ブルージオ橋

スイスの鉄道橋

ブルージオ橋は、レーティッシュ鉄道[注 1] ベルニナ線に存在する現役鉄道橋である。

ブルージオ橋
ブルージオ橋を渡るベルニナ急行 地図
情報
用途 高架橋 ( 鉄道橋 )
建築主 ベルニナ鉄道
管理運営 レーティッシュ鉄道
構造形式 石造アーチ橋
状態 使用中
着工 1907年[1]
竣工 1908年[1]
所在地 スイス
座標 北緯46度15分14秒 東経10度07分40秒 / 北緯46.25389度 東経10.12778度 / 46.25389; 10.12778座標: 北緯46度15分14秒 東経10度07分40秒 / 北緯46.25389度 東経10.12778度 / 46.25389; 10.12778
文化財 世界遺産レーティッシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺の景観
指定・登録等日 2008年
備考 世界遺産登録基準 (ii) (iv)
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上空より(2016年撮影)

名称 編集

レーティッシュ鉄道のドイツ語刊行物ひとつをとってみても、或るページでは des Kreisviadukts von Brusio 、別のページでは Kreisviadukt Brusioであったりと表記揺れが見られる[2]。これを直訳すればブルージオループ高架橋となる。 日本ではブルジオ / ブルージオ(の)高架橋、ループ橋、オープンループ橋などと表記されるが、本項ではレーティッシュ鉄道[3]およびスイス政府観光局[1]日本語版ホームページに基く表記を採用する。

形状 編集

急斜面を解決する方法の1つであるループ線を、トンネルを掘削せずに実現した、鉄道としては非常に珍しい構造物である[注 2]ユネスコが登録する文化遺産レーティッシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺の景観」 の建築群に含まれ、その特徴的な外観によってベルニナ線を代表する景観の1つとして知られる。事実、レーティッシュ鉄道の公式ホームページやパンフレット類では、ベルニナ線およびベルニナ急行を示すアイコンとして当橋を意匠化したループマーク[注 3]が採用されており[3]、同鉄道アルブラ線におけるラントヴァッサー橋・ソリス橋と同様の存在といえる[注 4]

全長 142.8m[1] (110mとする文献もある[注 5])。70パーミルの急勾配、かつ、急曲線を描く[注 6]

余談ではあるが、構造部のみに注目すると橋梁は約120度旋回するスロープを形成し、残り半周以上の道床は実際のところ築堤および地表上にある。

歴史 編集

  • 1908年 7月1日 ベルニナ鉄道、ポスキアーヴォ - ティラーノ間を完成。
  • 1910年 7月5日 全線開業。
  • 1942年 1月1日 ベルニナ鉄道、運営管理をレーティッシュ鉄道(RhB)に移管。
  • 1943年 1月1日 (書面上の日付に基く)ベルニナ鉄道の吸収合併に伴い、所有者がレーティッシュ鉄道となる。
  • 2008年 12月14日 当橋付近にて岩壁が崩落し、落下した岩により道床や架線設備に深刻な被害が発生。111日間にわたり、ポスキアーヴォ - ティラーノ間が区間運休[2]
  • 2009年 4月 運休区間の営業再開。
  • 2010年 ベルニナ線開業100周年間。スイス国鉄(SBB)にて当橋をデザインしたラッピング列車が走行したほか、ループ中央部への特別装飾[4]、セレモニーが実施された[5]
  • 2011年 3月中旬 - 10月中旬 経年劣化対策として夜間補強工事実施。上部80cmの範囲で完全に更新した他、雨樋を両側面に追加したことで外観が若干変化した[6]
  • 2013年 1月8日・9日 再び崩落が発生するも、各種対策が功を奏し、2月17日には運転再開に至る。

