ハリケーン・アイバン(Hurricane Ivan)は、2004年9月に発生した近年の観測史の中でも最大級の勢力を持ったハリケーンである。本来ロシア語などの人名であるIvanには、イヴァン(スラヴ語よみ)やアイヴァン(英語よみ)などの読み方があるが、日本のほとんどの報道機関では英語読みの「アイバン/アイヴァン」という読み方を採用している。

ハリケーン・アイバン
カテゴリ5メジャー・ハリケーン (SSHWS/NWS)
最盛期のハリケーン・アイバン (9月14日)
発生2004年9月4日
消滅2004年9月24日
最大風速1分平均: 165 mph (270 km/h)
最低気圧910 mbar (hPa); 26.87 inHg
死者直接の死者92名 間接的に32名
被害~ $200億(2004の米ドル
被害地域特に被害が甚大だった地域

ウィンドワード諸島 (特に グレナダジャマイカグランドケイマンキューバ
被害のあった地域
アラバマ州,フロリダ州,合衆国東部広範域
復活後に被害のあった地域

テキサス州,ルイジアナ州
2004年の大西洋ハリケーン英語版
進路

このハリケーンが通過した地域では、Ivan the Terribleイヴァン雷帝16世紀ロシア史上初めて皇帝を名乗り、専制君主となったイヴァン4世の通称)というあだ名で呼ばれている。

概要 編集

以下の日付は、日本時間に基づく。

  • 2004年9月2日、アフリカ西海岸で、この年の大西洋北部で9番目のトロピカル・デプレッション発生(なお、この海域で発生するハリケーンはカーボベルデ・ハリケーンと呼ばれ、過去に多くのハリケーンがカテゴリ4以上の強度に発達している)。
  • 9月3日、この年の大西洋北部で9番目のトロピカル・ストームとなり、Ivanと命名(つまり、日本流に言うと「台風9号」に相当する)。
  • 9月5日、この年の大西洋北部で6番目のハリケーンとなった。ハリケーンとなったときの緯度は北緯9.5度であったが、北緯10度より南という低緯度でハリケーンとなるのは、極めて異例のことである。
  • 西進しながら発達し、9月9日にはカテゴリ5の強度に達した。このときの緯度は北緯13.7度で、大西洋北部で最も低緯度でカテゴリ5に達したハリケーンとなった。
  • その後カテゴリ4とカテゴリ5の間を行き来しながら長期間強い勢力を保った。
  • 9月12日9月14日に中心気圧910ヘクトパスカルを記録。これは大西洋北部で史上10番目に低い気圧である。9月12日に最大風速145ktを記録。
  • 9月16日、米国アラバマ州に中心気圧946ヘクトパスカル、最大風速105kt(カテゴリ3)の勢力で上陸した。上陸地点の緯度は30度台で、日本の台風で言うと、九州南部地方上陸台風に相当する。なお、強風域は最盛期よりも拡大し、日本の台風で言うと、大型になったと思われる。
  • 上陸後、急速に勢力が衰え、トロピカル・デプレッション未満の強度(残骸)となった。
  • 米国本土移動中、111個の竜巻が発生した。
  • その後、Ivanの残骸はいったん大西洋へ出てから南下を始め、フロリダ半島を西進し、元の経路に逆戻りした。9月23日にトロピカル・デプレッション強度まで発達し、再度Ivanと命名。復活したIvanは、トロピカル・ストーム強度まで発達。
  • 9月24日、米国ルイジアナ州に再上陸後、まもなく消滅。再上陸時の勢力は、中心気圧1004ヘクトパスカル、最大風速30ktであった。日本の台風で言うと、台風勢力未満で、「上陸」扱いとならなかったかもしれない。
  • 国際名Ivanは、この年限りで引退となった。代わりにIgorという国際名に変更となった(変更となったIgorは2010年限りで引退となり、代わりにIanという国際名に変更となった)。なお、頭文字「I」のハリケーンは、2001年から2004年まで4年連続で引退扱いとなっている(2001年のIris、2002年のIsidore、2003年Isabel2004年のIvan)。

被害状況 編集

顕著な事実 編集

最強烈の大西洋ハリケーン
順位 ハリケーン 中心気圧 (hPa)
1 ウィルマ(Wilma) 2005年 882
2 ギルバート(Gilbert) 1988年 888
3 レイバー・デー(Labor Day) 1935年 892
4 リタ(Rita) 2005年 895
5 アレン(Allen) 1980年 899
6 カミーユ(Camille) 1969年 900
7 カトリーナ(Katrina) 2005年 902
8 ミッチ(Mitch) 1998年 905
ディーン(Dean) 2007年
10 マリア(Maria) 2017年 908


外部リンク 編集