パッセンジャー (映画)

アメリカの映画作品

パッセンジャー』(原題: Passengers)は、2016年アメリカ合衆国SF映画。日本では2017年3月24日に公開。

パッセンジャー
Passengers
監督 モルテン・ティルドゥム
脚本 ジョン・スペイツ
製作 ニール・H・モリッツ
スティーヴン・ハメル
マイケル・マー
オリ・マーマー
製作総指揮 デヴィッド・ハウスホルター
ベン・ブラウニング
ジョン・スペイツ
リンウッド・スピンクス
ブルース・バーマン
グレッグ・バッサー
ベン・ウェイスブレン
出演者 ジェニファー・ローレンス
クリス・プラット
マイケル・シーン
ローレンス・フィッシュバーン
アンディ・ガルシア
音楽 トーマス・ニューマン
主題歌 JUJUBecause of You
(日本語吹替版テーマソング[1]
撮影 ロドリゴ・プリエト
編集 メリアン・ブランドン
製作会社 ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
スタート・モーション・ピクチャーズ
オリジナル・フィルム
Lスター・キャピタル
ワンダ・ピクチャーズ
コンパニー・フィルムズ
配給 アメリカ合衆国の旗 コロンビア ピクチャーズ
日本の旗 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開 アメリカ合衆国の旗 2016年12月14日
日本の旗 2017年3月24日
上映時間 116分[2]
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $110,000,000[3]
興行収入 世界の旗 $303,144,152[3]
アメリカ合衆国の旗 $100,014,699[3]
日本の旗 5億8000万円[4]
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日本版のキャッチコピーは「乗客5000人 目的地まで120年 90年も早く 2人だけが目覚めた 理由は1つ――。」。

ストーリー 編集

宇宙移民を目的とした約5000人を乗せた超大型宇宙船アヴァロン号は航行中、人工冬眠ポッドの故障によりジム(クリス・プラット)だけが目覚めてしまう。アヴァロン号が目的の惑星に到着するまでまだあと約90年、再び冬眠状態になることは不可能で、地球へ助けを求めるメッセージを送るも返事が届くまでに約55年を要す。乗組員ではない植民者のジムは宇宙船のコントロールにアクセスすることもできないうえ、アクセス権を持つ乗組員たちが冬眠している部屋は頑丈なハッチに守られているため、起こすことも不可能。八方塞がりとなったジムは広い宇宙船の中で、寿命を迎えるまで孤独に過ごすしかない絶望的な状況となってしまう。

それから1年間、ジムは宇宙船の中で一人自堕落な生活を続けていた。自らこじ開けたスイートルームを独占し、船内のエンタテイメントシステムで時間をつぶし、唯一の話し相手のバーテンダー・アンドロイドのアーサー(マイケル・シーン)と日々会話を続ける。そんな中、宇宙船では作業ロボットなどの故障がたびたび発生し、無人のコントロールルームではエラーメッセージが次々と表示される。ある時、ジムは宇宙服を着ての船外活動が可能だと気づき、宇宙遊泳で初めて見る生の宇宙空間に感動する。しかし日に日に増していく孤独感に耐えられなくなったジムは、宇宙服を着ないまま外扉を開くスイッチを押そうとするが、寸前で我に返り自殺を思いとどまる。

ある日、ジムは冬眠ポッドで眠る作家のオーロラ(ジェニファー・ローレンス)に一目惚れ、彼女のことを調べていくうちにますます惹かれていくようになる。ジムはオーロラを目覚めさせたい気持ちに駆られるが、それは彼女の人生を奪ってしまうことを意味するため、葛藤する。しかし寂しさに堪えられず、ついに冬眠ポッドを故障させ彼女を目覚めさせてしまう。目覚めたオーロラは困惑するが、唯一同じ状況を共有し、優しく接してくれるジムに惹かれていくようになる。しかし恋人関係となり1年が過ぎ、ジムがプロポーズを決心した頃、アーサーがオーロラに、ジムが故意に彼女を目覚めさせたことを告げてしまう。オーロラはその事実に憤慨し、ジムをひどく恨み拒絶するようになる。ジムはオーロラへ謝罪し、なんとか償いの気持ちを伝えようとあらゆる手を尽くすが、オーロラは依然としてジムを避け続け、それに対しジムも嫌気がさし始めると、2人の仲は壊滅的となる。

そんな中、アヴァロン号のシステム不具合は日に日に悪化し、様々なトラブルが頻発していた。冬眠ポッドの故障から甲板長のガス(ローレンス・フィッシュバーン)が目覚める。アヴァロン号への全アクセスが可能なガスが目覚めたことでコントロールルームへの入室が可能となり、問題の把握にかかると、アヴァロン号は2年前の小惑星群との衝突の影響で、航行や電力供給など、船のすべてのエネルギー生成を担う核融合炉が暴走寸前であると発覚。ガス指導のもと問題解決を図る3人だったが、不具合のある冬眠ポッドで2年間眠っていたガスは新陳代謝を狂わされており、体内が深く傷つけられ、寿命が残り少ないことが判明する。その間にも船の状態は悪化、重力装置が一時停止になるなど深刻なトラブルも発生する。一刻の猶予もないと判断したガスは、息絶える際にジムとオーロラに自身のアクセス権を託す。

