ハッチバック

ハッチバックとは、自動車の分類の一種である。

概要

プジョー・306 リアハッチを開けたところ
リアハッチを開けたところ
ジャガー・Eタイプ (1961 - 1975)
スポーツカーGTにもバックドアを持つものがあるが、狭義のハッチバック車には分類されない。

ボンネット付きの車種のうち、全長が短い、あるいは車高が低いなどの理由でトランクや車室の容積が小さくなりがちな車種において、大きい荷物や長物の積み下ろしを楽にし、自動車の利便性(ユーティリティー)を少しでも高めるための手段として、跳ね上げ式、または横開き式の「バックドア」(背面ドア)を設けた車種である。

ヒンジがほぼ垂直である通常の乗降用ドア(フロントドア、リアドア)に対し、跳ね上げ式では水平、横開き式でも寝かされた角度となることから、これをなどの「ハッチ」に見立てたことに由来する。ただし、全長が短く、後部座席とバックドアが近いものでは、後席の頭上空間を確保するため、背面が垂直に近いものもある。また、簡易なものでは、リアウインドウのみを跳ね上げ式としたガラスハッチも存在する[1]

スタイルよりも積載性や利便性が重視されるバン(ボンネットバン)やステーションワゴンは古くからバックドア[2]が設けられているが、「ハッチバック」を車体の「構造」では無く、「車種」(車型、車名、グレード)として用いる場合はこれらを含めず、大衆車スポーツカー、スポーティーカーでバックドアを持つものを指す[3]

独立したトランクを持つ車種とは異なり、荷室と車室を隔てる仕切り壁(バルクヘッド)を持たず、大きな荷物を積む場合にはバンのように使用することができるように、パーセルシェルフ[4]が取り外せ、後部座席が折りたためるようになっているものがほとんどである。高級車にもバックドアを与えるフランス車には、シトロエン・XMの様に、きちんとしたパーセルシェルフに加え、外気や騒音の侵入を防ぐ跳ね上げ式のインナーウインドウを備えるものもある。

多くのクーペ、特に1970年代 - 1980年代のスポーティーカーにおいて、バックドアを設ける車種が増加したが、スポーツカーでは、剛性低下や重量増を嫌い、これを採用しないものもあった。

ハッチバックの分類

狭義では「バックドア」を持つ大衆車で、日本では、立体駐車場に駐車可能な高さである1550mm未満の2ボックス型乗用車のことを指す。2ボックススタイルでも、BMCMiniのように、トランクのみでバックドアを持たないサルーン(セダン)や、初代シビックのように、トランク付きセダンとハッチバックが全く同じシルエットの例もあるため、全高の低い大衆2ボックス車の全てがハッチバック車である訳では無い。

広義ではファストバック、3ボックス、2.5ボックスにおいてバックドアを持つ乗用車も含まれる。なお、日本では全高が1550mmを超えるものをトールワゴンと呼んでいる。

呼称

自動車メーカーでは、利便性やアクティビティ[5]をアピールする場合には「ハッチバック」の呼称を前面に押し出すが、高級感や性能面でデメリットを感じさせる場合[6]には控える傾向がある。

商品名としては、リフトバック(トヨタ)、オープンバック(日産)、スポーツバック(アウディ三菱)など、メーカー固有の商標もある。

ハッチバック車は低コストで機能を追求するベーシックな大衆車がほとんどであるが、同時に小型で軽量なことから、高出力エンジンと固められたサスペンションスプリングショックアブソーバーを与えることで、より上級(高額)のスポーツモデルに匹敵する性能を得ることも可能であり[7]、これらのモデルは、特に「ホットハッチ」と呼ばれる[8]

外観上、ファストバック、3ボックス、極短いリアデッキを持つ2.5ボックスなどを、単に「セダン」とし、ハッチバックと呼ばないこともある(セダン#ハッチバックセダンも参照)。これらは主に荷室容積への要求が厳しい欧州向けに多く見られ、使い勝手は維持しつつ、高級感を損ないたくないCセグメント以上に例が多い。フォルクスワーゲンフィアットアルファ・ロメオは、プラットフォームを共用としながら、3ボックスのノッチバックボディーに別の車名を与え、やや上の車格として販売している[9]。「クーペ」でもハッチバックの名を冠さないものが多い。

