属不純物が極めて大きな損失係数を有することを明らかにした。加えて、当該不純物量を十分に低減できれば、石英ガラス製光ファイバーによって20dB/km以下、最終的には数dB/km程度の伝送損失が実現可能であることを定量的に指摘した。1970年に不純物濃度を改善した石英系ガラス素材を用いた光ファイバーによって伝送損失20dB/kmが実現されたことにより、光ファイバーは低損失性、化学的安定性、柔軟性に優れた光伝送媒体として注目されるようになった。
  71. ^ 単層のグラフェンを初めて作成した。
  72. ^ この技術の応用による量子コンピュータの実現が期待される。
  73. ^ いて座A*として知られる。

出典 編集

  1. ^ 日本放送協会. “記録で見るノーベル賞|まるわかりノーベル賞2018|NHK NEWS WEB”. www3.nhk.or.jp. 2023年10月1日閲覧。
  2. ^ 日本放送協会. “ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏 二酸化炭素の温暖化影響を予測”. NHKニュース. 2021年10月5日閲覧。
  3. ^ ノーベル賞のメダル”. アワードプレス. 2017年10月4日閲覧。[リンク切れ]
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m Nobel Web AB 2011. “All Nobel Laureates” (英語). ノーベル財団. 2011年10月4日閲覧。
  5. ^ Serge Haroche, Jean-Michel Raimond & Michel Brune ; Le chat de Schrödinger se prête à l'expérience - Voir en direct le passage du monde quantique au monde classique, La Recherche 301 (Septembre 1997) 50 (disponible en ligne[リンク切れ])
  6. ^ Serge Haroche ; Une exploration au cœur du monde quantique, dans : Qu'est-ce que l'Univers ?, Vol. 4 de l'Université de Tous les Savoirs (sous la direction d'Yves Michaux), Odile Jacob (2001) 571.
  7. ^ Christopher R. Monroe en David J. Wineland. "Quantum Computing with Ions." Scientific American, 11 augustus 2008.
  8. ^ The Nobel Prize in Physics 2012”. Nobel Foundation. 2012年10月9日閲覧。
  9. ^ The Nobel Prize in Physics 2013”. Nobel Foundation. 2013年10月11日閲覧。
  10. ^ The Nobel Prize in Physics 2014”. Nobel Foundation. 2014年10月7日閲覧。
  11. ^ The Nobel Prize in Physics 2015”. Nobel Foundation. 2015年10月6日閲覧。
  12. ^ Kosterlitz, J. M.; Thouless, D. J. (1973). “Ordering, metastability and phase transitions in two-dimensional systems”. Journal of Physics C: Solid State Physics 6 (7): 1181. http://stacks.iop.org/0022-3719/6/i=7/a=010. 
  13. ^ Haldane, F.D.M. (1983). “Continuum dynamics of the 1-D Heisenberg antiferromagnet: Identification with the O(3) nonlinear sigma model”. Physics Letters A 93 (9): 464–468. doi:10.1016/0375-9601(83)90631-X. ISSN 0375-9601. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/037596018390631X. 

関連項目 編集

外部リンク 編集