ブラジルナッツは、サガリバナ科高木ブラジルナットノキブラジルナット[2]、ブラジルナッツノキ:Bertholletia excelsa)、またはナッツとして食用にされるその種子である。

ブラジルナッツノキ
ブラジルナッツノキ
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
: ツツジ目 Ericales
: サガリバナ科 Lecythidaceae
亜科 : サガリバナ亜科 Lecythidoideae
: ブラジルナッツ属 Bertholletia
: ブラジルナッツ B. excelsa
学名
Bertholletia excelsa Humb. & Bonpl.
和名
ブラジルナッツ
英名
Brazil Nut Tree

樹木 編集

 
ブラジルナッツの果実を割ったところ

ブラジルナッツノキはブラジル、ベネズエラ、ギアナなどアマゾン川流域周辺の熱帯雨林原産の高木である。ブラジルナッツ属(Bertholletia)の唯一種。属名はフランスの化学者クロード・ルイ・ベルトレーに献名されている。

非常に大きく、高さ50m(超高木)、幹の直径2mに及ぶ。は長さ20-50cm、幅9-15cmほどの楕円形で、互生し、乾季には落葉する。

は白色で径3cmほど、多数が円錐花序をなす。ブラジルナッツの授粉は特殊なEuglossa spp.など)によって行われ、またこれらの蜂は特定のCoryanthes vasquezii)において繁殖する。従ってブラジルナッツはこれらの生物と共生していると言うことができる。

果実は成熟に14ヶ月を要する。果実は直径10-15cmの球形の蒴果で、厚い殻の中に、10-20個ほどの長さ4-5cmの三角錘状の種子が放射状に詰まっている。先端に穴があるが、自然に割れることはない。自然界ではアグーチなど大型齧歯類がかじって破り、中の種子を食べ、一部の種子を埋めるなどの行動によりブラジルナッツは繁殖する。

果実・種子の利用 編集

 
殻を取り除いたブラジルナッツの種子
ブラジルナッツ
100 gあたりの栄養価
エネルギー 2,743 kJ (656 kcal)
12.27 g
デンプン 正確性注意 0.25 g
糖類 2.33 g
食物繊維 7.5 g
66.43 g
飽和脂肪酸 15.137 g
一価不飽和 24.548 g
多価不飽和 20.577 g
14.32 g
トリプトファン 0.141 g
トレオニン 0.362 g
イソロイシン 0.516 g
ロイシン 1.155 g
リシン 0.492 g
メチオニン 1.008 g
シスチン 0.367 g
フェニルアラニン 0.630 g
チロシン 0.420 g
バリン 0.756 g
アルギニン 2.148 g
ヒスチジン 0.386 g
アラニン 0.577 g
アスパラギン酸 1.346 g
グルタミン酸 3.147 g
グリシン 0.718 g
プロリン 0.657 g
セリン 0.683 g
ビタミン
チアミン (B1)
(54%)
0.617 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.035 mg
ナイアシン (B3)
(2%)
0.295 mg
ビタミンB6
(8%)
0.101 mg
葉酸 (B9)
(6%)
22 µg
ビタミンC
(1%)
0.7 mg
ビタミンE
(38%)
5.73 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
3 mg
カリウム
(14%)
659 mg
カルシウム
(16%)
160 mg
マグネシウム
(106%)
376 mg
リン
(104%)
725 mg
鉄分
(19%)
2.43 mg
亜鉛
(43%)
4.06 mg
マンガン
(57%)
1.2 mg
他の成分
水分 3.48 g
セレン 1917 μg
β-シトステロール 64 mg

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

ブラジルナッツの種子はマカダミアナッツと同様に味が濃く、先住民により古くから食用にされてきた。油脂分が70%と油を多量に含むため燃料用にもされ、果実の殻は容器として用いられた。

成熟した実の長さは2.5センチメートルに及び、ナッツ類の中では特に大きくアーモンドの2倍の重さとなる。カロリーが高く、大きめのブラジルナッツの実は1個分のカロリーに匹敵する。脂質のうち約25%が飽和脂肪酸、約40%が一価不飽和脂肪酸で、残りがω-6脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸である。多価不飽和脂肪酸が多いため酸敗しやすい。食物繊維も多く、ビタミン類はチアミンビタミンEが特に多い。マグネシウム亜鉛も多く、セレンに至っては1粒 (4g) で75µgほどになり、1日の推奨摂取量25-30µgを大きく超えている。セレンの1日あたり上限摂取量は350-450µgで、800µg以上摂取すると中毒を起こす可能性があるため摂取量には注意が必要。

殻に肝臓癌の原因となるアフラトキシンを高濃度に含むため、欧州連合ではブラジル産の殻付きブラジルナッツの輸入を規制している[3]

殻の重さは約5キログラムあり、落下した殻が頭に直撃すると致命傷を負う危険がある。そのため、収穫作業中は保護用のを使用し身を守る[4]

上記の共生関係により、ブラジルナッツは生育場所が限られるため、栽培による生産は困難であり、多くを採集に頼っているが[5]、アマゾンの開発とともに伐採が進み、生産量が急激に落ち込んできている[6]。現在はボリビアの生産量が第一位となっている。

画像 編集

脚注 編集

  1. ^ Americas Regional Workshop (Conservation & Sustainable Management of Trees, Costa Rica, November 1996) (1998). Bertholletia excelsa. The IUCN Red List of Threatened Species 1998: e.T32986A9741363. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.1998.RLTS.T32986A9741363.en. Downloaded on 17 November 2018.
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-).「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info (2018年11月17日).
  3. ^ Commission Decision of July 4, 2003 imposing special conditions on the import of Brazil nuts in shell originating in or consigned from Brazil”. Official Journal of the European Union (2012年7月5日). 2012年7月17日閲覧。
  4. ^ Harold McGee『マギー キッチンサイエンス』2008年、共立出版 p.496
  5. ^ 「ナッツの歴史」p28 ケン・アルバーラ著 田口未和訳 原書房 2016年8月27日第1刷
  6. ^ 「世界の食用植物文化図鑑」p238 バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳 柊風舎 2010年1月20日第1刷

関連 編集