映像作品 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 他にレーティシェ鉄道、レーティシュ鉄道などの表記揺れが存在するが、公式ホームページの日本語版では本表記となっている。
  2. ^ トンネルのない鉄道ループ線としては他に青蔵鉄道・関角ループ、道路併用橋ではあるが日本のレインボーブリッジ等。土木技術の進歩した今日では、急曲線を用いて大回りすることは高速化に不利であることから、高速性を必要としない場合を除きループ線自体が減少傾向にある。
  3. ^ ベルニナ線においては、ループ形状をもった線路配置はこの区間以外に存在しない。アルブラ線にもループ線は存在するが、立体交差部を含めた大半が地中に隠れているため、車窓からループ線として認識することは困難である。
  4. ^ こちらの意匠は公式ホームページなどでアルブラ線・氷河急行のシンボルマークとして散見される。
  5. ^ 橋梁を円弧とみたときの弦長に相当する数値が110mであると仮定し、弧長を142.8mとして計算すると、弧の半径は約50m、中心角は約160度となり、直径100mとする文献と近似する。しかし実際は橋梁の幅も加味しなければならず、信頼できる設計図が確認できない以上は推測の域を出ないことに注意。またWikipediaドイツ語版における当橋の項では、築堤部分を含まない全長が110mであるとしているものの根拠となる出典が明示されておらず、仮に全ての築堤部分を含めると200mを超えてしまうことから、根拠たりうる出典の発見が待たれる。レーティッシュ鉄道刊行の同鉄道100周年記念誌である「Rhätischen Bahn Heute - Morgen - Gestern」P.289-296の橋梁一覧表においては橋梁名はViadukt Brusio、長さ115.80m、半径70mとされている。また、「Das grosse Buch der Rhätischen Bahn 1889 - 2001」P.265で長さ110mとされているほか、P.266記載の図面においては、山麓(ティラーノ)側の築堤部分は半径50mで、その築堤末端部から橋梁部、山上(ポスキアーヴォ)側築堤までは半径70m、築堤を含まない橋梁部分の全長は数字の明記はないが約110mとなっているほか、スイス全土の鉄道路線のデータ集である「Schienennetz Schweiz - Bahnprofil Schweiz CH+」のデータ集P.164では全長107mとされている。
  6. ^ 本項でもたびたび引用しているスイス政府観光局の紹介には直径70mとの記述があるが、ベルニナ線の最小曲線半径は45mとされており、日本語以外では直径100mと記述していることや、航空写真からの測定値とも乖離が生じることから、少なくともR45以上とみられる。

出典 編集

  1. ^ a b c d ブルージオ橋スイス政府観光局
  2. ^ a b 2009年度年次報告書(ドイツ語・PDF)www.rhb.ch 事故の概要が記載されている
  3. ^ a b RhB日本語ホームページwww.rhb.ch
  4. ^ Google earthのタイムマシン機能にて2010年11月9日の衛星写真を表示するか、(同写真を基にした)3Dオブジェクト表示することでも円形の記念オブジェクトが確認できる。あるいは、2018年7月現在、Google mapの衛星写真にて当橋を表示することで前述2010年11月の衛星写真が表示されるが、いずれにしても現在は撤去されている。
  5. ^ Brusio Spiral Viaduct in Switzerland AMUSING PLANET
  6. ^ 修復作業のプレスリリース(ドイツ語)www.rhb.ch
  7. ^ 放送日は世界の車窓からキー局であるテレビ朝日を基準とする
  8. ^ CM Theater”. 三和酒類. 2018年7月10日閲覧。

参考文献 編集

  • Rhätischen Bahn 「Rhätischen Bahn Heute - Morgen - Gestern」 ISBN 3-907036-08-5
  • Patrick Belloncle, Gian Brünger, Rolf Grossenbacher, Christian Müller 「Das grosse Buch der Rhätischen Bahn 1889 - 2001」 (Viafer) ISBN 3-9522494-0-8
  • Hans G. Waegli 「Schienennetz Schweiz - Bahnprofil Schweiz CH+」 (AS Verlag) ISBN 978-3909111749

関連項目 編集

外部リンク 編集