ブロモアセトン: Bromoacetone)は、有機臭素化合物。無色の催涙性液体で、光に当たると紫色に変色する[1]。有機合成の前駆物質となる。

ブロモアセトン
Bromoacetone
識別情報
CAS登録番号 598-31-2 チェック
PubChem 11715
ChemSpider 11223 チェック
RTECS番号 UC0525000
特性
化学式 C3H5BrO
モル質量 136.99 g/mol
示性式 CH3COCH2Br
外観 Colorless lachrymator
密度 1.634 g/cm³
融点

-36.5℃

沸点

137℃

蒸気圧 1.1 kPa (20℃)
危険性
安全データシート(外部リンク) MSDS at ILO
主な危険性 催涙性、引火性
引火点 51.1℃
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

19世紀前期に合成され[2]第一次世界大戦ではBAB-Stoffの名称で化学兵器として使用された。毒性があるため、暴動鎮圧剤としては使用されなくなった。

発生 編集

天然には、ハワイ諸島周辺の海藻精油に1%未満程度含まれる[3]。大気中ではヒドロキシラジカルによって光化学的に分解される。

合成 編集

ブロモアセトンは市販されている。安定剤として酸化マグネシウムが添加されている場合がある。

酸または塩基の触媒を使用して、臭素アセトンを反応させて生成できる[4]

 

他のケトンと同様、酸性条件下ではエノールを経由して親電子置換反応を受け[5]、上記反応が進行する。一方塩基性条件下ではエノラートを生じることで反応が進行するが、臭素原子による電子吸引効果によりエノラートの生成がより容易になるため、二臭化物(α,α-ジブロモアセトン)、三臭化物の生成が避けられない。

応用 編集

反応性の高い試薬で、一例としてヒドロキシアセトンの前駆体となる[6]

安全性 編集

日本の毒物及び劇物取締法では劇物に分類されており、強い催涙性がある。可燃性であり、燃焼により臭化水素など有毒ガスを生じる[1][7]

脚注 編集

  1. ^ a b 国際化学物質安全性カード
  2. ^ Sokolowsky, Berichte volume 9, pp. 1687 (1876).
  3. ^ B. Jay Burreson, Richard E. Moore, and Peter P. Roller (1976). “Volatile halogen compounds in the alga Asparagopsis taxiformis (Rhodophyta)”. Journal of Agricultural and Food Chemistry 24 (4): 856–861. doi:10.1021/jf60206a040. 
  4. ^ フィーバス・レヴィーン (1943). "Bromoacetone". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 2, p. 88
  5. ^ William Reusch. “Carbonyl Reactivity”. VirtualText of Organic Chemistry. 2007年10月27日閲覧。[リンク切れ]
  6. ^ Levene, P. A.; Walti, A. (1943). "Acetol". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 2, p. 5
  7. ^ 製品安全データシート(安全衛生情報センター)

出典 編集

  • Merck Index, 11th Edition, 1389