フールズ・メイト

チェスで最短でチェックメイトになる手順

チェスにおけるフールズ・メイト(Fool's mate)は、最初の状態から最短の手数で詰みにいたる手順である。"Two-Move Checkmate"とも呼ばれる。

abcdefgh
8
a8 black rook
b8 black knight
c8 black bishop
e8 black king
f8 black bishop
g8 black knight
h8 black rook
a7 black pawn
b7 black pawn
c7 black pawn
d7 black pawn
f7 black pawn
g7 black pawn
h7 black pawn
e5 black pawn
g4 white pawn
h4 black queen
f3 white pawn
a2 white pawn
b2 white pawn
c2 white pawn
d2 white pawn
e2 white pawn
h2 white pawn
a1 white rook
b1 white knight
c1 white bishop
d1 white queen
e1 white king
f1 white bishop
g1 white knight
h1 white rook
8
77
66
55
44
33
22
11
abcdefgh
フールズ・メイト
白のキングは詰んでいる。
フールズメイトにいたる手順

手順 編集

冒頭の詰みは以下の手順である。

  1. f3 e5
  2. g4?? Qh4#

手順前後やポーンの位置の違いによるバリエーションが数通りある。


詳細 編集

フールズ・メイトは、白が非常に誤った(「愚かな」と言い換えることができる)指し方をしなければ発生しないためこの名が付けられている。とはいえ、初心者レベルの対局でもこの形の詰みに至ることは少ない。

Teed vs. Delmar, 1896
abcdefgh
8
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8
77
66
55
44
33
22
11
abcdefgh
6...Rh6?
白はこの後2手で詰ますことができる。

同種の詰みは対局がもう少し進んでから起きることもある。例えば、1896年のフランク・メルヴィン・ティード(Frank Melville Teed)とユージン・デルマー(Eugene Delmar)の対局では、ダッチ・ディフェンスからこの詰みが発生している[1]

1. d4 f5 2. Bg5 h6 3. Bf4 g5 4. Bg3 f4
ここまでは黒がうまくビショップを捕獲したように見えるが
5. e3
この一手は Qh5# というフールズ・メイトを狙っている。
5... h5 6. Bd3?!
6.Be2 の方がよさそうだが、白は罠を仕掛けている。
6... Rh6??
このルークは Bg6# を防ごうとしている。しかし
7. Qxh5+!
白はクイーンを捨ててルークの利きを g6 からそらす。
7... Rxh5 8. Bg6#

同様の詰みはフロム・ギャンビットから発生することもある。一例は以下の手順である。 1. f4 e5 2. g3? exf4 3. gxf4?? Qh4#

さらに広義には、フールズ・メイトという言葉は同種の短手数の詰み全般を指す。1. e4 g5 2. d4 f6?? 3. Qh5# のような手順がその一例である。基本的なフールズ・メイトのパターンは、詰まされる側がf,g列のポーンを前進させ、邪魔がいない斜め方向からクイーンで詰ますものである。フールズ・メイトが報告された事例としては、1959年の Masfield と Trinka[2]による3手(1. e4 g5 2. Nc3 f5?? 3. Qh5#)のものがあるが、おそらく作り話であると考えられている [3] [4] [5] [6] [7]

更に広義には、チェス類全般の同様な形の最短手数による詰みを指す。例えば、プログレッシブ・チェス(en)におけるフールズ・メイトは 1. e4 2. f6 g5?? 3. Qh5# という手順である。

ジョアッキーノ・グレコ vs. 対戦者不明
abcdefgh
8
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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77
66
55
44
33
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11
abcdefgh
8.Bg6#

同種の罠 編集

同種の手順がジョアッキーノ・グレコの1625年の著作にある。

1. e4 b6 2. d4 Bb7 3. Bd3 f5? 4. exf5 Bxg2? 5. Qh5+ g6 6. fxg6 Nf6??
6...Bg7 としてキングの逃げ道を作ればこの対局を長引かせることができた。以下 7.Qf5! Nf6 8.Bh6 Bxh6 9.gxh7 Bxh1 10.Qg6+ Kf8 11.Qxh6+ Kf7 12.Nh3 のような手順になる[8]
7. gxh7+! Nxh5 8. Bg6#

将棋 編集

将棋においては、初形から6手で詰みにいたる手順が知られている。この手順はルール上詰んでいるが、先手には(無駄な)抵抗の余地がある。

  • ▲7六歩△3四歩▲6八玉△8八角成▲5八金右△9五角
    • 以下先手の無駄な抵抗(2通り)
      • (▲8六歩△同角)
      • (▲7七桂△同角成)

以下は、初形から7手で後手玉を詰ますパターンの例であるが、他にも複数ある。

  • ▲7六歩△7二金▲3三角成△4二金▲同馬△6一玉▲5二金
  • ▲2六歩△4二玉▲2五歩△3二玉▲2四歩△4二飛▲2三歩成

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ Teed vs. Delmar
  2. ^ 資料によって Mayfield や Mansfield、Trinks や Trent などと記載されている。
  3. ^ Mike Fox and Richard James (1993). The Even More Complete Chess Addict. Faber and Faber. pp. 177 
  4. ^ Winter, Edward (2005). Chess Facts and Fables. McFarland & Co.. pp. 253–254. ISBN 978-0-7864-2310-1 
  5. ^ Edward G. Winter. “Chess Notes 4493. Short game”. 2015年11月24日閲覧。
  6. ^ Edward G. Winter. “Chess Notes 4506. Short game (C.N. 4493)”. 2015年11月24日閲覧。
  7. ^ Averbakh, Yuri Lvovich; Beilin, Mikhail Abramovich (1972) (Russian). Fizkultura i sport. p. 227 
  8. ^ Lev Alburt (2011). Chess Openings for White, Explained. Chess Information Research Center. p. 509 

関連文献 編集