軽自動車においては、乗用車(5ナンバーの軽自動車)を軽ボンネットバン(4ナンバー)と区別するため、メーカーが「セダン」と名付ける場合がある。

ハッチバック車の歴史

ルノー・4 ルノー・4
ルノー・4

ハッチバックの元祖は、1961年発表のルノー4(キャトル)であると言われているが、その萌芽は1938年のシトロエントラクシオン・アバンCommercialeにまで遡る。世界的にはジョルジェット・ジウジアーロのデザインによる、初代フォルクスワーゲン・ゴルフが成功したことで広まった形態である。日本においては1966年のトヨタ・コロナ5ドアが最初だが、まだ当時は業務用のバンと勘違いされるほどこうした車への認知度がなかった。その後1970年代中盤になってトヨタ・カローラ / トヨタ・スプリンター・リフトバックや、ホンダ・シビック等によりようやく一般化した。現在では、小型自動車コンパクトカー)や軽自動車では、その実用性から最も一般的な形となっている。

日本ではかつて、重量、剛性、燃費、価格の面で有利な3ドアが主流であったが、次第に使い勝手に勝る5ドアが主流となり、3ドアは激減している。


ハッチバック車種一覧

現行販売車種に限る。

日本(軽自動車、逆輸入車を含む)

斜字軽自動車

レクサス
CT200h
トヨタ
iQ(3ドア)、パッソヴィッツistアクアオーリスブレイドプリウス
日産
マーチノートティーダリーフ
ホンダ
フィット/フィットハイブリッドインサイトCR-Z(3ドア)、シビックタイプRユーロ(3ドア・台数限定生産)
マツダ
デミオベリーサアクセラスポーツアテンザスポーツキャロル
スズキ
スイフトSX4アルトアルトラパン
ダイハツ
ブーンミラミライースミラココア
三菱
コルトギャランフォルティススポーツバックi[要検証 ]i-MiEV[要検証 ]
富士重工業
インプレッサ・スポーツプレオ

日本以外の車種

プジョー
207307308
シトロエン
C2C3C4DS3
ルノー
トゥインゴルーテシア(本国名クリオ)、メガーヌ
ポルシェ
パナメーラ
フォルクスワーゲン
ゴルフポロニュービートルルポ
アウディ
アウディ・A1アウディ・A3
BMW
1シリーズMINI (現行モデルのみ)
アストンマーチン
シグネット(3ドア)
ランチア
イプシロン
フィアット
プント
アルファ・ロメオ
147MiTo(3ドア)
オペル
ヴィータ(本国名コルサ)
フォード
フィエスタ

脚注

  1. ^ ステーションワゴンSUV/クロスオーバーSUVなど、いわゆるハッチバック車と呼ばれない車種では、跳ね上げ式バックドアとガラスハッチを組み合わせた(両方持つ)ものもある。
  2. ^ 商用車では観音開きも多く、ステーションワゴンも、大型の跳ね上げドアが技術的に成立させづらかった時代は、上下分割(跳ね上げ+下開き)や横開き、あるいはリアウインドウをスライド式(バックドアの開閉時に、リアウインドウを下降させて収納する。)としていた。
  3. ^ 大衆車では、バンと乗用ハッチバックが同じ車体である場合も多い。
  4. ^ 後席背もたれとリアウインドウの間のファストバッククーペではこれを省略し、トノーカバーで済ませる場合が多い。
  5. ^ スポーツアクティビティ=アウトドア活動やレジャー用途など。
  6. ^ 高級車では、バックドア自体の風切りや振動と、バルクヘッドを持たないことで騒音が侵入しやすいこと、スポーツカーでは、バルクヘッドを持たず、開口面積が大きいことで車体剛性が低下することや、その補強で重量が増えることなどが嫌われる。
  7. ^ 最高速度やサーキットのラップタイムでは大排気量で高出力の車種にかなわないが、低・中速の減速や、道のような曲率の小さなコースに限定すれば、それらに勝るパフォーマンスを発揮する。
  8. ^ フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI、ルノー5 アルピーヌシュペール5 GTターボ、アウトビアンキ・A112 アバルトプジョー・205 GTIホンダ・シビックタイプRなど。以前の欧州車日本車では、多くのハッチバック車にホットバージョンがラインナップされており、軽量化のため、それらから快適装備を省いたラリーやレースに参加するためのモータースポーツベース車が用意されることも珍しくなかった。モータースポーツベース車についてはグループNグループAグループBを参照。
  9. ^ 同様の理由で、自動車が贅沢品であった高度経済成長下の日本や、モータリゼーション期の発展途上国新興国では、トランク付きの3ボックスボディーが好まれる傾向があり、欧州や日本で2ボックス・ハッチバックとなる車格に、3ボックスセダンを投入している。

関連項目