2人は核融合炉の修理に取りかかるが、修理を完了するには炉内の熱を排熱孔から放出する必要があり、故障の影響で排熱孔は船外から手動でしか開けられなくなっていた。ジムが船外に出て命がけで排熱孔を開き、核融合炉は限界寸前で正常に戻るが、熱放出の際の衝撃によってジムは宇宙空間に吹き飛ばされてしまう。オーロラは船外に飛び出してジムを救出、すぐさま医療ポッドへ運び込む。一時は死亡と診断されたジムだったが、あらゆる手を尽くして蘇生に成功する。

その後、2人の関係は一連の出来事で修復する。ガスの宇宙葬を済ませたある日、ジムはガスに与えられたアクセス権で医療用ポッドを確認してるうちに、そのポッドに冬眠機能があることを発見する。ポッドは1台。ジムはオーロラに、目覚めさせた償いとして冬眠ポッドを譲ろうとするが、結局オーロラはそれを拒み、ジムと2人で最期まで暮らすことを決意する。そしてジムは、かつてできなかったオーロラへのプロポーズをし、オーロラは受け入れ、2人で星の旅を生き続ける。

88年後。目的の惑星への到着を5ヶ月後に控え、乗組員の冬眠ポッドが起動する(乗客の起動はその1か月後)。船長以下、目覚めた乗組員たちがフロアで見たものは、一帯を覆う緑の木々と、その中心に鎮座するようにそびえ立つジムが植えた木であった。オーロラの遺言となるアナウンスにより、徐々に人々は、自分たちが眠り続けた間に起こった危機と、2人の物語を知ることになる。

キャスト 編集

※括弧内は日本語吹替[5]

評価 編集

監督のモルテン・ティルドゥムは「良い映画作品は議論を生むものだと信じている」と持論を展開し、本作について「最も願っていることは、観終わった時に誰かとそれについて語り合いたいと思ってくれることだ。ジムとオーロラの愛についてどう思うか、宇宙船での生活はどんなものか、そして“君ならどうする?”とお互いに問いかけたりしてほしい」と語っている。また、オーロラを演じたジェニファー・ローレンスは、「これまでに読んだことのないようなストーリーで、そのコンセプトには強く惹かれた」と語り、「私が脚本を読み終えた後と同じように、映画館から出てくる観客が、無数の違う意見を持ってくれるはず。“あなたならどうする?”と逆に問いかけてくるような、決まった答えがないところがこの作品のとても好きなところ」と、自身の体験した興奮を観客たちも感じてほしいと明かしている[7]

受賞 編集

映画賞 対象 結果 出典
2017 第89回アカデミー賞 美術賞 ガイ・ヘンドリックス・ディアスジーン・サーデナ英語版 ノミネート

[8]

作曲賞 トーマス・ニューマン ノミネート [8]

興行収入 編集

制作費1億1,000万ドルに対し、米国だけで1億ドル、世界合計で3億300万ドルの興行収入を挙げた[3]

批評家の反応 編集

著名な批評サイトの評価は芳しくない。映画批評サイトのRotten Tomatoesは、227件のレビューに基づいて31%の支持率を示している。また批評家の総意を「乗客(作品)はクリス・プラットとジェニファー・ローレンスがうまく連携したことを証明しているが、科学的に致命的な欠陥のある物語を克服するには不十分」としている。[9]

Metacriticには48件のレビューがあり、加重平均値は41/100となっている[10]

ガーディアンでピーター・ブラッドショーは、5つ星中3つ星をつけた[11]。またロジャー・イーバートでグレン・ケニーは、4つ星中1.5つ星と低評価をつけている[12]

科学的検証による相違点 編集

  • 重力を作り出すために回転している装置は、宇宙ではブレーキを掛けない限り回り続ける。
  • 重力を失った宇宙船が元に戻る際も、回転が始まってから軌道に乗るまで時間がかかるので、映画のように一瞬で重力が復活することはない

[13]

脚注 編集

  1. ^ “J・ローレンス×C・プラット「パッセンジャー」日本語テーマソングはJUJU!”. 映画.com. (2017年2月26日). https://eiga.com/news/20170226/12/ 2017年3月23日閲覧。 
  2. ^ Passengers (12A)”. 全英映像等級審査機構 (2016年12月8日). 2017年3月23日閲覧。
  3. ^ a b c d Passengers (2016)”. Box Office Mojo (2017年5月10日). 2017年5月10日閲覧。
  4. ^ キネマ旬報』2018年3月下旬 映画業界決算特別号 p.32
  5. ^ パッセンジャー”. ふきカエル大作戦!! (2017年3月23日). 2017年3月23日閲覧。
  6. ^ a b c “水樹奈々、“セクシーな大人の魅力”で熱演!J・ローレンスの新作も吹替え担当”. クランクイン!. (2017年3月11日). https://www.crank-in.net/news/48745 2017年3月12日閲覧。 
  7. ^ 『パッセンジャー』は“議論したくなる作品” 監督&ジェニファー・ローレンスの新着コメント
  8. ^ a b “第89回アカデミー賞ノミネート発表!「ラ・ラ・ランド」が最多14ノミネート”. 映画.com. (2017年1月24日). https://eiga.com/news/20170124/27/ 2017年4月18日閲覧。 
  9. ^ Passengers(2016) - Rotten Tomatoes(2017年6月28日閲覧)
  10. ^ Passengers (2016) Reviews - Metacritic - Metacritic(2017年6月28日閲覧)
  11. ^ Passengers review - ガーディアン(2017年6月28日閲覧)
  12. ^ Passengers Movie Review & Film Summary (2016) - ロジャー・イーバート(2017年6月28日閲覧)
  13. ^ Gravity (2013)”. youtube. youtube.com. 2023年5月10日閲覧。

外部リンク 編集